
ブラック企業の意図としては、
・無理やり売上を上げさせる
・洗脳してこき使う
・あなたを退職に追い込む
などがあるようです。
もしかすると、あなたもこのような暴言を吐かれたことがあるかもしれません。
実は、このような行為は全て「パワハラ」にあたり、損害賠償請求ができる可能性があるのです。しかし、実際のところいきなり一人で会社と戦ったり、弁護士に相談したとしても、満足いく結果を得るのは難しいです。
この記事では、
・パワハラ診断チェックリスト
・会社や第三者機関への相談
・損害賠償の手順と対策
を説明していきますので、しっかり読んで知識をつけてください。
また、損害賠償請求をする方法以外にも、会社や上司にも一矢報いる方法もご紹介します。あなたが上司・同僚から受けている行為もパワハラにあたるかもしれませんので、早速確認してみましょう。
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■パワハラの6つの累計
■パワハラへの対処法
- 会社に相談する【大企業向け】
- 労働組合に相談する【ややおすすめ】
- 労働基準監督署に相談する【ややおすすめ】
- 弁護士に相談する【最もおすすめ!】
※パワハラで賠償金を取ることは難しいため、残業代請求として訴えることが大事。
1章:パワハラの基準
「パワハラ」という言葉をよく耳にしますが、パワハラとは、法律上どのようなことを指すのでしょうか。
パワハラの定義や、パワハラに該当する行為についてみていきましょう。
1-1:パワハラとは
厚生労働省によれば、パワハラは大きく分けて6つの類型にわけられるとされています。
パワハラというと、暴言や暴力が思い浮かびがちですが、精神的な攻撃や、人間関係を破壊することもパワハラに含まれるのです。
この定義は少し難しいため、チェックリストを使ってパワハラにあたるかどうかを確認してみましょう。
1-2:パワハラ・チェックリスト
では、具体的にどのような行為があればパワハラということができるのでしょうか。パワハラチェックリストを用意しましたので、確認してみましょう。
【身体的な攻撃】
・蹴られたり、叩かれたりすることがある
・物を投げられることがある
・髪を引っ張られた
・胸倉をつかまれた
【精神的な攻撃】
・「おい」「お前」などと呼ばれ、上司に名前を呼んでもらえない
・ミスをすると長時間説教される
・あいさつを無視される
・八つ当たりで怒られることがある
【人間関係からの切り離し】
・人間関係・仕事を全く教えてくれない
・職場で無視をされている
・全員出席の飲み会に呼ばれない
・窓際や別室など、一人だけ他の人から離れた席である
【過大な要求】
・とてつもない量の仕事を与えられる
・全く指導を受けていない仕事を与えられる
・見せしめに就業規則の書き写しを命じられる
・たくさん始末書を書かなければならない
【過少な要求】
・仕事をほとんど与えられない
・自分の業務と関係のない仕事をさせられる
・上司から放置されている
・経験があるにもかかわらず、簡単な仕事ばかりさせられる
【個の侵害】
・恋人の有無などプライベートについて詳しく話を聞かれる
・休みの理由を聞かれる
・スマホをのぞかれる
・GPSなどを使い、行動を監視されている
チェックリストにあてはまるものが多い場合、パワハラ被害者度が高いといえます。また、ひとつしか該当しない場合でも、程度がひどければ立派なパワハラ被害者です。早急になんらかの手段をとり、パワハラ状態を解消する必要があるといえるでしょう。
自分がこのような行為をしている場合には、知らない間に、パワハラ加害者になっているおそれがありますので注意しましょう。
では、パワハラを受けている場合にはどのように対処すれば良いのでしょうか。
2章:パワハラへの対処法
パワハラを受けた場合、重要になってくるのがその対処法です。初動を間違えてしまうと、パワハラの解決が長引いてしまうこともあります。
この章をじっくり読んで、パワハラの対処方法を学びましょう。
2-1:会社に相談する【大企業向け】
パワハラを受けた場合、まずは「会社に相談」してみましょう。会社に相談する方法としては、例えば次のようなものが挙げられます。
・パワハラの相談課など窓口に相談する
・パワハラをしている上司のさらに上の人に掛け合う
