- 2018.03.20
- 2024.11.21
- #労働基準監督署とは
労働基準監督署とは?トラブルを解決するために知っておくべき全知識
この記事を読んで理解できること
- まずは労働基準監督署の役割と権限を確認しよう
- 労働基準監督署に相談できるのは「労働基準法違反」のトラブル
- 相談・申告で労働基準監督署が実際に行なってくれる対応の内容
あなたは、以下のような疑問・悩みをお持ちではありませんか?
「労働基準監督署ってどういうところ?」
「労働基準監督署には、どんなことが相談できるんだろう?」
「実際のところ、労働基準監督署に相談したらどんな対応をとってくれるの?」
会社で「これって違法なんじゃ?」と思うようなことがあると、専門家に相談したいと思いますよね。
そこで労働基準監督署を思い浮かべる人も多いのではないかと思います。
簡単に言うと、労働基準監督署とは、「労働基準法」にのっとって全国の会社を監督する行政機関です。
そのため、あなたの会社で「労働基準法違反」の疑いのある行為があれば、誰でも相談できますし、場合によっては「会社への調査や是正勧告」「経営者の逮捕」などの、対応をとってくれることもあります。
ただし、会社とのトラブルが何でも相談できるというわけではありませんし、どんなケースでも動いてくれるわけではありません。
労働基準監督署で、あなたの悩みが解決できるか判断するためには、「労働基準監督署に関する正しい知識」を持っておく必要があります。
そこでこの記事では、まずは労働基準監督署の役割や持っている権限について、次に労働基準監督署に相談できるトラブルの内容についてご紹介します。
さらに、労働基準監督署に相談した場合に、どんな対応をとってもらえるのか、解説します。
何かトラブルが発生した時のために、労働基準監督署に関する正しい知識を学んでください。
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■労働基準監督署の役割
①労働基準法にのっとって全国の会社を監督する
②労働災害にあった労働者に、労災補償を行うこと
■労働基準監督署の持つ権限
- 臨検監督
- 司法警察官
■労働基準監督署に相談できること
- 賃金(給与、残業代、休日手当、深夜手当など)や退職金が未払い
- 1ヶ月100時間を超えるなどの、長時間残業
- 安全への配慮が不十分な危険な現場での作業
- 労働条件が雇用契約と異なる
- 会社が突然倒産してしまった
- 会社が休日を与えてくれない
- 会社が有給休暇を取得させてくれない
- 不当解雇や不当な懲戒処分
■労働基準監督署がとってくれる4つの対応
- 法律にのっとった具体的なアドバイス
- 会社への立ち入り調査
- 会社への是正勧告
- 経営者の逮捕(悪質な場合)
目次
1章:まずは労働基準監督署の役割と権限を確認しよう
「長時間残業」「賃金未払い」「不当解雇」「いじめ・パワハラ」など、会社との間でトラブルが発生すると、
「労働基準監督署なら解決できるかな?」と思うこともあるのではないかと思います。
しかし、繰り返しになりますが、どんなトラブルも労働基準監督署なら解決できるというわけではありません。
そこで、まずは労働基準監督署の概要や役割について、確認してみましょう。
それより先に、「何が相談できるのか」が知りたい場合は2章からご覧ください。
労働基準監督署とは、労働基準法やその他の関連法に基づいて、全国の会社を監督する行政機関です。
全国に321署が存在します。
労働基準監督署の業務は、大きく以下の2つがあります。
①労働基準法にのっとって全国の会社を監督する
②労働災害にあった労働者に、労災補償を行うこと
簡単に解説します。
①労働基準法にのっとって全国の会社を監督する
労働基準監督署は、労働者が、
- 危険な状況で働かせられていないか
- 不当に安い賃金で働かせられていないか
- 違法な長時間労働をさせられていないか
などを監督し、労働基準法に違反している会社があれば、会社に法律を守らせるために、「調査」「是正勧告」「逮捕」などの対応をとります。
そのため、労働基準監督署には強い権限が与えられています。
全国の労働基準監督署には、トータルで約3000人の「労働基準監督官」という専門職員が在籍しています。
