【不倫の裁判】慰謝料請求で裁判になるケースと、メリットや注意点
この記事を読んで理解できること
- 不倫の慰謝料請求で裁判になる3つのケース
- 不倫裁判で解決する4つのメリット
- 不倫裁判で解決する2つのデメリット
- 不倫裁判の3つの注意点
- 不倫の裁判の流れ
- 不倫問題を弁護士に依頼するメリット
あなたは、
- 不倫の裁判について知りたい
- 不倫の裁判の注意点は?
- 不倫の裁判を弁護士に依頼するメリットが知りたい
などとお考えではありませんか?
不倫による慰謝料請求は、多くは示談交渉によって解決されますが、慰謝料の支払いや金額、条件等で合意できなかった場合は、裁判による解決が必要なケースも少なくありません。
しかし、不倫の慰謝料請求は、できる限り示談での解決を目指すべきです。
なぜなら、裁判に進んだ場合、裁判に勝てば判決によって確実に慰謝料請求が認められるというメリットがある一方で、負ける可能性や時間や費用がかかり心理的負担も大きいというデメリットがあるからです。
この記事の内容をよく読んで、不倫の慰謝料請求で裁判になるケースや、そのメリット・デメリット、注意点をしっかり理解して、今後の行動に役立てて下さい。
目次
1章:不倫の慰謝料請求で裁判になる3つのケース
不倫の慰謝料請求で裁判になるケースは、以下の3つがです。
- 相手が無視をして、話し合いに応じない
- 相手が不倫を否定して、意見の対立がある
- 話し合いでは慰謝料の金額が合意できない
それぞれ説明します。
1-1:相手が無視している、話し合いに応じない
不倫の慰謝料請求で裁判になるケースの1つ目は、相手が無視している、話し合いに応じないというケースです。
最初は謝罪の意向を示していた相手が、具体的な話し合いの段階になると突然態度を変え、連絡が取れなくなるといったケースもあります。
■具体的な状況
- 内容証明郵便への返信がない
- 電話での連絡を完全に遮断される
- SNSやメールでブロックされる
- あらゆる連絡手段が断たれる
さらに住所を転居したり、勤務先への連絡も拒否されたりするケースも少なくありません。
相手方と連絡が取れない状況では、話し合いによる解決は不可能です。
代理人を通じた連絡を試みても完全に無視されたり、「話し合う必要はない」と一方的に通告されたりすることもあります。
■対策
- 裁判所に慰謝料請求の訴訟を起こす
裁判所からの訴状や呼出状が相手方に送達され、出廷義務が発生します。
また、正当な理由なく出廷しない場合は、欠席判決になり、訴状の記載のとおりの事実が認められ、相手方には不利になるというペナルティも存在するため、相手方も真摯な対応を迫られます。
1-2:相手が不倫を否定している、意見の対立がある
不倫の慰謝料請求で裁判になるケースの2つ目は、相手方が不倫の事実(不貞行為)を否定しているケースで、慰謝料請求の話し合いの前に大きな壁に直面してしまいます。
■相手方からよく聞かれる主張
- 誤解である
- 単なる友人関係だった
- 業務上の付き合いに過ぎない
- 他の人には聞かれたくない相談をしていた
- たまたま同じ場所にいただけ
仕事上の関係から私的な関係に発展するケースは多く、境界線が不明確な場合もあります。
しかし、明らかに不適切な関係であったにもかかわらず、全面否定してくるケースも少なくありません。
事実関係の争いがある場合、以下の不倫(不貞行為)の証拠の信用性が問題となります。
- 写真や動画・録音データ
- メールやLINEのやりとり
- ホテルの利用記録
- 目撃者の証言
また、浮気調査の適法性を問題にすることで、証拠の採用自体を争うケースもあります。
1-3:話し合いでは慰謝料の金額が合意できない
不倫の慰謝料請求で裁判になるケースの3つ目は、不倫の事実は認めているものの、慰謝料の金額で合意に至らないケースです。
■具体的な状況
- 相手方が著しく低額な金額しか提示しない
- 支払方法や分割払いの条件で折り合いがつかない
例えば、数十万円程度の提示では、特に長期的な不倫や夫婦間に大きな溝ができてしまったケースでは、合意できるはずがありません。
また、
「収入が少ないので一括では払えない」
「会社の経営が苦しい」
などの理由をつけて、極端に長期の分割払いを主張するケースなどです。
また、慰謝料の金額を決める根拠についても、しばしば意見の対立が生じます。