このように会社に相談することで、人事異動や部署移動が行われ、「パワハラをしている人から離れる」ことができるかもしれません。この方法は、会社内で対処できるため、もっとも平和な方法であるといえます。
しかしながら、特にブラック企業では、組織的にパワハラを隠そうとしたり、そもそもパワハラを認めない場合があります。そういったケースでは、次の労働組合に相談する、という方法がおすすめです。
2-2:労働組合に相談する【ややおすすめ】
会社に相談したにもかかわらず、会社側が動いてくれないときには、労働組合に相談しましょう。
労働組合とは、労働条件を良くするための団体のこと。あなたの代わりに、パワハラについて会社と話し合いをしてくれます。
労働組合は会社や地域ごとに作られていますので、身近なところを探してみてください。
2-3:労働基準監督署に相談する【ややおすすめ】
ほかにも労働基準監督署に相談するという方法もあります。労働基準監督署は、「パワハラがありそうだ」とわかれば、立ち入り検査や指導を行ってくれます。
具体的な相談方法ですが、労働基準監督署には総合労働相談コーナーがあり、ここでパワハラについて相談を受けることができます。電話でも相談を受け付けていますので、労基署が遠いという方は電話相談を利用すると良いでしょう。ただし、受付時間が短い(多くの自治体では17時まで)点には注意してください。
ただし、ここで注意がひとつ。現実的に、労働基準監督署は個人のパワハラ問題などではなかなか動いてくれません。そのため、あまりおすすめできる方法ではありません。
【コラム】労働者災害補償をもらおう
パワハラを原因としてうつや心身症になってしまった場合、労働者災害補償を受けることもできます。これは、労働基準監督局で申請をし、給付を受けることができる保険です。
労働者災害補償は、「職場にける心理的負荷評価表」を元に認定が行われますので、裁判をするよりもハードルが低くお金をもらうことができます。
2-4:弁護士に相談する【最もおすすめ!】
最後の手段として、「弁護士に相談する」という方法もあります。
弁護士に相談というと裁判のイメージが強いかもしれませんが、いきなり裁判を起こすわけではありません。
まずはパワハラをしている相手に対して警告書を送り、パワハラをやめるよう説得します。場合によっては、会社に対し、パワハラを改善するように求めます。
これでもパワハラが良くならない場合に、はじめて裁判を起こすことになります。
3章:実は難しい!パワハラによる賠償金の請求
「パワハラを受けたから、お金で解決したい…」
パワハラをされた人の中には、こう考える人も多いはず。しかし、実はパワハラにより賠償金を取ることは難しいんです。その理由についてご紹介します。
3-1:賠償金がもらえない2つの理由
パワハラによる賠償金がもらえない理由には、大きく分けて2つあります。その2つとは、
・証拠を集めるのが難しい
・「パワハラ」の定義があいまい
という理由です。ここでは、2つの理由を詳しく説明するとともに、どうしてもお金が欲しいという場合の対処法についてもご説明していきます。
3-1-1:証拠を集めるのが難しい
パワハラを理由として賠償金をもらいたい場合、ひとつ覚えておいてほしいことがあります。それは、「パワハラを理由として賠償金をもらうのは難しい」ということです。これはなぜなのでしょうか。
その理由のひとつとして「証拠を集めるのが難しい」ということが挙げられます。例を見てみましょう。
・「君のためを思って説教しているんだ」という内容をICレコーダーで録音した
→一回の説教内容だけでは、本当に叱られているだけにも思える
・「一人だけ飲み会に呼ばれなかった」と日記に書いた
→一人だけ呼ばれなかったことを客観的に裏付ける証拠がない
パワハラがあったことを証明するためには、誰が見てもパワハラだとわかる証拠が必要です。一回説教されただけや、単に飲み会に呼ばれなかっただけだと証拠として弱く、長期間にわたってこのようなことが行われないと、パワハラがあったと認定するのは難しいのです。
3-1-2 :「パワハラ」の定義があいまい
また、その他の理由として、「パワハラ」という言葉がぼんやりしている、ということが挙げられます。例えば、このような行為はパワハラにあたるか微妙になってきます。
・スキルアップのため、難しい業務を与えた
・次の業務に生かすため、ミスするたびに始末書を書かせた
・雑談しているときに、家族についての話になった
