同性との不倫が認められた判例と同性カップルの不倫を認めたケース
この記事を読んで理解できること
- 同性との交際でも不倫と認められる可能性がある
- 同性カップルの不倫を認めたケース
- 同性との不倫の証拠と慰謝料請求
あなたは、
- 同性との交際は不倫になるのか知りたい
- 同性との性的行為は不貞行為にあたるの?
- 同性カップルの不倫について知りたい
などとお考えではありませんか?
結論から言うと、配偶者が同性との交際を続けている場合でも、不倫(不貞行為)と認められる可能性があります。
東京地方裁判所で令和3年2月16日に出された判決では、同性であっても性交類似行為(手淫や口淫など)があったことから不貞行為と認め、被告に慰謝料の支払いが命じられました。
また、東京高等裁判所で令和2年3月4日に出された判決では、同性カップルの一方が不貞行為に及んだ場合の事例ですが、同性カップルについて「できる限り社会観念上夫婦と同様であると認められる関係を形成しようとしていたものであり」「男女が相協力して夫婦としての生活を営む結合としての婚姻に準ずる関係にあった」とする判断を下しました。
そこでこの記事では、
1章では、同性との交際でも不倫と認められる可能性がある
2章では、同性カップルの不倫を認めたケース
3章では、同性との不倫の証拠と慰謝料請求
について解説します。
この記事の内容をしっかり理解して、同性との不倫や同棲カップルの不倫で、慰謝料を請求する際の参考にしてください。
1章:同性との交際でも不倫と認められる可能性がある
同性との交際でも、不倫と認められる可能性があります。
そこでこの章では、
- 不倫と法律上違法とされている「不貞行為」
- 同性間でも「不貞行為」と認められた場合は慰謝料を請求できる
- 同性間の不倫を「不貞行為」と認めた判決
について解説します。
1-1:不倫と法律上違法とされている「不貞行為」
不倫とは、一般的には婚姻関係がある人が、他の異性と恋愛関係になることを差します。
しかし、判例上は、婚姻、婚約、内縁関係にある人が、パートナー以外の第三者と自由な意思に基づいて肉体関係(性交渉や性交類似行為)を持った場合は、「不貞行為」といい違法とされています。
不貞行為は、夫婦相互の貞操義務に反する行為として、法律で定められた離婚理由(法定離婚事由)としてあげられています。
1-2:同性間でも「不貞行為」と認められた場合は慰謝料を請求できる
不貞行為は、夫婦の平和な生活を破壊する行為であり、法律上「不法行為」とされているため、損害を被った相手に対して損害賠償の責任を負うものと定められています。
第709条 (不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
そのため、配偶者の不倫相手が同性でも、「不貞行為」が認められ夫婦の平和な生活を破壊され損害を被った場合は、配偶者や不倫相手に対して慰謝料を請求できる可能性があります。
1-3:同性間の不倫を「不貞行為」と認めた判決
■同性間の性交類似行為も「不貞行為」にあたる
原告である夫が妻の不倫相手である女性に対して、妻との不貞行為を理由として慰謝料の支払いを求めたものです。
夫は、異性間の性行為に限らず同性間の性交類似行為であっても、夫婦関係を破綻させるような性的行為であれば不貞行為にあたると主張しました。
一方、不倫相手である女性は、不貞行為は異性間の性行為に限られるため、慰謝料を支払う必要はないと主張しました。
判決では、同性間の性交類似行為を不貞行為と認めたものの、不倫相手である女性と親しく付き合うことについては許容していたことから、慰謝料の減額事由があるとして、慰謝料など11万円を原告である夫に支払うように命じました。
※東京地裁令和3年2月16日判決
2章:同性カップルの不倫を認めたケース
次に、同性同士のカップルにおいて、「パートナー以外の第三者との不倫が認められるか」という問題があります。
