休日出勤は拒否できる?よくある疑問Q&Aと悩みを解決する3つの対処法

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住川 佳祐
(弁護士法人QUEST法律事務所 代表弁護士)

著者情報 弁護士法人QUEST法律事務所 代表弁護士 住川佳祐

東京弁護士会所属。東京大学法学部卒。『NHK あさイチ』のTV出演の他、『プレジデント』『ダイヤモンド・セレクト』などメディア掲載多数。弁護士法人QUEST法律事務所のHPはこちら。

休日出勤を拒否する女性

あなたは一週間働いて迎えた休みの日に、急に休日出勤をお願いされた経験はありませんか?

そんな時、こんな風に考えた人もいるのではないでしょうか。

「予定があったのに…」
「正直に言うと、行きたくないな」
「休日出勤って断れないのかな…」

人との約束があったり、予定していた時間の使い方があったりして休日を楽しみにしていたのに、一日仕事で潰れてしまっては残念です。

本文で詳しく説明しますが、結論から言うと「就業規則」「36協定」という2つの条件が揃っていなければ、社員は休日出勤を拒否することができます

この記事では、あなたが休日出勤を拒否できるかどうかを解説した上で、拒否するとどうなるか、どういった理由であれば出勤を断れるか、といった点についても説明します。

内容をしっかりと理解して、会社の根拠のない指示に振り回されず、自分の休みをしっかりと確保できるようにしましょう。

【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】

■会社が従業員に休日出勤を命じることができる条件

  • 就業規則に休日出勤について決めた項目がある
  • 従業員と会社の間で36協定が結ばれている

この条件を両方満たしていなければ、そもそも会社は休日出勤を命じることができない。

■休日出勤を拒否できる正当な理由

  • 冠婚葬祭
  • 介護・付き添い
  • 引っ越し
  • (本人の)通院

■休日出勤に関するよくある疑問

  • 休暇中に休日出勤を指示されたら断れるのか➡断れる
  • 休日出勤の規定がない場合はどうすればいいのか➡拒否できる
  • 休日出勤を拒否して就業規則にない処分を受けたらどうすれば良いのか➡就業規則にない処分を会社が行うことはできない
  • 休日出勤したら割増賃金が発生するのか➡法定休日であれば割増賃金が発生する
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1章:条件が揃えば休日出勤は拒否できる

上司
上司
急で悪いんだけど、次の日曜日、出社してこの仕事をまとめておいてもらえない?
あなた
あなた
予定が入ってるんだけど断っていいんだろうか…。

あなたが会社から休日出勤を命じられた場合、それを拒否できるかどうかは、いくつかの条件が揃っているかどうかで判断する必要があります。

休日出勤を命じる2つの条件(1-1)が

ない→断って良い
ある→基本的には断ることができない
  →出勤できない正当な理由(1-2)が…
   ない→断ることができない
   ある→断ることができる可能性がある

この章では、まず会社が休日出勤を命じる根拠となる条件を解説します。

その上で、その条件が揃っていても休日出勤を拒否できる正当な理由があることも説明します。

1-1:会社が休日出勤を命じるためには2つの条件が必要

会社が社員に休日出勤を指示する時、次の2つの条件が揃うと基本的には断ることができません。

就業規則に休日出勤について決めた項目がある
・従業員と会社の間で36協定が結ばれている

順番に見ていきましょう。

1-1-1:就業規則に休日出勤について決めた項目がある

就業規則とは、会社が定める労働条件や社内のルールを書面にしたものです。

会社側が社員に休日出勤を指示する場合には、この就業規則に

第x章 労働時間、休憩および休日
xx条

会社は必要に応じて労働者に対し休日出勤を命じることができる。

といった内容の項目が必要になります。

こうした記載がないのにも関わらず、会社や上司が社員を思いつきで休日出勤させることはできません

弁護士
弁護士
記載があるかどうか分からなければ、就業規則を確認しましょう。

会社には就業規則の周知義務があるので、社員が閲覧を求めた場合には断ることはできません。

1-1-2:従業員と会社の間で36協定が結ばれている

会社が、社員に休日出勤を課したり、法律で決められた時間を越えて仕事をさせたりするためには、「36協定」と呼ばれる取り決めを会社と従業員の間で結び、労働基準監督署に提出する必要があります。

