【セックスレス】離婚できるケースや慰謝料、離婚方法を弁護士が解説

著者情報

住川 佳祐
(QUEST法律事務所 代表弁護士)

東京弁護士会所属。東京大学法学部卒。『NHK あさイチ』のTV出演の他、『プレジデント』『ダイヤモンド・セレクト』などメディア掲載多数。QUEST法律事務所のHPはこちら。

セックスレスで離婚する場合のポイント

あなたは、

セックスレスで離婚できるの?」

「セックスレスで離婚する方法が知りたい」

「セックスレスで離婚慰謝料が請求できないかな?」

などの、悩みや疑問をお持ちではありませんか。

結論から言うと、お互いの同意があれば、離婚原因にかかわらず離婚はできますが、同意がなくても、セックスレスが原因で夫婦関係を継続していくことが困難な場合は、離婚が認められる可能性があります。

また、夫婦のどちらかが一方的に、セックスを長期間拒否している場合は、慰謝料を請求できる場合もあります。

セックスレスは、夫婦間の最もプライベートな問題で、様々なケースがあり、また証明することも難しい問題です。

長期間にわたってセックスレスでお悩みの場合は、早めに弁護士に相談されることをおすすめします。

この記事では、1章で、セックスレスで離婚できるケース・できないケースを、2章ではセックスレスと離婚の慰謝料の関係を、そして3章では、セックスレスで離婚する方法と流れについて解説していきます。

