配偶者のうつ病!離婚できる2つの条件と、離婚する流れとよくある質問
この記事を読んで理解できること
- うつ病の配偶者と離婚できる2つの条件
- うつ病の配偶者と離婚する流れ
- 「配偶者のうつ病」だけを理由とした離婚が認められるケースは少ない
- うつ病で離婚する際によくある質問
あなたは、
- うつ病の配偶者と離婚できるか知りたい
- うつ病の配偶者と離婚できる条件は?
- うつ病の配偶者と離婚する流れが知りたい
などとお考えではありませんか?
結論から言うと、うつ病という理由だけで配偶者に離婚を求めても、相手の合意が得られず他に離婚理由がない場合は、離婚訴訟を申し立てても離婚できない可能性が高いです。
離婚訴訟で「配偶者のうつ病」だけを理由とした離婚が、認められるケースは少ないからです。
なぜなら、
- うつ病は回復しがたい精神病とは認められにくい
- 配偶者を誠実にサポートしてきた事実が必要
- 配偶者が離婚後の生活に困らない環境が必要
だからです。
「配偶者のうつ病」だけを理由とした離婚は、裁判で認められることは大変難しいといえます。
うつ病という理由だけでなく、他にも不倫やDV・モラハラなど法律で認められた離婚の理由(法定離婚事由)がある場合は、離婚できる可能性があります。
そこでこの記事では、
1章では、うつ病の配偶者と離婚できる2つの条件
2章では、うつ病の配偶者と離婚する流れ
3章では、「配偶者のうつ病」だけを理由とした離婚が認められるケースは少ない
4章では、うつ病で離婚する際によくある質問
について解説します。
この記事の内容をしっかり理解し、配偶者のうつ病で悩み離婚を考えている際の行動に役立ててください。
目次
1章:うつ病の配偶者と離婚できる2つの条件
うつ病の配偶者と離婚できる条件として、次の2つがあげられます。
- 夫婦双方が離婚に同意している
- うつ病以外に不倫やDVなど離婚できる理由がある
それぞれ解説します。
1-1:夫婦双方が離婚に同意している
配偶者が離婚に同意した場合は、うつ病といった理由であっても離婚できます。
話し合いによる離婚の方法としては、離婚協議、離婚調停があげられます。
離婚協議では、夫婦間の話し合いにより離婚することと、離婚条件(慰謝料、財産分与、親権など)に合意したうえで、離婚届を提出することで離婚が成立します。
また離婚調停では、家庭裁判所で調停委員を介して話し合いを行いますが、離婚や離婚条件について意見を調整し双方の合意が得られれば離婚が成立します。
1-2:うつ病以外に不倫やDVなど離婚できる理由がある
うつ病という理由だけでなく、他にも配偶者の不倫やDV・モラハラなど離婚が認められる理由(法定離婚事由)がある場合は、離婚できる可能性があります。
法定離婚事由としては、次の5つになります。
- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
(民法第770条1項)
例えば配偶者が、
- 不倫・浮気をした
- DV(暴力)、継続した侮辱的発言などのモラハラがある
などの場合があげられます。
家庭裁判所に離婚訴訟を申し立て、これらの法定離婚事由が認められた場合は、離婚を認める判決が下されることで離婚が成立します。
2章:うつ病の配偶者と離婚する流れ
うつ病の配偶者と離婚する流れは、次のようになります。
- 離婚について話し合う
- 合意が得られた場合は離婚届を提出する
- 合意が得られない場合は離婚調停を申し立てる
- 調停が成立しないときは訴訟を起こす
それぞれ解説します。
2-1:①離婚について話し合う
うつ病の配偶者と離婚するためには、まずは離婚について配偶者と話し合う必要があります。
ただし、うつ病を患っている配偶者との話し合いになるため、離婚を切り出すタイミングや話し合いの進め方など慎重に行うことが重要です。
相手が離婚を迫られたことで落ち込んでしまったり、逆に感情的になって激しく反発されたりして、離婚の同意が得られない可能性があります。
また、離婚条件として理不尽な要求や慰謝料を請求される可能性や、最悪の場合は自殺行為に及ぶ危険性もあります。
そのため、夫婦間で話し合う際は十分な配慮や、思いやりのある態度で接することが重要です。
2-2:②合意が得られた場合は離婚届を提出する
夫婦間の話し合いで合意が得られた場合は、次のような流れになります。
- 夫婦の話し合いで、離婚条件(慰謝料、財産分与、親権など)を決める
- 離婚条件を離婚協議書にまとめる
- 作成した離婚協議書を公正証書にまとめる
- 離婚届を作成し、役場に提出する
話し合いによる協議離婚は、離婚の方法としては最も多い形ですが、口頭で離婚条件を決めて離婚届けを出すだけでは、後から問題が生じる可能性が高いです。
特に、離婚後に慰謝料や養育費など金銭による支払いが発生する場合は、できれば公正証書を作成することをおすすめします。