彼らは、
- 臨検監督
- 司法警察官
という強力な権限を持っています。簡単に言うと、裁判所の許可がなくても、労働基準法違反が疑われる会社に、直接立ち入って調査をする(臨検監督)ことが可能であり、労働基準法に違反する会社については、警察官と同じように逮捕や強制捜査を行うことができる(司法警察官)のです。
②労働災害にあった労働者に、労災補償を行うこと
労働基準監督署のもう一つの役割が、労働災害にあった労働者に対して、「休業補償給付」「療養補償給付」などの労災保険の認定や給付を行うことです。
もしあなたが労働災害にあってしまった場合は、労働基準監督署に行き、そこにある労災保険の請求書を提出することで、労災保険の認定・給付を受けることができます。
あなたの最寄りの労働基準監督署の所在地は、以下の厚生労働省のHPから探すことができます。
2章:労働基準監督署に相談できるのは「労働基準法違反」のトラブル
労働基準監督署は、「労働トラブルをなんでも解決してくれるところ」ではありません。
基本的に、労働基準法に違反していることを相談し、アドバイスや対応を求める場所であると考えておきましょう。
それでは、実際にはどのようなことを相談できるのかお伝えします。
2-1:労働基準監督署に相談・申告できること
さっそくですが、労働基準監督署に相談すべきなのは以下のようなものです。
- 賃金(給与、残業代、休日手当、深夜手当など)や退職金が未払い
- 1ヶ月100時間を超えるなどの、長時間残業
- 安全への配慮が不十分な危険な現場での作業
- 労働条件が雇用契約と異なる
- 会社が突然倒産してしまった
- 会社が休日を与えてくれない
- 会社が有給休暇を取得させてくれない
- 不当解雇や不当な懲戒処分
労働基準法では、賃金の支払いや残業時間の上限、雇用契約などについて、労働者が不利な状況にならないように、様々なルールが定められています。
上記のようなトラブルは、労働基準法違反になる可能性があるため、労働基準監督署に行ってアドバイスや対応を求めるべきです。
次に、労働基準監督署に相談するべきではないトラブルの例を紹介します。
2-2:いじめ、パワハラ、セクハラ、不当解雇などは労働局がおすすめ
あなたのトラブルが以下のようなものである場合、労働基準監督署ではなく、労働局(労働局雇用環境・均等部)に相談するべきです。
- いじめ、パワハラ、セクハラ、モラハラを受けている
- 女性であることを理由に、職場で不平等な待遇を受けている
- 育児・介護休業を取らせてくれない
- アルバイト・パートの労働トラブルについて
労働局というのは、会社と労働者との間に発生したトラブルに関して、助言や解決の場の提供を行う機関です。
上記のトラブルは、「労働基準法違反」のトラブルだとは言えないため、労働基準監督署では対応できない可能性が高いです。
また、「違法かどうか」判断が難しい相談についても、労働基準監督署に相談しても有効な解決策になりません。
そのため、上記のようなトラブルや、「自分でも違法かどうかよく分からないトラブル」などを相談するとしたら、より包括的に労働トラブルが相談できる労働局をおすすめします。
3章:相談・申告で労働基準監督署が実際に行なってくれる対応の内容
労働基準監督署に「相談」や「申告(※)」をすると、労働基準監督署は、
- 法律にのっとった具体的なアドバイス
- 会社への立ち入り調査
- 会社への是正勧告
- 経営者の逮捕(悪質な場合)
などの対応を取ってくれる可能性があります。これは、以下のような流れで行われます。
※申告とは、違法行為をしている事実を告発することで、労働基準監督署に何らかの対応を求める手続きのことです。
それぞれの対応の具体的な内容や、実際の効果などについて確認してみましょう。
3-1:労働基準法にのっとった具体的なアドバイス
あなたが労働基準監督署に相談・申告をした場合、まずは窓口の担当者から、労働基準法上の正しい知識や、今後の対処方法などを教えてもらうことができます。
労働基準法は難しいため、法律知識を持っていない人が、自分の抱えるトラブルについて的確に判断し行動することは難しいです。
そのため、専門家である労働基準監督署の担当者に聞いて、