個々の内容をしっかりと理解して、今後の行動に役立ててください。

【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】

■セックスレスとは、夫婦間のセックスが1ヶ月以上ない状態

■セックスレスで離婚できるケース

  • 相手が一方的にセックスを拒否している場合
  • 浮気・不倫など不貞行為がある場合

■セックスレスで離婚できないケース

  • 自然にセックスができなくなった場合
  • お互いにセックスを望まなかった場合

■セックスレスで慰謝料を請求できるケースの慰謝料相場は、50~300万

■セックスレスで離婚するには証拠や準備が必要


1章:セックスレスで離婚できるケース・できないケース

前述したように、離婚協議や離婚調停においては、夫婦間の同意が得られれば、離婚原因にかかわらず離婚することができます。

また、離婚原因が、法的に認められた離婚事由(理由・原因)に該当する場合は、相手の合意がなくても離婚裁判によって離婚は認められます。

この章では、セックスレスとはどういった状態を言うのか、セックスレスで離婚できるケースと離婚できないケース、それぞれを解説していきます。

1-1:セックスレスとは

セックスレスとは、1994年の日本性科学会の定義によると、

『特殊な事情が認められないにもかかわらず、カップルの合意した性交あるいはセクシャル・コンタクトが一ヶ月以上なく、その後も長期にわたることが予想される場合』

(日本性科学会:セックスレス

となっています。

夫婦間のセックスは、婚姻関係においては大切な行為であり、夫婦関係を継続させるための重要な要素となっています。

そのため、正当な理由もなく、長期間にわたって一方的に性行為を拒否しているセックスレスの状態は、「婚姻を継続しがたい重大な事由」として認められる可能性があります。

1-2:セックスレスで離婚できるケース

セックスレスで離婚できるケースとしては、次の2つがあげられます。  

  • 相手が一方的にセックスを拒否している場合
  • 浮気・不倫など不貞行為がある場合

それぞれ解説していきます。

1-2-1:相手が一方的にセックスを拒否している場合

お互いに身体上の問題や、時間的な問題がなく、セックスができる状態にもかかわらず、相手が一方的にセックスを拒否している場合は、離婚できる可能性があります。

期間としては、1年以上夫婦間のセックスがない場合は、セックスレスとして認められることが多いです。

ただし、その場合でも、セックスレスの原因や、その状態を続けている理由を明らかにする必要があります。

なぜなら、愛してはいるけどセックスにあまり興味がない、好きではない、セックスレスを相手も受け入れていると思っている場合などがあるからです。

こういった場合は、お互いにもう一度話し合い、相手に対してセックスを求めていることを伝える必要があります。

それでも相手がセックスを拒否して、セックスレスが続く場合は、「婚姻を継続しがたい重大な事由」として、セックスレスによる離婚が認められる可能性があります。

1-2-2:浮気・不倫など不貞行為がある場合

セックスレスの原因が、相手の浮気・不倫などによるものである場合は、相手の不貞行為を離婚事由として離婚が認められます。  

不貞行為が、セックスレスの原因になる理由としては、

  • 不倫相手によって性的要求が満たされている
  • 他に好きな人ができたため、配偶者に対して嫌悪感を持ってしまう

    などがあげられます。

    不貞行為は、法的な離婚事由として挙げられているので、相手との合意が得られず離婚裁判になったとしても、相手の不貞行為を立証することによって離婚は認めら、慰謝料も請求できます。

    1-3:セックスレスで離婚できないケース

    セックスレスで離婚できないケースとしては、次の2つがあげられます。  

    • 自然にセックスができなくなった場合
    • お互いにセックスを望まなかった場合

    それぞれ解説していきます。

    1-3-1:自然にセックスができなくなった場合

    夫婦が互いに年を重ねることによって、自然にセックスができなくなった場合は、セックスレスによる離婚はできません。

    具体的に何歳からセックスができなくなるのか、個人差があるので難しい問題ですが、男性では50歳代、女性では40歳代で、性欲の減退を感じ始める人が最も多いようです。

    そして、セックスの頻度も個人差はありますが、40歳を過ぎるころから徐々に低下し始め、60歳以降には低下が著しくなっています。

    また、セックスができない原因が、性欲の減退だけでなく、加齢による性的不能(ED・勃起不全)や、閉経後の外性器の萎縮に伴う症状等による場合もあります。

    さらに、心臓疾患などの病気によってセックスが困難な場合は、セックスレスを理由に離婚はできません。

    1-3-2:お互いにセックスを望まなかった場合

    お互いにセックスを望まなかった場合は、セックスレスを理由に離婚することはできません。

    最近よく言われるように、日本人カップルのセックスレスの割合は増えており、『ニッポンのセックス』2018年版※によると、「あなたはセックスレスだと思いますか?」という質問に対して、男性では57.9%、女性では50%の方が「そう思う」と回答しています。

    さらに、既婚者の全体では、58.2%の方がセックスレスであると回答しています。

    セックスレスのアンケート

    相模ゴム工業株式会社『ニッポンのセックス』2018年版

    また、若い夫婦の場合であっても、仕事が忙しく疲れている、お互いの生活の時間帯が合わないなど、現在の生活状況の影響によって性欲が減退している場合もあるようです。

    このようなケースでは、セックスレスを理由にすぐに離婚できるという可能性は低くなります。

    弁護士
    セックスレスによる離婚が難しい場合でも、話し合いによってお互いの同意が得られれば離婚はできます。

    また、セックスレスによって、お互いの気持ちや生活パターンにすれ違いが大きくなり、夫婦関係が修復不可能な状態になったため、離婚に至ることはあります。

     


    2章:セックスレスと離婚の慰謝料

    セックスレスで離婚した場合、相手に対して慰謝料を請求できる可能性があります。

    離婚の慰謝料とは、相手の不法行為によって離婚に至り、その際に被った精神的損害に対する賠償を求めるものです。

    この章では、

    • 慰謝料を請求できるケース
    • 慰謝料を請求できないケース
    • セックスレスの慰謝料相場

    について解説していきます。

    2-1:慰謝料を請求できるケース

    慰謝料を請求できるケースとしては、1-2であげた、

    • 相手が一方的にセックスを拒否している場合
    • 浮気・不倫など不貞行為がある場合

    となります。

    相手に健康上の問題がなく、セックスを求めても長期間(おおよそ1年以上)にわたって一方的に拒否している場合は、慰謝料を請求できる可能性があります。

    そのためには、セックスレスによって結婚生活にどんな影響があり、どれほどの精神的苦痛を与えられたのか、明確に主張する必要があります。

    また、浮気や不倫など相手の不貞行為によるセックスレスの場合は、相手の不貞行為を立証する証拠をつかむことによって、離婚の慰謝料を請求することができます。

    2-2:慰謝料を請求できないケース

    慰謝料を請求できないケースとしては、セックスレスを原因とする離婚であっても、どちらか一方に責任があるとは言えない場合です。

    セックスレスが原因で夫婦関係が破綻し、「婚姻を継続しがたい重大な事由」として離婚が認められても、セックスレスの明確な証拠がなければ慰謝料を請求することはできません。

