【ブラック企業の基準】労働時間や賃金、人事などの見抜き方や対応策

監修者

弁護士法人QUEST法律事務所
住川 佳祐

【ブラック企業の基準】労働時間や賃金、人事などの見抜き方や対応策
チェック
この記事を読んで理解できること
  • ブラック企業の基準がわかるパターン別の特徴
  • ブラック企業に勤めている場合の対応策
  • これから就職・転職するためのブラック企業を見抜くポイント
  • ホワイト企業の4つの特徴

あなたは、
「ブラック企業の基準や定義が知りたい」
「うちの会社はブラック企業なのかチェックしたい」
「ブラック企業だったらどうしたらいい?」
などとお考えではないですか?

ブラック企業の基準には

  • 違法な労働時間
  • 不当な人事や解雇
  • 労働者にとって理不尽な賃金形態
  • 各種ハラスメント

など様々な側面があり、それぞれに「ブラック企業」となりうる基準があります。

この記事を読んでいるあなたも
「うちの会社もブラック企業では・・・?今の状況をなんとかしたい」
と感じている方も多いはずです。

そこでこの記事では、労働問題に強い弁護士が、ブラック企業の基準を様々な側面から1つ1つクリアにしていきたいと思います。

「自分の会社がブラック企業かを見極めたい!」
「就職・転職のためにブラック企業の基準を知っておきたい」

こんな人は、ぜひこの記事をよんで役立ててみてください。

目次

  1. 1章:ブラック企業の基準がわかるパターン別の特徴
    1. 1-1:労働時間からみるブラック企業の基準
      1. 1-1-1:残業時間が月に80時間を超える
      2. 1-1-2:年間休日が少ない
      3. 1-1-3:休憩時間がない
      4. 1-1-4:労働時間と認められない労働がある
    2. 1-2:賃金からみる基準
      1. 1-2-1:給料や残業代が支払われない
      2. 1-2-2:労働契約書や就労規則にはない給料の減額がある
      3. 1-2-3:不明確な給料明細からの天引き
      4. 1-2-4:業績や売上は上昇しているのに昇給がない
      5. 1-2-5:賞与が年齢と共に減少する
    3. 1-3:人事関係にみる基準
      1. 1-3-1:名ばかり管理職にする
      2. 1-3-2:男女間の評価が不公平
      3. 1-3-3:大量採用・大量離職
      4. 1-3-4:不当解雇が横行している
      5. 1-3-5:退職させてくれない
    4. 1-4:その他の基準
      1. 1-4-1:「洗脳」や「自己都合退職」に追い込む
      2. 1-4-2:セクシャル・ハラスメントの被害
      3. 1-4-3:危険な状況で作業させる
      4. 1-4-4:労働災害をごまかす
  2. 2章:ブラック企業に勤めている場合の対応策
    1. 2-1:現状の改善要求をしたい
    2. 2-2:残業代などお金がほしい
    3. 2-3:スムーズに退職・転職したい
    4. 2-4:専門機関を利用したい
  3. 3章:これから就職・転職するためのブラック企業を見抜くポイント
    1. 3-1:求人票をチェックする
    2. 3-2:面接でチェックする
    3. 3-3:見聞きして情報を集める
  4. 4章:ホワイト企業の4つの特徴
    1. 4-1:離職率が低い
    2. 4-2:福利厚生が充実している
    3. 4-3:残業時間が少ない
    4. 4-4:基本給が高く明確な評価制度がある
  5. まとめ:ブラック企業を見分ける基準
未払い残業代を取り返したいというあなたへ、まずはお気軽にご相談ください
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1章:ブラック企業の基準がわかるパターン別の特徴

