サービス残業は違法!知って得する未払い残業代の請求の仕方
この記事を読んで理解できること
- サービス残業は違法!ブラック企業の7つの手口
- 違法なサービス残業に対して、残業代を請求する方法
あなたの職場では、残業代の申請がしづらい雰囲気はありませんか?
あるいは、上司からこんなことを言われ、知らず知らずのうちにサービス残業をしていることもあるのではないでしょうか。
「朝の掃除はうちの決まりだから、朝礼前に出社してしっかりやってくれたまえ。」
「定時で仕事が終わらないなら、朝早く来たり、休憩時間を利用するしかないだろう。」
「勤務時間は決まっているので、それよりも早く来たり、遅く帰ったりしたとしても、タイムカードは定時できるように! 」
残業は自己責任である場合もありますが、原則、会社が従業員に残業代を払わずサービス残業をさせるのは「違法」です。
例えば、基本給35万円のあなたが、月100時間サービス残業をしてきた分の残業代を、2年前までさかのぼり請求すると、約600万円という大金になります。
この記事を読めば、
・サービス残業は違法であること
・知らぬ間にしているサービス残業の種類
・違法なサービス残業をさせられた分の残業代は請求できること
・未払い残業代の請求の仕方
・ブラック企業がサービス残業をさせる理由とその手口
などがわかります。
最後まで読んで、あなたがこれまでいかにサービス残業をしていたかを確認すると同時に、会社からしっかり未払い残業代を取り返しましょう。
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■会社が従業員に残業代を払わずサービス残業をさせるのは「違法」
■ブラック企業が従業員にサービス残業させる手口
- 手口①:社員に残業を申請させない
- 手口②:残業は、会社の外で行わせることで、残業の証拠を残さない
- 手口③:給料に残業手当が含まれているので、何時間残業をしても残業代はもらえない
- 手口④:給料に残業代が含まれていることは口頭で説明されただけで、就業規則等に記載はない
- 手口⑤:残業代の処理について、毎日の集計で残業時間を30分単位で切捨てにする
- 手口⑥:着替えや掃除、朝礼や昼休みの電話番、研修や会議等の時間を、勤務時間にカウントしない
- 手口⑦:名ばかり管理職や裁量労働制、事業場外みなし労働時間制を悪用し、一切の残業代を払わない
■サービス残業させられている場合にやるべきこと
- まずは残業の証拠を集める
- 弁護士に依頼して残業代請求を任せる
- 時効は3年であるため早めの行動が大事
目次
- 1章:サービス残業は違法!ブラック企業の7つの手口
- 1-1:多くのブラック企業でまかり通っている違法なサービス残業の実態
- 1-2:ブラック企業が行う違法なサービス残業の手口
- 1-2-1:手口①:社員に残業を申請させない
- 1-2-2:手口②:残業は、会社の外で行わせることで、残業の証拠を残さない
- 1-2-3:手口③:給料に残業手当が含まれているので、何時間残業をしても残業代はもらえない
- 1-2-4:手口④:給料に残業代が含まれていることは口頭で説明されただけで、就業規則等に記載はない
- 1-2-5:手口⑤:残業代の処理について、毎日の集計で残業時間を30分単位で切捨てにする
- 1-2-6:手口⑥:着替えや掃除、朝礼や昼休みの電話番、研修や会議等の時間を、勤務時間にカウントしない
- 1-2-7:手口⑦:名ばかり管理職や裁量労働制、事業場外みなし労働時間制を悪用し、一切の残業代を払わない
- 1-3:なぜ、ブラック企業はサービス残業をさせるのか。ブラックの企業の意図を解説
- 1-4:違法なサービス残業をさせられた分の残業代は貰う権利がある
- 2章:違法なサービス残業に対して、残業代を請求する方法
- まとめ:違法なサービス残業について
1章:サービス残業は違法!ブラック企業の7つの手口
サービス残業とは、会社が残業代を払わずに、従業員に残業をさせることです。
本来、払うべき賃金を、ちゃんとした理由もなく支払わない行為は法律違反です。
こうしたブラック企業の脅しを真に受けサービス残業に応じてしまわぬよう、サービス残業に関する正しい知識を身に付けましょう。
1-1:多くのブラック企業でまかり通っている違法なサービス残業の実態
労働基準法における「残業時間」とは、
