離婚後の年金分割ガイド!専業主婦が分割できる夫の年金と請求期限
この記事を読んで理解できること
- 専業主婦でも離婚後の年金を増やせる可能性がある
- 離婚後の年金分割ガイド
- 離婚後の年金分割の種類
- 離婚の際に請求できるお金
あなたは、
- 離婚したら専業主婦の年金はどうなる?
- 離婚して年金で損したくない
- 離婚後の年金分割について知りたい
などとお考えではありませんか?
結論から言うと、専業主婦でも離婚後の年金を増やせる可能性があります。
年金分割制度によって、離婚後でも夫の婚姻中の厚生年金保険料の納付記録(標準報酬)を分割して受け取ることができるからです。
ただし、年金分割制度の対象となる夫の年金は厚生年金に限られており、さらに離婚後に自動的に受け取れるものではないため注意が必要です。
そこでこの記事では、
1章では、専業主婦でも離婚後の年金を増やせる可能性がある
2章では、離婚後の年金分割ガイド
3章では、離婚後の年金分割の種類
4章では、離婚の際に請求できるお金
について解説します。
この記事の内容をしっかり理解して、離婚後の年金で損をしないように行動してください。
目次
1章:専業主婦でも離婚後の年金を増やせる可能性がある
あなたが専業主婦でも、離婚後の年金を増やせる可能性があります。
2007年(平成19年)から年金分割制度が運用され、婚姻中に納められた夫の厚生年金保険料の納付記録(標準報酬)を、夫婦間で通常2分の1の割合で分割できるようになりました。
この制度によって、夫の扶養家族として厚生年金を支払うことのなかった専業主婦でも、年金が増額されます。
ただし公的年金には、自営業者などが加入する国民保険と会社員などが加入する厚生年金の2種類がありますが、年金分割の対象となる部分は厚生年金に限られるなど、いくつかの条件や手続きが必要となります。
そこで次の章では、年金分割制度について詳しく解説します。
2章:離婚後の年金分割ガイド
この章では、離婚後の年金分割ガイドとして、
- 年金分割とは
- 年金分割の対象となる年金
- 年金分割の請求期限
についてそれぞれ解説します。
2-1:年金分割とは
年金分割とは、離婚の際に夫婦の婚姻期間中の厚生年金保険料の納付記録(標準報酬)の、多い方から少ない方へ分割して上乗せできる制度です。
(※第2号被保険者は、厚生年金の加入者であると同時に、加入する制度から国民年金も支払われているため、国民年金の加入者にもなります。)
例えば、夫が会社員で妻が専業主婦だった場合、65歳以降の年金は夫と妻それぞれの国民年金と夫の厚生年金が受け取れます。
しかし離婚して年金分割を受けない場合は、妻の年金は結婚前の厚生年金と国民年金だけになるため、夫と妻の受け取る金額には大きな差が生じます。
そのため離婚する際には、婚姻期間中の夫の厚生年金の分割を求めることが大変重要です。
2-2:年金分割の対象となる年金
上図でも示したように年金分割の対象となる年金は、婚姻期間中(図では30歳~55歳まで)の厚生年金部分になります。
会社員の場合、給与明細では厚生年金として給与から天引きされますが、国民年金と厚生年金の2つの保険料が含まれています。
そのため、厚生年金が分割されるのは、
- 婚姻期間中の納付記録で年金額ではない
- 最大で2分の1
- 国民年金(基礎年金)は含まない
となります。
■年金分割の対象となる
第2号被保険者である70歳未満の会社員や公務員など厚生年金の加入者
■年金分割の対象とならない
第1号被保険者である自営業者や農業者、漁業者とその家族、学生、無職の方
2-3:年金分割の請求期限
年金分割の請求期限は、「離婚した日の翌日から2年以内」になります。
また、離婚後に元配偶者が死亡した場合は、亡くなった日から1ヶ月が経過すると、原則として年金分割は請求できなくなります。
ただし、年金分割の話し合いで合意が得られない場合は、離婚後2年以内に裁判所に調停または審判を申し立てましょう。
調停成立または審判が確定した日から6ヶ月の間は、年金事務所に年金分割を請求できます。
3章:離婚後の年金分割の種類
離婚後の年金分割には、次の2種類があります。
- 合意分割
- 3号分割
それぞれ解説します。
3-1:合意分割
合意分割とは、2007年(平成19年)4月1日以後に離婚等をした場合に、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬)を当事者間で分割できる制度です。
合意分割を行う条件として、次の3つがあげられます。
- 婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬)がある
- 当事者間の合意または裁判手続により割合を定めた(最大2分の1)
- 請求期限(原則、離婚等をした日から2年以内)を経過していない
年金分割をするための情報を取得するために、年金事務所に「年金分割のための情報通知書」を請求する必要があります。
情報通知書の請求は、離婚の前でも後でも行なえます。
「年金分割のための情報提供請求書」に、下記の書類を添えて年金事務所に提出しましょう。
- 基礎年金番号またはマイナンバーを明らかにできる書類
- 婚姻期間等を明らかにできる書類
