【サービス残業の相談先まとめ】メリット・相談方法・費用を徹底解説
この記事を読んで理解できること
- サービス残業、6つの相談先とメリット・デメリット
- サービス残業の相談に必要な証拠を集めよう
- 正しい残業代の金額計算と請求方法をチェック
あなたはこんな悩みを持っていませんか?
「会社でのサービス残業が当たり前になっているけど、誰に相談すればいいのか分からない…」
周りの社員も当然同じように働いており、残業が当たり前になっているので自力ではどうにもできないという人もいるかと思います。
しかし、残業代を支払わずに社員を残業させることは違法なので、専門家に相談すれば問題の解決につながる可能性があるのです。
この記事では「サービス残業の解決」のゴールとして、
- 未払い残業代を取り戻す
- 労働環境を改善する
を考え、それぞれに適した相談先として「労働問題専門の弁護士」「労働基準監督署」「社会保険労務士」「全労連ホットライン」「社内通報窓口」「労働組合」の6つを紹介します。
目的に適した相手に相談しないと、別のところに行く二度手間になることも多く、時間を無駄に使ってしまいます。
あなたの目的や相談内容、どう解決したいかという気持ちに近い相談窓口を見つけてください。
目次
1章:サービス残業、6つの相談先とメリット・デメリット
それでは、次からサービス残業の相談先について順番に解説していきます。
1-1:【相談先①】労働基準監督署
労働基準監督署は労働基準法などの法律が守られているかをチェックする機関で、各都道府県の労働基準局に設置されています。
残業代を支払わないサービス残業は労働基準法違反なので、労働基準監督署が相談先の一つになります。
もし、あなたの会社で法律違反の疑いのある行為があった場合は「会社への調査や是正勧告」「経営者の逮捕」などの、対応をとってくれることもあります。
1-1-1:できること、メリット・デメリット
- 違法なサービス残業の相談・告発
- 労働基準法違反についての情報提供
- 立ち入り調査
- 行政指導
【メリット】
労働基準監督署には無料で相談が可能です。
匿名での相談(※)もできるため、知られたくないよう場合は、相談の事実や内容が会社側に伝わることもありません。
会社に明確な法律違反を示す証拠が揃っていれば、立ち入り検査に動いてくれることもあります。
違法性が確認できた場合には是正勧告が出され、サービス残業の実態が改善される可能性があります。
※業務に当たる人員が不足し、明確な法令違反が確認できないと動かない面もあるため、匿名のメールや電話よりは対面の相談の方が、緊急性の高い事案として扱ってくれることが多いようです。
【デメリット】
一方で、労働基準監督署は、明確な労働基準法違反がないとなかなか動いてくれません。
証拠が揃っていない段階や、判断が分かれるような事例では直接的な解決にならないようです。
1-1-2:相談方法
労働基準監督署への相談には、
- メールで相談
- 電話で相談
- 訪問して相談
という3つの方法があります。
その内容について順番に解説します。
① メールで相談する(労働基準関連情報メール窓口)
サービス残業をメールで相談するためには「労働基準関連情報メール窓口」からメールを送ることができます。
メールなので24時間送信可能で、相談内容は主に立入調査対象の選定などに活用することが多いようです。
② 電話で相談する(労働条件相談ほっとライン)
電話で相談する場合は「労働条件相談ほっとライン(0120−811−610)」を利用しましょう。
平日夜間(17〜22時)と休日の昼間(10〜17時)に、担当の相談員にサービス残業について相談することができます。
③ 訪問して相談する(労働基準監督署で申告)
全国には、労働基準監督署が321署あり、住んでいる地域をカバーする管轄署を訪問して相談することができます(全国の労働基準監督署の所在案内)。
受付時間は、平日の8時30分〜17時15分に限られ、サービス残業に悩まされている人が相談に行くのは少し難しい時間になっています。
1-1-3:相談した後の流れ
労働基準監督署は、相談者の会社が
- サービス残業をさせていないか
- 違法な長時間労働をさせていないか
といった点について判断し、労働基準法に明確に違反しているとすれば行政指導や罰金を課す可能性があります。
会社の行為が違法である可能性がある場合、労働基準監督署は、まずは実態がどうなっているのか調査します。