この36協定書を提出せずに社員を休日出勤させた場合は、会社は労働基準法違反になります。

36協定については、次の記事で詳しく解説しているのでご確認ください。

36協定とは?5分で分かる定義・役割と、違法性が分かる判断基準

弁護士
弁護士
36協定がないまま、社員に残業や休日出勤を課すことは労働基準法違反になりますが、依然として少なくない数の会社で協定が結ばれていない現状があります。

36協定書についても、会社は社員に周知する義務がありますが、実際には社員が見ることができる場面がないことがほとんどです。

そうした際には、労働基準監督署に問い合わせれば見せてもらうことができます。もし労働基準監督署になければ、あなたの会社は36協定を届け出ていないということになります。

あなた
あなた
うちの会社にはどちらの条件もあったので、休日出勤の指示を断ることができないんですね。
弁護士
弁護士
いえ、指示は絶対というわけではなく、正当な理由があれば拒否が認められるケースがあります。

次に、休日出勤を拒否できるケースについて解説します。

1-2:休日出勤を拒否できる正当な理由

会社が休日出勤を指示する手続きに問題がない場合でも、一般常識に照らしてやむを得ないと考えられる事情がある時は、出勤を断っても認められたり、出勤拒否を理由にした懲戒処分が無効とされたりすることがあります。

休日出勤を拒否してもやむを得ない正当な理由としては、

冠婚葬祭
介護・付き添い
引っ越し
(本人の)通院

といったものが挙げられます。

弁護士
弁護士
休日出勤を拒否するために嘘をつくことはオススメできませんが、本当にこうした予定がある場合は、上司に伝えて休めないか相談してみましょう。

それぞれの理由について、ひとつずつ確認していきましょう。

1-2-1:冠婚葬祭

あなた
あなた
次の日曜日は親族の結婚式があるんです…。

冠婚葬祭への出席のためであれば、休日出勤を断ることも認められると考えられます。

結婚式や法事などの予定が分かっている場合は、あらかじめ上司に伝えておくとスムーズに拒否できるでしょう。

急な葬儀の場合も、家族や近しい間柄であれば出席できると考えるのが一般的です。上司に事情を説明して理解を得ましょう。

弁護士
弁護士
「身内に不幸が…」という理由は、休日出勤を拒否する言い訳として使われがちですが、後々でバレると大変なので、嘘の理由に使うのはやめておくべきでしょう。

1-2-2:介護・付き添い

あなた
あなた
休みの日は家族の介護を担当しており、急には予定を変えられません。

休みの日は高齢や病気を患っている家族の介護、病院の付き添いをしているという人もいるのではないでしょうか。

別の家族の都合などもあり、こうした予定は急には動かしにくく、「できることなら休日出勤を断りたい…」といった風に考える人も多いはず。

こうした理由がある場合も、上司や会社は出勤を強制することはできず、休みを認めてくれるケースがほとんどです。

弁護士
弁護士
もし家族の介護などで休日出勤を断っても、このことを理由になんらかの処分を与えることはできないでしょう。

1-2-3:引っ越し

あなた
あなた
次の休みは引っ越しの予定があるのですが、休日出勤を拒否しても良いのでしょうか。

家の引っ越しが決まっている日に、休日出勤を指示されても、急に引っ越し日を動かすことはできません。

このように、あらかじめ決まった用事があり、急には変更できない予定の場合は、事情を説明すれば理解してもらえる場合もあります。

弁護士
弁護士
引っ越しのように、絶対に動かせない予定がある場合は、先に上司や会社に「休日出勤はできない」と伝えておくのがベターです。

1-2-4:(本人の)通院

あなた
あなた
平日には行けないので、病院に行きたいのですが…。

病院に通院しているという人の中には、平日は仕事の時間で行くことができないため、休日にまとめて通っているという人もいるのではないでしょうか。

こうした場合は、休日出勤よりも通院を優先できると考えられます

疑い深い上司の中には、病院に通った証拠の提出を求める場合もあるかもしれません。診断書などはプライバシーに関わる部分もあるので、領収書などを見せて実際に病院に行ったことを示しましょう。

