強制わいせつで逮捕される?4つのリスクと刑罰を弁護士が解説

著者情報

住川 佳祐
(弁護士法人QUEST法律事務所 代表弁護士)

著者情報 弁護士法人QUEST法律事務所 代表弁護士 住川佳祐

東京弁護士会所属。東京大学法学部卒。『NHK あさイチ』のTV出演の他、『プレジデント』『ダイヤモンド・セレクト』などメディア掲載多数。弁護士法人QUEST法律事務所のHPはこちら。

強制わいせつの逮捕に関するポイント

あなたは、

強制わいせつに当たる行為が知りたい」

「強制わいせつで逮捕されたらどうしよう」

「家族が強制わいせつで逮捕されたので弁護士に相談したい」

などとお考えではありませんか?

結論から言うと、強制わいせつをしてしまった、あるいは強制わいせつで逮捕された場合は、すぐに弁護士に相談されることをおすすめします。

なぜなら、強制わいせつ罪の刑罰は、「6ヶ月以上10年以下の懲役刑」という罰金刑のない重いものであり、初犯でも実刑判決を受ける可能性があるからです。

また、逮捕され身柄を拘束される割合も高いため、周囲に知られた場合は、会社を解雇されたり、事件の内容によっては、実名報道されるおそれもあります。

ただし、弁護士であれば、被害者との示談交渉を許される可能性があるので、早期に示談を成立させることによって、身柄の解放や不起訴処分を得られる可能性も高まります。

また、強制わいせつの被疑者として特定される前であれば、弁護士に相談して自首を検討することも、逮捕や起訴を避けるための有効な手段となり得ます。

この記事では、1章では、強制わいせつの4つの罪と刑罰について、2章では、強制わいせつで逮捕された場合の4つのリスクを、3章では、強制わいせつで逮捕された場合にやるべきことについて解説します。

そして、4章では、強制わいせつの逮捕とその後の流れについて解説していきます。

個々の内容をしっかりと理解して、今後の行動に役立ててください。

【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】

■強制わいせつに関連する罪

  • 強制わいせつ罪(悪質な痴漢行為や13歳未満に対する行為など)「6ヶ月以上10年以下の懲役刑」
  • 準強制わいせつ罪(泥酔状態の相手に対する行為など)「6ヶ月以上10年以下の懲役刑」
  • 監護者わいせつ罪(親や養父母の立場を利用した行為など)「6ヶ月以上10年以下の懲役刑」
  • 強制わいせつ等致死傷罪(わいせつ行為をはたらき死傷させた場合)「無期または3年以上の懲役刑」

強制わいせつで逮捕された場合、早期解決を図るためには、被害者との示談を成立させることが最も重要です。

    なぜなら、示談が成立し被害者の許しを得ることによって、逮捕されない可能性や、身柄の解放や不起訴処分を得られる可能性が高まるからです。

      ただし、弁護士でなければ、被害者との示談交渉は難しいため、すぐに弁護士に示談交渉を依頼する必要があります。

        強制わいせつの逮捕に関するポイント

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        1章:強制わいせつの4つの罪と刑罰 

        強制わいせつに関連する罪としては、次の4つがあげられます。

        • 強制わいせつ罪(悪質な痴漢行為や13歳未満に対する行為など)
        • 準強制わいせつ罪(泥酔状態の相手に対する行為など)
        • 監護者わいせつ罪(親や養父母の立場を利用した行為など)
        • 強制わいせつ等致死傷罪(わいせつ行為をはたらき死傷させた場合)

                  それぞれ、その罪に当たる行為と刑罰を解説していきます。

                  1-1:強制わいせつ罪(悪質な痴漢行為や13歳未満に対する行為など)

                  強制わいせつ罪は、暴行や脅迫を用いてわいせつな行為をした場合と、13歳未満の者に対しては、単にわいせつな行為をした場合でも適用されます。

                  わいせつな行為としては、次のような行為などがあげられます。

                  • 相手の身体に直接触る
                  • 自分の陰部を触らせる
                  • 無理やりキスをする
                  • 衣服を脱がせる

                  満員電車の中での悪質な痴漢行為の場合、抵抗しづらい状況でのわいせつ行為自体が、暴行・脅迫にあたいするものと考えられる可能性があります。

                  被害者が13歳未満の者である場合は、暴行・脅迫がなくても成立するだけでなく、例えばお互いに合意があったとしても成立します。

                  強制わいせつ罪では、被害者・加害者の性別は、限定されていないため、被害者が男性の場合や、同性間の場合でも成立することがあります。

                  さらに、わいせつな行為が未遂に終わった場合も適用されます。

                  強制わいせつ罪の罰則としては、「6ヶ月以上10年以下の懲役刑」という罰金刑のない重いものになります。

                  1-2:準強制わいせつ罪(泥酔状態の相手に対する行為など)

                  準強制わいせつ罪は、被害者が正常な判断できない、または物理的・心理的に抵抗できない状態にある時に、わいせつ行為を行った場合に適用されます。

                  例えば、被害者が睡眠中や泥酔状態にあることを利用して、あるいは仕向けてわいせつな行為を行った場合や、上司や先生などといった心理的に抵抗できない立場を利用して、わいせつな行為を行った場合などがあげられます。