「1日8時間・週40時間のどちらかを超える労働時間」のことを意味します。
上記「残業時間」に対して、会社は従業員に割増賃金(残業代)を払わなければならないことが、法律(労働基準法37条)で定められています。
一日8時間ないし週40時間を超える、1分でも超えれば、それは残業時間ということになりますので、会社は残業代を払う義務が生じます。
では、残業代がもらえないサービス残業とは、具体的にどのようなことを言うのでしょうか。
“違法なサービス残業の実態”
①社員に残業を申請させない
②残業は、会社の外で行わせることで、残業の証拠を残さない
③給料に残業手当が含まれているので、何時間残業をしても残業代はもらえない
④給料に残業代が含まれていることは口頭で説明されただけで、就業規則等に記載はない
⑤残業代の処理について、毎日の集計で残業時間を30分単位で切捨てにする
⑥着替えや掃除、朝礼や昼休みの電話番、研修や会議等の時間を、勤務時間にカウントしない
⑦名ばかり管理職(※1)や裁量労働制(※2)、事業場外みなし労働時間制(※3)を悪用し、一切の残業代を払わない
※1名ばかり管理職とは、管理監督者としての権限や報酬を得ていないのにもかかわらず、管理職扱いされる従業員のこと。労働時間の拘束も受け、労務管理上の権限もない
詳しくは「弁護士が「名ばかり管理職」を解説「管理職だから残業代無し」は違法」の記事を参照ください。
※2裁量労働制とは、コピーライターやSEなど、仕事の時間配分などの自由度が高く、労働時間を会社が管理することができない専門職に対し、「何時間働いても一定時間労働したものとみなす」という制度のこと
詳しくは「【裁量労働制とは?】弁護士が解説する本当の意味と残業代のカラクリ」の記事も参照ください。
※3事業場外みなし労働時間制とは、営業職等、オフィス以外の場所で仕事をすることが多い場合に採用する制度のこと
詳しくは「【証拠集めが重要!】営業職にも出る残業代と請求のポイント」の記事も参照ください。
次の項で、より詳しい違法手口の手法を解説します。あなたの会社ではいくつ当てはまるか、確認してみましょう。
1-2:ブラック企業が行う違法なサービス残業の手口
先ほどお伝えした、サービス残業を行わせるブラック企業の7つの手口を具体的に解説します。
“サービス残業を行わせるブラック企業の7つの手口”
①社員に残業を申請させない
②残業は、会社の外で行わせることで、残業の証拠を残さない
③給料に残業手当が含まれているので、何時間残業をしても残業代はもらえない
④給料に残業代が含まれていることは口頭で説明されただけで、就業規則等に記載はない
⑤残業代の処理について、毎日の集計で残業時間を30分単位で切捨てにする
⑥着替えや掃除、朝礼や昼休みの電話番、研修や会議等の時間を、勤務時間にカウントしない
⑦名ばかり管理職や裁量労働制、事業場外みなし労働時間制を悪用し、一切の残業代を払わない
1-2-1:手口①:社員に残業を申請させない
・タイムカードは定時で切らせる
・残業代申請をしたら上司が部下に圧力をかける
・残業申請は悪となるような雰囲気や社風を作ることで、社員が残業代を申請しにくい状況を作り出す
1-2-2:手口②:残業は、会社の外で行わせることで、残業の証拠を残さない
昨今、マスコミなどでブラック企業の報道が増えていることもあり、表向きは残業をしていないように見せようとするブラック企業があります。
1-2-3:手口③:給料に残業手当が含まれているので、何時間残業をしても残業代はもらえない
一見すると、社員に対してメリットがありそうにも感じますが、実は社員を騙して違法に長時間労働させるのがブラック企業の手口です。
この手口の悪質な点は、ブラック企業はきちんと残業代を支払っていないにもかかわらず、従業員は「仕事がちょっとキツイけど残業代が出るだけマシか」と思ってしまう場合があることです。
更にひどい場合には、入社時に「うちの業界は、普通は残業代が出ないけど、我が社は残業代が出るから同年代の人よりも少し給料が高いよ」と言われ、従業員は満足に思っていたりする場合もあります。
1-2-4:手口④:給料に残業代が含まれていることは口頭で説明されただけで、就業規則等に記載はない
法律で、給料に残業代が含まれていることは、必ず就業規則等に記載する決まりとなっています。
そのため、そもそも就業規則がない、もしくは、就業規則がどこにあるか知らされていない場合は、いくら口頭で説明したと会社が主張しても、違法である可能性が極めて高いです。