なぜなら、慰謝料の金額を決めるために考慮すべき要素は、
- 不貞行為の期間や頻度
- 家庭生活への影響度
- 婚姻期間の長さ
- 幼い子どもの有無
など、多岐にわたるからです。
相手方が自己に有利な事情のみを強調し、不利な事実を無視するようなケースでは、適正な金額での合意はとても難しくなります。
当事者間の交渉では、慰謝料を決める要素を客観的に評価することが難しいケースも多いため、裁判所による判断が必要です。
2章:不倫裁判で解決する4つのメリット
不倫の慰謝料請求を裁判で解決するメリットは、以下の4つです。
- 判決によって決着がつく
- 適正な慰謝料額が決められる
- 慰謝料の支払いに応じなければ強制執行できる
- 弁護士費用や遅延損害金をプラスして請求できる
それぞれ説明します。
2-1:判決によって決着がつく
不倫裁判で解決するメリットの1つ目は、判決という形で最終的な決着がつけられることです。
なぜなら、裁判所の判断には法的な強制力があり、当事者は判決に従う義務を負うからです。
また、判決が確定すると、同じ事案について再び争うことはできません。
■判決による解決は、不倫問題において特に有効
裁判所が客観的な立場から判断を下すことで、当事者間の感情的な対立を超えて不倫問題を解決できます。
判決文には判断の根拠が明確に示されるため、双方が結果を受け入れやすくなります。
2-2:適正な慰謝料額が決められる
不倫裁判で解決するメリットの2つ目は、適正な慰謝料額が決められることです。
裁判所は、以下の要素を総合的に判断して慰謝料額を決定します。
- 不貞行為の期間や頻度
- 家庭生活への影響度
- 婚姻期間の長さ
- 幼い子どもの有無
- 反省の程度
- そのほか当事者個別の事情
裁判所の判断は、過去の裁判例や社会通念に基づいた客観的なものです。
慰謝料額の増減に影響を与えるさまざまな要素を、多角的な視点から評価し適切な金額が決められます。
2-3:慰謝料の支払いに応じなければ強制執行できる
不倫裁判で解決するメリットの3つ目は、裁判で判決が確定すると債務名義となるため、慰謝料の支払いに応じなければ強制執行できることです。
強制執行とは、債務者の財産を強制的に差し押さえて、債権の回収を図る制度です。
■強制執行の対象となる財産
- 給与・預貯金
- 現金
- 自動車
- 宝石類・美術品
- 土地や建物など
給与差押えは、一定の範囲内で毎月の給与から確実に回収できる方法として有効です。
また、預貯金の差押えは、すぐに回収できる方法として活用されます。
特に高額の慰謝料請求の場合、宝石や美術品など価値のあるものや、不動産の差押えと競売による回収が検討されます。
2-4:弁護士費用や遅延損害金をプラスして請求できる
不倫裁判で解決するメリットの4つ目は、弁護士費用や遅延損害金をプラスして請求できることです。
裁判では、慰謝料に加えて、以下の費用も請求できます。
- 弁護士費用(慰謝料額の約10%まで)
- 遅延損害金(年3%)
- 調査費用や証拠収集費用(合理的な範囲内)
裁判までの付随的な費用は、示談交渉では認められにくいものですが、裁判では正当な請求として認められるケースがあります。
3章:不倫裁判で解決する2つのデメリット
不倫裁判で解決するデメリットは、以下の2つです。
- 手間や時間がかかる、心理的負担が大きい
- 裁判費用・弁護士費用がかかる
それぞれ説明します。
3-1:手間や時間がかかる、心理的負担が大きい
不倫裁判で解決するデメリットの1つ目は、手間や時間がかかる、心理的負担が大きいことです。
裁判による解決では、一般的な不倫事案であっても、提訴から判決まで6ヶ月から1年程度の期間がかかります。
また、不倫という極めてプライベートな問題が、公の場で明らかにされることへの精神的な負担は小さくありません。
■裁判に関する留意点
- 複数回の期日への出廷が必要
- 仕事との調整が必要
- 証拠の提出が必要
- 法廷での証言が必要なこともある
証拠の収集や提出にも相当の労力が必要です。
写真やメール、LINE等の記録を整理し、証拠として提出できる形に整えなければなりません。
3-2:裁判費用・弁護士費用がかかる
不倫裁判で解決するデメリットの2つ目は、裁判費用・弁護士費用がかかることです。
裁判には、さまざまな費用が必要です。
まず、訴訟を提起する際には訴訟印紙代が必要ですが、金額は請求額に応じて変動します。
