不倫慰謝料の連帯債務とは?定義や慰謝料請求で失敗しない3つのコツ


この記事を読んで理解できること
- 不倫の慰謝料にまつわる連帯債務とは?
- 不倫の慰謝料の連帯債務と求償権の関係
- 不倫の慰謝料を請求する3つの方法
- 慰謝料請求で失敗しないための3つのポイント
あなたは、
- 不倫の慰謝料の連帯債務について知りたい
- 不倫の慰謝料は連帯債務でも不倫相手だけに請求できる?
- 不倫の慰謝料の連帯債務と求償権の関係が知りたい
などとお考えではありませんか?
不倫の慰謝料は、不倫(不貞行為)を行った配偶者と不倫相手の連帯債務(不真正連帯債務)にあたるため、両方に慰謝料の全額を請求できます。
ただし、配偶者と不倫相手は、それぞれ慰謝料を全額支払う責任を負いますが、原則として両方から二重取りすることはできません。
また、不真正連帯債務の場合は、一方の支払いを免除しても他方の支払い義務は免除されないため、配偶者には請求せず不倫相手に慰謝料の全額を請求できます。
そこでこの記事では、
1章では、不倫の慰謝料にまつわる連帯債務とは?
2章では、不倫の慰謝料の連帯債務と求償権の関係を
3章では、不倫の慰謝料を請求する3つの方法を
4章では、慰謝料請求で失敗しないための3つのポイント
について解説します。
この記事を読んで、不倫の慰謝料の連帯債務の意味をしっかり理解し、慰謝料を請求する際の参考にしてください。
目次
1章:不倫の慰謝料にまつわる連帯債務とは?
不倫の慰謝料にまつわる連帯債務とはなにか、ここでは次の2つの項目をあげていきます。
- 連帯債務とは?不倫の場合は「不真正連帯債務」にあたる
- 不倫した配偶者と不倫相手が慰謝料を負担する割合は原則5:5
それぞれ解説します。
1-1:連帯債務とは?不倫の場合は「不真正連帯債務」にあたる
連帯債務とは、複数の債務者が1つの債務について、それぞれが全額の返済義務を負うことを言います。
不倫の場合は、「不真正連帯債務」にあたるため、一方の支払いを免除しても他方の支払い義務は免除されません。
そのため、配偶者には請求せず、不倫相手だけに慰謝料の全額を請求できます。
また、不倫の慰謝料は、配偶者と不倫相手の両方に対して請求できますが、一方から全額を受け取った場合は、他方には請求できません。
例えば、不倫(不貞行為)の正当な慰謝料が200万円とした場合、不倫相手だけに全額請求することもできますし、それぞれに100万円ずつ請求することもできますが、全額の200万円を超えて受け取ることはできません。
つまり、200万円の範囲内であればそれぞれから受け取る金額はいくらでも構いませんが、双方から200万円ずつ受け取るといった慰謝料の二重取りはできません。
1-2:不倫した配偶者と不倫相手が慰謝料を負担する割合は原則5:5
不倫(不貞行為)を行った配偶者と不倫相手は、共同不法行為者にあたります。
そして、不倫(不貞行為)は対等な二人の意思で行われるのが通常ですので、慰謝料を負担する割合は原則「5:5」となることが多いです。
例えば、不倫(不貞行為)の正当な慰謝料が200万円とした場合、配偶者と不倫相手が負担する慰謝料は、原則としてそれぞれ100万円ずつになります。
ただし、不貞行為に対する責任の度合いやそれぞれの関係性などによって、不倫の慰謝料を負担する割合が判断されます。
例えば、配偶者は不貞行為をしない義務(貞操義務)を負っているので、この義務に違反して不貞行為を行った場合責任が重くなり、「配偶者:不倫相手=6:4」と言った割合になる場合もあります。
また、男性が積極的に不倫を主導し女性に未婚だと偽っていた場合などは、女性側に過失があったとしても男性の責任はより重くなるため、「男性:女性=7:3」といった割合になることもあります。
2章:不倫の慰謝料の連帯債務と求償権の関係
不倫の慰謝料の連帯債務と求償権の関係について、ここでは次の3つの項目をあげていきます。
- 不倫の慰謝料の求償権とは?
- 慰謝料を「請求する側」は求償権を放棄してもらう
- 慰謝料を「請求された側」は求償権を行使できる
それぞれ解説します。
2-1:不倫の慰謝料の求償権とは?
