【定年離婚のよくある理由】メリデメ、請求できるお金と決めるべき条件
この記事を読んで理解できること
- 定年離婚のよくある5つの理由
- 定年離婚のメリット・デメリット
- 定年離婚で請求できるお金と決めるべき条件
- 定年離婚の流れ
あなたは、
- 定年離婚について知りたい
- 定年離婚のメリットやデメリットは?
- 定年離婚した後に困らないようにしたい
などとお考えではありませんか?
定年離婚とは、配偶者またはご自身の定年をきっかけとして離婚することを言います。
定年離婚する理由としては、定年退職して家で一緒に過ごす時間が増えたためや、長年我慢していた価値観のずれなど様々な理由があげられますが、定年退職を人生の大きな節目として第二の人生を求めるケースが多いです。
ただし定年離婚では、長年夫婦で築いてきた財産や退職金、年金、住宅といった経済的な離婚条件だけでなく、離婚後の一人暮らしや介護、相続といった生活面や家族の問題など、解決すべき重要な問題が多くあります。
そこでこの記事では、
1章では、定年離婚のよくある5つの理由
2章では、定年離婚のメリット・デメリット
3章では、定年離婚で請求できるお金と決めるべき条件
4章では、定年離婚の流れ
について解説します。
この記事の内容をしっかり理解して、定年離婚を検討する際や、定年離婚を決断し行動に移す際の参考にしてください。
目次
1章:定年離婚のよくある5つの理由
定年離婚のよくある理由として、次の5つがあげられます。
- 性格の不一致や価値観のずれから
- 家で一緒にいる時間が増えたから
- 子どもが自立したから
- 相手の不倫やDV・モラハラ
- 介護をしたくないから
それぞれ解説します。
1-1:性格の不一致や価値観のずれから
定年離婚のよくある理由として、長年にわたる性格の不一致や価値観のずれがあげられます。
その主な内容としては、次の5つがあげられます。
- 性格が違いすぎる
- 価値観や金銭感覚が合わない
- 趣味や感情の共有ができない
- 子どもの教育方針が合わない
- 性の不一致(セックスレス等)
夫婦でも性格が違いすぎる例はよくありがちで、お互いに我慢できる程度なら問題はありませんが、度が過ぎる場合や長年我慢を強いられていた場合などは、離婚を考える十分な理由になります。
そのため、配偶者またはご自身の定年をきっかけとして、離婚を決意するケースも多いです。
ただし、性格の不一致を理由に配偶者に離婚を求めても、相手の合意が得られず他に離婚理由がない場合は、離婚訴訟を申し立てても離婚できない可能性が高いです。
1-2:家で一緒にいる時間が増えたから
配偶者またはご自身の定年によって家で一緒にいる時間が増えたため、長年の生活スタイルの変化と相手の存在からストレスを感じるケースが多いです。
例えば専業主婦の場合は、今まで毎日会社に行っていた夫が、自宅にこもりきりで一日中顔を合わせることになると、どうしても不満や苦痛を感じるようになるのでしょう。
ましてや、それまで夫に不満を抱えていた妻の場合は、家に夫がいることが大きなストレスになり、離婚を決意したとしても無理はないことです。
1-3:子どもが自立したから
定年離婚では、子どもが自立したから離婚を真剣に考えるようになったという方も多いです。
子どものいる夫婦の場合、配偶者に対して不満があっても、子どものために離婚に踏み切れないケースもあるからです。
子どもが自立し立派な社会人になったことで、親としての役割も一段落するため、今度は自分が第二の人生に進む決意が生まれるのでしょう。
1-4:相手の不倫やDV・モラハラ
定年離婚のよくある理由として、相手の不倫やDV・モラハラがあげられます。
特に、相手が1度だけでなく何度も浮気や不倫を繰り返していて、反省の色が全く見られない場合は、定年を機に離婚を決意することもあるでしょう。
また、相手のDVやモラハラを我慢しながら夫婦生活を続けている場合は、自分の身の安全を考えてすぐに避難し、別居したうえで離婚の話し合いを進めるケースもあります。
なぜなら、定年退職し今まで以上に二人で過ごす時間が増えるため、肉体的にも精神的にも疲弊してしまう危険性があるからです。
1-5:介護をしたくないから
定年離婚のよくある理由として、相手の介護をしたくないからということもあげられます。
夫婦ともに年齢を重ねていく中で、将来的に配偶者の介護を迫られるケースも十分想定できるからです。
また、自分の親だけでなく義理の親の介護問題も、離婚の原因になる場合があります。
2章:定年離婚のメリット・デメリット
この章では、定年離婚のメリットとデメリットをそれぞれ解説します。
2-1:定年離婚のメリット
定年離婚のメリットとして、次の3つがあげられます。
- 夫婦生活の様々な悩みから解放される
- 配偶者の親族との関係を断てる
- 新たな出会いが得られる可能性がある
■夫婦生活の様々な悩みから解放される