弁護士
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体調不良を訴える社員を無理に出勤させ、さらに健康を悪化させた場合には、会社側は使用者責任を問われる場合もあります。

ここまで休日出勤を拒否できる理由について解説しました。

これ以外にも、上司や会社側が納得すれば調整してもらえるケースもあります。

ルール上は休日出勤の指示に従わなければならない場合でも、どうしても動かせない予定がある場合は、先に上司に伝えておくことが大切です

【コラム】休日出勤を拒否すると懲戒処分を受ける可能性も

もし就業規則に休日出勤について明記され、36協定も労働基準監督署に届け出すれていれば、あなたは会社の指示に従って働く義務があります。

そのため正当な理由なく休日出勤を断ると、懲戒処分(※)を受ける可能性があります。

※懲戒処分=果たすべき義務や秩序に違反した社員に対して、会社側が課す制裁の罰。処分を行うためには、内容などについて就業規則に規定されている必要があります。

過去にも、休日出勤を拒否したことに対する処分が適法かどうかをめぐって争われた事例がいくつもあります。

【休日出勤を拒否が適法かどうかについて争われた判例】

・北九州市清掃局事件(S59.7.19福岡高裁判決)

年末の休日出勤命令を拒否した市清掃局職員に対して懲戒処分が下され、その取消を求めた裁判。

裁判所は、就業規則に時間外労働や休日労働を命じることができると記載されているにも関わらず、社員が正当な理由なく命令を拒否することはできず、拒否した場合には就業規則基づいて懲戒処分に処すことができるとしました。そのため、無断欠勤を行う争いを企画したことに対する停職、減給、戒告などの処分は適法だと判断しました。

一度断ったくらいで、すぐに解雇されるケースは極めてまれですが、就業規則の懲戒に関する内容に基づいて、なんらかの罰則を受ける可能性は高いので注意しましょう。

 