「自分の抱えているトラブルは法律上どのような扱いのものなのか」
「これからどんな行動を取っていけばいいのか」
など、判断を仰ぎましょう。
窓口の担当者から、労働基準法の正しい知識や考え方、今後やるべき手続きの具体的な方法について、教えてもらうことができるはずです。
3-2:労働基準監督署による会社への「立ち入り調査」
労働基準監督署に相談・申告した結果、会社の行為が違法である可能性がある場合、労働基準監督署は、まずは実態がどうなっているのか調査します。
調査では、原則的に、予告なしで労働基準監督官が会社を訪れ、労働関係の帳簿、資料の確認、責任者や労働者へのヒアリングなどが行われます。
調査を断ることは処罰の対象になるため、会社は調査を拒否することはできません。
あくまで実態を調査するだけですが、それだけでも、調査によって会社にはプレッシャーが与えられます。
3-3:違法性があったら会社へ是正勧告
調査で違法性が確認できた場合に、それを改善させるために「これをやめなさい」「こう改善しなさい」という是正勧告をします。
労働基準監督署から是正勧告されれば、会社は言われた通りに職場環境や労働条件を改善しなければなりません。
勧告を受けた会社は、その後「本当に改善されたか」再監督が実施されてチェックされます。
3-4:勧告に従わなければ経営者を逮捕
再三の勧告で違法状態が改善されなかった場合は、悪質な会社と判断されて、書類送検され、経営者・会社は「罰金」「懲役」などの罰則を受けます。
さらに、書類送検された会社は、「労働基準法に違反したブラック企業」ということで、厚生労働省のHPに公表され、誰もが「違法な会社」と分かるようになってしまいます。
注意して欲しいのが、労働基準監督署が書類送検するのは、例外的な悪質なケースのみだということです。
その理由は、労働基準監督署が慢性的な人員不足であるためです。
全国には400万を超える法人があるにもかかわらず、日本の労働基準監督署の人員は、非常勤の職員を含めても約3000人しかいないのです。
そのため、あなたの抱えるトラブルが危険作業や労働災害などの「人命に関わる問題」である場合は、優先的に取り扱ってもらえる可能性がありますが、「サービス残業がある」「残業が長い」などのトラブルなら、動いてもらえない可能性が高いです。
実際、平成27年のデータを見ると、労働基準監督署への「労働者からの申告」は、「2万6280件」、調査・勧告などの「監督業務」を行なったのは「2万2312件」なのに対し、実際に書類送検されたのは「966件」と、申告数のうちわずか「約3.6%」に過ぎないのです。
参考:「労働基準監督行政について」
労働基準監督署への具体的な相談手続きの流れや、動いてもらうためにコツなどについて、詳しくは以下の記事で解説しています。ぜひご覧になってください。
【労働基準監督署にできること】相談の流れとより確実に解決するコツ
まとめ:労働基準監督署について
いかがでしたか?
最後に、今回の内容をまとめます。
【労働基準監督署の役割】
①労働基準法にのっとって全国の会社を監督する
②労働災害にあった労働者に、労災補償を行うこと
【労働基準監督署の持つ権限】
- 臨検監督
- 司法警察官
【労働基準監督署に相談できること】
- 賃金(給与、残業代、休日手当、深夜手当など)や退職金が未払い
- 1ヶ月100時間を超えるなどの、長時間残業
- 安全への配慮が不十分な危険な現場での作業
- 労働条件が雇用契約と異なる
- 会社が突然倒産してしまった
- 会社が休日を与えてくれない
- 会社が有給休暇を取得させてくれない
- 不当解雇や不当な懲戒処分
【労働基準監督署に相談すべきではないこと】
- いじめ、パワハラ、セクハラ、モラハラを受けている
- 女性であることを理由に、職場で不平等な待遇を受けている
- 育児・介護休業を取らせてくれない
- アルバイト・パートの労働トラブルについて
【労働基準監督署がとってくれる4つの対応】
- 法律にのっとった具体的なアドバイス
- 会社への立ち入り調査
- 会社への是正勧告
- 経営者の逮捕(悪質な場合)
あなたのトラブルができるだけ確実に解決できるように、適切な相談先に相談しましょう。