【弁護士が解説】看護師でも過去3年間の残業代が取り返せる方法とは?

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監修者 住川佳祐

弁護士法人QUEST法律事務所
住川 佳祐

【弁護士が解説】看護師でも過去3年間の残業代が取り返せる方法とは?
チェック
この記事を読んで理解できること
  • 看護師の残業の実態
  • 看護師の残業代が出ない・少ないことが多い理由
  • 看護師でも残業代が出る!残業代のルールを確認しよう
  • 看護師の残業代がごまかされる6つのケース
  • 看護師が残業代を取り返す2つの方法
  • 看護師が未払い残業代を請求する時の2つのポイント

あなたは、

「看護師の残業代の実態が知りたい」
「看護師の残業代はちゃんと支払われているの?」
「看護師の未払い残業代は請求できる?」

などとお考えではないですか?

結論から言うと看護師の残業代は、実際に働いた残業時間に対して、しっかり支払われていないケースが多いという実態があります。

例えば、令和2年の日本看護協会の調査では、業務開始時刻より前に出勤して仕事を始める「前残業」を、残業として扱っているかという問いには、「扱っていない」と答えた人が半数以上の62.9%にのぼっています。

2019年 病院および有床診療所における看護実態調査報告書

また看護師の仕事は、日常的な業務量が多いだけでなく、患者の容体によっては緊急な対応が必要になることもあるため、残業時間が増えることもあります。

さらに病院によっては、「残業代が出ないことは当たり前」という空気があり、仕事が大変なのに給料が不当に安い、上がらないということも多いようです。

もしあなたが、

「新人のうちは残業代が出ないんだよ。」
「時間内に仕事が終わらないのは自分の責任なんだから、残業しても残業代は出ないよ。」
「研修は労働時間には入らないから、残業代は発生しないよ。」

上司からこのように言われても、残業の事実がある場合は、残業代を請求することができます。

そこでこの記事では、まずは看護師の残業の実態と、看護師に残業代が出ないことが多い理由、看護師の場合の残業代のルールについて解説します。

さらに、看護師にありがちな残業代がごまかされるケースや、未払い残業代の請求方法・ポイントについて解説していきます。

「看護師の仕事は、残業代が出ないのは当たり前」などと諦めず、まずは正しい知識を学びましょう。

未払い残業代を取り返したいというあなたへ、まずはお気軽にご相談ください
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1章:看護師の残業の実態

この章では、看護師の残業の実態を、日本医療労働組合連合会の「2022 年看護職員の労働実態調査」の結果をもとに見ていきます。

日本医療労働組合連合会:「2022 年看護職員の労働実態調査」

さらに、自分の残業代は正しい金額か、その計算方法についても解説していきます。

1-1:看護師の残業時間

この調査では、看護師で不払い労働(サービス残業)を行っている人の割合は、約7割にも達しています。

また、サービス残業を含む実際の1か月の残業時間(時間外労働時間)は、「5 時間以上」は 64.1%で、そのうち「20 時間以上」が19.4%、「30 時間以上」が 9.0%となっています。

さらに、「60 時間以上」の残業を行っている人が、0.7%にあたる253 人という結果になっています。

先に解説した日本看護協会の調査では、「前残業」がサービス残業とされている人の割合が62.9%となっていたように、看護師の残業の実態は、多くのサービス残業が含まれていると言えます。

1-2:自分の残業代が正しい金額か計算してみよう

残業代の計算式は、次のようになります。

残業代の計算式

では、実際の残業代はどのくらいになるのか、二交代制の場合(日勤・夜勤あり)を例にして計算してみます。

【二交代制の場合(日勤・夜勤あり)の残業代、深夜手当の計算】
二交代制の場合、日勤・夜勤ともに12時間以上労働するのが一般的で、日常的に残業が発生するため、月の残業時間は長くなりがちです。