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2章:休日出勤でよくある疑問をQ&Aで解説

この章では、休日出勤についてのよくある疑問を解説します。

2-1:休暇中に休日出勤を指示されたら断れるのか

会社の休みには「休日」と「休暇」がありますが、この二つには次のような違いがあります。

休日:会社が定めた休みで、社員は働く義務がない日
休暇:本来であれば労働義務がある日に社員が申請を行い、休みをもらうこと

休暇は社員が「この日は休ませてください」と申請し、認められて初めて発生するものです。

そのため、休暇を与えた日に、社員の同意なく休日出勤を命じることはできません

2-2:休日出勤の規定がない場合はどうすればいいのか

先ほど、休日出勤を命じる根拠でも説明しましたが、

・就業規則の条文
・36協定の届け出

がない場合は、社員は休日出勤を拒否することができます

もしこうした場合に休日出勤を指示された場合は、当該日に出社しなくても問題ありません。

また出勤しない理由を聞かれた場合も、説明する必要はないと考えられます。

2-3:休日出勤を拒否して就業規則にない処分を受けたらどうすれば良いのか

もし会社側に休日出勤を指示する根拠があれば、あなたが出勤を拒否したことを理由に、なんらかの処分を下すことができます。

ただ、こうした処分は就業規則に指定された懲戒処分として行う必要があり、そうした規定なしに会社が好き勝手に処分することはできません。

また、社員に出勤できない正当な理由があるのに、会社側が処分を下すことにも法律違反の疑いがあります。

こうした処分を受けた場合は、会社の人事や労働基準監督署に相談しましょう。

2-4:休日出勤したら割増賃金が発生するのか

社員が休日出勤をした場合には、会社側は割増賃金を払わなければいけません。

残業代の計算方法は、その休日が「法定休日」か「法定外休日」かによって異なります。休日に働いた分の給料が間違っていないかどうか、しっかりと確認しましょう。

法定休日:労働基準法によって週1回(または4週間に4回)以上労働者に与えられなければならないと定められた休日

法定外休日:会社側と社員の取り決めなどで設定された法定休日以外の休日

休日出勤時の残業代については次の記事をご覧ください。

もう損しない!休日出勤で手当が出るケース・出ないケースと計算方法

弁護士
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次の章では、休日出勤の拒否で悩んでいる人のとるべき行動について、ケース別に解説したいと思います。
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3章:休日出勤に悩んでいる場合の対処法

ここまで読んでみて、あなたの休日出勤の悩みは次のどれに当てはまるでしょうか。

・休日出勤を拒否できるはずなのに、強制されている
・ルール上は問題ないが休日出勤が多すぎる
・ルール上は問題ないが休日出勤しても、正しい賃金が支払われない

それぞれのケースについて、対処法を簡単に説明します。

3-1:休日出勤を拒否できるはずなのに、強制されている

もし会社に休日出勤を命じる根拠がないのにもかかわらず、社員が休日出勤を拒否することを認めない場合、会社は労働基準法に違反している疑いがあります。

こうした場合は、労働基準法が守られているかをチェックする機関・労働基準監督署に相談してみるといいかもしれません。

労働基準監督署への相談については次の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

【労働基準監督署にできること】相談の流れとより確実に解決するコツ

3-2:ルール上は問題ないが休日出勤が多すぎる

会社側に休日出勤を命じる根拠があるものの、そもそもその回数が多すぎるというケースも見られます。

こうした会社は、利益のためなら社員を使い潰そうとするブラック企業の可能性があるので、別の会社への転職を考えるのもひとつの方法です。

ブラック企業からの転職については、次の記事をご覧ください。

5分で分かる!ブラック企業から転職する流れと知っておくべき2つのこと

3-3:ルール上は問題ないが休日出勤しても、正しい賃金が支払われない

ルール上、休日出勤が拒否できず、会社の指示に従って出勤しなければならない場合でも、会社が社員に正しい割増賃金を支払わないのは法律違反になります。

休日出勤時の正しい賃金が受け取れていない場合は、請求することで取り戻せる可能性もあるのでしっかりと確認しましょう。

もう損しない!休日出勤で手当が出るケース・出ないケースと計算方法

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まとめ

いかがでしたか?もう一度、今回の内容を振り返ってみましょう。

【休日出勤の根拠となる2つのポイント】
・就業規則に休日出勤を指示する根拠が明示されている
・従業員と会社の間で36協定が結ばれている

社側が社員に休日出勤を指示する場合には、就業規則に

「会社は必要に応じて労働者に対し休日出勤を命じることができる」

といった記載があることが必要になります。

また、あらかじめ「36協定」と呼ばれる取り決めを会社と従業員の間で結び、労働基準監督署に提出する必要もあります。

こうした根拠なしに社員に休日出勤を指示することできず、社員は休日出勤を拒否することができるのです。

逆に、就業規則に休日出勤について明記され、36協定も労働基準監督署に届け出すれていれば、あなたは会社の指示に従って働く義務があります。

そのため正当な理由なく休日出勤を断ると、懲戒処分を受ける可能性があります。

ただ、次のような理由は休日出勤を断ることができる理由として考えられています。

【休日出勤を断ることができる理由】
冠婚葬祭
介護・付き添い
引っ越し
(本人の)通院

会社のルールを知った上で、休日出勤を断ったことによって思わぬ処分を受けないようにしましょう。

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