【不倫慰謝料の時効】4つの止める方法と、時効が過ぎたときの対処法


この記事を読んで理解できること
- 不倫の慰謝料の時効は3年または20年
- 時効を止める4つの方法
- 時効が過ぎたときの対処法
- 時効が過ぎないための3つの注意点
- Q&A ー 不倫の慰謝料の時効
あなたは、
- 不倫の慰謝料請求の時効が知りたい
- 不倫の慰謝料請求の時効を止める方法は?
- 時効が過ぎたときの対処法が知りたい
などとお考えではありませんか?
不倫による慰謝料請求権には、2種類の時効があります。
■不倫の慰謝料請求権の時効
- 不貞行為の事実と不倫相手を知ってから3年間
- 不貞行為があった時から20年間
いずれかの期間を過ぎてしまうと、時効が完成し不倫の慰謝料を請求できなくなります。
そのため、不倫の慰謝料を請求する場合は、不倫が発覚、もしくは不倫相手が判明してから3年以内に慰謝料請求の手続きを始める必要があります。
そこでこの記事では、
- 不倫の時効に関する詳しい基準や期間
- 慰謝料請求するために時効を止める方法
- 時効期間3年が経過した場合の対処法
について解説します。
さらに、早めに慰謝料請求を始めるべき理由とその方法についても解説します。
しっかり読んで、時効によって不倫の慰謝料請求ができない、といった状況にならないように行動をはじめましょう。
目次
1章:不倫の慰謝料の時効は3年または20年
民法では、不倫の慰謝料請求権の時効は3年または20年と定められています。
(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。
と規定しています。
- 配偶者の不貞行為および不倫相手を知ったときから3年間
- 不貞行為があったときから20年間
以上それぞれの時効と、不倫の慰謝料請求の時効の起算日について説明します。
1-1:配偶者の不貞行為および不倫相手を知ったときから3年間
不倫の慰謝料請求権の時効の1つ目は、不貞行為と不倫相手を知った時から3年間です。
3年の起算日の「知った時」は、以下の2つの要件を満たす必要があります。
- 不貞行為の事実を明確に認識できた時点
- 写真や動画で不貞行為が確認できた
- メールやLINEのやりとりから不貞行為が明らかになった
- 配偶者が不貞行為を認めた
- 信頼できる第三者から具体的な証言を得た
- 不倫相手に関する情報を把握できた時点
- 不倫相手の氏名が判明した
- 有効な連絡手段が確保できた
- 住所や連絡先を特定できた
- 勤務先などの所在を確認できた
継続的な不貞行為の場合の起算日は、以下のとおりです。
- 最後の不貞行為の日が起算日
- 途中で発覚しても最終日から計算
- 複数の不倫相手は個別に起算日を判断
- 不貞行為の継続性の立証が重要
重要なのは、単なるうわさや疑いの段階では、まだ時効は進行しないという点です。
例えば、配偶者の様子がおかしいと感じたり、周囲からうわさを聞いたりしただけでは、時効の起算日とはいえません。
また、以下2点にも配慮しましょう。
①慰謝料請求には不倫相手の特定が必須
請求に必要となる、相手の基本情報を把握できてはじめて、時効の起算日といえます。
②継続的な不貞行為の場合
関係が完全に終了した時点から時効が進行しますが、終了の時期について争いになるケースも多いです。
1-2:不貞行為があったときから20年間
不倫の慰謝料請求権の時効の2つ目は、不貞行為があった時から20年間です。
長期時効の特徴は、被害者の認識を問わず、客観的な事実の発生時から進行する点です。
■20年の時効の重要なポイント
- 不貞行為の発生時期
- 1回限りの不貞行為は、発生日から起算
- 継続的な不貞行為は、最後の行為の日から起算
- 複数回の不貞行為は、それぞれの行為ごとに個別計算
不貞行為の証拠と慰謝料請求権の時効との関係は、以下のとおりです。
- 20年経過後は、明確な証拠があっても請求できない
- 時効完成前であれば、事後的な証拠収集も有効
3年または20年いずれの時効の場合も、証拠保全の重要性は変わりません。
2章:時効を止める4つの方法
時効の完成を防ぐ方法としては、以下の4つがあります。
- 内証証明郵便で慰謝料請求する
- 裁判所を利用して慰謝料請求する
- 慰謝料について話し合うことに合意する
- 不倫相手に慰謝料の支払いを認めさせる
それぞれの方法には特徴があり、状況に応じて適切な方法を選択する必要があります。
2-1:①内容証明郵便で慰謝料請求する
時効の完成を防ぐ方法の1つ目は、内容証明郵便で慰謝料請求する方法です。
