【不貞行為の慰謝料】判例と不倫発覚後の3つの慰謝料相場、7つのポイント


この記事を読んで理解できること
- 不倫・不貞行為の慰謝料の判例・事例
- 不貞行為発覚後の夫婦関係と3つの慰謝料相場・判例
- 不倫・不貞行為の慰謝料を決める7つのポイント
あなたは、
「不貞行為の慰謝料相場や判例が知りたい」
「不貞行為の慰謝料を決めるポイントは」
「不貞行為の慰謝料を高額請求して解決したい」
などとお考えではありませんか。
結論から言うと、不倫(不貞行為)による慰謝料の金額は、法律で基準が定められているわけではないため、裁判所が下した判例の慰謝料額を目安として慰謝料を交渉し合意を図っていきます。
また、慰謝料を争点とした裁判では、過去の判例や個別の事情等を考慮しながら、最終的には裁判官の判断によって慰謝料の金額が決められます。
一般的な相場としては、不倫(不貞行為)が発覚した後、婚姻関係がどう変化したかによって、次のような金額となっています。
- 不倫はしたが夫婦関係は継続:50万~100万円
- 不倫が原因で別居に至った:100万~200万円
- 不倫が原因で離婚に至った:150万~300万円
この記事では、1章で不倫・不貞行為の慰謝料の判例・事例を紹介し、2章で不貞行為発覚後の夫婦関係と3つの慰謝料相場・判例について解説します。
そして、3章で不倫・不貞行為の慰謝料を決める7つのポイントについて解説します。
個々の内容をしっかりと理解して、今後の行動に役立ててください。
1章:不倫・不貞行為の慰謝料の判例・事例
不倫・不貞行為の慰謝料の判例・事例として、次の3つの判例と当法律事務所の事例を1つあげていきます。
- 裁判例① 不倫が原因で夫婦関係が破綻したため400万円を認定
- 裁判例② 不倫調査費用の一部を肯定し合計352万円を認定
- 裁判例③ 相手女性が別れる意思はないと断言し275万円を認定
- 事例① 不倫の結果離婚に至り合計400万円の慰謝料を獲得
それぞれ解説していきます。
1-1:裁判例① 不倫が原因で夫婦関係が破綻したため400万円を認定
結婚2年目の妻が、不貞行為を行った事例です。
結婚して1年を過ぎた頃、妻が職場で知り合った男性と不倫関係になり、不貞行為を続けた結果2度の人工妊娠中絶手術を行っています。
妻の不倫と2度の中絶を知った夫は、相当の精神的苦痛を受けたため家を出て別居したことによって、婚姻関係は破綻してしまいました。
そのため、少なからず夫のキャリアの選択肢を狭める結果となっています。
夫は妻の不貞行為の証拠として、妻の不貞行為が推認できる会話等を録音しましたが、録音場所が夫の自宅マンション内だったため、著しく反社会的な手段によるものとは言えないとして、証拠能力が認められました。
夫は妻の不貞行為の相手である男性に、不貞慰謝料として1000万円を請求し裁判所は400万円を認めています。
※平成25年8月22日、東京地裁の判決
1-2:裁判例② 不倫調査費用の一部を肯定し合計352万円を認定
結婚8年目で2人の子を持つ妻が、不貞行為を行った事例です。
妻は、所属するアマチュアバンドで知り合った男性と不倫関係になり、お互いに既婚者と知りながら約半年(性交渉は20回程度)お互いに恋愛感情を持って交際していました。
夫に妻の不貞行為が発覚した際、不倫相手の男性は、夫に土下座して謝罪しながらも不貞開始日を偽り、さらにその後の夫からの不倫慰謝料請求に対する回答書においても不貞期間を偽って回答しています。
相手男性のこの行動は、自身の責任を矮小化するためであり、これによって夫の精神的苦痛は増大したと認められています。
夫は協議離婚後、妻の不貞行為の相手である男性に、不貞慰謝料として440万円を請求し裁判所は352万円(うち弁護士費用32万円)を認めています。
※平成26年1月20日、岐阜地裁の判決
1-3:裁判例③ 相手女性が別れる意思はないと断言し275万円を認定
結婚4年目の夫が、不貞行為を行った事例です。
夫は飲み会で知り合った女性に対して、自分はバツイチで籍は抜いていると話し、約1年半の間不貞行為を続けていました。
