部下との不倫の5つのリスクと対処法やよくある質問を弁護士が解説
この記事を読んで理解できること
- 部下との不倫が抱える5つのリスク
- 部下と不倫関係に陥りやすい5つのきっかけ
- 部下と不倫してしまった場合の対処法
- 部下と不倫した場合によくある質問
あなたは、
- 部下との不倫がバレないか不安だ
- 部下との不倫のリスクが知りたい
- 部下と不倫した時の対処法が知りたい
などとお考えではありませんか?
結論から言うと、社内での部下との不倫は、様々なリスクを伴います。
会社から懲戒処分を受ける可能性もありますし、バレてしまうと、社内で信頼を失うだけでなく、配偶者から慰謝料請求や離婚を迫られることもあります。
そのため、部下との不倫のリスクを知ったうえで、社内で部下と不倫関係になりやすい状況を理解し、十分注意する必要があります。
それでも不倫関係になった場合は、早めに対処し、状況によっては弁護士に相談することが大切です。
そこでこの記事では、
1章では、部下との不倫が抱える5つのリスク
2章では、部下と不倫関係に陥りやすい5つのきっかけ
3章では、部下と不倫してしまった場合の対処法
4章では、部下と不倫した場合によくある質問
について解説します。
この記事を読んで、社内での部下との不倫はリスクがあることをしっかり理解し、それでも不倫関係になってしまった時は、1人で悩まず専門家に相談してください。
目次
1章:部下との不倫が抱える5つのリスク
社内での部下との不倫には、次の5つのリスクがあります。
- 退職を迫られる可能性がある
- 降格や減給、左遷される可能性がある
- 社内の信頼を失う
- 離婚を請求される可能性がある
- 慰謝料を請求される可能性がある
それぞれ見ていきましょう。
1-1:退職を迫られる可能性がある
部下との不倫を理由に会社を解雇されることは原則としてありませんが、退職を迫られる可能性があります。
社内で上司と部下が恋愛関係になったとしても、あくまでプライベートで会社とは無関係な問題なので、懲戒処分の対象とはなりません。
しかし社内の不倫問題は、職場の風紀や人間関係に悪影響を及ぼし、外部にも広まってしまうと企業の社会的評価まで大きく損なわれてしまいます。
そのため、就業規則等で「社内不倫は禁止する。違反した場合は懲戒解雇処分とする。」といった趣旨のルールを設けていることがあります。
もちろん、就業規則に記載があったとしてもそれだけでは不十分で、上司と部下の不倫が直ちに懲戒解雇につながるわけではありません。
労働契約法上、懲戒解雇が認められる条件は、
- 就業規則に定めがあること
- 客観的に合理的な理由による懲戒解雇であること
- 社会通念上懲戒解雇が相当であること
と定められているからです。
そのため、職場の風紀・秩序を乱し正常な企業運営を阻害し、企業に損害を与えたと言えるような場合は、退職を迫られるか、あるいは処分の対象となる可能性があります。
1-2:降格や減給、左遷される可能性がある
社内で上司と部下が不倫関係になったことが知られたとしても、それだけで降格や減給、左遷される理由にはなりません。
部下との不倫を理由とする、降格、減給、左遷といった懲戒処分が認められるのは、職場の風紀維持や人間関係、業務に悪影響を及ぼしたと言える場合です。
例えば、次のような状況にある場合です。
- 不倫関係がバレて部署内の雰囲気が悪くなる
- 上司が他の部下より不倫相手を優遇する
- 社内メールで不倫相手と業務に関係ないやり取りをする
- 会議室など会社の施設を使って密会を重ねる
- 不倫がセクハラ問題に発展する
このような場合は、降格、減給、左遷といった懲戒処分を受ける可能性が高くなります。
1-3:社内の信頼を失う
社内で上司と部下が不倫関係になっていることが知られたとしても、仕事に影響が出ていない場合は、懲戒解雇、降格、減給、左遷といった懲戒処分を受けることはないかもしれません。
しかし、不倫関係が知れ渡った場合、不倫を行っている当事者の社内での信用が大きく下落してしまう点は否めません。
社内での信頼を失ってしまうと、昇進できなくなったり、仕事を回してもらえなくなったりして、キャリアに影響が出てしまうだけでなく退職に追い込まれる可能性もあります。
1-4:離婚を請求される可能性がある
あなたが上司の立場で既婚者の場合、あなたの配偶者に部下との不倫関係を知られてしまうと、離婚を請求される可能性があります。
夫婦の関係が冷え込んでいる場合は、さっさと離婚して不倫相手の部下と再婚してしまいたいと考えるかもしれませんが、いざ離婚となると、財産分与によって財産の半分は配偶者に分けなければなりません。
また、子どもがいる場合は、親権や養育費の問題など、考えなければならないことがたくさん出てきます。
最初は不倫という関係に燃え上がっていたとしても、配偶者や会社にバレてしまった場合、結婚を求めても拒否される可能性もあるでしょう。
その結果、離婚したのに再婚できず、結局一人になってしまい、職場でも肩身が狭くなるなど、最悪の状況に追い込まれてしまいます。
1-5:慰謝料を請求される可能性がある
