- 更新日:2024.09.20
- #店長管理職
店長でも残業代が出る?3つの判断基準と違法性が分かる具体例
この記事を読んで理解できること
- 「店長」=「法律上の管理監督者」ではないことがほとんど!
- 名ばかり店長とみなされた判例を参考にしよう
- もうこき使われない!名ばかり店長が起こすべき3つの行動
- 残業代請求する上での2つのポイント
「おめでとう!君には来年度から店長になってもらう。責任感を持ってこの店をリードしてくれ。」
あなたは、こんなことを言われて会社から騙されていませんか?
これはブラック企業が、社員を安い労働力として使うための「手口」であり、ほとんどの「店長」などの管理職は、残業代をもらう権利を持っています。
なぜなら、会社の言う「店長」「管理職」は、法律上の管理職の規定である「管理監督者」の要素を満たしていないことがほとんどで、あなたが管理監督者でない場合、会社が残業代を支払わないことは違法だからです。
そこで、この記事では、
- 管理監督者であれば適用されなくなる法律上の4つの規定
- 店長が「管理監督者」とみなされるのはどんな場合なのか(法律上の要素・チェックリスト・判例)
- 違法だった場合にやるべき行動とその具体的方法
などについて、詳しく解説します。
仮に、あなたが飲食店の店長で、月給30万円で月200時間のサービス残業をしていたとします。
その場合、2年分さかのぼって残業代を請求するなら約850万円を請求することができます。
しかし、何も請求をしなければ、残業代はゼロ円のままです。
最後までしっかり読んで、1円でも多く残業代を取り返しましょう。
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■管理監督者の3つの要素
下記の3つをすべて満たしていなければ管理監督者に該当しない。
- 経営者に近い責任・権限
- 出退勤の時間が自由で、自分で決められる
- 残業代をもらう必要がないほど高い待遇を受けている
■小売り・飲食業の店長の場合の判断基準
- 店舗におけるシフト表の作成、残業の命令、採用・解雇の権限を持っている
- 営業中に、店舗に常駐する必要がなく、人員不足でも自分が働いて、長時間労働を強いられることがない。
- 管理監督者としての仕事が、会社から配布されたマニュアルに沿ったものではなく、自分の判断で行っている。
■管理監督者に該当しない場合、店長であっても以下のことは違法
- 残業時間に上限がない
- 休憩時間が必要ない
- 法定休日が必要ない
- 残業代が払われない
目次
1章:「店長」=「法律上の管理監督者」ではないことがほとんど!
管理監督者は、以下のように、労働基準法の4つの規定が適用されません。
・労働時間→残業時間の上限なし
・休憩時間→6時間以上の労働でも必要なし
・法定休日→週1日以上の休日がなくてもOK
・残業代(割増賃金)→支払われる必要なし
ただし、これらが適用されなくなるのは、管理監督者とみなされるための、
- 経営者に近い責任・権限
- 出退勤の時間や日程を自分で決められる
- 残業代をもらう必要がないほど高い待遇
の3つの要素をすべて見たしている場合のみである必要があります。
まずは、あなたが管理監督者であるかどうか、チェックリストで確認してみましょう。
それから、管理監督者とみなされる「3つの要素」と、管理監督者の適用されない4つの規定について、詳しく解説します。
1-1:自分が管理監督者かチェックリストで判断しよう。
下のチェックリストから、自分がいくつ当てはまるか確認してみてください。
チェックリストに当てはまる数が多いほど、あなたは「名ばかり店長」の可能性が高いです。
(引用)東京労働局資料「しっかりマスター労働基準法-管理監督者編-」
1〜2つ:管理監督者ではない(=名ばかり店長である)可能性が高い
3つ以上:管理監督者ではない(=名ばかり店長である)可能性が極めて高い
3つ以上当てはまる人は、法律上の管理監督者とみなされる可能性が極めて低く、ほぼ確実に「肩書きだけの店長=名ばかり店長」です。
チェックリストの内容は、管理監督者とみなされる「3つの要素」から作られたものです。
そこで、次に3つの要素について説明します。
1-2:これを満たせなければ「名ばかり店長」で違法
労働基準法では、「管理監督者」は、以下の3つの要素を満たしている必要があるとされています。詳しくみてみましょう。
【経営者に近い権限・責任を持っている】
もし、あなたが法律上の管理監督者にあたるならば、以下のことに当てはまるはずです。