(例)
  • 基本給25万円
  • 一月平均所定労働時間170時間

※一月平均所定労働時間とは、病院によって定められた1か月の平均労働時間のことで、170時間前後であることが一般的です。

  • 日勤:8:00〜20:30
  • 夜勤:20:00〜翌朝8:30
1週間のシフト例

月:日勤(13時間勤務→残業4時間)

火:日勤(15時間勤務→残業6時間)

水:夜勤入り

木:夜勤明け(15時間勤務→残業6時間)

金:休み

土:休み

日:日勤(13時間勤務→残業4時間)

※いずれの日も休憩は1時間

  • 月の残業の合計:80時間
  • 月の深夜労働の合計:28時間

以上の例で計算すると、1か月の残業代は、

(25万円÷170時間)×1.25倍×80時間=14万7,058円

1か月の深夜手当は、

(25万円÷170時間)×0.25倍×28時間=1万0294円

と計算でき、合計金額は15万7,352円にもなります。

残業代や深夜手当は、3年分までさかのぼって請求できるため、

15万7,352円×36か月=566万4,672円

と高額になります。

これは残業が多い例として計算しましたが、看護師は夜勤が頻繁にありますし、「労働時間にカウントできる時間」も多い傾向があるため、残業代が高額になる可能性が高いです。

2章:看護師の残業代が出ない・少ないことが多い理由

看護師の業務が、長時間残業になりがちな理由として、次の4つがあげられます。

  • 患者の容体等で仕事量が変わる
  • 前残業、研修、持ち帰り残業などが多い
  • 看護以外の仕事も多い
  • 人手不足

さらに、その多くがサービス残業になりがちな理由を解説していきます。

2-1:患者の対応を優先するため

看護師の残業代がごまかされやすい理由の一つは、患者の対応を優先することで残業が発生しやすいということです。

その結果として定時上がりという考え方が薄く、拘束時間を超えてサービス残業せざるを得ないのです。

具体的には、

  • ナースコールが鳴りっぱなしで対応に追われ、他の業務が後回しになる
  • 突然入院患者が運ばれてきて対応に追われる

などの経験がある人は多いのではないでしょうか。

患者に「もう定時だから対応できません」などとは言えないため、患者の対応を優先することで、必然的に他の業務を後回しにしなければならず、残業が発生します。

しかも「患者の対応だから仕方ない」という理由で、残業として記録し辛いこともあるようです。

2-2:前残業、研修、持ち帰り残業などが多い

看護師は職務上、業務時間として見過ごされがちな「前残業」「研修」「持ち帰り残業」などが発生しやすく、その分の残業代が未払いになりがちです。

あなたも、

  • 定時前に出勤して、その日の準備をする
  • 勤務時間外に院内研修や勉強会に参加する
  • 研修準備や勤務計画表の作成のため、自宅に持ち帰って仕事をする

などの経験がありませんか?

これらの時間も本来なら、「労働時間」としてカウントできる可能性のある時間です。

しかし、現場では「これって残業にならないんですか?」などとは聞き辛いため、暗黙のうちにサービス残業になっていることも多いようです。

2-3:看護記録など患者への対応以外の仕事も多い

看護師の場合、患者の看護だけでなく、「看護記録」などの資料作成の業務が、とても大きな負担になっています。

例えば、

  • 患者の看護記録
  • 看護計画の作成
  • 研修用のレポートの作成
  • カルテのチェック

などを日常的に行わなければならないのに、患者の対応をしている時間に、並行して看護記録を作成する余裕が作れないこともあります。

その結果、何時間も残業して記録を作成せざるを得ない、というケースも多いようです。

2-4:人手不足の職場も多い

ブラックな病院の場合、看護師の離職率が高く、常に人手不足の状態にある、ということも多いです。

しかし、人手不足でも患者がいれば対応しなければならないため、在籍している看護師1人1人の負担は大きく、サービス残業してでも仕事をしなければならない、というケースがあります。