■請求額と裁判にかかる主な手数料額
請求額:手数料(収入印紙代)
- 100万円:1万円
- 200万円:1万5000円
- 300万円:2万円
- 500万円:3万円
別に、数千円の郵便切手も納めることが求められます。
金額や組み合わせ等は裁判所によって異なるため、訴える裁判所に連絡をして事前に確認する必要があります。
弁護士費用も、経済的負担としては大きいです。
一般的に、裁判の着手金として20万円から40万円程度、加えて成功報酬として解決金額の一定割合が必要です。
また、証拠を集めるために探偵事務所などに調査を依頼した場合は、調査費用も別途かかります。
4章:不倫裁判の3つの注意点
不倫裁判の注意点として、以下の3つがあります。
- 相場を大きく超えた慰謝料請求は認められないことが多い
- 証拠がなければ慰謝料請求は認められない
- 不倫には時効がある
それぞれ説明します。
4-1:相場を大きく超えた慰謝料請求は認められないケースが多い
不倫裁判の注意点の1つ目は、相場を大きく超えた慰謝料請求は認められないケースが多いことです。
不倫による慰謝料請求には、一定の相場があります。
- 不倫発覚後も夫婦関係は続いている場合:50万円~100万円
- 不倫が原因で別居した場合:100万円~200万円
- 不倫が原因で離婚した場合:150万円~300万円
相場はあくまでも目安であり、個別の事情によって増減します。
しかし、相場を大きく超える金額を請求しても、裁判所によって認められる可能性は低くなります。
ただし、以下のような特殊な事情がある場合には、300万円以上の高額な慰謝料が認められるケースもあります。
- 不倫が長期間にわたって継続している
- 不倫相手に経済的な支援をしている
- 不倫相手に子どもが生まれている
- 不倫の態様が特に悪質な場合
4-2:証拠がなければ慰謝料請求は認められない
不倫裁判の注意点の2つ目は、証拠がなければ慰謝料請求は認められないことです。
不倫の慰謝料請求では、不貞行為について不倫相手に故意または過失があったことを証明する必要があります。
不倫相手が既婚者であることを知っていた、あるいは容易に知り得た状況であったことを立証することが求められるからです。
また、不貞行為の立証においては、具体的な証拠の存在がとても重要です。
いくら不倫の事実があったとしても、単なる親密な関係を超えて肉体関係を裏付ける証拠がなければ、裁判所で請求が認められる可能性は極めて低いからです。
必要となる証拠は、
- 写真や動画・録音データ
- メールやLINEのやりとり
- ホテルの利用記録
- 目撃者の証言
など、不貞行為の存在を立証または推認させるような証拠です。
また、証拠の収集方法も重要な問題です。
違法な手段で入手した証拠は、たとえ決定的な証拠であっても、裁判所で採用されない可能性があります。
4-3:不倫には時効がある
不倫裁判の注意点の3つ目は、不倫による慰謝料請求権には時効があることです。
■不倫の慰謝料請求権の時効
- 不貞行為の事実と不倫相手を知ってから3年間
- 不貞行為があった時から20年間
時効は法律で定められた制度であり、たとえ明確な証拠があったとしても、時効期間を経過してしまうと請求できません。
■時効に関する重要なポイント
- 「不倫の事実を知った時」は、単なる疑いやうわさの段階では起算点とならない
- 不倫相手を知ったとは、名前や住所など慰謝料請求が可能な情報が得られた場合を指す
- 継続的な不倫の場合、最後の不倫行為から起算されることが多い
5章:不倫の裁判の流れ
不倫の慰謝料請求で裁判を起こす流れは、以下のとおりです。
- ①弁護士への相談、契約
- ②訴状郵送
- ③裁判の進行
- ④和解、判決
それぞれ説明します。
5-1:①弁護士への相談、契約
不倫裁判を始めるにあたっては、まず弁護士への相談が重要な第一歩といえます。
■初回相談で確認すべき事項
- 不倫相談の概要
- 証拠の有無や内容の確認
- 勝訴の見込みの検討
- 適切な解決方針の提案
- 費用についての説明
相談の結果、裁判による解決が適切と判断された場合には、弁護士との間で委任契約を締結します。
5-2:②訴状郵送
訴訟を開始するためには、まず訴状を裁判所に提出する必要があります。
■訴状に記載する事項
- 具体的な請求内容、請求金額
- 請求の法的根拠となる事実関係