ブラック企業に明確な定義はありませんが、当サイト(クエストリーガルラボ)では、

「従業員を採用してから辞めさせるまで過酷な労働環境や低待遇で働かせ続けて、会社だけが儲けようとする企業のこと」

をブラック企業と呼んでいます。

1章ではそんなブラック企業の基準を、以下4つのテーマに分けて、わかりやすく解説します。

① 労働時間
② 賃金
③ 人事・対人関係
④ その他

あなたの会社は、いくつブラック企業の違法基準に当てはるか、ぜひこの機会に確認してみてください。

1-1:労働時間からみるブラック企業の基準

まずは、労働時間から見る基準として、次の4つを解説していきます。

  • 残業時間が月に80時間を超える
  • 年間休日が少ない
  • 休憩時間がない
  • 労働時間と認められない労働がある

今のあなたの労働状況を客観的に判断し、正しい労働時間の在り方を知ってください。

1-1-1:残業時間が月に80時間を超える

1ヶ月の残業時間が、2ヶ月以上にわたって「80時間」を超えていたら、その会社はブラック企業である可能性がかなり高いです。

なぜなら、厚生労働省では、残業時間が月に80時間を超えることを「過労死ライン」と定めているからです。

例えば、働き過ぎで脳や心臓に疾患を抱えてしまい、発症前の2ヶ月ないし6ヶ月にわたって1ヶ月の残業時間が80時間を超えていた場合は、労働災害(労災)として認められる可能性が高くなります。

このように、ブラック企業の大きな特徴の一つに、「労働時間の長さ」が上げられます。

ブラック企業の労働時間については、次の記事で詳しく解説していきます。

労働時間からブラック企業を判断しよう!3つの基準と取るべき行動

1-1-2:年間休日が少ない

法律では「年間休日が●日以下は違法」といった決まりはありません。

ただし、会社は労働者に対して、週1日以上、または4週で4日以上の休日を与える決まりになっています。

1年間は52.14週ですから、最低で53日間の休日は与える必要があります。

厚生労働省が発表している就労条件総合調査結果の概況によれば、労働者1人あたりの年間休日数の平均は107.0日となっています。

この数字より極端に少ないようであれば、ブラック企業の可能性が高いでしょう。

※令和4年就労条件総合調査 結果の概況 労働時間制度

1-1-3:休憩時間がない

休憩時間とは、従業員が労働時間の途中に、休息のために労働義務から解放される時間のことをいいます。

「会社の指揮命令下には置かれない時間」

ですから、自由に利用できる時間を意味します。

また、会社側は労働者に対し、労働時間が6時間を超える場合には、最低でも45分以上、労働時間が8時間を超える場合には、最低でも1時間以上の休憩を与えなければならないとされています。

休憩時間に電話番をさせられるなど、会社の都合で行動を縛られている時間は、「休憩時間」ではなく「労働時間」となります。

また、休憩時間は、労働時間の途中に与えなければならないため、始業後1時間、あるいは終業の1時間前を休憩時間とすることは許されません。

1-1-4:労働時間と認められない労働がある

実労働時間が8時間の場合でも、その前後の出社を自主的に行うように求める企業があります。

例えば、終業後の残業は認めない代わりに早朝出勤させたり、始業前・退社後に清掃作業を定める企業などです。

このような早朝出勤や清掃作業も、立派な仕事であり労働時間になります。

他にも、以下のような作業は労働時間に該当する可能性があるので、労働時間と認められず働かされていないか、確認してみましょう。

  • 掃除:始業前や就業後の清掃時間
  • 着替え:制服、作業服、防護服などに着替える時間
  • 休憩時間:休憩中の電話番や来客対応などを依頼された場合
  • 仕込み時間:開店前の準備やランチとディナーの間の仕込み時間
  • 準備時間:店舗などで開店前の準備をする時間
  • 待機時間:トラックの荷待ちの時間
  • 仮眠時間:警報や緊急事態に備えた仮眠の時間(特に警備や医療従事者など)
  • 研修:会社からの指示で参加した研修

1-2:賃金からみる基準

賃金から見るブラック企業の基準として、次の5つを解説します。

  • 給料や残業代が支払われない
  • 労働契約書や就労規則にはない給料の減額がある
  • 不明確な給料明細からの天引き
  • 業績や売上は上昇しているのに昇給がない
  • 賞与が年齢と共に減少する

