
管理職になってから“管理職手当”が付くようになったけど、管理職手当っていったい何なんだろう?もらっている金額は妥当なのかな。
このように、管理職手当について疑問に感じている人や、その相場についてもあまり知られていないため、支給額が本当に見合っているのかを知りたいと望む人は、意外と多いようです。
この記事では、管理職手当の意味と相場について、管理職手当に関する疑問を回答、解説します。
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■管理職手当とは
管理職手当とは、「課長」や「部長」、「マネージャー」といった地位のある「管理職」に対する、職責の対価、あるいは残業の対価として、基本給とは別に支払われる手当。
■管理職の2つのタイプ
①職責の重さに対する対価として管理職手当をもらう、「管理監督者」
②残業の対価として管理職手当をもらう「名ばかり管理職」→多くの方はこちら
※名ばかり管理職なのに、残業の対価として管理職手当をもらい残業代をもらえてない場合は、残業代を請求できる可能性がある。
目次
1章:管理職手当の意味と相場
管理職手当とは、自分の役職(ランク)に応じて支払われる手当のことですよね?
基本的にはそうです。しかし、管理職手当が残業手当の意味で支給されているケースもあります。まずは管理職手当について、解説しましょう。
1-1:管理職手当とは
一般的には「課長」や「部長」、「マネージャー」といった地位や、「主任」や「係長」など何らかの役付けがある人を「管理職」と呼びます。
会社は、管理職に就いた社員に、管理職となることで増す職責における対価として、あるいは支給対象外となる時間外手当(残業代)の代わりとして、基本給とは別に、特別な手当を与えることがあります。
その手当のことを、「管理職手当」と言います。
1-2:管理職手当の相場
管理職手当の相場は、民間企業と公務員とで若干、異なります。
1-2-1:民間企業の場合
東京都産業労働局が行った、従業員が10人~299人の都内中小企業を対象とした賃金についての調査から、下記、業種別の平均役職手当を表にしてみました。
1-2-2:公務員の場合
公務員には大きく分けて「国家公務員」と「地方公務員」があります。
ともに「給料」ではなく「給与」といい、「棒給(基本給)」と「諸手当」含めたものを「給与」と表します。
国家公務員は給与については詳細に公開していないため、手当金額は掲載できませんが、モデル年収が、人事院より公開されています。
公務員の給与は、人事院により、役職や勤務地域、学歴、年齢階層別の国家公務員の平均給与と、これと条件を同じくする50人以上の事業所で働く人を対象に従業員別の調査を行い、民間の平均給与を算出して、両者の水準を比較し、差がないように調整された金額とされています。
僕は平均より低い管理職手当しかもらえていなかったのか……。管理職になんてならないで、残業代をもらっていた時の方がマシだったな。まだまだ自分で決められることは少ないのに、責任ばかり押し付けられてたまらないよ。
権限が与えられてないのですか?もしかするとあなたは、名ばかり管理職なのかもしれません。続く2章では、本来、管理職とはどのような人のことを意味するのか、詳しく解説します。
2章:管理職手当が支払われているから残業代は支払われないは違法
管理職になったから基本給が少し上がって“管理職手当”がもらえるようになったけれど、以前のように残業代をもらっていた方が、給料は高かったなぁ…。
あなたは管理職手当を、残業代相当分としてもらっているのですね?実は管理職には2つの種類があり、残業代をもらえる管理職が存在します。2章では、管理職にスポットをあてて解説したいと思います。
2-1:管理職手当を職責の重さに対する対価としてもらう管理監督者
管理職には、下記2つのパターンが存在します。
①職責の重さに対する対価として管理職手当をもらう、「管理監督者」
②残業の対価として管理職手当をもらう「名ばかり管理職」
管理職手当を職責の重さに対する対価としてもらう管理職のことを、「管理監督者」と言います。
企業では、一般的に課長クラスから管理職と呼ばれることが多いですが、その内情は、法律でいう「管理監督者」には程遠い働き方をしているケースがほとんどです。
というのも、「管理監督者」とは、経営者と一体的な立場にある者を意味するからです。
管理監督者とは、以下3つの要件をすべて満たす人のことを言います。
・経営者に近い強い責任・権限を持っている
・就業時間が自由で、自分で決めることができる
・他の社員と比べて突出して高い待遇(給料など)を受けている
どれか1つでも要件を満たさなければ、あなたは「名ばかり管理職」となります。
2-2:管理職手当を残業の対価としてもらう名ばかり管理職
もしあなたが、2-1で解説した管理監督者の3つの要件を満たしておらず、残業代の代わりとして管理職手当をもらっているとしたら、名ばかり管理職である可能性が非常に高いです。
その場合、会社は管理職手当を超える分の残業に対する残業代を、従業員に支払われなければなりません。
裁判例上、「管理職手当」が残業代である、と会社が主張した場合でも、管理職手当が残業代とされないケースもあります。
下記のチェックリストを利用して、自分が「管理監督者」なのか、「名ばかり管理職」なのかを確認してみましょう。
<チェックリスト>
(給料)
□年収700万円以下の給料
□自分より給料が高い社員がいる。