内容証明郵便による請求は、時効を猶予してもらう最も一般的な方法です。
■内容証明郵便作成の重要なポイント
- 内容証明郵便の文面を作成(弁護士に依頼するのが望ましい)
- 郵便局で配達証明付き内容証明として発送
1.記載すべき内容
- 不倫の事実とその証拠
- 請求する慰謝料の金額とその根拠
- 支払期限と支払方法
- 応じない場合の対応(例:法的手段を取る旨)
2.メリット
- 請求の証拠になる
- 感情的になりにくい
- 相手に請求の真剣さが伝わる
3.デメリット
- 郵便代がかかる
- 相手が無視する可能性がある
作成上の注意点は、以下のとおりです。
- 事実関係の正確な記載
- 感情的な表現を避ける
- 脅迫的な文言を使用しない
- 請求の根拠を明確にする
ただし、内容証明郵便の送付による時効の猶予には2つの注意点があります。
①6ヶ月以内に裁判上の請求などの手続きを行わないと消滅する。
効果としては、あくまで時効の完成が6ヶ月猶予されるというものですので、期間を過ぎてしまうと、時効が成立してしまう可能性があります。内容証明郵便を送付した後、相手方の反応を注視し、返信がない場合や、誠実な対応が得られない場合は、次の法的手段に進みましょう。
②内容証明郵便の控えは適切に保管しておく
控えが無いと、時効が猶予されたことが証明できません。その後の交渉や裁判の重要な証拠になりますので、適切に保管しておきましょう。
2-2:②裁判所を利用して慰謝料請求する
時効の完成を防ぐ方法の2つ目は、裁判所を利用して慰謝料請求する方法です。
具体的には、
- 調停の申立て
- 訴訟の提起
が該当します。
■慰謝料請求の調停の申し立て
家庭裁判所に調停を申し立て、第三者(調停委員)を介して話し合いを行います。
調停の申し立てを行うと、調停が終了するまでの間、時効は猶予されます。
調停不成立による終了の場合、終了から6か月間、時効の完成が猶予されます。
調停が成立したときは、時効が10年に更新され、そこから新しく時効期間がカウントされます。
・メリット
- 第三者の介入で冷静な話し合いができる
- 裁判よりも費用が安い(申立手数料は1,200円)
- 非公開で行われるため、プライバシーが守られる
・デメリット
- 相手の同意が必要
- 合意に至らない可能性がある
- 拘束力がないため、合意後も相手が従わない可能性がある
■慰謝料請求の訴訟の提起
訴訟提起による時効猶予は、判決が確定するまで効力が続き、判決が下された場合は、時効は10年に更新されます。
訴訟を提起すると、訴訟が終了するまでの間、時効は猶予されます。
訴訟が取り下げ等によって途中で終了する場合、終了から6か月間、時効の完成が猶予されます。
判決が確定したときは、時効が10年に更新され、そこから新しく時効期間がカウントされます。
(判決で確定した権利の消滅時効)
第百六十九条 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。
2 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。
・メリット
- 法的な強制力がある
- 客観的な判断が得られる
- 支払いを強制執行できる可能性がある
・デメリット
- 費用と時間がかかる(弁護士費用など)
- 精神的負担が大きい
- 判決内容が公開される
訴訟を起こす前に、必ず弁護士に相談することをオススメします。
また、勝訴しても相手に支払能力がない場合は、回収が困難になる可能性があります。
2-3:③慰謝料について話し合うことに合意する
時効の完成を防ぐ方法の3つ目は、時効期間を延長して慰謝料について話し合うことに書面または電磁的記録で合意することです。
当事者間で話し合いによる解決を目指す場合、交渉中は時効の進行を止められます。
■猶予期間
- 合意から1年を経過した時
- 当事者が合意によって定めた協議する期間(1年未満に限る)
- 合意後に当事者の一方が相手方に対して協議を拒絶する旨を書面で通知した時から6ヶ月を経過した時
以上のいずれか短い期間です。
(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)
第百五十一条 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。
一 その合意があった時から一年を経過した時
二 その合意において当事者が協議を行う期間(一年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
