不倫した側からは離婚できない?離婚が認められる3つのケースと対処法
この記事を読んで理解できること
- 原則として不倫した側からは離婚できない
- 不倫した側からの離婚が認められる3つのケース
- 3つの条件を満たすことで例外的に離婚が認められたケース
- 不倫した側からの離婚が認められないときの3つの対処法
あなたは、
- 不倫した側からは離婚できない?
- 不倫した側からの離婚が認められるケースが知りたい
- 不倫した側から離婚できない時はどうする?
などとお考えではありませんか?
結論から言うと、不倫した側からの離婚請求は原則として認められないため離婚できません。
不倫した配偶者は、自らの行為によって婚姻関係を破綻させた有責配偶者にあたるからです。
そのため、不倫した配偶者がどんなに離婚したいと思っても、相手が拒否している場合、離婚成立は難しくなります。
しかし、相手が離婚を受け入れるなどの状況によっては、有責配偶者からの離婚請求が認められる場合もあります。
そこでこの記事では、
1章では、原則として不倫した側からは離婚できない
2章では、不倫した側からの離婚が認められる3つのケース
3章では、3つの条件を満たすことで例外的に離婚が認められたケース
4章では、不倫した側からの離婚が認められないときの4つの対処法
について解説します。
この記事を読んで、不倫した側からの離婚が認められるケースや、離婚できる条件などをしっかり理解して、今後の行動に役立ててください。
目次
1章:原則として不倫した側からは離婚できない
不倫した配偶者は、自らの行為によって婚姻関係を破綻させた有責配偶者にあたるため、原則として不倫した側からは離婚できません。
話し合いで相手が離婚に合意しない場合は、一般的には裁判を申し立てますが、裁判においては有責配偶者からの離婚請求は認められないことがほとんどです。
不倫した配偶者の不法行為によって相手にダメージを与えている以上、相手が望まない離婚を求めることは、人道的・社会正義の観点から見ても反すると考えられるからです。
不倫された相手の立場で見れば、婚姻関係を破綻させられたことに加えて、離婚させられるとなれば、さらなるダメージを負うことになります。
裁判所では公平を保つ意味でも、有責配偶者からの離婚請求は認めないのです。
ただし、不倫した側であっても、離婚協議や離婚調停などの話し合いの場を設けることはできます。
2章:不倫した側からの離婚が認められる3つのケース
不倫した側からの離婚が認められるケースとしては、次の3つがあげられます。
- 不倫された側が離婚を受け入れている
- 婚姻関係がすでに破綻している
- 不倫された側にも責任がある
それぞれ解説します。
2-1:不倫された側が離婚を受け入れている
話し合いや離婚調停で、不倫された相手が離婚を受け入れている場合は、不倫した側からの離婚請求であっても離婚が認められます。
離婚は理由に関係なく、お互いが合意すれば成立するからです。
もし、相手と冷静な話し合いができない場合は、夫婦間で話し合うよりも、第三者を入れた離婚調停の方が良いでしょう。
弁護士に相談することも選択肢の1つで、慰謝料や財産分与などを多く渡すなど、相手が納得する条件で交渉することで、離婚に合意してもらえる可能性があります。
2-2:婚姻関係がすでに破綻している
不倫した側の不貞行為が明らかであっても、別の原因で婚姻関係がすでに破綻していた場合は、不倫した側からの離婚請求が認められる可能性があります。
婚姻関係の破綻とは、夫婦に婚姻生活を継続する意思がなく、夫婦関係を回復できる見込みがない状態をいいます。
なおかつ、破綻に至った原因が法定離婚事由にあたる場合は、婚姻関係が破綻していると認められることが多いです。
民法(第770条)では、離婚請求が認められる理由として5つの「法定離婚事由」が定められています。
- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
(民法第770条1項)
例えば、数年にわたる長期間の別居があり、その間も離婚協議をしているなど、すでに婚姻関係が破綻していると認められた場合は、不倫した側からの離婚請求が認められる可能性があります。
2-3:不倫された側にも責任がある
不倫された側にも婚姻関係が破綻する原因がある場合は、不倫した側の離婚請求であっても認められる可能性があります。
裁判では、不倫された側にも法定離婚事由にあたる行為がある場合は、ケースごとに有責行為に至った経緯や有責性の程度が判断されるからです。
例えば、不倫された側に日常的なDV(暴力)や、ギャンブルなどで莫大な借金がある場合は、婚姻を継続し難い重大な事由にあたると認められる可能性があります。
そのため、不倫された側にも有責性があるとして、不倫した側からの離婚請求が認められる場合があります。
3章:3つの条件を満たすことで例外的に離婚が認められたケース
過去の判例では、不倫した側からの離婚請求が例外的に認められたケースがあります。
最高裁の昭和62年9月2日判決では、次の3つの条件を満たすことで、有責配偶者からの離婚請求が認められるとしています。
- ①同居期間と比較して別居期間が長期にわたっている
- ②夫婦の間に未成熟の子どもがいない
- ③配偶者が離婚によって過酷な状況に置かれない
それぞれ解説します。
3-1:①同居期間と比較して別居期間が長期にわたっている
1つ目の条件、同居期間と比較して別居期間が長期にわたっている場合は、婚姻関係がすでに破綻していると認められる可能性が高いです。
たとえば、昭和62年の最高裁判決の場合は、同居期間が約8年に対して、別居期間が約36年と、4倍以上の差があったケースになります。
このように、同居期間よりも別居期間が遥かに長い場合、有責配偶者からの離婚が認められる傾向にあります。
そのため、別居期間に加えて、夫婦の諸事情が総合的に判断されるといえます。