3-2:3号分割
3号分割とは、2008年(平成20年)5月1日以後に離婚等をした場合に、第3号被保険者からの請求により、2008年(平成20年)4月1日以後の婚姻期間中の相手の厚生年金記録(標準報酬)を2分の1ずつ当事者間で分割できる制度です。
3号分割の請求にあたっては、当事者間の合意は必要ありません。
3号分割を行う条件として、次の2つがあげられます。
- 婚姻期間中に2008年(平成20年)4月1日以後の第3号被保険者期間中の厚生年金記録(標準報酬)がある
- 請求期限(原則、離婚等をした日から2年以内)を経過していない
ただし、2008年(平成20年)4月以前の婚姻期間中については、3号分割ではなく合意分割の対象となるため、合意分割の手続きが必要です。
厚生年金記録(標準報酬)を当事者間で分割した場合は、それぞれの老齢厚生年金等の年金額は分割後の記録に基づき計算されます。
4章:離婚の際に請求できるお金
離婚の際には、婚姻期間中の年金分割の請求だけでなく、その他にも請求できるお金があります。
- 婚姻費用
- 財産分与
- 慰謝料
- 養育費
それぞれ解説します。
4-1:婚姻費用
婚姻費用とは、婚姻中の夫婦の生活にかかる費用のことで、食費や住居費、養育費、医療費などを指します。
専業主婦など相手より収入が少ない場合は、離婚を決意して別居した時に、相手に対して離婚までの期間の婚姻費用を請求できます。
具体的な金額は、話し合いによって決めることもできますが、合意が得られない場合は、家庭裁判所の定める算定表に基づいて、調停や審判でその金額が決定されます。
※平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
4-2:財産分与
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦で購入した家、車、貯めたお金などを、離婚の際に二人で分けることを言います。
財産分与には、以下の3つがあります。
■清算的財産分与
清算的財産分与とは、夫婦の間で協力して形成してきた財産については、離婚時に公平に分配するというもの(おおむね、2分の1に分配)。
■扶養的財産分与
夫婦の一方の経済力が弱く、離婚後に自立して生活することが難しい場合、生活費の補助として一定の金額を一定期間支払うもの。
■慰謝料的財産分与
夫婦の一方に離婚原因がある場合、傷つけたことに対する慰謝料としての意味を持った財産分与のこと。
別に慰謝料請求をしている場合は、慰謝料的財産分与も支払わせるのは難しいでしょう。
4-3:慰謝料
配偶者の不倫やDV(暴力)、モラハラなど相手に離婚の原因がある場合は、離婚慰謝料を請求できます。
離婚慰謝料の相場は、下記のようになるといわれています。
※状況によって金額は異なるため、参考程度に考えてください。
離婚慰謝料の相場は50万円~300万円程度ですが、離婚の原因となった相手の行為や、結婚してからの期間、幼い子供の有無などによっても金額が変わってきます。
このように慰謝料の金額はケースバイケースですが、離婚トラブルに強い弁護士であれば、より高額の慰謝料を請求できる可能性があります。
4-4:養育費
養育費とは、親が離婚した未成年の子どもが自立するまでの、食費、学費、医療費、家賃などの、離婚後の子どもの生活全般にかかる費用のことです。
子どもと一緒に暮らす親(監護権者)が、子どもと暮らさない親に対して養育費を請求できます。
未成年の子どもがいる限り養育費の請求は認められるため、たとえ配偶者が「養育費は支払わない」と拒否しても請求が可能です。
養育費の相場としては、双方の親の収入をもとに、裁判所が養育費の金額を算定した「養育費算定表」が、一般的な基準とされています。
そのため、離婚時か離婚後に、養育費の金額や支払い方法、支払い日などを取り決める必要があります。
子どものためにも、確実に養育費を取れるように行動することが大事です。
まとめ:離婚後に受け取れる年金
専業主婦でも離婚後の年金を増やせる可能性があります。
年金分割とは、離婚の際に夫婦の婚姻期間中の厚生年金保険料の納付記録(標準報酬)の、多い方から少ない方へ分割して上乗せできる制度です。
年金分割の対象となるのは、第2号被保険者である70歳未満の会社員や公務員など厚生年金の加入者になります。
離婚後の年金分割には、次の2種類があります。
■合意分割
合意分割を行う条件として、次の3つがあげられます。
- 婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬)がある
- 当事者間の合意または裁判手続により割合を定めた(最大2分の1)
- 請求期限(原則、離婚等をした日から2年以内)を経過していない
■3号分割
3号分割を行う条件として、次の2つがあげられます。
- 婚姻期間中に2008年(平成20年)4月1日以後の第3号被保険者期間中の厚生年金記録(標準報酬)がある
- 請求期限(原則、離婚等をした日から2年以内)を経過していない
年金分割制度によって、離婚後でも夫の婚姻中の厚生年金保険料の納付記録(標準報酬)を分割して受け取ることができるので、離婚後の年金で損をしないように行動してください。