調査で違法性が確認できた場合には、問題を改善させるために「これをやめなさい」といった是正勧告を出します。
勧告を受けても改善が見られなかった場合は、書類送検され、経営者・会社は「罰金」「懲役」などの罰則を受けるケースもあります。
注意しておきたいのは、労働基準監督署は違反かどうかの判断を下すことはせず、明確な法律違反がないと動くことができないということです。
そのため相談では、はっきりと法律違反を示す証拠を求められることが多く、すぐに動けない事例については「まずはご自分で会社に相談してください」と言われることも多くなります。
1-2:【相談先②】労働問題専門の弁護士
サービス残業について相談するときに、問題解決に最も直接的な効果が見込めるのが弁護士です。
特に、残業など労働問題を専門に扱う弁護士であれば解決の可能性が大きく、残業代の計算から交渉、裁判まであらゆる面でサポートしてくれます。
弁護士と聞くと「裁判が大変そう」「お金がかかりそう」と思うかもしれません。
ただ、「弁護士に相談=すぐに裁判」ではなく、まずは会社と交渉をし、うまくいかない場合に裁判へと進みます。
後で詳しく説明しますが、お金の面についても着手金の建て替え制度を利用したり、完全成功報酬制の弁護士に依頼したりすることで初期費用をかけずに相談が可能です。
1-2-1:できること、メリット・デメリット
- サービス残業の相談
- 未払い残業代請求の依頼
- 会社との交渉
- 残業代の請求
- 労働審判、裁判での弁護
【メリット】
4つの相談先の中で、唯一、未払い残業代を取り戻せる可能性が期待できるのが弁護士への相談です。
会社側が話し合いに応じないといった場合でも、証拠集めから交渉までを行ってくれる相談相手です。
弁護士の場合は、代理で証拠集めなど必要な手続きや会社との交渉を行ってくれるため、あなたが会社と顔を合わせる必要もありません。
専門の弁護士に依頼することで、多くの残業代を取り戻すことができる可能性があり、残業代請求の依頼では最も信頼できる相談相手になります。
【デメリット】
弁護士の相談では、相談料や着手金などの費用がかかるため、こうした面を心配する人が少なくないようです。
着手金が払えない場合は建て替え制度があるほか、完全成功報酬制の弁護士に頼むことで、初期費用をかけずに相談することが可能です。
1-2-2:相談方法
弁護士への相談は電話や対面で行いますが、まずは電話で事前に相談し、依頼が可能か、必要なものは何か、といったことを確認しておきましょう。
相談の際は「自分がどうしたいか」をはっきりさせておきましょう。
例えば、
- 労働環境を改善したい
- 違法な働き方を強要されているので訴えたい
- 未払いの残業代を請求したい
など、あなたがどのように行動したいかを考えておくと相談がスムーズに進みます。
1-2-3:相談した後の流れ
よく誤解されがちですが、「弁護士に相談=すぐに裁判」ではありません。
実際には、「交渉」や「労働審判」といった手段で解決することが多く、裁判まで進むことはほとんどありません。
例えば、未払いの残業代の請求を、弁護士に相談した時の流れは以下のようになります。
相談を受けた弁護士は、まず会社に「残業代を支払うように」といった通告を出すことになります。
その後、弁護士が代理人になって話し合いが行われ、うまくいかない場合に裁判という道が出てきます。
弁護士に相談したからといって、あなたが何度も裁判所に足を運ぶようなケースは極めてまれなので、安心してください。
1-3:【相談先③】社会保険労務士
社会保険労務士は、社会保険や年金、労働問題を専門とする国家資格者です。
サービス残業に関する分野では、あなたの相談に応じてアドバイスをくれるほか、あっせんという手続きで、裁判よりも簡単に問題を解決する手助けをしてくれます。
1-3-1:できること、メリット・デメリット
- サービス残業の相談
- 会社とのあっせん仲介
【メリット】
あっせん申立て費用が安く(1,080~10,800円)、手続きが簡単なのがメリットと言えるでしょう。
また社労士は会社とあなたに対し、それぞれ別々に意見を聞くので、会社側と顔を合わせることなく、問題を解決することができます。
【デメリット】
社労士は裁判所での手続きでは代理人になることができないため、和解に失敗して裁判になった場合は新たに弁護士を探す必要があります。
1-3-2:相談方法