                  さらに、強制わいせつ罪と同様に、わいせつな行為が未遂に終わった場合も適用されます。

                  準強制わいせつ罪の罰則としては、強制わいせつ罪と同様に、「6ヶ月以上10年以下の懲役刑」となります。

                  1-3:監護者わいせつ罪(親や養父母の立場を利用した行為など)

                  監護者わいせつ罪は、18歳未満の者に対して、親や養父母といった監護者の立場を利用して、わいせつ行為を行った場合に適用されます。

                  監護者としては、親や養父母だけでなく、現に生活全般に対して監護している者であれば、祖父母や親の交際相手なども該当します。

                  また、被害者が、わいせつ行為に同意している場合も適用されます。

                  さらに、強制わいせつ罪と同様に、わいせつな行為が未遂に終わった場合も適用されます。

                  監護者わいせつ罪の罰則としては、強制わいせつ罪と同様に、「6ヶ月以上10年以下の懲役刑」となります。

                  1-4:強制わいせつ等致死傷罪(わいせつ行為をはたらき死傷させた場合)

                  強制わいせつ等致死傷罪は、強制わいせつ罪、準強制わいせつ罪、監護者わいせつ罪によって、人を死傷させた場合に適用されます。

                  該当する上記の犯罪が未遂に終わった場合でも、同じく人を死傷させた場合は適用されます。

                  強制わいせつ等致死傷罪の罰則としては、「無期または3年以上の懲役刑」となります。

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                  2章:強制わいせつで逮捕された場合の4つのリスク

                  強制わいせつ罪で逮捕された場合のリスクとしては、次の4つがあげられます。

                  • 逮捕・勾留されると長期間身体を拘束される
                  • 初犯であっても実刑判決を受ける可能性がある
                  • 家族や会社に知られる可能性がある
                  • 実名報道される可能性がある

                  それぞれ解説していきます。

                  2-1:逮捕・勾留されると長期間身体を拘束される

                  強制わいせつ罪で逮捕・勾留されると、最長23日間身体を拘束される可能性があります。

                  強制わいせつ罪で逮捕された場合の、逮捕から判決までの流れは、次の図のようになります。

                  逮捕から判決までの流れ

                  このように、強制わいせつ罪で逮捕・勾留された場合は、検察官によって起訴・不起訴が判断されるまで、最長23日間身柄が拘束される可能性があります。

                  逮捕された後の流れについては、4章で詳しく解説しますが、勾留が決定される逮捕後72時間以内に身柄の釈放を求める弁護活動が重要です。

                  なぜなら、素早い弁護活動によって、勾留を阻止して早期釈放が認められた場合は、社会生活へ復帰することができるので、強制わいせつ罪による逮捕の影響を、最小限に抑えることができるからです。

                  2-2:初犯であっても実刑判決を受ける可能性がある

                  強制わいせつ罪は、「6ヶ月以上10年以下の懲役刑」という、罰金刑のない重いものとなっているため、事件の内容によっては、初犯であっても実刑判決を受ける可能性があります。

                  事件の内容としては、わいせつ行為の内容・手段や状況、計画性、回数、被害内容など、様々な要素があげられます。

                  特に、被害者が受けた身体的・精神的ダメージや、処罰感情が重視されるため、被害者との示談が成立していない場合は、起訴される可能性が高まります。

                  2-3:家族や会社に知られる可能性がある

                  警察が自宅に突然訪ねてきて、強制わいせつ罪で通常逮捕された場合は、当然同居する家族に知られることになります。

                  また、強制わいせつ罪で現行犯逮捕された場合は、長期間身柄を拘束されることによって、家族や会社に知られてしまう可能性が高まります。

                  逮捕された場合、被疑者は、家族などに自由に連絡をすることはできません。

                  そのため、被疑者と連絡が取れずに心配した家族や会社が、警察に捜索を依頼することによって、知られてしまうこともあります。

                  2-4:実名報道される可能性がある

                  強制わいせつ罪は、社会的関心を引きやすい重大事件のため、事件の内容、被害状況によっては、実名報道される可能性があります。

                  また、周囲の人に事件が知られてしまうと、SNSなどによって、情報が拡散されてしまうおそれもあります。

                  被害者との示談や、刑事手続きが終了した後も、事件報道やSNSで拡散した情報が、実生活に悪影響を及ぼすおそれもあります。

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                  3章:強制わいせつで逮捕された場合にやるべきこと

                  強制わいせつで逮捕された場合にやるべきこととしては、次の3つがあげられます。

                  • すぐに弁護士に依頼する
                  • 被害者との示談交渉を依頼する
                  • 身柄の解放と不起訴を求める