このような病院に在籍している看護師は、「自分がいなくなったら仕事が回らなくなる」と考えて、よりいっそうサービス残業が日常化している現状から離れられなくなる、という悪循環にもなりがちです。

しかし、どんな理由があっても残業代が出ないことは違法です。

次に残業代のルールについて、詳しく解説します。

3章:看護師でも残業代が出る!残業代のルールを確認しよう

看護師のような医療従事者も、例外なく労働基準法のルールが適用されます。

そのため、残業代が支払われていなかったり、不当に少ない金額しか認められていない場合は「違法」です。

そこで、

  • 法律上の残業代のルール
  • 「前残業」「研修」「持ち帰り残業」など、実は労働時間としてカウントできる時間

について、詳しく解説します。

3-1:法律上の残業代が発生する時間

残業代とは、以下の「法定労働時間を超えて働いた時間(残業)」に対して支払われる賃金のことです。

 

法定労働時間とは、法律で定められた「1日8時間・週40時間」の時間のことで、これを超えた労働が「残業」になります。

 

つまり、次のどちらか一方でも超えて働いた時間が、法定外労働時間として残業になります。 

 

  • 1日8時間を超えた労働時間
  • 週40時間を超えた労働時間

1日8時間・週40時間を超えたら残業

次に、二交代制の病院と三交代制の病院とに分けて、解説します。

①二交代制の病院の場合
二交代制の場合は、

  • 日勤:8:00〜20:30
  • 夜勤:20:00〜翌朝8:30

というように、約12時間ずつのシフトが組まれることが多いと思います。

この場合は、

  • 日勤:17:00以降の労働が残業(途中休憩1時間)
  • 夜勤:翌朝5:00以降の労働が残業(途中休憩1時間)

になります。

二交代制の看護師の残業時間

②三交代制の病院の場合
三交代制の場合は、

  • 日勤:8:00〜17:00
  • 準夜勤:15:30〜24:30
  • 夜勤:23:30〜8:30

というように、8時間前後でシフトを組まれることが多いと思います。

この場合は、

  • 日勤:17:00以降の労働が残業(途中休憩1時間)
  • 準夜勤:24:30以降の労働が残業 (途中休憩1時間)
  • 夜勤:翌朝8:30以降の労働が残業(途中休憩1時間)

になります。

三交代制の看護師の残業時間

この法定時間外の残業に対しては、普段の賃金に「割増率」をかけて残業手当を算出し支払われます。

割増率とは、時間当たりに換算した賃金(基礎時給)にかけられる倍率のことで、大きく分けると次の5つがあります。

  • 法定労働時間外の残業:1.25倍
  • 休日労働(法定休日):1.35倍
  • 深夜労働:0.25倍
  • 法定労働時間外の深夜残業(22:00〜翌朝5:00):1.5倍
  • 法定休日の深夜残業:1.6倍

例えば、1時間あたりの賃金が1,000円の人が残業した場合は、1時間あたりの賃金が1,250円以上になります。

また深夜残業(22:00〜翌朝5:00)になった場合は、1時間あたりの賃金が1,500円になります。

法定労働時間を超えた労働時間はすべて残業となり、割増率をかけて計算した残業代がもらえなければ違法ということになります。

3-2:看護師で労働時間にカウントされる時間

多くの病院では、朝早くに出勤してその日の業務の準備をしたり、勤務時間外に研修や勉強会があるなど、勤務時間外の労働も多いようです。

こうした時間は、「タイムカードに記録していない」という人も多いと思いますが、実は、労働時間としてカウントできる可能性が高いです。

過去の判例から、「労働時間」としてカウントできるのは、

「使用者の指揮命令下に置かれている」時間
(三菱重工業長崎造船所事件:最高裁平成12年3月9日判決)