社会保険労務士によって相談方法は異なりますので、相談を考えている社会保険労務士のホームページなどで確認しましょう。
また、全国社会保険労務士連合会が運営する「職場のトラブル相談ダイヤル(0570-07-4864)」といったサービスもあります。
通常は電話で無料相談の後、対面にて詳しくヒヤリングを行う流れになります。
1-3-3:相談した後の流れ
社会保険労務士に相談すると、裁判ではなく会社とあなたが話し合うあっせんによって問題の解決を目指します。
受付から1か月以内にあっせんする日が決まり、基本的に1回の手続きで終了することが多いようです。
1-4:【相談先④】全労連・労働問題ホットライン
全国労働組合総連合(全労連)は、日本の労働組合の全国中央組織です。
労働問題ホットラインは、その全労連が運営する相談窓口です。
内容は、サービス残業から、雇用条件、パワハラ・セクハラ、嫌がらせまで職場でのあらゆることを扱っています。
1-4-1:できること、メリット・デメリット
- サービス残業の相談
- 労働組合の加入申し込み
- 組合運動として社会へのアピール
【メリット】
最初の相談は無料ででき、サービス残業以外の問題もあわせて相談することができます。
あらかじめ何か証拠を準備する必要はなく、電話やメールで気軽に相談可能です。
労働組合に加入する意思があれば、組合運動を通じて社会全体の労働環境を改善する活動に参加できます。
【デメリット】
問題の解決には労働組合加入が必要となり、加入した場合は月1000円〜程度の組合費の支払いが必要になります。
一般的な相談先としては頼りになりますが、すぐに何かしてくれるわけではなく、労働環境の改善でも、未払い残業代を取り戻すことでも、直接的な解決につながらないことが多いようです。
1-4-2:相談方法
相談する方法としては
- 電話で相談
- メールで相談
という2つがあります。
① 電話
フリーダイヤル(0120-378-060)に電話をかけると、地域の労働相談センターにつながります。
その電話で、サービス残業やその他の様々な労働問題について相談することができます。
② メール
専用のフォームから24時間いつでも相談のメールを送ることができます。
記入は、いくつかの必須事項と500文字以内の相談内容だけと、簡単なのが特徴です。回答までに数日がかかることがあるようです。
1-4-3:相談した後の流れ
相談後、専門家を紹介してくれたり、場合によっては企業との団体交渉に入ったりすることがあります。
ただ、実際に問題の解決に向けて動くためには労働組合加入が必要になるため、「組合に入って一緒に戦おう」といったように加入を誘われることが多いようです。
1-5:【相談先⑤】社内通報窓口
社内通報窓口とは、社内の不祥事や不正行為について、従業員からの通報を受け付ける窓口です。
サービス残業のみならず、様々な内容の通報を取り扱います。
1-5-1:できること、メリット・デメリット
- サービス残業の通報
- 社内で調査を行う
【メリット】
通報は無料でできます。
サービス残業以外にも問題がある場合には、合わせて通報することも可能です。
外部の力を借りずに、社内だけで問題を解決できる可能性があります。
【デメリット】
サービス残業が常態化している会社では、内部の力では状況を改善するのが難しい場合も多いです。
通報を受け付けても、適切な是正措置が行われるとは限りません。
1-5-2:相談方法
相談する方法は、会社によって異なります。
社内で相談方法を確認するようにしてください。
1-5-3:相談した後の流れ
相談後の流れは会社によって異なりますが、通報の内容について社内で調査が行われ、その結果を通報者に報告するという流れが多いです。
調査の結果、問題があると判断されれば是正措置がとられることとなりますが、実効力に欠ける場合も多く、根本的な解決に繋がらない可能性もあります。
1-6:【相談先⑥】労働組合
労働組合は、労働者が主体となって労働条件の維持・改善など目指す団体です。
全労連を通じて加入することもできますが、社内や地域の労働組合には、直接問い合わせることもできます。
1-6-1:できること、メリット・デメリット
- サービス残業の相談
- 労働組合の加入申し込み
- 組合運動として社会へのアピール
【メリット】
団体交渉や争議行為は、裁判のような強制力はありませんが、会社が交渉に応じる可能性も高いです。
【デメリット】