1-2-5:手口⑤:残業代の処理について、毎日の集計で残業時間を30分単位で切捨てにする
会社によっては、1日の残業時間を15分や30分単位で切り捨てるという決まりを定めているところがあるようですが、法律では、労働時間は1分単位で計算することが決まっています。
例えば、9時~18時(休憩1時間)が定時の会社で、18時21分に業務が終了した場合、この日の残業時間は21分とカウントされます。
これはブラック企業が少しでも残業代をごまかそうとする悪質な手口の一つでしょう。
1-2-6:手口⑥:着替えや掃除、朝礼や昼休みの電話番、研修や会議等の時間を、勤務時間にカウントしない
始業が9時からなのに朝礼は8時30分から始まる、昼休みなのに電話当番があるなど、本来は労働時間にあたるにも関わらず、業務時間にカウントしないブラック企業があります。
会社の都合で行動を縛られている時間は、業務時間としてカウントできる場合が多いです。
1.掃除・・・始業前や就業後の掃除時間
2.着替え・・・制服、作業服、防護服などに着替える時間
3.休憩時間・・・休憩中の電話番や来客対応などを依頼された場合
4.仕込み時間・・・開店前の準備やランチとディナーの間の仕込み時間
5.準備時間・・・店舗などで開店前の準備をする時間
6.待機時間・・・トラックの荷待ちの時間
7.仮眠時間・・・警報や緊急事態に備えた仮眠の時間(特に警備や医療従事者など)
1-2-7:手口⑦:名ばかり管理職や裁量労働制、事業場外みなし労働時間制を悪用し、一切の残業代を払わない
●名ばかり管理職
管理職に残業代は出ないと思われている場合がありますが、「管理監督者」に該当しない管理職(名ばかり管理職)については、残業代がもらえます。
下記、全てに該当するのであれば、管理監督者である可能性が高いです。
しかし、該当がない、あるいは該当項目が少ないのであれば、名ばかり管理職と言わざるを得ません。
■管理監督者の権限
・社員の採用や解雇を決定する権限がある
・出勤や退勤の時間を自由に決められる
・会社の他の従業員より相当に待遇が良い
・商品やサービスの内容の決定権がある
●裁量労働制
仕事の時間配分などの自由度が高く、労働時間を会社が管理することができないため、「何時間働いても一定時間労働したものとみなす」という制度です。
詳しくは、残業代に強い弁護士に問合せください。
■事業場外みなし労働時間制
会社の目が届くオフィス内ではなく、建設現場や工場、営業などで客先にいることが多い社員については、会社が労働時間を把握するのが難しいため、この制度が利用されます。
しかし、実際には事業場外みなし労働時間制が適用されることは少ないため、残業代をごまかすためにこの制度を利用するブラック企業があります。
■事業場外みなし労働時間制が適用されないケース
・何人かのグループで事業場外労働に従事する場合、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
・無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら事業場外で労働している場合
・事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けた後、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後、事業場に戻る場合
1-3:なぜ、ブラック企業はサービス残業をさせるのか。ブラックの企業の意図を解説
このように、たとえ従業員が会社のためを思っても、従業員にサービス残業をさせる経営者の本音はこのようなものです。
ここでは、ブラック企業がサービス残業をさせる意図を解説します。
1.人手不足
従業員を使い捨ての駒のように扱うようなブラック企業は、大量採用を仕掛け人手不足を解消しようとしますが、離職者も後を絶ちません。
そのため、限りある人員で大量の業務をこなそうとするため、過度な残業をさせることになります。
法律では、一般的に残業時間は年間360時間までと決められています。
参照)「残業には上限がある!法律上の規定と会社が悪用する8つの手口を解説」
結果、従業員は会社の犠牲になり、サービス残業をせざるを得ない状況に立たされてしまうのです。
2. コストカット