□残業代が出るバイトの方が給料が高い
□役員より,圧倒的に給料が低い。
□給料は高いが,役職自体ではなく,仕事の成果に応じて支払われている。
(人事)
□採用に関わらない。
□面接に立ち会いはするが,採用の決定は上司がする。
□推薦はしたことはあるが,上司に却下されたことがある。
□部下のお給料を決めたり,クビにしたりできない。
□部下の労務管理に関する機密事項に接していない。
□部下のシフト表を作成しない。
□シフト表を作成するが,遅番と早番を決めるだけ。
□部下がいない。
(組織図)
□自分より上の役職がある。
□自分の役職が会社内では数が多い。
(会議)
□経営会議に参加したことはない。
□会議に参加しても,成績を報告するだけ。
(権限)
□原材料の仕入れ先を決める権限はない。
□商品・サービスの内容を決める権限はない。
□商品・サービスの価格を決める権限はない。
□店の支出の権限もない
□店の支出について権限あるが,小口のものについてしかない。
(労働時間)
□タイムカード等での管理あり。
□会社に勤怠を報告する義務がある。
□遅刻や欠勤で評価が下がる。
□プレイングマネージャーであり,マネジメント業務が7割にも満たない。
□出退勤が自由とされてはいるが,長時間の残業を余儀なくされ,実際のところは自由がない。
■診断結果■
チェックが1~2つ:名ばかり管理職である可能性が高い
チェックが3つ以上:名ばかり管理職である可能性が極めて高い
名ばかり管理職であれば、本来は管理職手当を超える分の残業に対する残業代を、もらう権利があります。
3章:管理職手当が残業の対価として支払われている場合に残業代を請求する方法
どうやら僕は、名ばかり管理職だったようです。管理職になれたと思って喜んでいたのがバカみたいだな……。
落ちこんでいる場合ではありません。名ばかり管理職であったとわかり、管理職手当を超える分の残業代が支払われていないのであれば、残業代の請求をおすすめします。残業代は、過去3年までさかのぼり請求できるので、場合によっては大金になることもあるのです。
過去3年分て、だいたいどれくらいの金額になるんだろう…?
残業時間次第ですが、3年分請求出来れば数百万円になることも珍しくありません。
そ、そんなに???
ぜひ、請求方法を教えてください!!
3章では、あなたが名ばかり管理職だった場合の、残業代の請求方法について解説します。
3-1:残業代請求は弁護士に相談がおすすすめ
残業代の請求方法には、下記2つがあります。
①自分で会社に直接請求する
②弁護士に依頼して請求する
①の自分で直接請求する方法は、以下4つのステップで手続きを進めることになります。
1.残業があった事実を証明するための証拠を集める
2.未払いになっている残業代を計算する
3.「配達証明付き内容証明郵便」を会社に送り時効を止める
4.自分で会社と交渉する
自分で請求すると、かなりの労力が必要そうですね。
そう感じる人が多いため、ほとんどの人は残業代請求に強い弁護士に依頼して残業代を回収します。
②の弁護士に依頼して請求する方法は、以下の通りに進められます。
・交渉
・労働審判
・訴訟(裁判)
自分で請求する場合と違って、ほとんどお任せすることができるんですね!
でも、弁護士に頼むと費用が高くなりませんか?
弁護士=高いというイメージを持たれる方が多いですが、そうとは限りません。残業代請求に強い「完全成功報酬制」の弁護士に依頼すれば、「相談料」や「着手金」ゼロで依頼することもできます。
そうなんですね!
まずは話だけでも聞いてもらいたいな。早速、弁護士の先生に相談してみよう!
ちょっと待ってください!
弁護士に依頼する場合は「弁護士なら誰でもいいだろう」とは考えないでください。実は、法律の知識は広い範囲に及ぶため、自分の専門分野以外の件については、あまり知識がない弁護士が多いです。そのため、残業代請求に強い弁護士に依頼することをお勧めします。
残業代請求に強い弁護士の選び方や、相談の流れ・かかる費用などについて、詳しくは以下の記事に書いていますので、あわせてご覧ください。
失敗したら残業代ゼロ?弁護士選びの8つのポイントと請求にかかる費用
まとめ:管理職手当について
いかがでしたか?
最後にもう一度、今回の内容をまとめます。
管理職手当とは、「課長」や「部長」、「マネージャー」といった地位のある「管理職」に対する、職責の対価、あるいは残業の対価として、基本給とは別に支払われる手当を指します。
そして管理職は、以下2つに分けられます。
①職責の重さに対する対価として管理職手当をもらう、「管理監督者」
②残業の対価として管理職手当をもらう「名ばかり管理職」
①の「管理監督者」であれば以下3つの条件がすべて揃っている必要があります。
・経営者に近い強い責任・権限を持っている
・就業時間が自由で、自分で決めることができる
・他の社員と比べて突出して高い待遇(給料など)を受けている
どれか一つでも当てはまらない場合は、たとえ「部長」や「課長」、「店長」や「マネージャー」といった肩書があなたにあったとしても、「名ばかり管理職」である可能性が極めて高いでしょう。
もしあなたが、残業の対価として管理職手当をもらっていた場合、過去3年にさかのぼり残業代を請求する権利があります。
未払い残業代の請求方法は、以下2つです。
・自分で直接請求する
・弁護士に依頼する
弁護士に依頼すれば、あなたの労力や精神的負担を弁護士が肩代わりしてくれるだけでなく、時間と手間を節約することもできます。