求償権とは、不倫(不貞行為)を行った配偶者と不倫相手のどちらか一方が慰謝料を支払った場合、もう一方の当事者に負担部分を請求できることをいいます。
不倫の慰謝料は不真正連帯債務にあたり、慰謝料を負担する割合は原則「5:5」とされるため、求償権によって慰謝料の半分程度を請求できます。
例えば、不倫(不貞行為)の正当な慰謝料が200万円として不倫相手だけに全額請求した場合、慰謝料200万円を支払った不倫相手は、その半額の100万円程度をもう一人の当事者である配偶者に請求できるわけです。
2-2:慰謝料を「請求する側」は求償権を放棄してもらう
慰謝料を「請求する側」が離婚せず、不倫相手だけに慰謝料を請求する場合は、不倫相手に対して求償権を放棄してもらうという選択肢があります。
被害者は、不倫相手だけに慰謝料を全額請求し支払いを受けても、その後相手から配偶者への求償権を行使された場合、配偶者は責任割合に応じた額を支払う必要があるからです。
例えば、求償権の負担割合が「5:5」で、不倫相手に200万円の不倫慰謝料を請求した場合、一旦、被害者は200万円を受け取りますが、配偶者が100万円の求償を受け支払う必要があるため、夫婦の家計から見ると実質的に得られる慰謝料は100万円になってしまいます。
被害者としては、求償権を行使されると慰謝料が減額される形になるため、離婚しない場合は、慰謝料の交渉に合わせて求償権の放棄を求める場合があります。
また、求償権の放棄を求めることで、慰謝料を受け取った後も、配偶者と不倫相手が求償権の行使で関わり合うことを避けられます。
2-3:求償権の放棄と減額交渉
不倫相手として被害者に慰謝料を「請求された側」は、請求された額の全額を支払わなければならないのが原則ですが、被害者が離婚しない場合は、求償権の放棄を条件に減額交渉できます。
請求された慰謝料、例えば200万円といった金額を一度に支払うのは、大変な負担になります。
後で、被害者の配偶者に対して求償権を行使できますが、支払ってもらえるとは限らないため回収不能となるリスクがあります。
そのため、被害者が離婚しないのであれば、被害者に不倫慰謝料を全額支払った後に、被害者と家計を同じくする配偶者に対して求償権を行使するため、最初から求償する分を差し引いて支払うことを交渉できます。
交渉が成立すれば、求償する手間や回収不能リスクを避けることができますし、なにより高額な慰謝料を減額し不倫関係を一度に解決できるメリットがあります。
なお、求償権の放棄を条件とした減額交渉は、被害者が離婚した場合は、請求者である被害者には関係ないため断られてしまう可能性が高いです。
3章:不倫の慰謝料を請求する3つの方法
不倫の慰謝料を請求する方法は、次の3つです。
- 書面の送付(内容証明郵便)による請求
- 配偶者・不倫相手との話し合いによる請求
- 民事訴訟による請求
それぞれ解説します。
3-1:書面の送付(内容証明郵便)による請求
不倫相手に慰謝料を請求する方法としては、一般的には内容証明郵便で慰謝料請求書を送付します。
内容証明郵便で送付することで、誰が誰に対してどんな内容でいつ送付したのか証明することができるため、慰謝料の支払いを促し言い逃れを防ぐことができます。
さらに、弁護士から慰謝料請求書を送ることで、相手に対してプレッシャーを与えることができます。
内容証明郵便による慰謝料請求書の送付で、不倫相手が支払いに応じた場合は、不倫問題も解決することになります。
3-2:配偶者・不倫相手との話し合いによる請求
配偶者と不倫相手それぞれとの対面による話し合いによって、慰謝料を請求する方法もあります。
配偶者との話し合いによって協議離婚に至る場合は、不貞行為の慰謝料だけでなく離婚条件(その他の慰謝料、財産分与、親権など)を決めて、離婚協議書を作成し公正証書にまとめます。
配偶者との話し合い(協議)がうまくいかなかった場合は、家庭裁判所に離婚の調停を申し立てることができます。
不倫相手との話し合いで、慰謝料の金額や一括・分割などの支払い方法、支払期日が決まり交渉がまとまった場合は、公正証書を作成することをおすすめします。
公正証書(強制執行認諾文言付)にすることによって、相手の支払いが約束に反した場合は、裁判手続きを取ることなく給料や財産を差し押さえできます。
3-3:民事訴訟による請求