- 経営者に近い立場にいる
- 従業員の採用や解雇、部署の立上げなどの権限を持っている。
- 経営方針の意思決定ができる。
つまり、商品サービスの内容や品質、商品の価格、取引先の選定など会社の重要な事柄を自分の権限で決められるような、社内でも経営者に近い立場の人が管理監督者として扱われるということです。
【勤務時間を自分で決める権限を持っている】
管理監督者は、立場上、時間を選ばずに対応することが求められているため、働く時間が自由である必要があります。
経営者に近い強い責任を持っており、会社のためには時間や土日に関係なく働かなければならないからです。
そのため、勤務時間が決められており、自分の勤務時間を自分の裁量で決める権限を持っていない場合は、法律上の管理監督者とはみなされません。
【残業代を出す必要がないほどの高い待遇を受けている】
管理監督者とみなされるには、残業代が支払われないことに見合うほどの好待遇をうけていることが1つの要素になります。
例えば、「他の社員に比べて非常に高い賃金をもらっている」というのが一つの目安です。
「数万円の役職手当」がつくくらいでは、管理監督者の地位にふさわしい賃金とは言えません。
ただし、「非常に高い賃金」というのは業界や会社によって判断が曖昧であるため、待遇を基準にした判断は補足程度に考えておいてください。
1-3:名ばかり店長に多い4つの特徴
では、ここでより具体的に、名ばかり店長の最たる4つの特徴についてみていきます。
この記事を読んでいるあなたは、当てはまるものが多いのではないでしょうか。
1.当たり前のように残業代が支払われない
店長だからといって、1日8時間・週40時間を超えて働いているのに残業代が出ないのは違法であり、名ばかり店長の特徴です。
2.残業時間に上限がない
店の開店準備や仕込み時間が当たり前のように労働時間にカウントされず、残業代なしなら違法です。
たとえば、以下のような1日の勤務体系が当たり前になっていると要注意です。
3.休憩時間も働いている
通常、社員には、1日労働時間が6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間以上の休憩が与えられなくてはなりません。店長だからといって、休憩時間が取得できないのは違法です。
【法定休日が取得できない】
通常、社員には毎週1日以上の休日(法定休日)が与えられなければなりません。
しかし、管理監督者は会社のために休日も出勤しなければならないことが考えられるため、法定休日も取得する権利がありません。ただし、名ばかり管理職は、毎週1日以上の休日が取得できていなければ違法です。
2章:名ばかり店長とみなされた判例を参考にしよう
名ばかり店長と管理監督者の違いについて、理解することはできましたか?
大企業でも執行役員クラスでなければ、管理監督者の要素は満たせないはずです。
そのため、ほぼすべての管理監督者扱いされている人は、残業代請求することができるでしょう。
まだ判断がつかないという場合は、以下の過去の判例から、具体的にどのようなケースで名ばかり管理職とみなされたのか、イメージしてみてください。
ここまで読んで、
と思った場合は、これから紹介する方法で、すぐに行動を起こすことをオススメします。
3章:もうこき使われない!名ばかり店長が起こすべき3つの行動
あなたが「名ばかり店長」の場合、以下のことを会社に要求するべきです。
- 長時間労働の改善
- 法定休日の取得
- 残業代の請求
要求する方法としては、
- 自分で直接要求する:オススメ度★
- 労働基準監督署に申告する:オススメ度★★
- 弁護士に依頼する:オススメ度★★★
という3つの選択肢があります。どの方法でも良いわけではありませんので、それぞれについて簡単に解説します。
【自分で会社に直接要求:オススメ度★】
まずは、「長時間労働の改善」「法定休日の取得」などを、自分で会社に改善を訴えるという方法が考えられます。
しかし、相手は社員を不当にこき使うブラック企業ですので、いち社員が訴えたところで改善してくれる可能性はとても低いでしょう。あなたが会社に在籍し続けることを望む場合は、改善を訴えたことで、職場での人間関係が悪化する可能性もあります。
そのため、あまりオススメの手段ではありません。
「残業代請求」の場合は、会社に直接「内容証明郵便」を送って、残業代を請求するという手段があります。