    前述したように、離婚の慰謝料とは、相手の不法行為が立証されていて、その行為による精神的損害に対する賠償を求めるものだからです。

    2-3:セックスレスの慰謝料相場は50300万円

    セックスレスの慰謝料相場としては、50万円~300万円程度です。

    一般的に、不貞行為によるセックスレスの場合は、慰謝料の金額も高額になることが多いです。

    また、慰謝料の金額は、セックスレスの内容や程度、期間などによって変動しますが、

    • 婚姻期間が長い
    • 相手の資産や収入が高い
    • 未成年の子供がいる
    • 初婚である
    • 結婚してから一度もセックスがない

    場合などは、高額になる可能性があります。


    3章:セックスレスで離婚する方法と流れ

    ここまで説明してきたように、セックスレスは夫婦間の最もプライベートな問題であり、拒絶された側にとっては、離婚の原因となり得る深刻な悩みですが、法的な離婚事由ではありません。

    この章では、セックスレスが原因で離婚を考えた場合の、離婚に必要な準備や、離婚する方法と流れについて解説していきます。

    3-1:セックスレスで離婚するには証拠や準備が必要

    セックスレスで離婚するには、セックスレスを立証できる証拠が大きな決め手となるため、その証拠を集めるための準備(準備期間)が必要です。

    なぜなら、セックスレスで離婚を考えた場合、お互いの話し合いだけで離婚の合意や、慰謝料などの問題を解決することは非常に難しく、離婚調停や裁判に進むことが多いからです。

    そのため、長期間にわたるセックスレスの状況が、弁護士や調停委員、裁判官等の第三者に客観的に分かるようにする必要があります。

    セックスレスを立証する証拠としては、次のようなものがあげられます。

    • セックスレスの状況を記録した日記やメモ
    • セックスを拒絶されたメールや録音
    • 夫婦の生活時間の記録

      ①の日記やメモによって、セックスレスになった時期や期間、また拒絶された際の精神的ダメージなどを知ることができます。

      ②のメールや録音によって、実際にセックスを求めても拒絶された夫婦のやり取りを、知ることができます。

      またその中に、具体的なセックスレスの期間などが残されている場合は、有力な証拠となります。

      ③の記録を残すことによって、お互いの就寝時間など生活のリズムにすれ違いはなく、セックスをすることは可能な状態だったと証明することができます。

      それぞれ、長期間にわたって準備していく必要がありますが、セックスレスを立証するための重要な証拠となります。

      3-2:セックスレスで離婚する方法と流れ

      セックスレスで離婚を争う場合の流れとしては、次の表のようになります。 

      離婚紛争の流れ

      それぞれ、解説していきます。

      3-2-1:まずは離婚協議を行う

      まずは、夫婦間で離婚についての話し合い、離婚協議を行います。

      離婚協議の流れとしては、次のようになります。

      1. 夫婦の話し合いで、離婚条件(慰謝料、財産分与、親権など)を決める
      2. 離婚条件を離婚協議書にまとめる
      3. 作成した離婚協議書を公正証書にまとめる
      4. 離婚届を作成し、役場に提出する

        離婚の方法としては最も多い形ですが、話し合い、口頭で離婚条件を決めて、離婚届けを出すだけでは、後から問題が生じる可能性があります。

        特に、離婚後に慰謝料や養育費など金銭による支払いを受けるときには、支払われない場合に備えて、できれば公正証書を作成されることをおすすめします。

        公正証書とは、公証役場で公証人が法律にしたがって作成する公文書のことです。

        公正証書に記載された慰謝料や養育費などの未払いが発生した際は、裁判を起こさなくても、相手の給料や財産を差し押さえるなど法的手続きをとることができます。

        弁護士
        離婚協議でも、DVなどで直接の交渉が難しい場合や、不利な条件で離婚に合意してしまう不安がある場合は、弁護士に相談されることをおすすめします。
         

