【ブラック企業への仕返し】3つの方法と退職前に注意する3つのポイント

監修者

弁護士法人新橋第一法律事務所
代表弁護士 住川 佳祐

【ブラック企業への仕返し】3つの方法と退職前に注意する3つのポイント
チェック
この記事を読んで理解できること
  • ブラック企業への仕返しの方法
  • ブラック企業に仕返しする前に知っておくべきこと
「 奴隷のように扱うブラック企業に、何か仕返しできないかな… 」
「ブラック企業にこき使われたあげくクビにされた。 何かやり返す方法は無いのか・・・」
 

このような思いを持ちながらブラック企業に勤めている人や、苦しんだあげく辞めていった人はたくさんいます。

現実問題、企業を相手に戦うのは大変ですし、最後は泣き寝入りする場合がほとんどでしょう。

しかし、誰かが行動に起こさなければ、この先もブラック企業は増え続け、苦しむ人たちは増加するのです。


あなたがブラック企業に立ち向かうことが、ブラック企業に勤め苦しむ人たちを救う手助けになるかもしれません。

この記事を読めば、

・ブラック企業への仕返しで、金銭を請求する方法
・ブラック企業への仕返しで、金銭を請求する以外の方法
・ブラック企業に仕返しをする前に、知っておくべきこと

が分かります。

同時に、ブラック企業に不満を抱き退職を考えている人、既に退職されている人にとっても、有益な情報を集めました。

ぜひ参考にしてみてください。

【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】

■金銭を請求して仕返しをしたい場合は弁護士に相談

  • 金銭による仕返し①:未払い残業代の請求
  • 金銭による仕返し②:不当解雇に対する金銭の請求
  • パワハラを受けたら損害賠償請求

■ 金銭を請求する以外の方法で仕返しをしたい場合

  • 本社への報告
  • 厚生労働省へ内部告発

■ブラック企業に仕返しする前に知っておくべきこと

  • 有給休暇を消化をしよう
  • 失業保険をもらおう
  • 転職先を探しておこう
未払い残業代を取り返したいというあなたへ、まずはお気軽にご相談ください
未払い残業代を取り返したいというあなたへ、まずはお気軽にご相談ください

1章:ブラック企業への仕返しの方法

ブラック企業は違法性の高いことをしていることが多いため、社員から訴えられると不利になることが沢山あります。

1章では、金銭を請求してブラック企業に痛手を与える方法と、金銭以外の方法で事業改善を促す方法をご紹介します。

1-1:金銭を請求して仕返しをしたい場合は弁護士に相談

金銭を請求することであなたの気持ちが少しでも収まるなら、法律の専門家である弁護士に相談するのが一番です。

弁護士は、依頼者であるあなたの代わりに会社と交渉してくれるため、精神的なストレスが少なくて済みますし、自分で交渉するよりも高い金額をもらえる可能性が高いです。

では、ブラック企業にどんな請求ができるのか、パターン別に見ていきましょう。

1-1-1:金銭による仕返し①:未払い残業代の請求

そもそも、残業とは、「決められた時間を超えて労働する」行為のことです。

法律では、1日8時間・週40時間のどちらか一方を超えて働いた、全ての時間が残業(時間外労働)とみなされ、社員に残業をさせた場合は、会社は残業代を払わなければなりません

にもかかわらず、残業代が払われないサービス残業が存在する会社は、ブラック企業であると言えます。

例えば、月給25万円の人が2年間に渡り、月100時間の残業をしていた場合、約440万円の残業代を請求できます。

残業代を請求した場合と請求しなかった場合の違い

就業規則や労働契約等で「残業代は出ない」と記載されていても、超過分の残業について会社は、残業代を支払う義務があります。

あなたが残業代を取り返す方法は、以下2つです。

・自分で直接会社に請求する
・弁護士に依頼して請求する

2つの方法を比べると、以下のような違いがあります。

未払い残業代を自分で請求する場合と弁護士に依頼する場合のメリット・デメリット

また、請求の流れも、このように異なります。

残業代請求を自分でやる流れ・弁護士に依頼する流れ

自分で請求する方法には、「手間がかかる一方で、残業代を取り返せない可能性が高い」というデメリットがあります。

また、自分で請求すれば弁護士費用は抑えられますが、労働問題に強い弁護士に依頼した方が、少しでも多く残業代を取り返せる確率は高まるでしょう。

詳しい請求方法については、

残業代が出ないのは違法!会社から残業代を取り戻す2つの方法とは?