定年離婚することで、これまでの夫婦生活で悩み続けた様々な問題から解放され、自分らしく自由に生きることができます。
1章で解説したように離婚の理由はいろいろありますが、離婚によって配偶者への不満やストレスを感じることなく一人で生活できます。
■配偶者の親族と関係を断てる
定年離婚することで、配偶者の親族との関係も断てるため、親族間のトラブルに巻き込まれずにすみます。
特に負担の大きい配偶者の親の介護問題を抱えている場合は、離婚によって関わらずにすみます。
■新たな出会いが得られる可能性がある
定年離婚によって婚姻関係が解消され一人で生きることによって、新たな出会いが得られる可能性があります。
仕事や趣味も自由に選べて好きな活動ができるので、新たな可能性が広がります。
2-2:定年離婚のデメリット
定年離婚のデメリットとして、次の3つがあげられます。
- 孤独を感じる
- 経済的な不安が生じる
- 健康面のリスクがある
■孤独を感じる
長年不満やストレスを感じていた夫婦生活であっても、一人だけの生活になった時に孤独を感じる可能性があります。
さらに、年齢を重ねることで体力が衰えたり病気になったりすることで、寂しさを感じてしまうケースも多いです。
■経済的な不安が生じる
定年離婚後は、経済的な不安が生じる可能性があります。
特に専業主婦やパートで働いていた女性の場合は、離婚後の仕事や収入の不安を抱えることになります。
定年離婚する夫婦の場合、一定の年齢を重ねているため、待遇の良い求人は極めて少ないのが現状です。
■健康面のリスクがある
離婚後に一人だけの生活を送っている場合、年々健康面のリスクも高まります。
夫婦で暮らしている場合は、お互いに支え合い健康面のサポートも受けられますが、一人暮らしの場合は生活の質を保つことも難しいため不安が高まります。
3章:定年離婚で請求できるお金と決めるべき条件
定年離婚で請求できるお金と決めるべき条件として、次の4つがあげられます。
- 財産分与
- 年金分割
- 慰謝料
- 未成年の子どもがいる場合の親権と養育費
それぞれ解説します。
3-1:財産分与
定年離婚で決めるべき条件として、まずは財産分与があげられます。
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦で築いた共有財産を、離婚時に公平に分け合うことです。
共有財産の主なものとして、次の5つがあげられます。
- 現金・預貯金
- 不動産・自動車
- 株式・国債・会員権等
- 生命保険等の保険料
- 退職金
財産分与によって、離婚理由にかかわらず所有する資産の少ない方が、資産の多い相手から一定の財産を離婚時に得られることになります。
ただし、婚姻前からそれぞれが個別に所有していた財産や、婚姻中にそれぞれの親から相続した財産(不動産や現金)等は対象となりません。
3-2:年金分割
定年離婚で請求できるお金として、年金分割があげられます。
年金分割制度によって、婚姻中に納められた厚生年金保険料の支払実績(標準報酬)を、夫婦間で通常2分の1の割合で分割できます。
年金分割の請求は、離婚の翌日から2年以内に申請を行わない場合は、年金分割を得ることができないので注意が必要です。
この制度によって、夫の扶養家族として厚生年金を支払うことのなかった専業主婦でも、婚姻中の夫の厚生年金保険料の支払い実績(標準報酬)を分割して受け取ることができ年金が増額されます。
ここでの注意点は、支給される夫婦の年金額を分割するわけではなく、婚姻期間中の厚生年金保険料の算定基礎となる標準報酬を分割するという点です。
さらに、年金分割は、国民年金は対象にならず、厚生年金部分だけが分割されます。
3-3:慰謝料
定年離婚の原因が、相手の不倫やDV、モラハラなどの不法行為にある場合は、慰謝料を請求できます。
離婚の慰謝料を請求できるケースとしては、次の5つがあげられます。
- 不倫・浮気をした場合
- DV(暴力)、継続した侮辱的発言などのモラハラの場合
- 悪意の遺棄(生活費を渡さない、他)の場合
- 悪質な借金がある場合
これらの慰謝料を請求できるケースでも、その内容・事例によって請求できる慰謝料の金額は様々ですが、大体の相場としては次の表のようになるといわれています。
離婚の際に、相手に慰謝料を請求するためには、不倫やDV、セックスレスなどの離婚原因の証拠となる画像や音声、詳細な記録などを集めておくことが必要です。
3-4:未成年の子どもがいる場合の親権と養育費
定年離婚で決めるべき条件として、未成年の子どもがいる場合の親権と養育費があげられます。
子どもの親権を夫婦間の話し合いで決める場合は、どちらかを親権者として認める合意が得られれば、特に親権者としての条件などはありません。
しかし、話し合いで合意が得られず、調停の申し立てや訴訟となった場合は、子どもや親の事情が考慮され、どちらを親権者とするか判断されます。