        3-2-2:離婚調停を申し立てる

        夫婦間の話し合い(協議)がうまくいかなかった場合は、家庭裁判所に離婚の調停を申し立てることができます。

        離婚調停では、裁判官1名と調停委員2名からなる調停委員会によって、双方の意見の聞き取りや条件面の話し合いが夫婦別々に行われます。

        夫婦双方が合意した場合は、合意した内容が調停調書に記載され、調停離婚が成立することなります。

        申立人は、調停成立の日から10日以内に、離婚届に離婚調停調書の謄本を添えて、市町村役場に提出しなければなりません。

        もし、相手が離婚を拒否したり、金銭面や子供の親権等で合意が得られない場合は、調停不調となります。

        その場合は、離婚をあきらめるか、離婚を再度協議するか、あるいは家庭裁判所に離婚訴訟するか選択することになります。 

        3-2-3:離婚訴訟を起こす

        離婚調停で合意が得られない場合は、離婚訴訟を起こすことができます。

        離婚訴訟では、離婚の成否と一緒に慰謝料なども判決によって決められます。

        離婚訴訟の流れとしては、次のようになります。

        • 家庭裁判所に離婚裁判の訴状を提出
        • 裁判所から口頭弁論期日の呼出状
        • 第1回口頭弁論が開かれる
        • 2回目以降も口頭弁論が開かれる
        • 判決、裁判の終了

          離婚訴訟の内容はもちろん様々ですが、裁判にかかる期間は1年以上となることが多いです。

          離婚訴訟では、離婚協議・調停のような話し合い、合意による決定ではなく、提出された訴状・書面等をもとに、裁判官の判断によって離婚の成否や慰謝料等が決められるのが原則です。

          ただし、双方が希望すれば、和解によって離婚をしたり慰謝料額を決めたりすることも可能です。

          離婚の問題について、ここまで合意が得られずに離婚訴訟にまで及んだ場合は、弁護士への依頼を強くおすすめします。

          なぜなら、離婚訴訟では、法的なアドバイスだけでなく、あなたに有利な実情を論理的に説明し、必要な証拠等を揃えて裁判所との対応を有利に進めることが必要となるからです。

          また、セックスレスによる離婚の慰謝料等の相場などを踏まえて、スムーズに交渉を進めることが可能となります。

          さらに、弁護士に依頼することで、離婚訴訟の際に必要となる煩雑な法律手続きや申請書類などの作成を全て任せることができます。

          弁護士
          長期間にわたってセックスレスでお悩みの場合は、離婚を考えた時点で、早めに弁護士に相談されることをおすすめします。

          早い段階から弁護士がアドバイスすることによって、セックスレスを証明する証拠の収集や、妥当な金額の慰謝料を得られる可能性が高まります。

           


          まとめ

          ここまで、セックスレスで離婚できるケース、離婚できないケース、セックスレスの慰謝料や相場、セックスレスで離婚する方法や流れについて解説してきました。

          最後に今回の内容をまとめます。

          ■セックスレスとは、夫婦間のセックスが1ヶ月以上ない状態

          ■セックスレスで離婚できるケース

          • 相手が一方的にセックスを拒否している場合
          • 浮気・不倫など不貞行為がある場合

          ■セックスレスで離婚できないケース

          • 自然にセックスができなくなった場合
          • お互いにセックスを望まなかった場合

          ■セックスレスで慰謝料を請求できるケース

          • 相手が一方的にセックスを拒否している場合
          • 浮気・不倫など不貞行為がある場合

          ■セックスレスで慰謝料を請求できないケース

          どちらか一方に責任があるとは言えない場合

          ■セックスレスの慰謝料相場は50~300万円

          ■セックスレスで離婚するには証拠や準備が必要

          この記事の内容を参考にして、これからの行動に役立ててください。

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