のことであるとされています。

「使用者」とは、簡単に言えばあなたの職場の上司である「看護師長」などのことです。

その使用者から「この仕事をやってくれ」「この時間は働いてくれ」という指示を受けている時間は、すべて労働時間としてカウントされます。

さらに、上司から明らかに「この仕事を残ってやってくれ」と指示されていなくても、

  • 就業時間内に終わらない量の仕事がある
  • 指示された時間内では完了できない

などのような、仕事上働かざるを得なかった時間は、「労働時間」としてカウントされる可能性が高いです。

そのため以下の時間も、使用者の指揮命令下に置かれていた場合は、労働時間としてカウントできる可能性が高いです。

使用者の指揮命令下に置かれている時間

 

  • 前残業、朝礼:早く出勤しての報告や引き継ぎ、業務遂行のために出席が前提になっている朝礼、事務局長による講話など。
  • 資料作成時間:就業時間外にせざるを得なかった看護記録の作成など。
  • 緊急対応:急患、就業時間外の患者や患者の家族の対応。
  • 院内研修・勉強会:参加が義務付けられている研修や病棟勉強会、PT勉強会、新人教育プログラム等。自己研鑽の側面があったとしても、労働時間になることも。
  • 休憩時間、仮眠時間:休憩・仮眠時間でも、患者や上司の指示があったらすぐに対応しなければならない場合。
  • 持ち帰り残業:持ち帰らなければならない事情があり、かつそれが指示されていた証拠がある場合。

以上をまとめると、

「1日8時間・週40時間」のどちらか一方を超えた時間

かつ、

「使用者の指揮命令下に置かれている」時間

の両方を満たす時間は、看護師でも労働時間としてカウントされ残業代が発生します。

このように、「労働時間が曖昧」なこと以外にも、看護師の場合は、残業代がごまかされるケースがたくさんあります。

4章:看護師の残業代がごまかされる6つのケース

看護師の残業代がごまかされやすいケースとして、以下の6つがあげられます。

  • 新人には残業代は出ない
  • ○○分以内は残業ではない
  • 残業は指示していない、残業は自己責任
  • ちゃんとした理由がなければ残業代は出ない
  • 休憩時間も働かなければならない
  • 基本給、〇〇手当に残業代が含まれている

それぞれ詳しく解説します。

4-1:新人には残業代は出ない

看護師は業界の慣習として、

  • 試用期間・研修中は、残業にして良いと言われた時間だけ残業として記録する
  • 先輩が残業をつけていないので、自分もつけられない
  • 新人は看護師長の許可がなければ、残業がつけられない

ということがあります。

あなたも、本当は「残業代をしっかりもらいたい」と思っていながら、「新人は出ないのが当たり前らしいし・・・」と残業代を諦めていませんか?

労働基準法上は、新人でも研修中でも同じように残業代が発生するため、請求して取り返すことが可能です。

4-2:○○分以内は残業ではない

あなたは上司から、

「1時間以内は残業にはならない」
「残業の記録は30分単位で記録しなさい」

などと言われて、残業時間を切り捨てられてはいませんか?

実は、このような行為は認められません。

なぜなら、日々の残業時間は1分単位で記録しなければならないからです。

そのため、あなたの病院で日々の残業の記録が1分単位になっていなかった場合、その分の残業代が未払いになっています。

残業時間の端数切り捨ての例外が認められるのは、1か月の残業の合計時間についてのみで、以下のように決められています。

【1ヶ月の残業、休日労働、深夜労働の端数】
  • 合計時間のうち30分未満の端数は切り捨て
  • 合計時間のうち30分以上は1時間に切り上げ

あなたの日々の残業時間の端数が切り捨てられている場合は、その分の残業代を請求することができます。

4-3:残業は指示していない・残業は自己責任

「別に残業しろなんて指示していない」
「決められた時間内に仕事が終わらないのは、自分の責任」
「残業は禁止なんだから、勝手に残業しても残業代は出ないよ」

あなたは、看護師長や先輩からこのようなことを言われたことはありませんか?