で紹介していますので、参考にしてみてください。

また、あなたがサービス残業をしているかどうかは、コチラの記事

残業とは?すぐに分かる残業の定義と会社があなたを騙す7つの手口

弁護士が解説する「残業の定義」とごまかされやすい8つの労働時間

を読めばすぐに分かるので、確認してみましょう。

【コラム】残業代の請求期間は3年

残業代請求の時効は「3年」と決められています。

つまり、3年よりも前の残業代分はもらえなくなってしまいます。

また、以前勤めていた会社であっても、3年以内であれば、さかのぼって残業代を請求できます。

そのため、残業代を請求するのであれば、一刻も早く行動しましょう!

弁護士に依頼すれば、内容証明の文案まで作成し、相手方に送付することで、時効を止めることも任せてしまうことができます。 

1-1-2:金銭による仕返し②:不当解雇に対する金銭の請求

突然の解雇や正当な理由が無い解雇など、法律を無視して行う解雇のことを「不当解雇」と呼びます。

ブラック企業の中には、不当解雇を行うことで人件費を抑えて利益をあげようとする会社があります。

そのようなブラック企業に対し請求できるのが、以下2つです。

1.解雇予告手当
2.解雇されていた期間の賃金請求

これら請求方法として、

1.自分で請求する
2.弁護士に依頼する

がありますが、労働問題に強い弁護士に依頼すれば、あなたに代わり会社に対して交渉をしたり、場合によっては労働審判といった手段を取り、あなたにとってベストな解決方法をとることができます。

最近では、法テラスや自治体の相談会など、無料で弁護士に相談ができる機会も増えています。

あまりハードルが高いと思わずに、まずは弁護士に相談してみましょう。

詳しく不当解雇について知りたい場合は、こちらの記事も参考にしてみてください。

【不当解雇は違法?】4つの相談先と解決までの流れを弁護士が解説

「解雇します」と言われてから30日以内に解雇されてしまった場合には、解雇予告手当を請求することもできます。

1-1-3:パワハラを受けた

パワハラを受けていたことが認められれば、「損害賠償請求」ができる可能性があります。

厚生労働省によると、下記、行為が「パワハラ」の基本6類型と言われています。

具体的な行動

上記、パワハラ行為が当てはまったとしても、「損害賠償請求」をするのであれば、しっかりとした証拠が必要です。

しかしながら、パワハラを証明する壁は非常に高く、訴訟を起こしても取れる賠償金は極わずかという悲しい現実があります。

過去には、賠償金が取れなかったこんなケースもありました。

ノルマを達成できないと

「なぜ売れないんだ!いつまでに売るんだ!」

「おまえ、頭や考え方がおかしいんじゃないのか」

などとののしられた。

また、会議に出席しようとすると

「ここからは君に関係ないから」

と追い出されてしまった。

このようなストレスから、視覚障害になってしまう。

→客観的な証拠がないとしてパワハラが認められなかった。

引継ぎノートを残しておいたのに

「お前の書き方が悪かったから仕事はしなかった」

と言いがかりをつけられた。

また、先輩に意見すると「口答えするな」と怒鳴りつけられた。

→先輩からの指導には従うべきであり、この程度ではパワハラにあたらない。

このように、ひどい内容のケースであっても賠償金が取れないということはよくあります。

それであれば、「残業代の請求」など、他の部分での金銭的要求をする方が得策と言えます。

そういったことも含めて、あなたにとって一番望ましい方法を提案し、あなたに代わり交渉してくれる弁護士に相談した方が、より良い結果をもたらすでしょう。

パワハラについてはこんな記事もありますので

【弁護士が徹底解説】パワハラのチェックリストと4つの対処法

ぜひ参考にしてみてくださいね。

パワハラを証明するには、音声データの録音パワハラを受けた相手や日時内容を記録したメモ第三者に相談するといった行動も、客観的な証拠となりえます。

1-2:金銭を請求する以外の方法で仕返しをしたい場合

ブラック企業にダメージを与えるには、本社への報告行政機関へ告発する方法があります。

ただ、告発先や方法を間違えると、会社側から解雇や減給といった仕返しを受ける可能性もあるので、慎重な行動が必要です。

それでは、どのような点に注意すればいいのでしょうか。

1-2-1:本社への報告

本社への報告には、十分な証拠とあらゆる情報を掴む必要があります。

まずは労働契約書就業規則をよく読み、不正や違法がないかを徹底的に調べてみましょう。

下記のような証拠も有効ですので、参考にしてみてください。

==残業代未払いに関する証拠集め==

●タイムカード
●会社のパソコンの利用履歴
●業務日報
●運転日報
●メール・FAXの送信記録
●シフト表

==不正解雇の場合の証拠集め==

●会社の業績が極端に悪化してないことを示す証拠
●自分が解雇された後に会社が新しく社員を募集していたことを示す求人票など
●営業成績を示す表の写真
●自分が担当して作った成果物など