2-3:③合意が得られない場合は離婚調停を申し立てる
夫婦間の話し合いで合意が得られない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。
離婚調停では、裁判官1名と調停委員2名からなる調停委員会によって、双方の意見の聞き取りや条件面の話し合いが夫婦別々に行われます。
夫婦双方が合意した場合は、合意した内容が調停調書に記載され、調停離婚が成立します。
申立人は、調停成立の日から10日以内に、離婚届に離婚調停調書の謄本を添えて、市町村役場に提出しなければなりません。
もし、相手が離婚を拒否したり、財産分与や子どもの親権等の離婚条件で合意が得られなかったりした場合は、調停不調となります。
2-4:④調停が成立しないときは訴訟を起こす
離婚調停が成立しない場合は、離婚訴訟を起こします。
離婚訴訟では、離婚の成否と一緒に慰謝料なども判決によって決められます。
離婚訴訟の流れとしては、次のようになります。
- 家庭裁判所に離婚裁判の訴状を提出
- 裁判所から口頭弁論期日の呼出状
- 第1回口頭弁論が開かれる
- 第2回目以降も口頭弁論が開かれる
- 判決、裁判の終了
離婚訴訟の内容はもちろん様々ですが、裁判にかかる期間は1年以上となることが多いです。
離婚訴訟では、離婚協議・調停のような話し合い、合意による決定ではなく、提出された訴状・書面等をもとに、裁判官の判断によって離婚の成否や慰謝料等が決められるのが原則です。
ただし、双方が希望すれば、和解によって離婚をしたり慰謝料額を決めたりすることも可能です。
3章:「配偶者のうつ病」だけを理由とした離婚が認められるケースは少ない
うつ病の配偶者との離婚を求めた場合、「配偶者のうつ病」だけを理由とした離婚が認められるケースは少ないといえます。
その理由として、次の3つがあげられます。
- うつ病は回復しがたい精神病とは認められにくいから
- 配偶者を誠実にサポートしてきた事実が必要だから
- 配偶者が離婚後の生活に困らない環境が必要だから
それぞれ解説します。
3-1:うつ病は回復しがたい精神病とは認められにくいから
うつ病の配偶者との離婚を考えた場合、法定離婚事由の
「4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」
に該当すると主張するケースがありますが、裁判ではうつ病は回復しがたい精神病とは認められにくいです。
なお、この第4項自体、2年以内に削除されることが既に決まっていますので、今から離婚を考える人が、「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない」と主張しても、判決が出るころには、条文自体が無くなっていると思われます。
また仮に、重度のうつ病で回復する見込みが少ないと診断された場合であっても、裁判所の判断で離婚が認められない場合があります。
裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
(民法第770条第2項)
なぜなら裁判では、うつ病の配偶者の生活が、離婚後も保障されていることが求められる場合が多いからです。
3-2:配偶者を誠実にサポートしてきた事実が必要だから
うつ病の配偶者との離婚を求めた場合、これまで長期にわたって配偶者を誠実にサポートしてきた事実が必要です。
夫婦にはお互いに助け合い支え合う義務があるため、これまでうつ病で苦しむ配偶者のために、献身的にサポートしてきたかどうかが問われるからです。
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない
(民法第752条)
そのため、配偶者のうつ病によって夫婦生活を維持することが難しい状況や、配偶者のサポートのために自身の体調や精神面も支障をきたしている等の実情も主張する必要があります。
3-3:配偶者が離婚後の生活に困らない環境が必要だから
うつ病の配偶者との離婚を求めた場合、配偶者が離婚後の生活に困らない環境が必要になります。
裁判では、うつ病の配偶者の生活が、離婚後も保障されていることが求められるからです。
例えば、
- 離婚後の生活を維持するために財産分与を配慮する
- 配偶者の親族による生活支援が受けられる
- 精神障害者保健福祉手帳の交付を受ける
- 障害年金が受け取れる手続きを行う
などがあげられます。
このように、「配偶者のうつ病」だけを理由とした離婚は、裁判では様々な条件を満たしている必要があるため、裁判で認められることは大変難しいといえます。
4章:うつ病で離婚する際によくある質問
うつ病で離婚する際によくある質問として、次の4つがあげられます。
- うつ病の配偶者に慰謝料は請求できる?