人件費を抑えるために、サービス残業をさせる会社があります。そもそも残業代を"無駄なコスト"と考える経営者も中にはいるのでしょう。
また、残業代を払うことによって一人当たりの給料が増えれば、その分の社会保険料の増額を会社が負担することになるというリスクも会社側に生じます。
3.風習だから
「どこの会社もみんなやっていること」
「業界的にサービス残業は当たり前」
「仲間が働いているのに、一人先に帰るなんて許されない」
など、サービス残業が違法であるにもかかわらず、"以前からそうだった"という会社の風習やその場の雰囲気でサービス残業が行われている会社があります。
そうした環境の中、自分だけがサービス残業をせずに帰ったり、残業代を請求したりすることは、絶対に許されないような気持ちにさせられるのは無理もありません。
4.罰則が緩いため、甘んじている
そもそもバレることが少なく、たとえバレたとしても、課される罰則は6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金です。
ほとんどの場合30万円以下の罰金で済んでしまうため、会社としては残業代を支払うよりも得だと考える場合もあるのです。
1-4:違法なサービス残業をさせられた分の残業代は貰う権利がある
ここまでの解説で、これまであなたが、いかにサービス残業をさせられていたが、わかったのではないでしょうか。
従業員に残業代を払わず残業をさせる会社は、ブラック企業であり、違法です。
当然、従業員には残業代をもらう権利があります。サービス残業分の残業代は、過去3年までさかのぼり取り返せるのです。迷っている暇はありません。少しでも早く、行動に起こしましょう。
2章:違法なサービス残業に対して、残業代を請求する方法
違法なサービス残業をしている場合、会社に対して残業代を請求することができます。
2章では、
・請求できる残業代の金額イメージ
・残業代を請求するための事前準備
・残業代を請求する方法
を解説します。
2-1:請求できる金額のイメージ
残業代の計算は、決して難しくありません。まずは基本的な月給制の残業代の計算方法と、みなし労働時間制(固定残業代制)の残業代の計算方法を解説したいと思います。
2-1-1:基本的な残業代の計算方法
残業代は、以下の計算式で計算することができます。
計算式は簡単ですが、正確に残業代を計算するためには、以下のステップで計算する必要があります。
1.基礎時給の計算
基礎時給とは1時間当たりの賃金のことで、月給制の場合は、以下の計算式で計算することができます。
※「一月所定労働時間」とは、あなたの雇用契約で定められている1ヶ月あたりの平均労働時間のことで、一般的に170時間前後であることが多いです。
「月給」には、自分の基本給だけではなく、以下の「基礎時給の計算に入れて良い手当」を含めることができます。
例)基本給が20万円、業務手当が3万円、住宅手当が5万円、一月所定労働時間が170時間である場合の基礎時給は、
(20万円+3万円)÷170時間=約1,353円
と計算することができます。
2.割増率
割増率とは、1時間当たりの賃金(基礎時給)に対してかける割合のことで、以下の種類があります。
例えば、定時が9時~18時(1時間休憩)で、残業を18時~23時までした場合、18時~22時までの4時間は通常の残業時間の1.25倍が適用され、22時~23時までの1時間は通常の深夜残業の1.5倍の割増率が適用されます。
3. 正しい残業時間のカウント
残業時間とは、1章で解説したように、「1日8時間・週40時間」のどちらか一方でも超えて働いた時間のことです。残業時間とは、1章で解説したように、「1日8時間・週40時間」のどちらか一方でも超えて働いた時間のことです。
また、1-2-6でも紹介した、残業代が発生する可能性が高い「労働時間」も残業時間としてカウントしてください。
1.掃除・・・始業前や就業後の掃除時間
2.着替え・・・制服、作業服、防護服などに着替える時間
3.休憩時間・・・休憩中の電話番や来客対応などを依頼された場合
4.仕込み時間・・・開店前の準備やランチとディナーの間の仕込み時間
5.準備時間・・・店舗などで開店前の準備をする時間
6.待機時間・・・トラックの荷待ちの時間
7.仮眠時間・・・警報や緊急事態に備えた仮眠の時間(特に警備や医療従事者など)
◆計算してみよう!