配偶者と離婚協議・離婚調停で合意ができない場合は、家庭裁判所に離婚訴訟を起こすことができます。
また、不倫相手との慰謝料交渉によって合意が得られない場合は、民事訴訟によって慰謝料を請求することができます。
裁判所に対して訴状及び証拠等を提出し、配偶者や不倫相手と争うことになりますが、裁判の途中で裁判官のすすめによって和解が成立することも多く、最終的には裁判官の判断によって離婚や慰謝料の金額等が決められます。
民事訴訟の手続きは複雑で、提出する書類等も多いため、手続きをスムーズに進めて、さらに公判を有利に進めるためには、弁護士に依頼することをおすすめします。
4章:慰謝料請求で失敗しないための3つのポイント
慰謝料請求で失敗しないためのポイントは、次の3つです。
- 慰謝料を請求できる条件を確認する
- 不貞行為の証拠を集め証拠に基づいて交渉する
- できるだけ早い段階から弁護士に依頼する
それぞれ解説します。
4-1:慰謝料を請求できる条件を確認する
不貞行為の慰謝料請求で失敗しないためには、慰謝料を請求できる条件を満たしているか確認することが重要です。
なぜなら、不貞行為の慰謝料を請求するためには、不貞行為(肉体関係)の事実を明らかにする証拠や、不倫相手の故意・過失、夫婦関係の状況など、いくつかの条件を満たす必要があるからです。
配偶者や不倫相手に慰謝料を請求できる条件は、次の5つです。
- 配偶者と不倫相手に肉体関係がある
- 不倫相手は既婚者だと知っていた・知ることができた
- もともと夫婦関係は破綻していなかった
- 不倫によって夫婦関係が悪化または破綻した
- 時効が成立していない
配偶者には、不貞行為の証拠によって慰謝料の請求が可能であっても、不倫相手に対しての慰謝料請求では、条件を満たしていない場合は反論され請求を拒否される可能性もあります。
4-2:不貞行為の証拠を集め証拠に基づいて交渉する
不貞行為の慰謝料請求で失敗しないためには、配偶者や不倫相手それぞれとの話し合いの場では、不貞行為を証明する証拠に基づいて冷静に交渉することが重要です。
不倫の写真やその他の不貞行為が推測できる証拠等を検証することによって、不倫相手に不貞行為を認めさせることが大事です。
そのためには、不倫現場の写真や録音データ、配偶者のクレジットカードの利用明細やSuica、PASMOの利用履歴など、不貞行為や配偶者の行動を検証できる十分な証拠を事前に集めておくことが重要です。
不倫の証拠になり得るものとその集め方について、次の記事で詳しく解説しています。
4-3:できるだけ早い段階から弁護士に依頼する
慰謝料請求で失敗しないための一番有効なポイントは、できるだけ早い段階から弁護士に依頼することです。
弁護士に依頼することによって、慰謝料相場や慰謝料請求のためのアドバイスだけでなく、必要な証拠とその集め方、不倫相手との交渉、慰謝料の請求書の作成と送付など、あらゆるサポートを受けることができます。
また、弁護士が交渉を代行することによって、専門的な知識や経験を駆使して適正な慰謝料を得られる可能性が高まります。
さらに、訴訟が必要となった場合は、複雑な手続きを任せられるだけでなく、適切な弁護活動によって妥当な慰謝料を得られる可能性が高まります。
※当事務所(新橋第一法律事務所)では無料相談を受け付けていますので、不倫問題でお悩みの際はぜひご利用ください。
まとめ:不倫の慰謝料にまつわる連帯債務とは?
■連帯債務とは、複数の債務者が1つの債務について、それぞれが全額の返済義務を負うこと。
不倫の場合は、「不真正連帯債務」にあたるため、一方の支払いを免除しても他方の支払い義務は免除されない。
■不真正連帯債務を負った配偶者と不倫相手が、慰謝料を負担する割合は原則「5:5」。
■不貞行為を行った配偶者と不倫相手のどちらか一方が慰謝料を支払った場合、もう一方の当事者に負担部分を請求できる(求償権)。
■慰謝料を「請求する側」と求償権の関係
- 離婚しない場合は求償権を放棄してもらう。
- 離婚する場合は影響ナシ。
■慰謝料を「請求された側」と求償権の関係
- 求償権を行使できる。
- 求償権の放棄を条件に減額交渉できる。
この記事を参考に、不倫の慰謝料の連帯債務と、不真正連帯債務と求償権の関係などをしっかり理解し、後々トラブルにならないようにしましょう。