組合加入日や毎月の組合費といった費用がかかります。
また、残業代を取り戻せた場合には、解決金として何割かの支払いを求められるケースもあります。
また、自分自身も主体となって活動に取り組むことになるため、交渉を任せられるわけではありません。
1-6-2:相談方法
労働組合ごとに異なります。
電話やメールで相談方法を問い合わせてみてください。
1-6-3:相談した後の流れ
サービス残業を改善するため、団体交渉や争議行為を行います。
交渉の過程で相談者自身が会社に対して意見することも可能です。
団体交渉や争議行為には、裁判のような強制力はありませんが、会社が交渉に応じてくれる可能性も十分にあります。
2章:サービス残業の相談に必要な証拠を集めよう
ここまで6つの相談先を紹介しましたが、サービス残業を行っていることを示す証拠としては以下のようなものが必要になります。
それは大きく2つに分けて、
- 残業代が未払いであることを示す証拠
- 残業時間を示す証拠
となります。
残業代が未払いであることを示すためには、
- 雇用契約書
- 就業規則
- 賃金規定
- 給与明細
残業時間を示すためには、
- タイムカード
- シフト表
- 業務日報
- 運転日報
などが有効になります。
証拠になるようなものがない場合は、
- 手書きの勤務時間・業務内容の記録
- 残業時間の計測アプリ
- 家族に帰宅を知らせるメール
- 会社のパソコンの利用履歴
- メール・FAXの送信記録
といったものも証拠として利用することができます。
最も効果的なのは手書きの記録で、毎日1分単位で勤怠時間を記録し、具体的な業務内容について書き残しておくのが良いでしょう。
サービス残業の実態を示し、残業代を請求する根拠となる証拠については以下の記事をご参照ください。
【弁護士が解説】残業代をアップさせる証拠一覧と集め方マニュアル
3章:正しい残業代の金額計算と請求方法をチェック
ここまで読んでサービス残業について知ったあなたは、「自分も残業代を取り返したい」と思ったのではないでしょうか。
ここでは、
- 正しい残業代の金額計算の仕方
- 残業代の請求方法
を解説します。
3-1:正しい残業代の金額計算の仕方
残業代を正しく計算するには、
- 残業時間
- 適用される割増賃金率
の2つを算出する必要があります。
会社が定める所定労働時間を超える「残業時間」には、残業代が支払われます。
「残業時間」が1日8時間、週に40時間の法定労働時間を超えない場合の残業代は、割増賃金は発生せず、通常の時間給と同額です。
「残業時間」が法定労働時間を超える場合には、残業代に25%の割増賃金が加算されます。
さらに、「残業時間」が22時から午前5時までの場合、さらに25%の深夜割増賃金が加算されます。
つまり、法定労働時間外かつ深夜に行われた残業には、25%+25%=50%の割増賃金が加算されるのです。
正しい残業代は、それぞれの「残業時間」がどの時間に行われたかを確認し、それに応じた割増賃金を加算することで算出できます。
3-2:残業代請求の方法は2種類
会社から未払いの残業代を取り返すための方法には、
- 自分で請求する方法
- 弁護士に依頼する方法
という2つの方法があります。
それぞれのメリットとデメリットをまとめると、次のようになります。
証拠集めや交渉の手間を考えると、残業代を取り返せる可能性が大きく、自分の手間がかからない「弁護士への依頼」がオススメです。
残業代の請求については以下の記事でも詳しく説明していますので、興味がある方はご覧ください。
失敗しない残業代請求!有効な証拠と請求方法、ブラック企業の対処法
まとめ:サービス残業は、適切な相談先に相談しよう
もう一度、今回の内容を振り返ってみましょう。
サービス残業の相談先として、以下のような機関、専門家を紹介しました。
- 弁護士
- 労働基準監督署
- 社会保険労務士
- 全労連ホットライン
- 社内通報窓口
- 労働組合
色々な相談先がありますが、運営母体や相談方法、内容はそれぞれ異なります。
あなたがコンタクトを取りやすく、自分にあった相談先を選んで話をしてみてはいかがでしょうか。
現在も毎日残業している人であれば、自分の手間や労力が最も少なく、問題解決の可能性が高い上に残業代の請求もできる弁護士がオススメです。
会社に言われるがままサービス残業させられる日々は終わりにして、専門家に相談して充実した生活を送れるようにしましょう。