労働の対価に賃金は見合っているのか、法律的な観点からブラック企業の違法性をみていきましょう。

1-2-1:給料や残業代が支払われない

いくら働いても、給料や残業代に反映されないと、モチベーションは下がります。

過去にも、給料や残業代に関する事例は数多くあり、以下の3つに分類することができます。

1.定期賃金の未払い
給料の全部、もしくは一部が未払いというケースは最も悪質といえます。もしあなたも給料が未払いになっていたら、一刻も早く行動を起こす必要があります。

2.給料が最低賃金以下
あなたの基礎時給を算出してみましょう。
給料が月給の場合は、その給料を「170時間」で割った金額が、だいたいの基礎時給になります。

例)給料15万円だった場合

給料15万円÷170時間=882円/基礎時給

この例の会社が東京都にあった場合、東京都の最低賃金1,072円(令和4年10月1日現在)を下回りますので違法です。

3.残業代の未払い
残業代を残業手当などの「みなし残業代(固定残業代)」で払っていたが、それが残業した時間に見合っていなかったというものです。

※みなし残業代(固定残業代)については、詳しくは次の記事で解説しています。

ブラック企業の7つの手口!違法に働かされた時の対処法を弁護士が解説

1-2-2:労働契約書や就労規則にはない給料の減額がある

「今月ノルマ未達成だった社員は、給料を半額にする!」

こんな横暴なやり方で従業員をやる気にさせようとしても、まったくやる気になりません。

契約書は会社と従業員とで約束したものですから、この約束を破って会社が勝手に給料を下げることは契約違反です。

「給料減額に同意します」という書類にサインを書くよう上司に求められても、書類にサインをする義務はありません。

仮に同意しても、給料が減額された結果として、時給換算で最低賃金を割っているような場合は無効となります。

また、会社の就業規則や労働協約に反した給与減額の合意も無効となります。

1-2-3:不明確な給料明細からの天引き

給料明細を見ると、総支給額からいろいろな項目で天引きが行われていると思います。

法律で定められている以下一部の費用に関しては、従業員の了解を得なくても、給料から天引きできます。

  • 税金(所得税、住民税)
  • 社会保険料
  • 雇用保険料

しかし、上記以外のものを一方的に天引きすることは許されません。

例えば、以下のようなものが、あなたの同意なしに天引きされていたら違法の可能性が高いです。

  • 旅行の積立費
  • 親睦会費
  • 業務上必要な事務手数料や研修費用
  • 業務上のミスで生じた損害
  • 遅刻、無断欠勤などの罰金

一方的に給料が天引きされている場合、未払い分の賃金についても返還を求めることができます。

1-2-4:業績や売上は上昇しているのに昇給がない

勤続年数を重ね自身の能力も上がり、会社の業績も上がっているのに昇給がないという場合は、ブラック企業である可能性があります。

毎月同じ金額を従業員に払い続けるだけで利益が上がっていくなら、会社側としてはこれほど良いことはありません。

一般的に、成果主義の会社でも、勤続年数が増すごとに平均年収は増える傾向にあります。

1-2-5:賞与が年齢と共に減少する

あるケースでは、若い従業員を囲い育てるために、50代以上の従業員に対し賞与のカット、給与の減額をして、若年層の昇給に回すと言った手法を取るブラック企業もあるといいます。

再就職が難しいとされる年代の従業員をターゲットにするこうした手口も、ブラック企業ならではのやり方といえます。

昇給や賞与についてどのような規定があるのか、契約書や労働規約を確認する必要があります。

1-3:人事関係にみる基準

人事関係に見るブラック企業の基準として、次の5つを解説します。

  • 名ばかり管理職にする
  • 男女間の評価が不公平
  • 大量採用・大量離職
  • 不当解雇が横行している
  • 退職させてくれない

これまで納得のいかなかった会社の理不尽な対応が、もしかすると違法かもしれませんよ。

1-3-1:名ばかり管理職にする

法律上、「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)にあたる人は、残業代を払わなくて良いと定められています。

また、管理監督者として認められるには、いくつかのルールがあり、役職がついているだけでは、管理監督者とは認められません。

このように、管理監督者として認められない人のことを、「名ばかり管理職」と呼ぶこともあります。

ブラック企業は、ほとんど一般社員と変わらない従業員に対し、「店長」や「課長」「部長」という役職をつけることで、管理監督者のように見せかけて残業代を払わないのです。

