【図解】残業手当をきっちり貰う!3ステップでわかる正しい計算方法

監修者

弁護士法人QUEST法律事務所
住川 佳祐

【図解】残業手当をきっちり貰う!3ステップでわかる正しい計算方法
チェック
この記事を読んで理解できること
  • すぐ計算できる!残業手当の計算方法
  • こんな手当も残業手当として扱われる
  • きちんと残業手当が貰えていない場合には残業代を請求できる

あなたは、本当に自分がもらうべき残業手当を把握していますか?

「そもそも残業手当って何?」
「残業手当を自分で計算したことはないな…」

残業手当とは、1日8時間・週40時間を超えて働いた時間(残業時間)に対して支払われる賃金のことをいいます。

本来、残業手当はあなたが残業した時間だけ支払われますが、会社の中にはこれをごまかそうとするところがあります。

経営者(本音)
経営者(本音)
自分で残業代手当の計算なんかしないだろうから、勝手に減らしてしまえ!

そのため、自分で残業手当を計算し、本来もらえるはずの残業代を把握しておくことが大切なのです。

この記事では、残業手当の計算方法や、残業代の基礎となる残業手当の種類、残業代の請求方法について解説します。

この記事を読んで、残業手当を正しく計算できるようになりましょう。

【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】

■残業代は以下の計算式で出すことができる

  • 残業代=基礎時給×割増率×残業時間
  • 基礎時給=月給÷170時間

■以下のような場合には、残業手当は無効になる

  • 残業手当を、何時間の残業時間の対価として支払っているのか曖昧にしている
  • 残業手当として支払っている金額を、残業手当分とされている残業時間で割ると、最低賃金を下回る

※残業手当が無効になった場合には、残業手当も含んだ額が月給としてカウントされるため、未払い分が発生した場合は請求可能です。

残業手当の計算方法に関するこの記事の流れ

未払い残業代を取り返したいというあなたへ、まずはお気軽にご相談ください
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1章:すぐ計算できる!残業手当の計算方法


この章では、残業手当の計算方法について解説します。まずは【基礎編】で残業代の計算方法を学び、【実践編】で残業手当を計算してみましょう。

1-1:【基礎編】残業代の計算方法


残業代は、以下の簡単な計算式で求めることができます。

残業代の計算式

順番に解説します。

1-1-1:時間当たりの賃金を求める

残業代の計算式(基礎時給)

まずは、基礎時給(時間当たりの賃金)を計算します。時給制の場合は計算する必要はないのですが、月給制の場合には、以下の計算式を使って基礎時給を出します。

基礎時給の計算式

(注)所定労働時間とは、会社から決められている1か月の労働時間のことを言います。170時間前後であることが多いです。

残業手当をはじめとする各種手当をもらっている場合、手当の種類によって月給に含めるかどうかが変わります。どのような手当てを月給にカウントするかは、2章で解説します。

1-1-2:割増率を把握する

残業代の計算式(割増率)

次に、基礎時給に割増率をかけます。割増率とは、法定労働時間(1日8時間、1週間40時間)を超えて働いた場合に、通常の賃金にプラスされる割合を示したものです。

【表】割増率一覧

 

労働条件

基礎時給比

時間外労働

1.25倍

法定休日労働

1.35倍

深夜労働 0.25倍

時間外労働+深夜労働

1.5倍

休日労働+深夜労働

1.6倍

①時間外労働:法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働のこと
②法定休日労働:法律に定められている、週一回取らなければならない休日、又は4週間に最低4回取らなければならない休日に行われる労働
③深夜労働:午後10時~午前5時の間に働くこと
④時間外労働+深夜労働:法定労働時間を超え、かつ深夜労働をしている場合
⑤休日労働+深夜労働:休日労働をしていて、深夜労働になった場合

1-1-3:残業時間をカウントする

残業代の計算式(残業時間)

最後に残業代をかけます。

「残業時間」とは、1日8時間、週40時間のどちらかを超えて働いた時間のことです。

残業時間には1.25倍の割増率がかけられる

弁護士
弁護士
あなたが働いた時間(労働時間)とは、「使用者の指揮命令下に置かれている時間」を指します。

これは簡単に言えば、職場の責任者に明示的に指示されたり、仕事上働かざるを得なかった時間を指します。

そのため、以下の時間も労働時間としてカウントすることができるのです。

準備時間:制服、作業服、防護服などに着替える時間、始業前の朝礼・体操の時間など
後始末時間:着替え、掃除、清身
休憩時間:休憩中の電話番や来客対応などを依頼された場合
仕込み時間:開店前の準備やランチとディナーの間の仕込み時間
待機時間:トラックの荷待ちの時間
仮眠時間:警報や緊急事態に備えた仮眠の時間(特に警備や医療従事者など)
研修:会社からの指示で参加した研修
自宅の作業:仕事が終わらず自宅に持ち帰って仕事した時間