- 不貞行為の具体的な内容
- 精神的苦痛の内容
- 証拠の概要
訴状が受理されると、裁判所から相手方に訴状が送達され、正式に訴訟が開始されます。
5-3:③裁判の進行
裁判は、第1回期日から以下の順序で進行します。
■裁判の基本的な進行
- 第1回期日で双方の主張の概要を確認
- 争点の整理を実施
- 双方が準備書面を提出
- 主張と証拠を補充
- 必要に応じて証人尋問や本人尋問を実施
準備書面の交換では、双方の主張に対する反論や新たな証拠の提出が行われ、争点が明確化されます。
5-4:④和解、判決
訴訟の過程で、裁判所から和解の勧告されることがあります。
■和解のメリット
- 判決よりも柔軟な解決ができる
- 分割払いの合意が図れる
- 謝罪文の要求など、判決では実現できない内容を含められる
和解が成立しない場合は、判決により事件が終結します。
判決では、提出された証拠や証言に基づいて、裁判所が不貞行為の存否や慰謝料額を決定します。
5-5:不倫した側の裁判の流れ
■【不倫した側】被告として訴えられた場合の流れ
- 訴状の送達を受ける
- 指定された期限以内に答弁書を提出
- 原告の請求に対する認否を記載
- 抗弁(請求の否定や、減額を求める理由)を記載
答弁書提出後は、原告側と同様に準備書面の提出や証拠の提出を行いながら、訴訟を進めていきます。
早い段階での弁護士への相談が推奨されます。
弁護士の助言を得ることで、適切な防御方法を検討できるからです。
6章:不倫問題を弁護士に依頼するメリット
不倫問題を弁護士に依頼するメリットは、以下の3つです。
- 不倫裁判ではなく示談交渉での解決が期待できる
- 適正な慰謝料金額で合意できる
- 裁判になっても任せられる
それぞれ説明します。
6-1:不倫裁判ではなく示談交渉での解決が期待できる
不倫問題を弁護士に依頼するメリットの1つ目は、裁判に進む前の段階で、示談によって解決できる可能性が高まることです。
■弁護士による示談交渉の利点
- 法的な知識と交渉経験を活かした効果的な交渉ができる
- 感情的になりがちな当事者間の直接交渉を避けられる
- 冷静かつ客観的に交渉を進められる
- 法的な根拠を示すことによる心理的プレッシャーを与えられる
弁護士による交渉によって、裁判による解決よりも迅速かつ適確に不倫問題を解決できるケースが多くあります。
6-2:適正な慰謝料金額で合意できる
不倫問題を弁護士に依頼するメリットの2つ目は、適正な慰謝料金額で合意できることです。
弁護士は、豊富な実務経験と判例の知識に基づいて、適正な慰謝料額を見極められます。
また、不当に低額な提示を受けた場合、金額の不当性を指摘し、適正な金額への増額を求めます。
弁護士であれば、当事者の個別事情を適切に反映した金額での合意を導き出せます。
6-3:裁判になっても任せられる
不倫問題を弁護士に依頼するメリットの3つ目は、裁判になっても任せられることです。
示談交渉が不調に終わり、裁判に進むことになった場合でも、同じ弁護士に継続して依頼できます。
■弁護士による裁判対応
- 訴状の作成
- 証拠の収集・提出
- 期日への出席・主張立証
- 和解による解決の模索
示談交渉の段階から事案を把握している弁護士が担当することで、スムーズな訴訟対応が見込めます。
また、訴訟の過程でも和解による解決の可能性を模索し、依頼者にとって最適な解決方法を選択できます。
まとめ:不倫の慰謝料請求で裁判になるケースと、メリットや注意点
不倫による慰謝料請求は、できる限り示談での解決を目指すべきですが、相手方の対応によっては裁判による解決が必要です。
■裁判による解決のメリット
- 判決による確実に解決できる
- 適正な慰謝料額が決められる
- 強制執行もできる
- 弁護士費用等も請求できる可能性がある
■裁判による解決のデメリット
- 時間と費用の負担がかかる
- 心理的負担が増える
■裁判で注意が必要な点
- 証拠の準備
- 時効の確認
- 適正な慰謝料額の見極め
- 裁判の費用対効果の検討
- 心理的負担への心構え
個々の状況に応じた最適な解決方法を選択することが、より良い解決につながります。
そのためには、早い段階で弁護士に相談し、適切な解決方針を立てることが最も重要です。
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