不倫相手の女性は交際開始後、知人から男性が既婚者だと電話で知らされましたが、そのあとも交際を続けていました。
さらに、裁判の本人尋問の際にも、今後も相手男性と別れる意思はないと断言しました。
妻は夫の不貞行為が発覚した後、夫とは別居し夫の不貞行為の相手である女性に、不倫慰謝料として550万円を請求し裁判所は275万円(慰謝料250万円、弁護士費用25万円)を認めています。
※平成24年12月27日、東京地裁の判決
1-4:事例① 不倫の結果離婚に至り合計400万円の慰謝料を獲得
妻が、夫の学校の後輩と不貞行為を行った事例です。
夫と妻は、夫の地元の古い友人たちとグループで交流を続けていましたが、その中の後輩の男性と妻が不貞行為を行っていることが発覚しました。
夫がその後輩を問い詰めたところ、妻とは不貞行為は行っていないと完全に否定したため、夫は探偵に不倫調査を依頼しました。
調査の結果、やはり妻が後輩と不倫関係にあることが分かったため、夫婦関係は破綻し離婚に至りました。
その後、当事務所に夫である男性から不倫慰謝料請求の依頼があり、不倫相手の男性と示談交渉を進めていきました。
依頼者の夫は、妻の不貞行為の結果離婚に至っており、相手男性は不倫を否定するなど悪質な態度だったことから、慰謝料と探偵費用も含めて400万円の高額な請求で合意を得ることができました。
2章:不貞行為発覚後の夫婦関係と3つの慰謝料相場・判例
不貞行為発覚後の夫婦関係と3つの慰謝料相場は、次のような金額となっています。
- 不倫はしたが夫婦関係は継続:50万~100万円
- 不倫が原因で別居に至った:100万~200万円
- 不倫が原因で離婚に至った:150万~300万円
それぞれ解説していきます。
2-1:夫婦関係は継続している場合(50万~100万円)
不倫の後も夫婦が同居し夫婦関係を継続している場合の不倫慰謝料の相場は、50万~100万円になります。
不貞行為の後に夫婦関係の修復がみられるため、夫婦関係が破綻してしまった場合に比べると、慰謝料の金額は低くなることが多いです。
ただし最近の傾向としては、100万円を超える不倫慰謝料を認める判例も多くなっています。
■裁判例
結婚15年目の夫が、約1年半の間、職場で知り合った女性と不貞行為を行った事例です。
不倫相手の女性は、交際に積極的で訴訟が提起された後も関係を続けていました。
妻は、夫の不貞行為が発覚した後も夫婦関係を継続していますが、夫の不貞行為の相手である女性に、不倫慰謝料として500万円を請求し裁判所は200万円を認めています。
※平成26年4月30日、東京地裁の判決
2-2:不倫が原因で別居した場合(100万~200万円)
不倫の後、夫婦が別居した場合の不倫慰謝料の相場は、100万~200万円になります。
不倫の後も夫婦関係を継続している場合に比べて、不貞行為が夫婦関係に与えた影響が重大で別居に至ったと考えられるためです。
■裁判例
結婚2年目の妻が、友人を介して知り合った男性と、約3ヶ月の間不貞行為を行った事例です。
夫は、妻と離婚する意思はなく赦していますが、夫婦関係は別居状態にあります。
夫は妻の不貞行為の相手である男性に、不倫慰謝料として1000万円を請求し裁判所は180万円を認めています。
※平成25年10月21日、東京地裁の判決
2-3:不倫が原因で離婚した場合(150万~300万円)
不倫の後、夫婦が離婚した場合の不倫慰謝料の相場は、150万~300万円になります。
不倫の後も夫婦関係を継続している場合に比べて、不貞行為が夫婦関係に与えた影響が重大であるため、精神的なショックも大きく離婚に至ったと考えられるからです。
■裁判例
結婚5年目の妻が、職場で知り合った男性と不貞行為を行った事例です。
妻の不貞行為は半年後に発覚し、夫婦関係は別居状態となりその後協議離婚しました。
夫は妻との離婚に際して、自宅土地建物の妻の持ち分をローン返済後無償で取得することで合意し、慰謝料債務は免除したものとみなされました。
妻の不貞行為の相手である男性に対しては、不倫慰謝料として300万円を請求し裁判所は200万円を認めています。