残業の指示をしていないと言ったり、残業は自己責任と言いながら、

  • 残業しているのを黙認する
  • 残業しなければ終わらない量の仕事を指示する

など、明らかに残業を強要するような行動があった場合は、それは残業としてカウントできます。

そのため、残業の指示があったことを記録しておくことで、後から残業代を請求することができます。

4-4:ちゃんとした理由がなければ残業代は出ない

あなたは、上司や先輩から、

「ちゃんとした理由がなければ残業にはならない」
「残業は事前に理由を説明して、許可を取らなければならない」

などと言われていませんか?

残業許可制の職場では、理由を説明しても、

「定時内に終わらなかった自分が悪い」
「もっと早くできたはず」

などと言われて許可がおりず、サービス残業になってしまう場合が多いです。

しかし、先ほども説明したように、残業しなければならない必然性がある場合は、許可が取れていない場合でも残業時間としてカウントされます。

4-5:休憩や仮眠時間もナースコールがあればすぐに対応が必要

看護師は業務上、患者のナースコールがあればすぐに対応しなければなりません。

そのため、

  • すぐに対応できるように、休憩時間は急いでご飯を食べて業務に戻る
  • 仮眠時間もナースコールがなればすぐに対応しなければならず、コールが多い日は一切仮眠できない

などのケースが多いです。

看護師という仕事上、患者から呼ばれれば対応しなければなりませんが、それゆえに休憩や仮眠がとれず、大きなストレスになっている人は少なくありません。

仮眠時間も、すぐに対応するように指示を受けていたり、そのようにマニュアルに規定されている場合は、労働時間としてカウントできる可能性があります。

4-6:基本給、〇〇手当に残業代が含まれている

あなたは、

  • 残業代は基本給に含まれている
  • 残業代は、毎月一律○万円までしか支給しない
  • 業務手当、役職手当などが残業代の代わり

などと言われていませんか?

このように、どれだけ残業しても一定額の残業代しか出なかったり、他の手当が残業代の代わりとして支給されていたりすることは、法律上認められません。

このような場合も、未払い残業代を後から請求することが可能です。

5章:看護師が残業代を取り返す2つの方法

ここまで解説してきたように、未払いの残業代がある場合は、後からでも病院に請求することができます。

残業代の請求方法には、

  • 自分で病院に直接請求する方法
  • 弁護士に依頼して請求する方法

の2つがあります。

この2つの方法には、以下のようなメリット・デメリットがあります。

残業代請求を自分でやる場合と弁護士に依頼する場合の違い

それぞれの方法を詳しく解説します。

5-1:自分で直接「配達証明付き内容証明郵便」を送って請求する

未払い残業代について、自分で職場に「配達証明付き内容証明郵便」を送って請求するという方法があります。

内容証明とは、差し出した日付、差出人の住所・氏名、宛先の住所・氏名、文書に書かれた内容を、日本郵便が証明してくれる手紙の一種です。

そして、配達証明とは、配達した日付や宛名を証明してくれる郵便の制度です。

書面は以下のようなものです。

<内容証明ひな形>

私は○○年○○月○○日、貴院に入職し、○○年○○月○○日に退職した者です。

私は、○○年○○月○○日から○○年○○月○○日(以下「請求期間」とします。)まで、貴院に対し、合計■時間の時間外労働を提供いたしましたが、貴院からは、一切、割増賃金のお支払いただいておりません。

よって、私は、貴院に対し、請求期間内の未払割増賃金の合計額である★円の支払を請求いたしますので、本書面到達後1週間以内に、以下の口座に振り込む方法によるお支払をお願いいたします。

○○銀行○○支店 

○○預金(普通・定期などの別) 