==パワハラに関する証拠集め==

●病院に通った場合は医師の診断書
●ICレコーダー、スマホなどによる録音
●メールを印刷したもの
●パワハラを受けた日時や内容について詳細に記録したメモ

上記のような証拠集めができたら、本社に設置されたコンプライアンス室所定の部署に違法行為の報告を行います。

その際、会社から解雇や減給といった不当な処分を受けないためにも、記録が残る書面での申告を行ってください。

いくら証拠集めが重要だからと、上司の机や私物の鞄の中を調べたり、アクセス権限のないパソコンのデータにアクセスをしたりといった行為はルール違反です。
 
処分の対象となる可能性があるので行き過ぎた行為は控えましょう。

1-2-2:厚生労働省へ内部告発

厚生労働省のホームページには「労働基準関係情報メール窓口」送信フォームがあり、どのような違法行為が行われているかといった情報を提供することで、立ち入り調査や指導を行ってもらえる場合があります。

会社がそうした行政の指導の従わなかった場合、最終的には経営者の逮捕に踏み切ることもあります。

他にも、行政機関の具体的な通報先について消費者庁のホームページでも検索が可能です。
参考)https://www.caa.go.jp/planning/koueki/kensaku-sys/kensaku.html

[匿名で申告することもできますが、"いたずら"と疑われてしまうこともあるので、きちんと名乗った方が、調査を行ってくれる可能性は高まるでしょう。
 

1章ではブラック企業がダメージを受ける仕返しの方法を、金銭的請求とそれ以外に分けて解説しました。

続く2章では、ブラック企業に仕返しすることで、あなたに不利益をもたらさないようにするためのテクニックや知恵を紹介します。

2章ブラック企業に仕返しする前に知っておくべきこと

ブラック企業にとって、
① 金銭的な請求をされること
② 会社のイメージを悪くされること
などは、大きなダメージとなります。

もし、あなたがブラック企業に勤めたまま、このようなダメージを与えようとした場合、ブラック企業はあなたに対してさらに悪質な嫌がらせをしてくる可能性があります。

例えば、有給休暇を取らせてもらえなかったり、退職を強要されたりするかもしれません。

そこで2章では、ブラック企業に仕返しをする前に、知っておくべきこと、しておいた方が良いことをご紹介します。

2-1:有給休暇を消化をしよう

有給休暇は労働者の法律上の権利であり、有給休暇を取らせることは会社の法律上の義務です。

そんな従業員の当然の権利を会社は無視して、「有給休暇を取らせない」という手口で嫌がらせをする可能性があるでしょう。

通常のフルタイム勤務であれば、6ヶ月以上働くと有給休暇が10日間生じ、その後、勤務年数が増えるにつれ、有給が付与される日数も増えていきます。

仮に1年間で消化しきれなかった有給休暇は、過去2年間分が繰り越し可能です。

また、有給休暇を取る際に理由を答える義務はありませんし、どのような理由でも有給休暇は取れます。

もし、会社から「今休まれては困る」と拒まれたのであれば、具体的にいつなら有給休暇が取れるのかを聞いてください。

それでもなかなか聞き入れてもらえない場合は、記録の残る内容証明郵便で有給休暇を申請しましょう。

詳しくは

有給が取れない方必見!今日からできるカンタン有給取得対策

をご覧ください。

会社側から有給休暇の取得を断られたり、保留にされたりといった行為もきちんと記録しておくと、後々証拠として役立つかもしれません。 

2-2:失業保険をもらおう

ブラック企業は、在職中のみならず、退職後も「失業保険を取らせない」という手口で嫌がらせをする可能性があります。

失業保険とは、会社勤めの人が失業した場合のライフラインとして、再就職するまでの生活費を国が支給してくれるシステムです。

失業保険を受給するためには、以下2つの条件が必須となります。

①働く意思と能力がある
②雇用保険の加入期間が1年以上ある

そして失業保険を申請する際には、働いていた会社が作成する「離職票」が必要です。

ブラック企業では、辞める社員への嫌がらせとして、離職票を作成しない、作成しても交付しないといったケースが見受けられます。

また、離職票には離職理由の記載が求められており、会社都合退職にも関わらず、自己都合退職と記載するブラック企業もあります。

これは会社都合退職者を出すと、会社が雇用保険から雇用に関する助成金の受給ができなくなることから、離職証明書に会社都合退職と書きたくない傾向があるからです。