※平成26年9月3日、東京地裁の判決
3章:不倫・不貞行為の慰謝料を決める7つのポイント
不倫・不貞行為の慰謝料を決める際に、不貞行為発覚後の夫婦関係以外にポイントとなる点は、次の7つです。
- 婚姻期間や同居期間
- 不倫が始まった時点の夫婦関係
- 個人または夫婦の収入・財産
- 養育が必要な子供の有無
- 不倫が始まった経緯や回数・期間
- 不倫相手への経済的支援や子どもの有無
- 反省や謝罪の有無
それぞれ解説していきます。
3-1:婚姻期間や同居期間
不貞行為の慰謝料は、婚姻関係が長く続いているほど破綻した時の精神的ショックが大きいと考えられるため、婚姻期間が長いほど高額になる傾向があります。
婚姻期間が数年の場合は、婚姻期間が短いとみなされて慰謝料が減額される可能性があり、婚姻期間が15年以上の場合には、婚姻期間が長いとみなされて高額な慰謝料が認められる可能性があります。
■裁判例
結婚生活22年の妻が、中学校の同窓会で再開した男性と不貞行為を行った事例です。
妻は約5ヶ月間、不倫相手と愛情を顕わに伝える親密なメールのやり取りをしていました。
夫は、不倫が発覚した後も夫婦関係は継続していますが、妻の不貞行為の相手である男性に対しては、不倫慰謝料として440万円を請求し裁判所は220万円(うち弁護士費用20万円)を認めています。
※平成25年2月6日、東京地裁の判決
3-2:不倫が始まった時点の夫婦関係
不倫が始まった時点の夫婦関係が良好だった場合は、慰謝料が高額になる要素として考えられることもあります。
逆に、現在別居している場合は、すでに夫婦関係は破綻していたと主張されて、慰謝料請求が認められない可能性もあります。
■裁判例
結婚生活6年の妻が、職場で知り合った男性と不貞行為を行った事例です。
この事例では、夫は借金問題や女性問題、過度の飲酒による問題をたびたび起こしていて、耐えかねた妻が約1ヶ月間外泊を繰り返し、その後別居しました。
夫は、妻の不貞行為の相手である男性に対して、不倫慰謝料として300万円を請求しましたが、裁判所は、妻が不貞関係を持つに至った原因は夫の引き起こした問題にあるとして、夫の請求は信義則違反に該当するとして認めませんでした。
※平成26年9月29日、東京地裁の判決
3-2:個人または夫婦の収入・財産
不倫の慰謝料請求において、個人または夫婦の収入・財産が多い場合、慰謝料が高額になる要素として考えられることもあります。
ただし離婚訴訟においては、不貞行為によって受けた精神的苦痛に対する慰謝料が判断されるため、夫婦の収入・財産が必ずしも慰謝料の金額を決める要素とはなりません。
■裁判例
結婚生活58年の夫が、個人レッスンの生徒である女性と「婚姻共同生活の平和を維持する権利」の侵害にあたる行為を行った事例です。
夫は約1年弱の間、高齢で持病(糖尿病)もあるため性交はなかったものの、女性の自宅のベッドで下着姿で抱き合い体を触るなどの行為を行っていました。
妻は、夫の不貞行為の相手である女性に、不倫慰謝料として700万円を請求しましたが、裁判所の認定額は150万円としたうえで、夫から妻に対して支払われた500万円(うち300万円を妻は生活費として費消)によって慰謝されたと判断し、請求を認めませんでした。
※平成25年5月14日、東京地裁の判決
3-3:養育が必要な子供の有無
夫婦間に養育が必要な子供がいる場合は、慰謝料が高額になる要素として考えられることもあります。
なぜなら、養育が必要な子供がいるにもかかわらず、配偶者が不貞行為を行っていた場合は、不倫による精神的な苦痛がより大きくなると考えられるためです。
■裁判例
結婚生活3年・3歳の子供を持つ夫が、不貞行為を行った事例です。
夫の不貞期間は、妻が妊娠中から出産前後の約1年半であるため、妻の精神的負担は大きいものと認められます。
妻は、夫の不貞行為の相手である女性に、不倫慰謝料として200万円を請求し、裁判所は100万円を認めています。
※平成25年9月12日、東京地裁の判決
3-4:不倫が始まった経緯や回数・期間