口座番号○○ 

口座名義人○○

なお、本書面到達後1週間を過ぎても貴院から何らご連絡いただけない場合は、やむを得ず訴訟を提起させていただくことをあらかじめ申し添えます。

「配達証明付き内容証明郵便」で病院に請求書を送ることで、病院は「そんなもの届いていない」と無視することができなくなります。

「配達証明付き内容証明郵便」を送って残業代を請求する流れは、以下の4つのステップからなります。

① 証拠を集める
② 残業代を計算する
③ 病院に配達証明付き内容証明郵便を送る
④ 自分で病院と交渉する

店に「配達証明付き内容証明郵便」を送って請求する方法は、必要な手続きの量が多いですので、詳しくは以下の記事を参照してください。

残業代を内容証明で請求!自分で出す方法と適切なタイミングを徹底解説

内容証明を送ると、病院との交渉がスタートします。

運が良ければ、内容証明が届いた時点で支払いに応じる病院もあるかもしれません。

しかし、あなたの病院の経営者は、あなたになるべく残業代を払いたくないため、顧問弁護士等を介して減額の交渉をしてくるでしょう。

どの金額で折り合いがつくかは、あなた次第ですが、相手は、法律のプロである弁護士なので本来もらえる額より少ない金額で妥協しなくてはならない可能性が高いです。

また、一人で交渉しても経営者に対してはあまり圧力とならないため、相手にしてもらえず、内容証明を送っても無視されるという可能性もあります。

そんな場合は、次に紹介する「弁護士に依頼する」方法をおすすめします。

5-2:弁護士に依頼して請求(手間・時間がかからず回収金額が高くなる可能性アリ)

より確実に残業代を取り返したい場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。

なぜなら、残業代の計算や交渉は、専門的な知識が必要になりますし、「すでに退職している」「これから準備を始める」という場合は、自分の知識だけでは円滑に手続きを進めることが難しいからです。

実は、弁護士に依頼すると言っても「訴訟(裁判)」になることは少ないです。

ほとんどが交渉や労働審判という、訴訟(裁判)よりも簡単な手続きで解決します。

残業代請求に強い「完全成功報酬制」の弁護士に依頼すれば、「相談料」や「着手金」ゼロで依頼することができます。

残業代請求を弁護士に依頼した場合の、詳しい手続きの流れや注意点について、以下の記事で詳しく解説しています。

【残業代請求】弁護士選びの8つのポイントと解決までの流れや費用を解説

最後に、未払い残業代を請求する上でとても大事な2つのポイントについて解説します。

6章:看護師が未払い残業代を請求する時の2つのポイント

看護師が未払い残業代を請求する時のポイントとして、次の2つがあげられます。

  • 看護師が職場で集めておくべき証拠
  • 残業代請求の時効は3年

それぞれ解説します。

6-1:看護師が職場で集めておくべき証拠

残業代の請求を成功させるために、最も大事なのが「証拠集め」です。

証拠を取得せずに辞めてしまうと、後から証拠を集めることが非常に困難になりますので、やめる前から集めることがポイントです。

集めるべき証拠には、

  • 残業代が未払いであることを示す証拠
  • 残業時間を示す証拠

の2種類があります。

①残業代が未払いであることを示す証拠
残業代が未払いであることを示す証拠は、以下のものです。

  • 雇用契約書
  • 就業規則
  • 賃金規定
  • 給与明細

②残業時間を示す証拠
残業時間を示す証拠は、あなたの状況によって集められるものが限られると思いますので、以下の中から集められそうなものを探して見てください。

コピーでもかまいません。

【まず集めておきたい証拠】
① タイムカード
② シフト表
③ 日報
④ 出勤簿
⑤ 電子カルテの閲覧記録

【ポイント】
日報などは、正確に書いていないことも多いと思います。正確ではない記録が残っていると、交渉になったときに不利になりやすいです。

また、タイムカードやシフト表は経営者や上司が改ざんしている可能性もあります。

【証拠になるようなものがない場合でも、証拠になり得るもの】
① 手書きの勤務時間・業務内容の記録(最もおすすめ)
② 残業時間の計測アプリ
③ 家族に帰宅を知らせるメール(証拠能力は低い)