同性カップルの不倫を認めたケースについて、
- 同性カップルは「婚姻に準ずる関係」
- 同性カップルの慰謝料請求を認めた判決
それぞれ解説します。
2-1:同性カップルは「婚姻に準ずる関係」
東京高裁令和2年3月4日の判決で、同性カップルは「婚姻に準ずる関係」として、不貞行為を行った一方に対して慰謝料の支払いを命じました。
「婚姻に準ずる関係」とは、これまで内縁関係にある男女に対して使われ、法的にも一定の権利・義務が認められるとされています。
内縁関係とは、法律婚の夫婦と違い、婚姻届を出していなくても長年夫婦のように生活していて、事実上夫婦関係とみなされるような関係のことです。
同性同士のカップルであっても「互いに、婚姻に準ずる関係から生じる法律上保護される利益を有する」として、男女の内縁関係と同じように法的保護を認めました。
2-2:同性カップルの慰謝料請求を認めた判決
■同性カップルでも婚姻に準じる関係だったとして慰謝料請求を認めた
同性カップルで7年近く同居を続けていた女性が、パートナー女性の不貞行為によって関係が破綻したとして、慰謝料の支払いを求めました。
このカップルは、同性婚が認められている米国で婚姻登録証明書を取得し、日本では結婚式と披露宴を行っています。
原告の女性の訴えに対して、被告女性側は「同性の内縁関係は法的保護に値する段階にない」と主張しました。
判決では、
「他人同士が生活を共にする単なる同居ではなく,同性同士であるために法律上の婚姻の届出はできないものの,できる限り社会観念上夫婦と同様であると認められる関係を形成しようとしていた」「関係が同性同士のものであることのみをもって・・・法律上保護される利益を有することを否定することはできない。」」
として、被告女性に慰謝料として110万円の支払いを命じた一審の判決を支持しました。
※東京高裁令和2年3月4日判決
コラム:自治体のパートナーシップ制度
パートナーシップ制度とは、各自治体が独自に同性のカップルを「結婚に相当する関係」と認める制度です。
パートナーシップ制度によって、現在の法律では認められていない性的マイノリティのカップルでも、日常生活の様々な場面でサービスや社会的配慮を受けやすくなります。
日本では法的には同性同士の婚姻は認められていませんが、2015年に東京都渋谷区と世田谷区が、「結婚に相当する関係」と認めるパートナーシップ制度を導入しました。
また、法律上結婚していないカップルと子どもを、家族として届け出できる「ファミリーシップ制度」を導入する自治体も増えています。
3章:同性との不倫の証拠と慰謝料請求
この章では、同性との不倫の証拠と慰謝料請求について、次の3つをあげていきます。
- 同性との不倫の証拠を集めることは難しい
- 配偶者と不倫相手のどちらにも慰謝料請求できる
- 慰謝料請求の流れ
それぞれ解説します。
3-1:同性との不倫の証拠を集めることは難しい
不倫の慰謝料を請求する場合は、不貞行為を立証する証拠を集める必要がありますが、同性間の不倫では証拠を集めることが難しくなります。
不倫相手との性交類似行為中やその前後の写真や動画であれば、肉体関係があったことを強く推認できる証拠になり得ますが、ホテルや不倫相手の部屋に出入りする写真や動画では、肉体関係を推認できる証拠とはなりにくいからです。
そのため、同性間の交際であっても、婚姻関係を破綻させる原因となる不法行為にあたると認められる証拠を集めることが重要です。
例えば、
- キスやハグ、腕組みなど
- 二人でのデートや旅行
- 恋人のような内容のメール
などは不貞行為ではありませんが、長期間繰り返し行っているような場合は、夫婦関係に大きなダメージを与える行為と認められる可能性があります。
3-2:配偶者と不倫相手のどちらにも慰謝料請求できる
配偶者と不倫相手は、不貞行為を行った共同不法行為者となるため、連帯して慰謝料の支払い義務を負います。