不倫が始まった経緯が、配偶者が既婚者であることを伝えていなかった、あるいは偽っていたり、夫婦関係が破綻し離婚する予定だと伝えていて、不倫相手がそれを信じていた場合は、不倫の慰謝料が減額される可能性があります。
また、不貞行為の回数が多い、あるいは期間が長い場合は、不倫による精神的苦痛がより大きいとして、慰謝料が高額になる可能性があります。
■裁判例
結婚生活20年の妻が、約9年間にわたって不貞行為を行っていた事例です。
妻は、不倫相手と知り合って2週間程度で肉体関係を持ち、お互いが相手に配偶者がいることを知りながら、不貞行為を続けていました。
不貞行為の期間中、妻は不倫相手との性行為によって3回妊娠し、いずれも人工妊娠中絶しています。
夫は、妻の不貞行為の相手である男性に対して、不倫慰謝料として500万円を請求し裁判所は250万円を認めています。
※平成24年12月14日、東京地裁の判決
3-5:不倫相手への経済的支援や子どもの有無
配偶者が、不倫相手に経時的支援をしていたり、不倫相手との間に子供(人工妊娠中絶も含めて)がいる場合は、慰謝料が高額になる可能性があります。
なぜなら、配偶者の不貞行為だけでなく、不倫相手との間に子供(人工妊娠中絶も含めて)がいると知らされた場合の、精神的苦痛が大きいと考えられるからです。
■裁判例
結婚生活17年の夫が、知人を介して知り合った女性(既婚者)と不貞行為を行っていた事例です。
夫は、約2年半の間不貞行為を続けた後、妻と別居し不倫相手の女性との同居をはじめ、夫と不倫相手の女性の間の3人の子供をその後認知しています。
妻は、夫の不貞行為の相手である女性に、不倫慰謝料として550万円を請求し裁判所は330万円(慰謝料300万円、弁護士費用30万円)を認めています。
※平成25年1月23日、東京地裁の判決
3-6:反省や謝罪の有無
配偶者や不倫相手が関係を断ち、十分に謝罪し反省している場合は、精神的苦痛も少なくなると考えられるため、慰謝料が減額される可能性があります。
また、配偶者がすでに謝罪し金銭を支払った場合も、慰謝料の請求権が消滅したと認められる場合もあります。
■裁判例
婚約し同居している内縁関係にある女性が、職場で知り合った男性と不貞行為を行った事例です。
この女性は婚約・同居して約2年間、入籍はしていませんでしたが夫婦同様の円満な生活をしていて、事実上の婚姻関係にありましたが、不貞行為が発覚後別居しています。
内縁関係の男性は、不貞行為の相手である男性に、不倫慰謝料として300万円を請求し裁判所は150万円が相当としましたが、内縁関係の女性との和解が成立し女性が150万円を支払っているため、男性の請求権は消滅したと認めています。
※平成25年1月29日、東京地裁の判決
まとめ
ここまで、不倫・不貞行為の慰謝料の判例・事例や、不貞行為発覚後の夫婦関係と慰謝料相場などについて解説してきました。
最後に、今回の内容をまとめます。
■不倫・不貞行為による慰謝料の金額は、法律で基準が定められているわけではないため、裁判所が下した判例や個別の事情等を考慮しながら決められます。
■不貞行為発覚後の夫婦関係と3つの慰謝料相場
- 不倫はしたが夫婦関係は継続:50万~100万円
- 不倫が原因で別居に至った:100万~200万円
- 不倫が原因で離婚に至った:150万~300万円
■不倫・不貞行為の慰謝料を決める7つのポイント
- 婚姻期間や同居期間
- 不倫が始まった時点の夫婦関係
- 個人または夫婦の収入・財産
- 養育が必要な子供の有無
- 不倫が始まった経緯や回数・期間
- 不倫相手への経済的支援や子どもの有無
- 反省や謝罪の有無
不倫慰謝料請求を弁護士に依頼することによって、弁護士が代理人となって交渉を進めるだけでなく、慰謝料を増額できる可能性が高まり、さらにはその後のトラブルを未然に防げます。
弁護士であれば、不倫の離婚・慰謝料問題に関するアドバイスだけでなく、必要な手続きや資料の準備、自立後の生活のための支援制度の紹介など、幅広い範囲にわたってサポートできます。
この記事の内容を参考にして、これからの行動に役立ててください。