- 更新日:2024.10.02
- #DV慰謝料計算
【DVの慰謝料計算】慰謝料を決める要素と増額のポイント、DVの対処法
この記事を読んで理解できること
- DV(ドメスティック・バイオレンス)とは?
- DVによる慰謝料を決める要素と相場、計算方法
- DVによる慰謝料請求でやるべきこと
あなたは、
「DVの慰謝料の計算方法や相場が知りたい」
「DVで離婚(事実婚を解消)した時に慰謝料は請求できる?」
「慰謝料を請求して安全に別れたい」
などとお考えではないですか。
結論から言うと、あなたが配偶者や同棲中の恋人から暴力を受けている場合は、身体的・精神的苦痛を受けたことに対する賠償金として、慰謝料を請求できます。
なぜなら、生活を共にする配偶者や恋人から受けた暴力は、「DV(ドメスティック・バイオレンス)」と呼ばれる不法行為に当たるからです。
実は、DVは「身体的な暴力」だけでなく、「精神的な暴力」「性的な暴力」も該当します。
また、DVは法的に認められた離婚事由(理由・原因)に当たるため、離婚裁判によって認められた場合は、相手の合意がなくても離婚することができます。
この記事では、1章で、DV(ドメスティック・バイオレンス)の定義について、2章ではDVによる慰謝料の相場と計算方法を、そして3章では、DVによる慰謝料を決める要素とポイントについて解説していきます。
さらに、第4章では、DVが原因で離婚(事実婚を解消)する場合にやるべきこと、について解説していきます。
個々の内容をしっかりと理解して、今後の行動に役立ててください。
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■生活を共にする配偶者や恋人から受けた暴力は、「DV(ドメスティック・バイオレンス)」と呼ばれる不法行為にあたります。
■DVによる慰謝料を決める要素と増額のポイント
■DVによる慰謝料の相場は50万円~300万円
■DVによる慰謝料を請求でやるべきこと
- DVの証拠を集める
- 弁護士など仲介人を準備する
- 退避場所を確保する
- 裁判所に保護命令を申し立てる
目次
1章:DV(ドメスティック・バイオレンス)とは?
まず始めに、DV(ドメスティック・バイオレンス)の定義を説明していきます。
一口に暴力と言っても様々な形態がありますが、生活を共にする中でいくつもの暴力が重なって行われる場合が多いです。
DVの主なものとしては、次の3つがあげられます。
- 身体的な暴力
- 精神的な暴力
- 性的な暴力
それぞれ解説していきます。
1-1:身体的な暴力
身体的な暴力としては、「殴る」「蹴る」といった、一般的には傷害や暴行に当たる違法な行為があげられます。
これらは、たとえ夫婦や恋人間で行われた場合であっても、当然処罰の対象になります。
その他にも、
- 物を使って殴る
- 物を投げつける
- 刃物などの凶器をつきつける
- 首を絞める
- 腕をつかむ、ねじる
- 髪をひっぱる
- 引きずりまわす
などの行為があげられます。
1-2:精神的な暴力
精神的な暴力としては、「大声で怒鳴る」「暴言を吐く」といった、相手の心を傷つける言動などがあげられます。
その他にも、
- 自分より価値が低いと蔑む
- あれこれ理不尽な命令をする
- 人の前でけなす
- 無視する、口をきかない
- 殴るそぶりや物を投げつけるふりをする
- 実家や友人との付き合いを制限する
- 大切にしているものを壊す、捨てる
- 仕事を辞めるよう強制する
などの行為があげられます。
1-3:性的な暴力
性的な暴力としては、「性的行為を強要する」「避妊に協力しない」などがあげられます。
夫婦や恋人同士であっても、暴行や脅迫による性交は「強制性交等罪」に問われる可能性があります。
その他にも、
- 無理やりポルノビデオやポルノ雑誌を見せる
- 中絶を強要する
などの行為があげられます。
2章:DVによる慰謝料を決める要素と相場、計算方法
ここでは、DVによる慰謝料を決める要素と相場、離婚慰謝料の計算方法について解説します。
2-1:DVによる慰謝料を決める要素
DVによる慰謝料を決める要素は、次の図のようになります。
- DVの頻度・回数が多い、期間が長いほど、慰謝料が高くなります。
- DVによる被害としては、ケガや精神的な病気だけでなく障害や後遺症が残った場合など、被害が大きいほど慰謝料は高くなります。