もし、あなたが「名ばかり管理職」であり、会社から残業代が払われていない場合は、過去3年までさかのぼり、未払いの残業代を支払ってもらえる可能性があります。

詳しくは、次の記事で解説しています。

役職手当があっても残業代は請求できる!計算・請求方法を弁護士が解説

1-3-2:男女間の評価が不公平

「上司から女性であることを理由に疎まれ、男性社員だけ優遇されている」

一概には言えませんが、上記のような不当な扱いも、違法である可能性があります。

法律では、賃金や労働時間、その他の労働条件について、男女間で差別的扱いはしてはならないという決まりがあります。

会社によっては、役割に応じて給料の額が設定されたり、貢献度に伴い賞与が支給されたりといったケースもあるため、すべてにおいて均衡を保つのは難しいのが実情です。

しかし、明らかに不平等を感じるような待遇であれば、違法である可能性を疑ってもいいでしょう。

そのような場合は、立証できる下記の証拠を集めておくことをおすすめします。

  • ボイスレコーダーによる録音
  • メールの文章やメモ
  • 部署異動の通達等
  • 日記や業務日報

また、会社によっては、個人ではなく会社ぐるみで従業員に不当な扱いを横行することもあるため、有事に備えて会社ぐるみで隠ぺいしようとすることがあります。

しかし、それでも証拠があれば、いくら隠ぺいしようとも、不当な扱いがあった事実を証明できます。

1-3-3:大量採用・大量離職

大量採用には、大量離職といった背景を隠していることがあります。

これは、使い捨てを前提に大量に採用し、過酷なノルマと長時間労働で社員を使いつぶすといった、ブラック企業によくあるやり方です。

就職や転職を考える場合は、その会社の「離職率」もチェックする必要があります。

厚生労働省で発表されている雇用動向調査結果等も参考にしてみてください。

参照)
https://www.gov-base.info/2022/08/31/167461

1-3-4:不当解雇が横行している

従業員には退職の意思がないのに、会社側から一方的に解雇を通告するのは、違法である可能性が高いです。

これを「不当解雇」と言います。

不当解雇には、以下のようなものが挙げられます。

  • 労働者の国籍、信条、社会的身分を理由とした解雇
  • 業務上の負傷や疾病のための療養期間及びその後30日間の解雇
  • 産前産後休暇の期間およびその後30日間の解雇
  • 解雇予告を行わない解雇
  • 解雇予告手当を支払わない即時解雇
  • 労働基準法やそれに基づく命令違反を告発したことを理由とした解雇
  • 労働組合に加入したことなどを理由とする解雇
  • 不当労働行為を労働委員会等に申し立てなどをしたことを理由とする解雇
  • 女性であることを理由とした解雇

あなたが不当に解雇を言い渡されたり、周りに不当に解雇された人がいる場合は、あなたの会社はブラック企業である可能性が高いです。

法律上、会社はそう簡単に従業員を解雇できないことになっています。

1-3-5:退職させてくれない

「退職希望を伝えても、取り合ってもらえない」

会社側にとって、有能な社員に辞められてしまうのは大きな損失です。

しかし、退職は従業員に認められた権利です。

「仕事を辞めたいのに、辞めさせてもらえない」という状況も、ブラック企業ではありがちな事例です。

ただし、退職が即日受理されるというケースは稀です。

一般的には、一か月前とされている会社が多いですが、どのくらい前に退職の意思を伝えれば良いのかは、契約書や就業規則に記載されていますから、お互い気持ち良く事を運ぶためにも、そのルールに従うのが得策でしょう。