三 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から六箇月を経過した時
時効期間を延長する合意は、書面または電磁的記録で合意しないといけないことに注意が必要です。
2-4:④不倫相手に慰謝料の支払いを認めさせる
時効の完成を防ぐ方法の4つ目は、不倫相手に慰謝料の支払いを認めさせることです。
なぜなら、相手が慰謝料の支払いを認めた場合、「債務の承認」と呼ばれ、時効の完成が更新されるからです。
■債務の承認
- 明確な支払約束
相手方が慰謝料の支払義務を認め、具体的な支払いを約束することで時効は更新されます。
ただし、「検討する」「相談したい」といった曖昧な表現では、当然には債務の承認とはみなされません。
- 一部支払いによる承認
実際に慰謝料の一部が支払われた場合は、債務の承認となり、その時点で時効は更新されます。
この場合、領収書の保管や振込記録の保存が重要な証拠といえます。
- 承認の方式
債務の承認は、書面による必要はありませんが、後日の立証のため、できるだけ書面化することが望ましいです。示談書や誓約書の形で作成すれば、より確実です。
示談書や誓約書に記載する主な内容は、以下のとおりです。
- 不貞行為の事実の確認
- 具体的な支払金額
- 支払方法と期限
- 分割払いの場合は支払計画
3章:時効が過ぎたときの対処法
時効が完成したと思われる場合でも、いくつかの対応方法があります。
- 時効が完成しているか確認する
- 加害者が時効を「援用」しなければ請求する
- 離婚する場合、離婚慰謝料を請求する
それぞれ慎重に状況を確認し、適切な対策を講じることが重要です。
3-1:時効が完成しているか確認する
時効が過ぎたときの対処法の1つ目は、時効が完成しているか確認することです。
時効の完成を判断する際は、以下の点を慎重に確認する必要があります。
- 起算日の特定
不貞行為と不倫相手の両方を知った時点が起算日といえます。
単なる疑いやうわさの段階は起算日とはいえないため、具体的にいつ確実な認識を得たのかを、証拠に基づいて確認します。
- 時効完成猶予・更新事由の有無
これまでの経緯の中で、時効の完成が猶予されたり、更新されるような行為があったかどうかを確認します。
内容証明郵便の送付や、話し合いの合意など、時効完成猶予・更新の効果が生じた可能性のある行為を洗い出します。
- 継続的不貞行為の場合
不貞行為が継続していた場合、最後の行為の時点から時効が進行します。
途中で認識していても、その後も継続していた場合は、最終日が起算日の可能性があります。
3-2:加害者が時効を「援用」しなければ請求する
時効が過ぎたときの対処法の2つ目は、加害者が時効を「援用」しなければ請求することです。
援用とは、加害者が請求者に対して、
「消滅時効が完成しているので債務を支払いません」
という意思表示をすることです。
つまり、時効期間が経過しても、慰謝料請求権が自動的に消滅するわけではなく、請求される側の人が時効を「援用」してはじめて請求権が消滅するからです。
■時効の援用がない場合の対応
- 通常通り請求を行う
相手方が時効を援用しない可能性もあるため、まずは請求を試みることが賢明です。
- 示談交渉を進める
時効完成を知りながらも、道義的な観点から支払いに応じる場合もあります。
特に、不倫による精神的苦痛は重大であり、社会的な非難を避けたい相手方は、時効を援用せずに解決を図ることもあります。
3-3:離婚する場合、離婚慰謝料を請求する
時効が過ぎたときの対処法の3つ目は、離婚する場合は、離婚慰謝料を請求することです。
なぜなら、不貞行為による慰謝料請求権が時効により消滅しても、離婚に伴う慰謝料請求は別個の権利として認められているからです。
■離婚慰謝料
- 離婚慰謝料の特徴
離婚慰謝料は、不貞行為による慰謝料とは異なる性質を持ちます。
婚姻関係の破綻による精神的苦痛に対する賠償であり、破綻の原因となった不貞行為も慰謝料額の算定において考慮されます。
- 離婚慰謝料の請求方法
- 協議離婚の場合:離婚届提出前に慰謝料について合意する
- 調停離婚の場合:調停条項に慰謝料の支払いを明記する
- 裁判離婚の場合:離婚請求と共に慰謝料も請求する
- 離婚慰謝料の時効
離婚慰謝料請求権は、「離婚した日から3年間」新たに発生する権利です。
そのため、不貞行為による慰謝料請求権が時効消滅していても、離婚慰謝料としての請求が可能な場合があります。
4章:時効が過ぎないための3つの注意点
時効が過ぎないための3つの注意点として、次の3つがあります。
- 不倫の証拠を早めに集める