- 被害者は不倫や挑発などをしておらず、なにも落ち度がなかった場合は、慰謝料が高くなります。
- 婚姻期間が長いほど、離婚に至った場合の慰謝料が高くなります。
- 子供がいる場合や、子供の年齢が低いほど離婚に至った場合の慰謝料が高くなります。
- 加害者の収入や社会的地位が高いほど、慰謝料が高額になる傾向があります。
2-2:DVによる慰謝料の相場
離婚の原因と慰謝料の相場は、次の図のようになります。
DVによる慰謝料の相場としては、50万円~300万円になります。
先に解説したDVの慰謝料を決める各要素を基にして決められるため、事案ごとの金額にかなり差が生じます。
また、慰謝料の金額は当事者の話し合いよって決められるため、相手の合意が得られた場合は、相場に関係なく高額になることもあります。
2-3:離婚慰謝料の計算方法
離婚慰謝料は、法律上明確な計算方法はありませんが、一つの目安として、次の計算式を参考にしてください。
■離婚慰謝料の計算式
基本慰謝料120万円+請求相手の年収の3%×実質的婚姻年数(1~20年)×有責度(0~1)×調整係数(0.7~1.3)
例えば、相手のDVが原因で離婚する事案で、相手の年収が500万円、あなたは専業主婦で婚姻期間が7年の場合は、次のような計算式になります。
120万円+((500万円×3%)×7年×1×1.3)=256万5000円
この場合、相手のDVが原因で離婚するため相手の有責度は「1」で、専業主婦で収入がないため調整係数は「1.3」となります。
この計算式はあくまで参考程度であり、ここまで解説してきたように、実際の慰謝料額は、事案ごとの要素を検討したうえで決められます。
3章:DVによる慰謝料請求でやるべきこと
DVによる慰謝料を請求でやるべきことは、次の4つです。
- DVの証拠を集める
- 弁護士など仲介人を準備する
- 退避場所を確保する
- 裁判所に保護命令を申し立てる
それぞれ解説していきます。
3-1:DVの証拠を集める
DVで慰謝料を請求するためにやるべきこととして、DVの証拠を集めることがあげられます。
なぜなら、集めた証拠によってDVの事実と内容や回数、期間等が明らかとなり、裁判官や弁護士等の第三者にも相手の不法行為を認めてもらえるだけでなく、慰謝料を増額できる可能性も高まるからです。
証拠として認められる可能性があるのは、次のようなものです。
■DVで受けたケガを撮影した画像
殴る、蹴る、叩くなどの暴行を受けた場合は、ケガをした箇所を撮影しておく。
■暴言や脅迫を録音した音声データ
暴言や脅迫を受けた場合は、録音して音声データとして残しておく。
■暴言や脅迫を受けたメールやメッセージ
暴言や脅迫を受けたメールやLINE・SNSなどのメッセージを残しておく。
■DVや暴言・脅迫のメモ・日記
DV・暴言・脅迫を受けたことを、手書きのメモや日記に残していく。
残す場合は「日時」「受けた行為」「場所」「被害の重さ」などできる限り詳しく状況を記録しておく。
■病院の診断書
暴行によるケガや精神的苦痛で医療機関を受診した場合は、病院の診断書を貰って保管しておく。
■警察に相談した記録
DVを受けた際に警察に相談することで、相談内容や警察の対応などの記録が警察署に保管される。
他にも、暴力があった直後の荒れた部屋の写真や、第三者の証言も有力な証拠となります。
これらの証拠を集めておくことによって、裁判官や弁護士等の第三者に、相手の不法行為を認めてもらえる可能性が高まります。
3-2:弁護士など仲介人を準備する
DVによる慰謝料や離婚を交渉するためには、弁護士などの仲介人を準備することが重要です。
なぜなら、このようなケースでは、夫婦間で冷静に話し合うことはできず、暴力がエスカレートする可能性があるからです。
そのため、親族や共通の友人、弁護士など第三者に仲介をお願いし、一緒に立ち会ってもらった状態で話し合いを行うことが重要です。
また弁護士であれば、あなたの代理人として相手と交渉を進めていくため、冷静に慰謝料請求や離婚条件について協議を進めることができます。
また、弁護士は、相手と交渉する離婚協議の場だけでなく、その後の離婚調停では、家庭裁判所の調停委員との協議や、離婚訴訟では裁判官との対応など代理人として活動することができます。
そのため、できるだけ早く弁護士に依頼して自分の身の安全を確保し、離婚や慰謝料請求の交渉を進めていくことが重要です。
3-3:退避場所を確保する