たとえ会社が退職を認めない場合でも、退職届(退職願)を提出すれば、法律上、退職したものとみなされることがあります。

1-4:その他の基準

ここまで「労働時間」「賃金」「人事関係」に見るブラック企業の基準を解説してきましたが、それ以外に上げられるのは、次の4つです。

  • 「洗脳」や「自己都合退職」に追い込む
  • セクシャル・ハラスメントの被害
  • 危険な状況で作業させる
  • 労働災害をごまかす

それぞれ解説していきます。

1-4-1:「洗脳」や「自己都合退職」に追い込む

法律では、簡単に従業員を解雇できない決まりになっています。

そのため、ブラック企業は会社に都合の良いように従業員を「洗脳」し、従業員自ら「辞めたい」と言わせるような状況に追い込もうとします。

例えば、人格を否定する言葉を繰り返して従業員を精神的に追い込んだり、とても達成できない目標設定や課題を与えて脅したりといったことを、ブラック企業では行います。

また、うつ病適応障害と診断された従業員に対し、「やっぱり君はうちには合わないんだよ」と言って退職を促すといった事例もあります。

業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与える場合は、法的手段を取ることもできます。

1-4-2:セクシャル・ハラスメントの被害

セクハラ(セクシュアル・ハラスメント)は、職場における性差別的な要素を含む一切の言動を意味し、会社はセクハラへの対策を法律で義務付けられています。

厚生労働省の指針では、セクハラを次の2つのタイプに分けています。

【対価型セクシュアル・ハラスメント】
職務上の地位を利用して性的な関係を強要し、それを拒否した人に対し減給、降格などの不利益を負わせる行為。

例)
  • 事業主が性的な関係を要求したが拒否されたので解雇する
  • 人事考課などを条件に性的な関係を求める
  • 職場内での性的な発言に対し抗議した者を配置転換する
  • 上司などの立場を利用し部下に性的関係を求める
  • 性的な好みで雇用上の待遇に差をつける など

【環境型セクシュアル・ハラスメント】
性的な関係は要求しないものの、職場内での性的な言動により働く人たちを不快にさせ、職場環境を損なう行為。

例)
  • 性的な話題をしばしば口にする
  • 恋愛経験を執ように尋ねる
  • 宴会で男性に裸踊りを強要する
  • 特に用事もないのに執ようにメールを送る
  • 私生活に関する噂などを意図的に流す など

参照)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html

1-4-3:危険な状況で作業させる

危険な場所や作業における作業者の安全確保対策は、会社で義務付けられています。

もし、以下のような状況下で働かされることがあるなら、ブラック企業の可能性があります。

  • 安全確保が甘い現場で働かされた。
  • 身の危険を感じる状況での仕事がある。
  • 無資格者なのに資格が必要な作業をさせられた。
  • 保護具が必要な現場で、保護具なしで作業させられた。

万が一、事故が起きてからでは遅すぎます。

怪我や病気になる前に、その環境から抜け出すことをおすすめします。

1-4-4:労働災害をごまかす

通勤中や労働時間中、時として思いもよらないアクシデントに見舞われる可能性があります。

たとえば、

  • 職場の食品工場で床が濡れていたため滑って転んで怪我をしてしまった。
  • 製造ラインで手を挟んで怪我をした。
  • 通勤中に自転車で転んで怪我をした。
  • 炎天下の現場で熱中症で倒れて病院に行った。