あなたが既婚者で部下と不倫してしまった場合、配偶者から慰謝料を請求される可能性があります。
また、W不倫のように部下も既婚者の場合、部下の配偶者に不倫がバレてしまうと、慰謝料を請求される可能性があります。
このようにW不倫の場合は、二重に慰謝料の支払いを求められる可能性があるため、大変重い経済的負担を背負ってしまうことになりかねません。
不倫の慰謝料の相場は、以下の通りと言われています。
- 不倫はしたが夫婦関係は継続:50万円~100万円
- 不倫が原因で別居に至った:100万円~200万円
- 不倫が原因で離婚に至った:150万円~300万円
慰謝料の相場は複数の要素によって決まるため、増額の要素が重なった場合は、さらに高額請求される可能性もあります。
2章:部下と不倫関係に陥りやすい5つのきっかけ
社内で部下と不倫関係に陥りやすいきっかけは、次の5つの場合です。
- 部下から悩み相談を受ける
- 残業で2人きりになる
- 仕事でペアになり外回りの仕事や出張をする
- 会社の飲み会やイベント・社員旅行で仲良くなる
- 部下から積極的にアプローチを受ける
それぞれの状況を理解し、自制するようにしてください。
2-1:部下から悩み相談を受ける
上司として異性の部下から悩み相談を受ける状況は、部下との不倫関係のきっかけとなりやすい場面です。
上司としては部下の話を聞くうちに情を抱きやすいですし、部下も上司からアドバイスされたり、慰めの言葉をかけられると上司に対して心理的に依存しやすくなります。
もちろん、社内において、異性の部下から悩み相談を受ける状況は珍しいことではなく、むしろ、必要不可欠であることが多いでしょう。
不倫関係のきっかけになってしまうことを防ぐためには、悩み相談を受ける場所がポイントです。
事務所内など人目のある場所で悩み相談を受けるのがベストですが、部下が人目を避けたがっている場合でも、空いている会議室を利用するなどして、誤解を招かない場所を選びましょう。
2-2:残業で2人きりになる
残業などで異性の部下と二人っきりになってしまう状況も部下との不倫関係のきっかけとなりやすい場面です。
上司と部下のどちらか一方が相手に対して下心を抱いている場合は、意図的にそのような状況を作り出していることも考えられます。
残業を終えた後、仲良く退社し、どこかで飲んだ後で、そのままの勢いでラブホテルに誘われることもあるかもしれません。
不倫のきっかけとなってしまうことを防ぐためには、このような状況を作らないことが大切と言えます。
2-3:仕事でペアになり外回りの仕事や出張をする
男性上司と女性部下がペアを組んで外回りの仕事や出張をすることは珍しいことではありません。
男性だけで訪問先を訪れるよりも男女のペアで訪れた方が、訪問先からの受けもいいですし、女性部下の教育にもなるからです。
そのため、男性上司と女性部下がペアで外出し、お互いに協力して成果をあげているうちに、お互いに気持ちが打ち解けて男女の関係に発展する場合もあるでしょう。
不倫関係に発展してしまうことを防ぐためには、あくまでも業務をこなせるように仕事に集中し、職場の仲間として自制心を保つことが大切と言えるでしょう。
2-4:会社の飲み会やイベント・社員旅行で仲良くなる
会社の飲み会やイベント・社員旅行は、上司も部下も職場を離れて仲良くなれるための絶好の機会です。
そのため、社員同士のコミュニケーションの活性化という本来の目的を超えて、不倫関係に発展してしまうきっかけになる場合もあります。
会社の飲み会やイベント・社員旅行では、社員同士の親睦は深めつつも、自制心を保つことが大切です。
2-5:部下から積極的にアプローチを受ける
女性部下が男性上司に対して、積極的にアプローチしてくることもあります。
20代後半になって結婚を焦っていたり、上司にあこがれを持つ恋愛体質の女性の場合は、上司が既婚者と知っても構わずアプローチしてくるかもしれません。
転職歴が多い女性部下の場合は、過去にも職場内で不倫関係を繰り返していた可能性もあるので要注意と言えるかもしれません。
いずれにしても、女性部下から積極的にアプローチを受けた場合は、不倫関係になるつもりはないことをはっきりと宣言することが大切です。
3章:部下と不倫してしまった場合の対処法
社内で部下と不倫してしまった場合は、次のような対処法を検討してください。
- 不倫がバレないうちに関係を清算する
- 不倫がバレたら真摯に謝罪する
- 弁護士に相談する
それぞれ見ていきましょう。
3-1:不倫がバレないうちに関係を清算する
不倫関係が、幸せな結婚につながることは少ないのが実情です。
今の配偶者と別れる気がないのならば、不倫関係がバレないうちに精算することが最善と言えます。
また、当人同士は秘密にしているつもりでも、社内の不倫関係は次のような事情からバレやすいです。
- 上司と部下の接し方が他の社員と違う。
- 上司と部下の会話時の距離感がやたらと近い。
- 上司と部下が同じ日に有給休暇を取得することが多い。
- 上司と部下が人目を避けてひそひそ話していることが多い。
- 上司と部下のシフトが重なる事が多い。