DVによる慰謝料や離婚交渉を進める前に、自分の身の安全を確保するための退避場所を確保することが重要です。
なぜなら、婚姻関係において日常的にDVが行われている場合は、そのまま我慢しながら夫婦生活を続けていると、肉体的にも精神的にも疲弊してしまう危険性があるからです。
例えば、新しい住居や実家に移ったり、福祉施設や警察に連絡して一時保護施設(シェルター)を利用するなど、安心できる居場所を確保する必要があります。
特に、相手からの暴力がひどい場合は、あなた自身の安全を考えてすぐに避難し、離婚を前提に別居することをおすすめします。
3-4:裁判所に「保護命令」を申し立てる
DVによる身体的な暴力や生命や身体に関わる脅迫などがある場合は、DV防止法に基づく保護命令を、地方裁判所へ申立てることができます。
DV防止法とは『配偶者からの暴力』から『被害者』を保護するための法律です。
ここでいう『配偶者からの暴力』とは、
「配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。)又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動」をいいます。
また『配偶者』とは、
「婚姻関係にあるものだけでなく、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者」を含みます。
つまり、配偶者や内縁の配偶者からの暴力等だけでなく、同棲または同棲していた交際相手からの暴力等もDV防止法の対象になります。
この申し立てを受けて裁判所が、生命・身体に重大な危害が及ぶおそれがあると判断した場合は、「保護命令」が発令されます。
「保護命令」の主な内容は、次の3つです。
- 接近禁止命令
- 退去命令
- 電話等禁止命令
それぞれ解説していきます
3-4-1:接近禁止命令
DV加害者に対して、6ヶ月間、被害者の身辺をつきまとったり、住居や勤務先などの近くを徘徊したりすることを禁止するものです。
あわせて、被害者と同居する未成年の子や、被害者の親族などに対しての接近禁止命令も申し立てをすることができます。
3-4-2:退去命令
DV加害者がまだ同居している場合に、加害者に対して2ヶ月間家から出ていくことを命じ、家付近を徘徊することも禁止するものです。
これは、被害者が引っ越しをするための準備や引っ越しを、心配なく済ませられるようにするものです。
3-4-3:電話等禁止命令
DV加害者に対し、接近禁止命令とあわせて、6ヶ月間、次にあげる行為を禁止するものです。
- 面会の要求
- 行動を監視していると思わせる言動
- 著しく粗野または乱暴な言動
- 無言電話・連続しての電話、FAX・メールの送信(緊急やむを得ない場合を除く)
- 夜間(午後10時~午前6時)の電話、FAX・メールの送信(緊急やむを得ない場合を除く)
- 汚物・動物の死体等の著しく不快、または嫌悪の情を催させるものの送付など
- 名誉を害する事項を告げることなど
- 性的羞恥心を害する事項を告げることなどまたは性的羞恥心を害する文書・図画の送付など
DV加害者がこれらの命令に違反した場合は、「1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金」が科せられます。
夫婦関係において日常的にDVが行われている場合は、できるだけ早く弁護士や配偶者暴力相談支援センターなどに相談することをおすすめします。
特に、相手からの暴力がひどい場合は、あなた自身の安全を考えてすぐに避難し、離婚交渉を進めることが重要です。
新橋第一法律事務所でも無料で相談を受け付けていますので、もしDV被害でお困りの際は、すぐにご相談ください。
まとめ
ここまで、DV(ドメスティック・バイオレンス)の概要について、DVによる慰謝料を決める要素や相場などについて解説してきました。
最後に、今回の内容をまとめます。
■生活を共にする配偶者や恋人から受けた暴力は、「DV(ドメスティック・バイオレンス)」と呼ばれる不法行為にあたります。
■DVによる慰謝料を決める要素と増額のポイント
■DVによる慰謝料の相場は、50万円~300万円
■DVによる慰謝料を請求でやるべきこと
- DVの証拠を集める
- 弁護士など仲介人を準備する
- 退避場所を確保する
- 裁判所に保護命令を申し立てる
この記事の内容を参考にして、これからの行動に役立ててください。