「何が労働時間にあたるのか」について、詳しくは以下の記事を参照してください。

弁護士が解説する「残業の定義」とごまかされやすい8つの労働時間

1-2:【実践編1】残業手当の計算方法

残業代の計算方法がわかったら、実際に残業手当を計算してみましょう。

1-2-1:残業手当の計算式

毎月一定の額の残業手当が支払われている場合、あなたの会社は「固定残業代制(みなし残業代制)」を採っているといえます。

固定残業代(みなし残業代)の払われるイメージ

例えば、あなたの会社が「毎月30時間のみなし残業に対して、3万円を払う」としているとしましょう。

この場合、ひと月の残業が30時間以下であれば、会社は一律3万円の残業代を払えば良いといえます。一方、ひと月の残業時間が30時間を超えてしまった場合、会社は3万円を超えた分の残業代を別途支払う必要があるのです。

弁護士
弁護士
定額の残業手当を出す場合には、契約書や就業規則に「〇時間分の残業代として」残業手当を払うのか記載しないといけません。この記載がない場合には、1-3を読んでください。

このように、会社があらかじめ決めている残業時間を超えて残業をした場合には、以下の計算式を使って残業代を計算します。

固定残業代制の計算式

途中までは、残業代の計算式と同じになります。ポイントは、最後に固定残業代を引くところです。

弁護士
弁護士
この計算式を使って出た金額を、未払い残業代として会社に請求することができます。

1-2-2:残業手当の計算シミュレーション


例を使って、残業手当の計算をしてみましょう。

(例)営業職のAさん
・月給20万円(手当込み)
・残業手当3万円

まずは基礎時給を計算します。

月給20万円÷所定労働時間170時間=基礎時給約1176円

深夜残業や法定休日の出勤がないとすると、

基礎時給1176円×割増率1.25倍×残業時間100時間−固定残業代3万円=11万7000円

残業代は時効にかかるまでの3年分が請求できるため、3年の合計で421万2000円になります。

1-3:【実践編2】残業手当が認められない場合の計算方法


以下のような場合には、残業手当は残業代の対価とは認められず、無効になります。

・残業手当とそれ以外の賃金が、明確に区別できない
・ある手当てが残業代の趣旨であることが記載された、就業規則・賃金規定が周知されていない
・残業手当を除く部分の金額を、一月平均所定労働時間で割ると、その都道府県の最低賃金を下回る。

残業手当が無効になった場合には、残業手当も含んだ額が月給としてカウントされます

例を見てみましょう。

(例)営業職のBさん
・月給20万円(手当込み)
・営業手当3万円

まず、月給は

20万円+営業手当分3万円

23万円

として計算します。

そのため、基礎時給の計算は、

月給23万円÷一月平均所定労働時間170時間
約1353円

となります。次に1ヶ月の残業代は、

基礎時給1353円×1.25倍×100時間=16万9125円

になります。

請求できる3年分の未払いの残業代を合計すると、608万8500円にもなります

2章:こんな手当も残業手当として扱われる


会社は残業代の代わりとして、様々な手当てを出します

残業手当のほかにも、例えば、

・営業手当
・調整手当
・職務手当

などの手当てをもって、「残業代を支払った!」と言ってくることがあります。

では、どのような手当てが残業代の計算(基礎時給の計算)に含まれるのでしょうか。

基礎時給に入れられる手当・入れられない手当

基礎時給に入れてよい手当・入れられない手当を簡単に表にまとめると、上のようになります。もっとも、実際に、残業代の計算の基礎となるかどうかは、難しい法的判断が必要であるためケースバイケースになります。

社員
社員
うちの会社から支給される「家族手当」は、残業代の計算の基礎にはできないのか。

弁護士
弁護士
実は、基礎時給の計算に含めるかどうかは、手当の名前だけで簡単に決まらないのです。

例えば、「家族手当」という名前であっても、扶養家族の有無・人数にかかわらず、社員一律に同額支払われているような場合、「家族手当」としての実態がありません。このような場合、「家族手当」という名前であったとしても、その手当は、基礎時給の計算で考慮してよいことになります。

このように、手当が実際に何の目的で支払われているのかによって、手当の種類は決まります。

3章:きちんと残業手当が貰えていない場合には残業代を請求できる

本来もらうべき残業手当がもらえていない場合には、会社に対し残業代を支払うよう求めることができます。

残業代の請求方法には、以下の2つがあります。

・弁護士に依頼して請求する
・自分で会社に請求する

未払い残業代は自分で請求することもできますが、手間や時間、最終的に戻ってくる残業代の金額を考えると、弁護士に依頼するのがおすすめです。

残業代の請求方法について、詳しくは以下の記事を参照してください。

【図解】未払い残業代を請求するための完全マニュアル(弁護士監修)

まとめ:残業手当の計算

いかがだったでしょうか。最後に簡単にまとめてみましょう。

・残業代は以下の計算式で出すことができる。

残業代=基礎時給×割増率×残業時間
基礎時給=月給÷170時間

・残業手当は以下の計算式で出すことができる。

残業代=基礎時給×割増率×残業時間−残業手当

・以下のような場合には、残業手当は無効になる。

・残業手当を、何時間の残業時間の対価として支払っているのか曖昧にしている
・残業手当として支払っている金額を、残業手当分とされている残業時間で割ると、最低賃金を下回る

残業手当が無効になった場合には、残業手当も含んだ額が月給としてカウントされる

・基礎時給に含めても良い手当は以下の通り。ただし、どの手当にあたるかは名前だけでなく実際の手当の内容から判断する。

残業手当の支給にあたり、会社が金額をごまかしていることも多いです。早速自分で計算をしてみましょう。

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