その結果、上司であるあなたと部下との噂が社内で広がった場合、いつの間にかあなたの配偶者の耳にも伝わり不倫がバレる可能性が高まります。
3-2:不倫がバレたら真摯に謝罪する
不倫がバレてしまった場合は、すでに不倫関係を清算しているかどうかにかかわらず、まず、配偶者に対しては真摯に謝罪することが大切です。
また、不倫相手にも配偶者がいて抗議を受けた場合も、同様に謝罪する必要があります。
不倫相手の配偶者から抗議を受けてしまう状況では、謝罪だけでなく、慰謝料の支払いも求められる可能性があるため、弁護士に相談するといった対応が必要です。
自分の配偶者から慰謝料の支払いを求められてしまうケースでは、離婚も覚悟している可能性が高いでしょう。
離婚したくないのであれば、やはり、真摯に謝罪するとともに、今後は一切不倫をしないことを確約し、誓約書を書くといった対応も必要になるかもしれません。
3-3:弁護士に相談する
不倫問題で弁護士への相談が必要になるのは、不倫相手や自分の配偶者から慰謝料の支払いを求められたり離婚を迫られている場合です。
不倫によって、相手に精神的苦痛を与えてしまっている以上、慰謝料を支払う義務が生じます。
ただ、当事者同士で慰謝料の支払いに関して交渉を行ってしまうと、法外な慰謝料の支払いを求められたり、脅迫や恐喝まがいの行為を受けてしまう可能性もあります。
このような事態を防ぐためには、弁護士に相談し慰謝料の支払いについて交渉してもらうべきでしょう。
また、家族や会社に知られずに、不倫問題を解決したい場合も、弁護士に相談するのが最善です。
弁護士に依頼することによって、弁護士が代理人となり相手との連絡や交渉に対応するので、周囲に知られることなく解決できます。
また、弁護士が適正な内容で法的に効力のある示談書を作成することによって、示談後も慰謝料を請求されるなどといった後々のトラブルを防げます。
4章:部下と不倫した場合によくある質問
社内での部下との不倫に関してよくある質問をまとめました。
- プライベートなことでも懲戒事由になる?
- 慰謝料はどの程度払う必要がある?
この2点について解説します。
4-1:プライベートなことでも懲戒事由になる?
部下との不倫が、直ちに会社からの懲戒事由になるわけではありません。
職場の風紀・秩序を乱し、職場での仕事に具体的な影響を与えたわけでなく、プライベートで部下と不倫しているだけであれば、基本的に会社から懲戒処分を受けることはありません。
仮に、会社がプライベートで部下と不倫していることだけを理由に懲戒処分を行ったとしても、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」懲戒処分であるとして、労働契約法15条に基づいて無効を主張できます。
法律上、部下との不倫が懲戒事由になるのは、
- 社内不倫が、職場の風紀・秩序を乱し、正常な企業運営を阻害している。
- 社内不倫により、企業に具体的な損害が生じている。
このような場合が典型的です。
4-2:慰謝料はどの程度払う必要がある?
部下との不倫関係でも、部下が既婚者なら、部下の配偶者から慰謝料の支払いを求められるでしょう。
また、自身の配偶者からも慰謝料の支払いを求められる可能性があります。
その場合の慰謝料の相場は、離婚するか、別居するかにより大きく異なります。
まず、離婚も別居もしない場合は、不倫慰謝料の相場は50万円から100万円が目安です。
離婚はしないけど別居した場合は、100万円から200万円が目安とされています。
不倫が原因で離婚に至った場合は、夫婦の生活を破壊したことになるため、不倫慰謝料の額も高額になり、150万円から300万円といった金額になります。
まとめ:部下と不倫した場合のリスクと対処法
社内での部下との不倫には次の5つのリスクがあります。
- 退職を迫られる可能性がある
- 降格や減給、左遷される可能性がある
- 社内の信頼を失う
- 離婚を請求される可能性がある
- 慰謝料を請求される可能性がある
社内で部下と不倫関係に陥りやすいきっかけは、次の5つです。
- 部下から悩み相談を受ける
- 残業で2人きりになる
- 仕事でペアになり外回りの仕事や出張をする
- 会社の飲み会やイベント・社員旅行で仲良くなる
- 部下から積極的にアプローチを受ける
社内で部下と不倫してしまった場合の対処法は、次の3つです。
- 不倫がバレないうちに関係を清算する
- 不倫がバレたら真摯に謝罪する
- 弁護士に相談する
部下と不倫した場合によくある質問は次の2点です。
Q.プライベートなことでも懲戒事由になる?
A.仕事に影響を与えず、プライベートで不倫している分には懲戒事由になりません。
Q.慰謝料はどの程度払う必要がある?
A.慰謝料の相場は、離婚するか、別居するかにより大きく異なり、50万円から300万円が目安です。
この記事を参考に社内での部下との不倫にはリスクがあること、不倫関係に陥りやすいきっかけを理解し、不倫関係にならないよう自制してください。
それでも不倫関係になってしまった場合は、早期の清算を目指し、状況によっては早めに弁護士にご相談ください。