(例)小売店勤務Aさん
・月給23万円(手当込み)
・1ヶ月の残業時間:100時間(深夜残業なし)
・法定休日の出勤:8時間×2日
・所定労働時間170時間
・基礎時給:1,353円(月給23万円÷所定労働時間170時間=約1,353円)
下記、計算式に当てはめると・・・
Aさんは100時間の残業と16時間分の休日出勤をしているため、
・通常の残業:基礎時給1,353円×割増率1.25倍×100時間=16万9,125円
・休日出勤分:基礎時給1,353円×割増率1.35倍×16時間=約2万9,225円
1ヶ月の残業代は、
16万9152円+2万9,225円=19万8,350円
1ヵ月で19万8,350円となります。仮に、同じ残業・休日出勤をずっと続けているとすると、残業代を2年前の分までさかのぼって請求するとすれば、
19万8,350円×24ヶ月=476万400円
となり多額の残業代を請求することができるのです。
2-1-2:みなし労働時間制(固定残業代制)の計算方法
みなし労働時間制の場合、基本的な残業代の計算をした後、最後に固定残業代として支払われていた分の金額を引くことで、1ヶ月分の支払われるべき残業代の金額が分かります。
ただし、みなし労働時間制の場合、固定残業代が認められないケースがあります。
みなし労働時間制が認められないケース
・固定残業代を、何時間の残業時間の対価として支払っているのか曖昧な場合
・固定残業代として支払っている金額を、固定残業分とされている残業時間で割ると最低賃金を下回る場合
◆みなし労働時間制が認められるケースの金額イメージ
◆みなし労働時間制が認められないケースの金額イメージ
みなし労働時間制(固定残業代)の計算について、詳しくは「あなたも違法?正しい固定残業代の計算方法と残業代を取り返す2つの手段」を参照ください。
2-2:残業代を請求する場合は証拠を集めるべき
残業代の証拠として有効なのは、以下のようなものです。
【勤怠管理している会社で有効な証拠】
1.タイムカード
2.会社のパソコンの利用履歴
3.業務日報
4.運転日報
5.メール・FAXの送信記録
6.シフト表
【勤怠管理していない会社で有効な証拠】
1.手書きの勤務時間・業務内容の記録
2.残業時間の計測アプリ
3.家族に帰宅を知らせるメール
証拠は、できれば3年分の証拠があることが望ましいですが、なければ半月分でもかまいません。
また、メモで構わないので、できるだけ毎日の記録を集めることが大切です。
残業時間は、1分単位でカウントされます。証拠は「20時30分」ではなく、「20時24分」のように、1分単位で記録するようにしましょう。
2-3:弁護士に依頼するのがおすすめ!「弁護士に頼む = 裁判」ではない!