3-2:②夫婦の間に未成熟の子どもがいない
2つ目の条件は、夫婦の間に未成熟の子どもがいない、経済的に自立していない子どもがいないことです。
子どもの具体的な年齢は定められていませんが、成人していても親のサポートが必要な場合は、未成熟の子どもと判断されるため、子どもがどこまで自立しているかも含めて検討されます。
こうした子どもがいない場合は、有責配偶者からの離婚請求が認められる可能性があり、子どもがいたとしても親のサポートの必要性に応じて、離婚が認められる可能性があります。
3-3:③配偶者が離婚によって過酷な状況に置かれない
3つ目の条件は、不倫した有責配偶者本人が、離婚後に一方の配偶者が生活に困らない状況をつくることで、離婚請求が認められるケースがあります。
相手方の状況によっては、離婚することにより、精神的・経済的・社会的にダメージを受ける可能性があるためです。
慰謝料や財産分与などを行い、離婚後の生活を保障できれば、離婚が認められる可能性が高くなります。
これら3つの条件を満たすことで、例外的に離婚請求が認められる場合があります。
4章:不倫した側からの離婚が認められないときの3つの対処法
不倫した側からの離婚が認められないときの対処法として、次の3つがあげられます。
- 慎重に話し合う
- 金銭面や離婚の条件で譲歩する
- 弁護士に相談する
それぞれ解説します。
4-1:慎重に話し合う
不倫した側からの離婚が認められない場合は、相手と離婚について慎重に話し合うことが重要です。
不倫した側の配偶者は、話し合いでは不利な立場になりますが、夫婦の話し合いによる協議離婚を目指しましょう。
夫婦間の話し合いで合意が得られない場合は、調停や裁判に進むことになりますが、有責配偶者からの離婚請求が認められる可能性はかなり低いです。
また、結論が出るまで長期間に及ぶため、精神的な負担や多大な労力と費用が必要になります。
そのため、できるだけ相手の感情を損なわないように、意見や要望を慎重に検討し、話し合いによって離婚の合意が得られるように進めることが重要です。
4-2:金銭面や離婚の条件で譲歩する
不倫した側からの離婚が認められないときの対処法として、慰謝料や財産分与などの金銭面や離婚の条件で、相手が納得できるように譲歩することも重要です。
不倫した側の有責配偶者の場合、原則的に裁判での離婚請求は認められないため、離婚協議や離婚調停などの話し合いの場で相手から離婚の合意を得る必要があります。
そのため、慰謝料や財産分与などの離婚条件で、相手の要求を受け入れたり、相場を上回る慰謝料を提示したりすることで、相手が離婚に応じる可能性が高まるでしょう。
■慰謝料
不倫(不貞行為)は不法行為にあたるため、被害者が受けた精神的苦痛に対する損害賠償として、慰謝料を支払う義務があります。
そのため、相手からの慰謝料請求に応じることで、離婚が成立できる場合も考えられます。
不貞行為が原因で離婚する場合の慰謝料相場は、150万円~300万円程度といわれていますが、不貞行為の期間や回数、婚姻期間の長さ、子どもの有無などによって大きく異なります。
具体的な金額は、交渉次第で減額できる可能性もありますが、不当に高額な請求を避け冷静に交渉するためには、弁護士に依頼することをおすすめします。
■財産分与・養育費
離婚する場合、財産分与をはじめ子どもの親権などを取り決めるのが一般的ですが、有責配偶者だからといってこれらの条件に大きな影響を与えることはありません。
例えば、財産分与は、婚姻期間中の共有財産であり、離婚に対する有責性とは関係がないため、有責配偶者だったとしても、原則として1/2の割合で分けます。
また、子どもがいる場合の親権や養育費も、原則として有責性とは切り離して検討されます。
ただし、財産分与の割合や養育費の金額は、法律で定められているわけではないため、離婚の合意を得るために交渉によって決めることができます。
また、養育費を取り決める際に、もし支払いが滞った場合に強制執行ができる「強制執行認諾文言付公正証書」にすることで、相手の合意が得られる場合もあります。
4-3:弁護士に相談する
不倫した側からの離婚が認められないときの対処法として、前もって弁護士に相談することをおすすめします。
ここまで解説したように、不倫した側からの離婚請求は認められないことが多いため、基本的には話し合いや調停での解決になります。
そこで離婚を成立させるためには、相手の合意が得られる慰謝料や離婚条件を、慎重に交渉する必要があるからです。
弁護士であれば、不倫の状況やこれまでの婚姻関係などそれぞれの事情を聞き、法律・判例の知識や独自の交渉テクニックによって、依頼者に有利となる落としどころを熟知しているからです。
また、弁護士に依頼することで、夫婦間での話し合いが難しい場合でも、交渉に応じてもらえるように慎重に働きかけができます。
まとめ:不倫した側からは離婚できないときの対処法
■不倫した配偶者は、自らの行為によって婚姻関係を破綻させた有責配偶者にあたるため、原則として不倫した側からは離婚できません。
■不倫した側からの離婚が認められるケース
- 不倫された側が離婚を受け入れている
- 婚姻関係がすでに破綻している
- 不倫された側にも責任がある
■3つの条件を満たすことで例外的に離婚が認められたケース
- ①同居期間と比較して別居期間が長期にわたっている
- ②夫婦の間に未成熟の子どもがいない
- ③配偶者が離婚によって過酷な状況に置かれない
■不倫した側からの離婚が認められないときの対処法
- 慎重に話し合う
- 金銭面や離婚の条件で譲歩する
- 弁護士に相談する
不倫した側からの離婚請求は認められないことが多く、基本的には話し合いや調停での解決になるため、できるだけ早めに弁護士に相談することをおすすめします。
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