- 配偶者がうつ病の場合、親権はどうなる?
- うつ病の配偶者から養育費はもらえる?
- 配偶者が自殺行為におよんだ場合の法的責任は?
それぞれ解説します。
4-1:うつ病の配偶者に慰謝料は請求できる?
うつ病の配偶者に慰謝料を請求することは、難しいでしょう。
離婚する際に慰謝料を支払う義務が生じるのは、配偶者の不倫(不貞行為)やDV(暴力)などの不法行為が離婚の原因であり、それによって損害が生じた場合になります。
そのため、配偶者のうつ病だけを理由とした慰謝料請求は、認められない可能性が高いです。
4-2:配偶者がうつ病の場合、親権はどうなる?
配偶者がうつ病の場合に親権が認められるかどうかは、うつ病の程度によって判断されるでしょう。
子どもの親権は、子どもが健やかに成長できる養育環境が最優先されるため、うつ病の程度が軽い場合は、必ずしも親権者になれないとは限らないからです。
ただし、うつ病を患う親よりは健康な親の方が、経済面や子どもの精神的な負担を考慮したうえで、親権者にふさわしいと判断される可能性もあります。
4-3:うつ病の配偶者から養育費はもらえる?
あなたが親権者の場合は、うつ病の元配偶者に対して養育費を請求できますが、相手の収入によっては難しい場合があるかもしれません。
養育費の相場としては、双方の親の収入をもとに、裁判所が養育費の金額を算定した「養育費算定表※」が一般的な基準とされています。
※平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
そのため養育費の金額も、元配偶者の収入から支払える範囲内となり、うつ病によって失職した場合は、支払ってもらえない可能性もあります。
4-4:配偶者が自殺行為におよんだ場合の法的責任は?
うつ病の配偶者に対して離婚を求めたことで、配偶者が自殺行為におよんだ場合、離婚を求めた側に法的責任があるかどうかは慎重に判断する必要があります。
- 離婚を求めた方法が適切だったか
例えば、脅迫や過度の精神的プレッシャーをかけるなど、不当に権利を侵害するような方法で離婚を求めていなかったかを確認します。
- 離婚の要求と自殺との関係
離婚を求めたことが、直接的に自殺の原因となったと言えるかどうかを慎重に検討します。
うつ病の場合は、他の要因が主な原因だった可能性もあります。
これらの点を詳しく調べることで、離婚を求めた側に法的責任があるかどうかが判断されます。
まとめ:うつ病の配偶者と離婚できる条件
■うつ病の配偶者と離婚できる条件
- 夫婦双方が離婚に同意している
- うつ病以外に不倫やDVなど離婚できる理由がある
■うつ病の配偶者と離婚する流れ
- 離婚について話し合う
- 合意が得られた場合は離婚届を提出する
- 合意が得られない場合は離婚調停を申し立てる
- 調停が成立しないときは訴訟を起こす
■うつ病の配偶者との離婚を求めた場合、「配偶者のうつ病」だけを理由とした離婚が認められるケースは少ない
うつ病の配偶者との離婚を考える際は、相手の心身の状態に十分配慮し、できるだけ穏やかに思いやりのある方法で話し合いを進めることが大切です。
うつ病を理由とした離婚問題を解決したい場合は、この記事の内容を参考にして、これからの行動に役立ててください。