- 不倫が発覚したらすぐに請求する
- 早めに弁護士に依頼する
それぞれ説明します。
4-1:不倫の証拠を早めに集める
時効が過ぎないための注意点の1つ目は、不倫の証拠を早めに集めることです。
不倫問題では、証拠の確保が極めて重要です。
時効の進行を考える上でも、不貞行為が発覚した時期を明確にするため、証拠の収集と保全が必要です。
- 証拠収集のポイント
- 写真や動画は日時データを含めて保存
- メールやLINEは画面キャプチャーだけでなくバックアップを取る
- ホテルの領収書や交通機関の利用記録も保管
- 紙の証拠は原本を保管し、コピーを活用
- 証拠の入手日時や経緯を記録
- 違法な証拠収集の禁止
証拠収集の際は、以下の行為に気をつける必要があります。
- 無断でのGPS装置の設置
- 私的な尾行・張り込み
- 不正アクセスによる情報収集
- 盗聴や隠し撮り
4-2:不倫が発覚したらすぐに請求する
時効が過ぎないための注意点の2つ目は、不倫が発覚したらすぐに慰謝料を請求することです。
不倫が発覚した場合、感情的な混乱から行動が遅れがちですが、時効との関係では迅速な対応が重要です。
- 発覚直後の対応
まず、不貞行為の事実と日時を記録に残します。
発覚の状況や、認識するに至った経緯を具体的に書き留めておくことで、後日の時効起算日の立証に役立ちます。
- 請求までの手順
- 証拠の整理と保全を行う
- 配偶者や不倫相手の情報を確認
- 請求額の検討
- 請求方法の選択(内容証明郵便、調停、提訴など)
- 注意すべき点
早急な請求が重要ですが、感情的な行動は避けるべきです。
怒りや悲しみから相手を追い詰めすぎると、かえって解決を遠ざける結果になりがちです。
4-3:早めに弁護士に依頼する
時効が過ぎないための注意点の3つ目は、早めに弁護士に依頼することです。
弁護士への相談は、時効に気をつける点からも重要です。
弁護士は時効に関する専門的知識を持ち、適切な時期に必要な法的手続きを行えます。
- 弁護士への早期相談のメリット
- 時効管理を適切に行える
- 証拠収集の方法について助言を得られる
- 請求額の適正な算定が可能
- 法的手続きの選択を誤らない
弁護士に依頼した場合、弁護士費用は必要ですが、不倫問題の解決が見込めることと、時効に気づかず請求権を失うリスクを考えれば、弁護士への依頼は有益な投資といえます。
5章:Q&A ー 不倫の慰謝料の時効
ここで、不倫の慰謝料の時効に関する質問について説明します。
5-1:Q1.配偶者の不倫を5年前に知りましたが、今も続いていたら慰謝料請求できますか?
A:請求できる可能性が高いです。不貞行為が継続している場合、最後の不貞行為の時点から時効が進行するためです。
■具体的な対応方法
- 継続的な不貞行為の立証
- 最近の不貞行為の証拠を収集
- 継続性を示す証拠の保全
- 請求額の算定
継続的な不貞行為の場合、その期間の長さは慰謝料額を増額する要因となります。
5年以上にわたる不貞行為であれば、通常の慰謝料額より高額な請求が認められる可能性があります。
5-2:Q2.配偶者の不倫が原因で2年前に離婚しました。今からでも慰謝料請求できますか?
A:3年の時効期間内であれば、まだ時効は成立していないでしょう。
ただし、離婚時の協議や調停で慰謝料について合意や放棄がなされていないことが条件です。
- 確認すべき事項
- 離婚時の取り決めの内容
- 慰謝料請求権の放棄の有無
- 離婚給付に慰謝料が含まれていないか
離婚から時間が経過していると、証拠が紛失したり記憶が曖昧になったりする可能性があります。
できるだけ早めに弁護士に相談することをオススメします。
まとめ:不倫の慰謝料請求の時効は3年または20年
■不倫による慰謝料請求権の時効
- 不貞行為と不倫相手を知った時から3年間
- 不貞行為があった時から20年間
■時効が過ぎないためのポイント
- 証拠の早期収集と適切な保管
- 時効起算日の明確化
- 必要に応じた時効中断措置
- 専門家への相談と適切な対応
■不倫の慰謝料請求のポイント
- 感情的な判断を避け、冷静な対応を心がける
- 証拠に基づいた適切な請求を行う
- 必要に応じて弁護士に相談する
- 違法な手段による解決は避ける
時効により権利が消滅すると、たとえ明確な証拠があっても不倫の慰謝料を請求できなくなります。
不倫による精神的苦痛に対する正当な賠償を受けるためには、時効の確認はとても大事です。
そのため、早い段階で弁護士に相談し、適切な解決方針を立てることが最も重要です。
不倫問題でお困りの方は、当事務所の無料相談をぜひご活用ください。