そのため配偶者と不倫相手それぞれが、慰謝料を全額支払う責任を負うことになるため、両方に対して慰謝料全額を請求できます。
例えば、不貞行為の正当な慰謝料が200万円とした場合、配偶者に対して200万円を請求できますし、不倫相手に対しても200万円を請求できます。
ただし、200万円の範囲内であればそれぞれから受け取る金額はいくらでも構いませんが、双方から200万円ずつ受取り慰謝料の二重取りはできません。
連帯債務の場合は、一方の支払いを免除しても他方の支払い義務は免除されないため、夫婦関係を継続する配偶者には請求せず、不倫相手に慰謝料の全額を請求できます。
3-3:慰謝料請求の流れ
配偶者と不倫相手に慰謝料を請求する方法としては、次の3つがあげられます。
- 書面の送付による請求
- 配偶者・不倫相手との話し合いによる請求
- 民事訴訟による請求
それぞれ解説していきます。
3-3-1:書面の送付(内容証明郵便)による請求
不倫相手に慰謝料を請求する方法としては、一般的には内容証明郵便で慰謝料請求書を送付します。
内容証明郵便で送付することで、誰が誰に対してどんな内容でいつ送付したのか証明できるため、慰謝料の支払い義務を促し言い逃れを防げるからです。
さらに、弁護士から慰謝料請求書を送ることで、相手に対してプレッシャーを与えられるでしょう。
内容証明郵便による慰謝料請求書の送付で、不倫相手が支払いに応じた場合は、不倫問題も解決することになります。
3-3-2:配偶者・不倫相手との話し合いによる請求
配偶者と不倫相手それぞれとの対面による話し合いによって、慰謝料を請求する方法もあります。
配偶者との話し合いによって協議離婚に至る場合は、不貞行為の慰謝料だけでなく離婚条件(その他の慰謝料、財産分与、養育費など)を決めて、離婚協議書を作成します。
配偶者との話し合い(協議)がうまくいかなかった場合は、家庭裁判所に離婚の調停を申し立てましょう。
配偶者や不倫相手との話し合いで、養育費や慰謝料など長期の支払いになる場合は、公正証書を作成することをおすすめします。
公正証書にすることによって、相手の支払いが約束に反した場合は、裁判手続きを取ることなく給料や財産を差し押さえできるからです。
3-3-3:民事訴訟による請求
配偶者と離婚協議・離婚調停で合意ができない場合は、家庭裁判所に離婚訴訟を申し立てましょう。
また、不倫相手との慰謝料交渉によって合意が得られなかった場合は、民事訴訟によって慰謝料を請求できます。
裁判所に対して訴状及び証拠等を提出し、配偶者や不倫相手と争うことになりますが、裁判の途中で裁判官のすすめによって和解が成立することも多く、最終的には裁判官の判断によって離婚や慰謝料の金額等が決められます。
民事訴訟の手続きは複雑で、提出する書類等も多いため、手続きをスムーズに進めて、さらに公判を有利に進めるためには、弁護士への依頼がおすすめです。
まとめ:同性との不倫と同性カップルの不倫
■同性との交際でも、不倫と認められる可能性があります。
■不貞行為とは、婚姻、婚約、内縁関係にある人が、パートナー以外の第三者と自由な意思に基づいて肉体関係(性交渉や性交類似行為)を持っこと
■同性間でも「不貞行為」と認められた場合は、慰謝料を請求できる
■同性間の性交類似行為を不貞行為と認め、不倫相手である女性に対し、慰謝料の支払いを命じた判例
※東京地裁令和3年2月16日判決
■同性カップルでも「婚姻に準ずる関係」にあたる場合があるとして、不貞行為を行った一方に対して慰謝料の支払いを命じた判例
※東京高裁令和2年3月4日判決
■同性との不倫の証拠と慰謝料請求
- 同性との不倫の証拠を集めることは難しい
- 配偶者と不倫相手のどちらにも慰謝料請求できる
同性との不倫や同棲カップルの不倫で慰謝料を請求する場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。