パワハラには大きな類型があるだけで、「これをしたらパワハラ」というはっきりとした基準があるわけではありません。そのため、裁判でパワハラがあったと認定することは難しいのです。
3-2:「パワハラ」ではなく「残業代請求」として訴える
では、パワハラを受けた場合に、他にお金を請求する方法はないのでしょうか。
ここでひとつ考えられるのが「残業代を請求する」という方法です。パワハラを受けている場合、同時にサービス残業をさせられていることもよくあります。そこで、未払いの残業代を請求し、会社からお金をもらうのです。
残業代請求をする場合にも、証拠がとても大事になってきます。退職してしまうと証拠を集めにくくなってしまうので、在職中にサービス残業をしていた証拠を集めておくようにしましょう。残業代請求をする場合の証拠としては、以下のようなものがあります。
・タイムカードなどの出勤記録
・残業時間をメモした手帳
・パソコンのログ
・鉄道系ICカード
・家族に「帰る」とメールを送信した履歴
・会社近くで買い物をしたレシート
「どうにかお金を取りたい」という場合には、残業代請求がおすすめです。
詳しくは【保存版】知らないと損する?残業代請求する為に揃えておくべき証拠をご参照ください。
4章:賠償金が取れたケース・取れなかったケース
4-1:賠償金が取れた例
パワハラで賠償金を取ることが難しいといっても、まったく取れないわけではありません。賠償金をもらうことができたケースを見てみましょう。
・消費者金融で働いていたAさんは、上司に「たばこくさい」といわれ扇風機の風を当てられ続けたり、面談の際に足をけられたりした。また、Aさんが上司の言う通りに働かないと、上司は始末書を書かせた上「お前はやる気がない。明日から来なくていい」などと叱った。さらに、お昼ご飯の際に「よくこんな奴と結婚したな」と暴言を吐いた。そのため、Aさんはうつ病になってしまった。
→賠償金60万円
このようなパワハラの内容で60万円の賠償金は安いようにも思えますね。しかし、やはりパワハラで賠償金を取るのは難しいというのが背景にあります。
しかし、それでも賠償金を取ることができたのは、パワハラの程度がひどいことに加え、証拠がしっかり残っていたためだといえます。
パワハラがあったことを証明する証拠として有用なものとしては、以下のようなものが挙げられるでしょう。
・暴言を録音したICレコーダー
・上司から送られたメール
・暴力があった場合、病院でもらった診断書
・時間外労働をさせられていた場合、残業時間がわかるメモ、パソコンのログ、家族にあてたメールなど
・同僚などの証言
パワハラの証拠は、在職中にしか集められないものばかりです。辛いとは思いますが、退職する前に、パワハラの証拠を集めるようにしましょう。
4-2:賠償金が取れなかったケース
逆に、賠償金が取れなかったケースもあります。
・ノルマを達成できないと「なぜ売れないんだ!いつまでに売るんだ!」「おまえ、頭や考え方がおかしいんじゃないのか」などとののしられた。また、会議に出席しようとすると「ここからは君に関係ないから」と追い出されてしまった。このようなストレスから、視覚障害になってしまう。
→客観的な証拠がないとしてパワハラが認められなかった
・引継ぎノートを残しておいたのに「お前の書き方が悪かったから仕事はしなかった」と言いがかりをつけられた。また、先輩に意見すると「口答えするな」と怒鳴りつけられた。
→先輩からの指導には従うべきであり、この程度ではパワハラにあたらない。
このように、ひどい内容のケースであっても賠償金が取れないということはよくあります。パワハラで賠償金を取りたい場合には、まず証拠を集めるようにしましょう。
まとめ:パワハラのチェック
この記事では、
・パワハラにあたる6類型とチェックリスト
・パワハラだと感じたら、労働組合や労働基準監督署など第三者機関に相談する
・パワハラを理由として賠償金をもらうのは難しい
・パワハラをされた場合には、在職中に証拠を集めておく
という点をご説明してきました。
本文中でも説明したとおり、裁判において「パワハラである」と認定されるのはなかなか難しいといえます。パワハラにあたらない場合のことも考え、転職も視野に入れておきましょう。
パワハラを受けた場合には、他人の手をかりつつ、労基や裁判、転職などさまざまな方面から解決を図っていくようにしましょう。