ただし、自分で会社に内容証明を送って残業代を請求しても、会社側にはプロの護士が付いて、うまく丸め込まれてしまいます。つまりこの方法には、あなたが残業代を請求しても、1円も取り戻せないかもしれない可能性が高いです。
【労働基準監督署に申告:オススメ度★★】
労働基準監督署に申告することで、会社に調査が入り、長時間労働や休日の取得などに関して「是正勧告」されることがあります。
また、是正勧告の結果、未払いにされていた残業代が払われる可能性はあります。
しかし、労働基準監督署は「残業代の請求」などの案件では動いてくれないことがほとんどで、申告しても時間・手間が無駄になる可能性も高いです。
【弁護士に依頼する:オススメ度★★★】
弁護士は、長時間労働の是正や休日の取得を、直接解決することはできません。しかし、残業代の請求については一番オススメです。
ブラック企業は管理職に対して、残業代を未払いにしていることがとても多いため、請求すれば残業代を取り返せる可能性が高いです。
おそらくあなたが心配しているであろう「費用」の面でも、「完全成功報酬制」の弁護士に依頼すれば、「相談料」や「着手金」ゼロで依頼することができます。
弁護士に依頼する流れ・費用について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
【残業代請求】弁護士選びの8つのポイントと解決までの流れや費用を解説
4章:残業代請求する上での2つのポイント
会社に要求できることとその手段について、理解できたでしょうか?
最後に、残業代を請求する場合に集めるべき「証拠」について、簡単に解説します。
4-1:残業代請求に必要な証拠
残業代請求に有効な証拠について、勤怠管理している会社と、勤怠管理していない会社に分けてご紹介します。
【勤怠管理している会社で有効な証拠】
- タイムカード
- 会社のパソコンの利用履歴
- 業務日報
- 運転日報
- メール・FAXの送信記録
- シフト表
【勤怠管理していない会社で有効な証拠】
- 手書きの勤務時間・業務内容の記録(最もオススメ)
- 残業時間の計測アプリ
- 家族に帰宅を知らせるメール(証拠能力は低い)
手書きでも証拠になりますが、注意しなければならないのは「ウソ」を絶対に書かないことです。
ウソの内容が発覚すれば、信用が疑われて不利になってしまうからです。
そのため、証拠はたとえば「20時30分」ではなく「20時27分」のように、できるだけ正確に記録するようにしましょう。
集めるべき証拠について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
【弁護士が解説】残業代をアップさせる証拠一覧と集め方マニュアル
4-2:残業代請求には3年の時効がある!行動は早めに
もう一点注意してもらいたいのが、残業代請求には時効があると言うことです。
3年の時効を過ぎると、残業代は二度と取り返すことができなくなります。
そのため、未払いの残業代を取り返したい場合は、すぐに行動を始める必要があるのです。
残業代請求の時効について、詳しくは以下の記事を参照してください。
残業代請求の時効は3年!時効を止める方法や注意点、例外などを解説
まとめ:店長と管理職(管理監督者)
いかがだったでしょうか?
最後にもう一度、学んだ内容を復習しましょう。
まず、管理監督者とみなされるには、以下の要素のすべてに該当する必要があります。
- 経営者に近い責任・権限
- 出退勤の時間が自由で、自分で決められる
- 残業代をもらう必要がないほど高い待遇を受けている
特に小売り・飲食業のチェーン店の店長の場合は、
- 店舗におけるシフト表の作成、残業の命令、採用・解雇の権限を持っている
- 営業中に、店舗に常駐する必要がなく、人員不足でも自分が働いて、長時間労働を強いられることがない。
- 管理監督者としての仕事が、会社から配布されたマニュアルに沿ったものではなく、自分の判断で行っている。
などが具体的な判断基準になります。
これらを満たさない「名ばかり管理職」の場合は、以下の4つのことが違法になります。
- 残業時間に上限がない
- 休憩時間が必要ない
- 法定休日が必要ない
- 残業代が払われない
ただし大事なことは、会社から店長扱いされているほとんどの人は、管理監督者の要素を満たしておらず、違法な状態で働かせられているということです。
残業代請求には3年の時効がありますので、会社から不当な扱いを受けている場合は、すぐに行動を起こしましょう。
【内部リンク一覧】
【残業代請求】弁護士選びの8つのポイントと解決までの流れや費用を解説