【ポイント】
病院が、正確に勤怠管理をしていない場合に証拠として意外におすすめなのは①です。

自分で勤務時間を記録する場合は、毎日手書きで、1分単位で時間を書きましょう。

具体的な業務内容についても、記録しておくことが望ましいです。

③のメールは、裁判になると証拠としては弱いので、できるだけ手書きでメモを取りましょう。

【証拠集めの注意点】
①できるだけ多くの証拠を集める。
証拠は、できれば3年分の証拠があることが望ましいですが、なければ一部でも請求は可能です。

できるだけ毎日の記録を集めておくと良いでしょう。

②ウソの内容を書かない
「手書きのメモ」や「日報」など、残業時間を手書きで記録しておく方法もご紹介しましたが、その場合絶対に「ウソ」の内容を書いてはいけません。

証拠の中にウソの内容があると、その証拠全体の信用性が疑われ、証拠として利用できなくなり、残業していた事実を証明できなくなる可能性があります。

そのため、証拠は「19時30分」ではなく、「19時27分」のように、1分単位で記録するようにし、正確に記録していることを示せるようにしておきましょう。

損せず退職するためのスケジュール

6-2:残業代請求の時効は3年

最後になりますが、残業代請求ができるのは、毎月の給料日を基準にして「3年」です。

【給料の支払日が「15日締め・翌月末払い」の場合】
例えば、給料の支払日が「15日締め・翌月末払い」の場合、2020年2月16日から3月15日までの給料は、2020年4月30日に支払われます。

そのため、2020年3月15日締めの給料は、2023年の4月30日経過時に時効を迎えます。

そこで、2020年3月15日締めの給料の時効を止めるためには、2023年の4月末までに「時効を止める」手続きを行う必要があります。

残業代請求の3年の時効

毎月の給料日が来るたびに、3年前の1か月分の残業代が消滅していくのです。

そのため、残業代を請求したい場合は、できるだけ早く行動を開始することをおすすめします。

時効について詳しく知りたい場合は、以下の記事を参考にしてください。

残業代請求の時効は3年!時効を止める3つの手段と具体的な手続きの流れ

まとめ:看護師の残業代

最後にもう一度、今回の内容を振り返ってみましょう。

  • 看護師の残業の実態は、多くのサービス残業が含まれている。
【看護師にサービス残業が多い4つの理由】
  • 患者の容体等で仕事量が変わる
  • 前残業、研修、持ち帰り残業などが多い
  • 看護以外の仕事も多い
  • 人手不足
【労働時間にカウントできる可能性が高い時間】
  • 前残業、朝礼:早く出勤しての報告や引き継ぎ、業務遂行のために出席が前提になっている朝礼、事務局長による講話など。
  • 資料作成時間:就業時間外にせざるを得なかった看護記録の作成など。
  • 緊急対応:急患、就業時間外の患者や患者の家族の対応。
  • 院内研修・勉強会:参加が義務付けられている研修や病棟勉強会、PT勉強会、新人教育プログラム等。自己研鑽の側面があったとしても、労働時間になることも。
  • 休憩時間、仮眠時間:休憩・仮眠時間でも、患者や上司の指示があったらすぐに対応しなければならない場合
  • 持ち帰り残業:持ち帰らなければならない事情があり、かつそれが指示されていた証拠がある場合
【看護師の残業代がごまかされやすいケース】
  • 新人には残業代は出ない
  • ○○分以内は残業ではない
  • 残業は指示していない、残業は自己責任
  • ちゃんとした理由がなければ残業代は出ない
  • 休憩時間も働かなければならない
  • 基本給、〇〇手当に残業代が含まれている
【残業代の請求方法】
  • 自分で病院に直接請求する方法
  • 弁護士に依頼して請求する方法

「看護師の仕事上仕方ないから・・・」などと諦めず、損しないように行動していきましょう。

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