こうしたケースでは、労災(労働災害)認定がされる可能性があります。

通勤中や職場で怪我をした場合はもちろん、仕事を原因とする病気も、労災が認められる可能性があります。

ここまで、ブラック企業の基準についてご紹介しました。

ぜひ、あなたの勤める会社、あるいは希望する会社が、ブラック企業か否かを判断する際の参考にしてください。

続く2章では、ブラック企業に勤めている場合の対応策をご紹介します。

2章:ブラック企業に勤めている場合の対応策

1章のブラック企業の基準から、現在お勤めの会社がブラック企業だとわかった場合、どのような対応策が望ましいのか、この章でお伝えします。

くれぐれもブラック企業の策略にハマり、泣き寝入り等にならないように、気を強く持ち対策を行いましょう。

2-1:現状の改善要求をしたい

現状ある不満さえなくなれば現在の会社に勤め続けたい、あるいは、転職活動をするくらいなら現状に留まりたいという場合は、改善要求をする必要があります。

その場合は、労働組合労働局に相談しましょう。

もし、社内に労働組合がない場合は、個人で入ることのできる社外の労働組合を利用することもできます。

また、労働局では労働者からの相談によって会社を調査することも可能です。

調査によってブラック企業であると判断された場合は、労働基準監督署から指導が入ることになるので、会社は改善を余儀なくされます。

2-2:残業代などお金がほしい

職場の現状改善ではなく、金銭的な部分で解決を図る場合は、あなたにとって有益な証拠と情報を入手する必要があります。

証拠がない場合は、これまでのブラック企業の行為は、「なかったもの」とされてしまいます。

証拠は退職後に収集可能なものもありますが、ほとんどは退職前でないと収集することが困難なものばかりです。

また、たとえ今すぐに会社に対して行動を起こすつもりがなくても、いざ行動を起こそうと決心した時にすでに退職していた場合、証拠不十分となり、あなたにとってかなり不利な結果になる可能性が高いと考えられます。

ですから、従業員である今、できるだけ多くの証拠集めを始めましょう。

入手しておきたい証拠はコチラです。

  1. 契約書・就業規則・賃金規程の写し
  2. 給料明細
  3. タイムカードの写し
  4. 日報
  5. 業務メールのコピー
  6. シフト表

必要となる証拠は、訴えたい内容によっても異なります。

他にも、各種契約書、通知書、更新書、辞令や社内報、会社からの郵便物など、会社や仕事に関する書面は取っておくと有力な証拠になるかもしれません。

2-3:スムーズに退職・転職したい

このままブラック企業に勤め続けることが望ましくないことは、あなたが一番よく分かっているはずです。

とはいえ、辞めたところで今よりも条件の良い会社に就職できるとは限らないのは事実です。

あなたの置かれる状況にもよりますが、多くの場合は、収入面なども考慮して、現在の職場で働きながら転職活動を始めるのが妥当でしょう。

もし、今すぐ辞められる状況であれば、退職を見据えて、未払い分の残業代の請求や有休の消化、退職金の請求など、あなたにとって不利益とならないように綿密な計画を立ててから辞めた方が得策と言えます。

2-4:専門機関を利用したい

現在もお勤めされている場合は、あなたの会社での立場や状況によっては、会社と直接交渉するのは難しいかもしれません。

その場合は、ブラック企業や労働問題に強い専門家に相談することをおすすめします。

NPO法人やユニオン(労働組合)などさまざまな相談機関はありますが、法律のプロである弁護士であれば、最も強力な味方になってくれます。

また、厚生労働省では労働相談窓口もありますので、そういった機関をまずは利用してみるのもいいかもしれません。

参照)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/mail_madoguchi.html

2章では、現在もブラック企業にお勤めされている方の対応策をご紹介しました。

続く3章では、これから就職・転職を考えるにあたり、どのようにブラック企業を見抜いたらいいのかを解説します。

3章:これから就職・転職するためのブラック企業を見抜くポイント

これから就職・転職をする際には、どうやってブラック企業を見抜けばいいのでしょうか。

3章では、ブラック企業を見抜くポイントを解説します。

3-1:求人票をチェックする

★ポイント1:常に求人を掛けている
インターネットで定期的に検索してみる。

★ポイント2:メリットばかりが大々的に提示されている
給与が高い、福利厚生や社内環境が充実しているなど、好条件ばかり並べているものの、具体的な内容が不明確な会社も注意が必要です。

「残業はまったくない」という会社より、「多少の残業あり」と正直に打ち明けているような、人材が欲しいからこそ嘘を書かずに真実だけを書いている会社の方が、信用度が高いともいえます。

★ポイント3:経歴や職歴を問わない
「未経験者大歓迎!」「やる気がある方」「将来独立したい方」といったフレーズを、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
このような、経歴や職歴を問わない会社が必ずブラック企業であるとは一概に言えませんが、精神論を全面に出し、応募者の個性を一切を問わない会社は「誰でも良い」と言っているのと同じです。