会社都合退職なのか自己都合退職なのかで、失業手当がもらえる期間と給付開始日が異なります。

もし、会社都合退職なのに、自己都合退職扱いにされた場合、ハローワークにて異議申し立てが行えます。

その際は、会社都合退職と判断できる証拠が必要です。

ただし、会社側があなたの主張を認めなければ異議申し立ては通らないため、会社都合退職と認められるには相当な時間がかかるケースが多いでしょう。
 

少し話が逸れてしまいましたが、会社に退職を認めてもらい、失業保険をもらう手順は次の通りです。

①退職届の提出
法律では退職する14日前までに会社に退職を通達する義務がありますが、一般的には1ヵ月前とする会社が多いです。

引き継や有休消化を考えると、1ヵ月前以上の届出がスマートかもしれません。

②退職後に離職票が届くのを待つ
退職後に会社から受け取るものはいくつかありますが(雇用保険被保険者証や年金手帳、源泉徴収票等)、直接もらうか、郵送かは会社により異なります。

離職票は通常、1~2週間以内に届くとされています。
もし届かない場合は会社に催促して、一日も早く失業保険の手続きに移りたいところです。
 

③到着した離職票を確認
離職票は2種類届きます。

特に、退職理由蘭は、会社都合か、自己都合かをよく確認しましょう。

④ハローワークへ行き求職の申込みをする
ハローワークで最初に行う手続きは、失業保険の受給申請ではなく、「求職の申込み」です。

そして後日、「雇用保険受給説明会」等で失業保険についての説明がなされます。

=求職の申込みの際の持ち物=

1.雇用保険被保険者離職票(1)
2.雇用保険被保険者離職票(2)
3.印鑑
4.写真2枚(縦3cm×横2.5cm)
5.普通預金通帳
6.マイナンバー確認証明書(マイナンバーカード、通知カード、住民票など)
7.本人確認証明書(運転免許証、マイナンバーカード、年金手帳など)

 念のため退職する際に、「離職票を発行して欲しい」と会社側に伝えておくといいかもしれませんね。

2-3:転職先を探しておこう

ブラック企業は、仕返しをしてきた、あるいは仕返しを考えるあなたの手を封じるために、突然の解雇や、正当な理由が無い解雇を言い渡すなど、法律を無視した「不当解雇」という手口を使ってくる可能性があります。

そうした展開を見込み、仕返しをする前には、転職活動をしておいた方が得策でしょう。

「不当解雇」の他にも、昼になったら帰らせるといった、陰湿な嫌がらせをするケースもあります。 
 

下記の記事でブラック企業の見分け方などを詳しく解説していますので、二度とブラック企業に勤めないためにも、こちらの記事も参考にしてみてください。

たった4分でわかるブラック企業の基準とは?【対策と見抜き方付き】

【コラム】同業種に転職する際に注意したいこと

転職するとなると、これまでのキャリアを生かそうとする人がほとんどではないでしょうか。

同じ業界であれば、仕事内容や給与もイメージが付きやすいのは確かですが、反面、あなたのこれまでの噂も広まりやすいということが考えられます。

ブラック企業への仕返しが度を過ぎると、転職先でも要注意人物とされてしまう可能性があるので注意しましょう。

いかがでしたか?

2章では、あなたがブラック企業に仕返ししたことで、不利益をもたらさないためのアドバイスをさせていただきました。

本来あなたにある権利を奪われてしまわぬよう、事前準備はしっかりしておきましょう。

まとめ:ブラック企業への仕返し

あなたがブラック企業に仕返しする一番いい方法が、この記事により見えてきたのではないでしょうか。

最後に、この記事の内容をもう一度おさらいしましょう。

この記事でもっともお伝えしたかったのは、ブラック企業にダメージを与える2つの方法です。

・残業代や慰謝料といった金銭を請求する方法
・本社への報告や行政機関への告発により、ブラック企業の違法を訴える方法

ただ、仕返しに意識が向き過ぎて、本来あなたにある権利を失ったり、あなた自身の評判を落としてしまったりするのは残念なことです。

ブラック企業への仕返しが、逆にあなたの身を滅ぼすことにならないよう、有休消化失業保険の受給といった権利を利用したり、転職先をあらかじめ見つけておいたりといった根回しをすることも大切でしょう。

少なくとも、上記のことをあなたが勇気を持ち実行することが、あなた自身の気持ちを軽くし、現在ブラック企業で働いている人たちにとってもプラスに働くはずです。

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