会社から残業代を取り返す方法は2つあります。
・自分で請求する方法
・弁護士に依頼し請求する方法
自分で請求すれば、弁護士に依頼する料金は発生しません。
しかし、時間と手間がかかるのはもちろん、交渉により精神的苦痛を生じることが考えられます。
また、会社側にも当然、弁護士がいるはずですから、何としても残業代を取り返したいと思うなら、残業代請求に強い弁護士に依頼するのが望ましいでしょう。
弁護士に依頼した場合、下記のような手順になります。
2-3-1:交渉のイメージ
交渉とは、弁護士が会社との間に入って、電話・書面・対面で直接会社と交渉してトラブルの解決を図るものです。
交渉により合意できた場合は、あなたに会社から慰謝料や未払いの残業代が支払われることになります。
合意に至らなかった場合に、労働審判や訴訟に進むことになります。
2-3-2:労働審判のイメージ
交渉で決着が付かなかった場合、労働審判が行われます。
労働審判とは、裁判所を利用して、労働者側、会社側、裁判官側の三者が裁判所で集まって、話し合いをするというものです。
労働審判は、解決するまで以下のような流れで進みます。
労働審判の回数は、最大3回までと決められています。
あなたも初回の労働審判のみは参加する必要がありますが、それ以降は参加しなくていい場合もあります。
2-3-3:訴訟のイメージ
交渉、労働審判において決定されたことに不服がある場合は、訴訟(裁判)へ移行します。
訴訟(裁判)では、裁判所で「原告(あなたもしくは、あなたが依頼した弁護士)」と「被告(会社)」が主張し合い、裁判官が判決を下します。
訴訟の流れはこのようになっています。
2-3-4:金銭的負担が少ない法律事務所もある
弁護士に依頼することで心配なのが、金銭面のことだと思います。
弁護士に依頼するだけでお金がかかるというイメージを抱くのもわかりますが、最近では「完全成功報酬制」の弁護士も増えています。
まずは電話で相談してみてもいいでしょう。
2-4:時効は3年なので早く行動しよう
残業代請求の時効は「3年」と決められています。
つまり3年よりも前の残業代分はもらえなくなってしまいます。
まとめ:違法なサービス残業について
今回は、
・サービス残業は違法であること
・知らぬ間にしているサービス残業の種類
・違法なサービス残業をさせられた分の残業代は請求できること
・未払い残業代の請求の仕方
・ブラック企業がサービス残業をさせる理由とその手口
について解説してきましたが、いかがでしたか?
ブラック企業が従業員にサービス残業をさせる意図は4つです。
1.人手不足
2.コストカット
3.風習だから
4.罰則が緩いため、甘んじている
その手口として、以下7つが挙げられます。
■サービス残業7つの手口
手口①:社員に残業を申請させない
手口②:残業は、会社の外で行わせることで、残業の証拠を残さない
手口③:給料に残業手当が含まれているので、何時間残業をしても残業代はもらえない
手口④:給料に残業代が含まれていることは口頭で説明されただけで、就業規則等に記載はない
手口⑤:残業代の処理について、毎日の集計で残業時間を30分単位で切捨てにする
手口⑥:着替えや掃除、朝礼や昼休みの電話番、研修や会議等の時間を、勤務時間にカウントしない
手口⑦:名ばかり管理職や裁量労働制、事業場外みなし労働時間制を悪用し、一切の残業代を払わない
残業代を払わないサービス残業は違法です。その場合、過去3年までさかのぼり、残業代が請求できます。
残業時間を計算する際は、残業代が発生する可能性が高い下記「労働時間」も忘れずにカウントしましょう。
■残業代が発生する可能性が高い「労働時間」
1.掃除・・・始業前や就業後の掃除時間
2.着替え・・・制服、作業服、防護服などに着替える時間
3.休憩時間・・・休憩中の電話番や来客対応などを依頼された場合
4.仕込み時間・・・開店前の準備やランチとディナーの間の仕込み時間
5.準備時間・・・店舗などで開店前の準備をする時間
6.待機時間・・・トラックの荷待ちの時間
7.仮眠時間・・・警報や緊急事態に備えた仮眠の時間(特に警備や医療従事者など)
残業代請求は、過去に残業代請求で何度も勝訴した経験を持つ弁護士に依頼するのが最善です。
残業代を取り戻せる3年のタイムリミットを無駄にしないためにも、できるだけ早く行動しましょう。