親権者には養育費の請求が認められているため、たとえ配偶者が「養育費は支払わない」と拒否しても、請求できます。
養育費とは、親が離婚した未成年の子どもが自立するまでの、食費、学費、医療費、家賃などの子どもの生活全般にかかる費用のことです。
養育費の決め方としては、現在子どもを育てるのにかかっている費用や、今後の成長に伴って必要とされる費用、お互いの財産や今後の収入の増減などを想定して決めていきます。
そのため、双方の親の収入をもとに、裁判所が養育費の金額を算定した「養育費算定表※」を基準として、決められるのが一般的です。
この養育費算定表では、夫婦それぞれの収入や子の人数、年齢に応じて、標準的な養育費が算出されています。
※平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
4章:定年離婚の流れ
定年離婚の流れは、次のようになります。
- 話し合いによる協議離婚
- 離婚調停
- 離婚訴訟
それぞれ解説します。
4-1:①話し合いによる協議離婚
協議離婚とは、夫婦間の話し合い(協議)による離婚です。
夫婦間の話し合いで合意が得られれば、離婚の理由を問われることなく、離婚届を提出することで成立します。
離婚協議の流れとしては、次のようになります。
- 夫婦の話し合いで、離婚条件(慰謝料、財産分与、親権など)を決める
- 離婚条件を離婚協議書にまとめる
- 作成した離婚協議書を公正証書にまとめる
- 離婚届を作成し、役場に提出する
離婚の方法としては最も多い形ですが、話し合いで離婚条件を決めて離婚届けを出すだけでは、後から問題が生じる可能性があります。
特に、離婚後に慰謝料や養育費など金銭による支払いを受けるときには、支払われない場合に備えて、できれば公正証書を作成されることをおすすめします。
公正証書とは、公証役場で公証人が法律にしたがって作成する公文書のことです。
公正証書に記載された慰謝料や養育費などの未払いが発生した際は、裁判を起こさなくても、相手の給料や財産を差し押さえるなど法的手続きがとれます。
4-2:②離婚調停
夫婦間の話し合いがうまくいかなかった場合は、家庭裁判所に離婚の調停を申し立てます。
離婚調停では、裁判官1名と調停委員2名からなる調停委員会によって、双方の意見の聞き取りや条件面の話し合いが夫婦別々に行われます。
夫婦双方が合意した場合は、合意した内容が調停調書に記載され、調停離婚が成立します。
申立人は、調停成立の日から10日以内に、離婚届に離婚調停調書の謄本を添えて、市町村役場に提出しなければなりません。
もし、相手が離婚を拒否したり、金銭面や子供の親権等で合意が得られない場合は、調停不調となります。
その場合は、離婚をあきらめるか、離婚を再度協議するか、あるいは家庭裁判所に離婚訴訟するか選択します。
4-3:③離婚訴訟
離婚調停で合意が得られない場合は、離婚訴訟を申し立てます。
離婚訴訟では、離婚の成否と一緒に慰謝料なども判決によって決められます。
離婚訴訟の流れとしては、次のようになります。
- 家庭裁判所に離婚裁判の訴状を提出
- 裁判所から口頭弁論期日の呼出状
- 第1回口頭弁論が開かれる
- 第2回目以降も口頭弁論が開かれる
- 判決、裁判の終了
離婚訴訟の内容はもちろん様々ですが、裁判にかかる期間は1年以上となることが多いです。
離婚訴訟では、離婚協議・調停のような話し合い、合意による決定ではなく、提出された訴状・書面等をもとに、裁判官の判断によって離婚の成否や慰謝料等が決められるのが原則です。
ただし、双方が希望すれば、和解によって離婚をしたり慰謝料額を決めたりすることも可能です。
離婚の問題について、ここまで合意が得られずに離婚訴訟にまで及んだ場合は、弁護士への依頼を強くおすすめします。
なぜなら、離婚訴訟では、法的なアドバイスだけでなく、あなたに有利な実情を論理的に説明し、必要な証拠等を揃えて裁判所との対応を有利に進めることが必要となるからです。
弁護士に依頼することで、離婚訴訟の際に必要となる煩雑な法律手続きや申請書類などの作成を全て任せられます。
まとめ:定年離婚のよくある理由と決めるべき条件
■定年離婚のよくある理由
- 性格の不一致や価値観のずれから
- 家で一緒にいる時間が増えたから
- 子どもが自立したから
- 相手の不倫やDV・モラハラ
- 介護をしたくないから
■定年離婚のメリット
- 夫婦生活の様々な悩みから解放される
- 配偶者の親族との関係を断てる
- 新たな出会いが得られる可能性がある
■定年離婚のデメリット
- 孤独を感じる
- 経済的な不安が生じる
- 健康面のリスクがある
■定年離婚で請求できるお金と決めるべき条件
- 財産分与
- 年金分割
- 慰謝料
- 未成年の子どもがいる場合の親権と養育費
この記事の内容を参考にして、定年離婚を目指す際の行動に役立ててください。