誰でも良いから頭数を揃えようとするのは、従業員を消耗品のごとく働かせようとする、ブラック企業のやり方だと言えます。

★ポイント4:時間外労働に関する明確な規定がない
きちんとした規定がある会社は、時間外労働に対価を支払う意識のある会社です。

逆に言うと、きちんとした規定を設けていない会社は、そもそも残業代を支払う意思がない可能性があります。

特に、新入社員に対して、根拠のない「みなし残業代」や「裁量労働制」をうたう場合は、無償で働くだけ働かせようという会社側の目論見が感じられます。

★ポイント5:仕事内容が不明確
「飛び込み営業」を「企画営業」「ソリューション営業」と称したり、クレーム対応を「カスタマーサポート」「ヘルプデスク」等と書き換えて提示する会社があります。

曖昧な表現で業務内容を記載している場合も、ブラック企業を疑った方がいいかもしれません。

3-2:面接でチェックする

★ポイント1:質問内容がズレている
本来面接では、自分の強みや転職動機、将来設計といった内容を質問されるものですが、自社の自慢や「一緒に働こう」といった勧誘行為がメインとなる場合は、警戒心を持った方が良さそうです。

★ポイント2:その場で内定、その場でサインはNG
人事担当者に内定者を決める権限があったとしても、社長なり専務なりの最終的な決済を取らなければ内定が出ることはありません。

その場で内定を出すのは、判断する時間を与えずあなたを拘束するためである可能性があります。

従業員を使い捨ての駒としか考えていないブラック企業では、よくあるやり方です。

また、面接時に内定承諾書にサインをするよう迫ってきても全力で拒否しましょう。

「サインを書かなければ部屋から出さない」等脅された場合は、監禁罪という刑法犯罪で訴えることもできます。

★ポイント3:「いつから来られる?」と聞かれる
募集要項には採用日が記載されているはずです。それを無視してすぐにでも入社して欲しいと望むのは、人手不足=辞める人が多い可能性があります。
即日入社を望まれる場合も、注意が必要でしょう。

★ポイント4:試験官の様子や社内の雰囲気が異様
会社の顔として試験官も面接に臨んでいるはずですから、試験官の顔色が妙に悪かったり、疲労感がにじみ出ていたりする場合は、何らかの原因があると考えてもいいかもしれません。

また、社内の様子も覗けるのであれば、他の社員の働く姿や壁などに貼られている成績表、ノルマ達成表、社訓等にも目を向けておくと、その会社の実態が見えてくるでしょう。

3-3:見聞きして情報を集める

★ポイント1:夜遅くや定休日に電話をかける
サービス残業などをチェックしたい場合は、夜遅く、あるいは定休日に電話をかけてみるのも1つの手です。
それでも不安な場合は、直接足を運び、会社に明かりがついているかを確認してみてもいいでしょう。

★ポイント2:インターネット等の口コミを見る
インターネットの情報が全てではありませんし、必ずしも真実とは言えませんが、やはり評判の良くない会社には、何かがあると思って間違いないでしょう。

他にも、厚生労働省では、長時間労働や賃金不払いなど労働関係法令に違反した疑いで送検された企業などの一覧を作成し、公式サイトで公表しています。

参照)
https://www.mhlw.go.jp/kinkyu/151106.html

ただし、情報の真偽と必要性を、取捨選択することも大事です。

続く4章では、ここまで解説してきたブラック企業の基準や対応策を踏まえたうえで、転職を目指すホワイト企業の特徴をご紹介します。

4章:ホワイト企業の4つの特徴

ここまで、ブラック企業の基準について解説してきましたが、この章では、ホワイト企業の特徴について解説していきます。

ホワイト企業とは、簡単に言うと「法令を遵守し、労働者が働きやすい会社」だといえます。

ホワイト企業の特徴は、次の5つです。

  • 離職率が低い
  • 福利厚生が充実している
  • 残業時間が少ない
  • 基本給が高く明確な評価制度がある

それぞれ解説していきます。

ホワイト企業の特徴をしっかり理解して、より労働環境の良い会社に転職できるように心がけてください。

4-1:離職率が低い

ホワイト企業は、社員が働きやすい環境を整えているため、離職率が低いという特徴があります。

離職率が低い企業は、社員の勤続年数も長くなるため、20代から50代まで社員の年齢層の偏りが少なくなります。

そのため、仕事のノウハウや専門技術が継承され、会社の実績にも好影響を与えることができます。

「就職四季報」には、各企業の「新卒入社3年後離職率」というデータが記載されており、業種によって異なりますが、その平均はおおむね30%程度とされています。

4-2:福利厚生が充実している

ホワイト企業は、福利厚生が充実していることも特徴です。

福利厚生には、雇用保険や健康保険・厚生年金保険などの法律で義務付けられている「法定福利厚生」と、企業が任意で提供する「法定外福利厚生」があります。

法定外福利厚生は、企業によって内容が異なりますが、その充実度によって社員の働きやすい環境が整えられます。

法定外福利厚生としては、次のようなものがあげられます。

  • 住宅手当
  • 通勤手当
  • 健康診断補助
  • 社員食堂
  • 育児手当
  • 産前産後休暇・育児休暇・介護休暇
  • 託児施設
  • 資格取得費

4-3:残業時間が少ない

ホワイト企業は、残業時間が少ないことも大きな特徴といえます。

一般的には、月の残業時間が20時間以下の場合は、残業時間が少ないといえます。

ホワイト企業では、常に仕事の効率化を図り業務内容を見直したりシステム化するなど、無駄な残業が生じないように取り組んでいます。

残業をせず定時で上がることが当たり前になることで、社員の意識や働き方も変わり、自分の時間を楽しむ余裕も生まれるため、より仕事に集中できる環境になります。

4-4:基本給が高く明確な評価制度がある

ホワイト企業は、基本給が高く、社員の働きが適切に評価される明確な評価制度がある、ことも特徴といえます。

基本給の高さは、企業の業績が良く安定していて、その成果が社員に還元されている証となります。

また、明確で公正な評価制度によって、社員それぞれの会社への貢献度が評価されることで、社員のモチベーションも上がり、会社への信頼度が増し離職率も下げることができます。

適正な労働時間で高い利益を生み、社員に対して適切に還元されていることが、ホワイト企業の特徴だといえます。

ここまで解説してきたブラック企業の基準や対応策を知り、目指すべきホワイト企業の特徴をよく理解して、より良い転職先が見つかるように行動をしてください。

まとめ:ブラック企業を見分ける基準

この記事では、

◎ブラック企業の基準がわかるパターン別の特徴

【労働時間から見る基準】
  • 残業時間が月に80時間を超える
  • 最低で53日間の休日がない
  • 休憩時間がない
  • 始業前、退社後など時間外の強制拘束がある
  • 労働時間と認められない労働がある
【賃金から見る基準】
  • 給料や残業代が支払われない
  • 契約書や就労規則にはない給料の減額がある
  • 不明確な給料明細からの天引き
  • 業績や売上は上昇しているのに昇給がない・賞与が年齢と共に減少する
【人事関係に見る基準】
  • 名ばかり管理職にする
  • 評価が不公平
  • 大量採用・大量離職
  • 不当解雇
  • 退職させてくれない
【その他の基準】
  • 「洗脳」や「自己都合退職」に追い込む
  • セクシャル・ハラスメントの被害
  • 危険な状況で作業させる
  • 労働災害をごまかす
◎ブラック企業に勤めている場合の対応策
  • 証拠集めをする
  • 転職活動を始める
  • 専門家に相談する
◎これから就職・転職するためのブラック企業を見抜くポイント
  • 求人票をチェックする
  • 見聞きして情報を集める

を解説しました。

長時間労働、残業代未払い、セクハラや不当解雇など、ブラック企業は従業員を社畜として飼い慣らし、会社にとって都合良く働かせ続けようとします。

たとえすぐに退職できなくても、あるいは退職後に権利を主張したくなったときも、きちんと証拠集めをしておけば、いざというときにあなたの強い味方になってくれます。

また、これから就職・転職を考える際も、明確なブラック企業の判断基準や、ホワイト企業の特徴をしっかり理解しておけば安心です。

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