                  それぞれ解説していきます。

                  3-1:すぐに弁護士に依頼する

                  強制わいせつで逮捕された場合は、すぐに弁護士に依頼することが重要です。

                  なぜなら、逮捕直後から被疑者を守り、身柄を解放するための積極的な働きかけをするには、弁護士による適切なアドバイスや釈放を求めるための迅速な行動が必要だからです。

                  弁護士であれば、逮捕直後から被疑者と面会(接見)して、今後の見通しについて説明し、取り調べの際の注意点など助言することができます。

                  弁護人による接見は、原則として自由に面会することができるので、必要なものや書類などを差し入れすることもできます。

                  被疑者と家族が面会できるのは、警察からの連絡のあと捜査が進み、勾留が決定されてからになるので、逮捕から約3日後となります。

                  さらに、被疑者に接見禁止処分が付された場合には、弁護人以外との面会が禁止されるので、家族でも面会することはできません。

                  これに対し、逮捕直後から認められている弁護士による接見は、被疑者にとっては大きな支えとなります。

                  3-2:被害者との示談交渉を依頼する

                  強制わいせつ事件で被害者との示談を成立させるためには、弁護士に依頼することが必須と言えます。

                  なぜなら、弁護士でなければ、被害者の連絡先を教えてもらえることが非常に難しいからです。

                  弁護士を通すことで、被害者の心証も変わり、ようやく連絡先を教えてもらうことが許されて、示談交渉が始められるケースが多いです。

                  弁護士が代理人として、被害者との示談交渉を進めることによって、被害者の心情を考慮したうえで、適切な内容、示談金による示談が成立する可能性が高まります。

                  強制わいせつ事件において、示談を成立させるメリットは、次の3つです。

                  • 身柄を解放される可能性が高くなる
                  • 前科がつかない不起訴処分の可能性が高くなる
                  • 判決で減刑される可能性が高くなる

                  なぜなら、示談が成立しているということは

                  「被害者と和解し、許しを得ている」

                  「被疑者は十分反省している」

                  と、警察や検察官、裁判官に判断されるからです。

                  そのため、示談が成立することによって、早期に身柄を解放される可能性や、初犯であれば不起訴処分になる可能性も高くなります。

                  また、起訴された後でも、示談が成立し被害者の許しが得られたと判断されれば、量刑が軽くなり執行猶予がついて、実刑を免れる可能性も高くなります。 

                  そのため、強制わいせつ事件においては、なるべく早い段階で示談を成立させることがとても重要です。  

                  3-3:身柄の解放と不起訴を求める

                  強制わいせつで逮捕された場合は、弁護士を通して、警察で送致前の釈放を求めたり、検察官、裁判官に対して勾留しないように働きかけることで、早期釈放を得られる可能性が高まります。

                  刑事事件では、逮捕直後から勾留請求されるまでの72時間の間に、できるだけ早く早期釈放を求める弁護活動が重要です。

                  釈放され在宅事件となった場合は、捜査は続いていますが、被疑者は普段通りの生活ができ、会社や学校にも行くことができます。

                  さらに、検察官が起訴の必要性を判断する勾留期間中(逮捕後13日以内)に、前科のつかない不起訴処分を求める弁護活動を行うことがとても大事です。

                  なぜなら、不起訴処分が得られた場合は、刑事裁判は行われず、そのまま身柄を解放され、再度逮捕される可能性は非常に低くなるからです。 

                  不起訴処分を得るためには、弁護士を通して検察官に、証拠が不十分で被疑者に対する嫌疑が認められないことを主張したり、示談書や意見書を提出して、不起訴とすべき事情を主張する必要があります。      

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                  4章:強制わいせつの逮捕とその後の流れ

                  この章では、強制わいせつで逮捕される2つのパターンと、勾留請求、起訴・不起訴の判断について解説していきます。

                  • 現行犯逮捕と通常逮捕
                  • 逮捕後、最長23日間の留置・勾留
                  • 検察による起訴・不起訴の判断

                  4-1:現行犯逮捕と通常逮捕

                  強制わいせつで逮捕される場合、犯行直後に逮捕される現行犯逮捕と、警察の捜査によって被疑者を特定し、逮捕状に基づいて逮捕される通常逮捕があります。

                  現行犯逮捕とは、犯行直後に被害者または犯行を目撃した人よって、現場で身柄を確保され逮捕状無しで逮捕されることを言います。

                  被害者や目撃者などの一般人による現行犯逮捕は、私人逮捕として犯行直後で、緊急を要する場合に認められています。

                  逮捕後は速やかに警察に連絡し、駆けつけた警察官に犯人の身柄を引き渡すことになります。

                  強制わいせつ罪での現行犯逮捕の事例としては、周囲に人が多い電車内での悪質な痴漢行為などが多いです。

                  通常逮捕とは、事件発生後犯人が逃走し、現場に残された証拠や防犯カメラの映像などをもとに捜査が行われ、犯人を特定し逮捕状に基づいて逮捕されることを言います。

                  また、強制わいせつの加害者が、容疑を否認している場合や、証拠を隠滅する可能性が高い場合も、通常逮捕される可能性が高くなります。

                  4-2:逮捕後、最長23日間の留置・勾留

                  次の図にあるように、強制わいせつ罪で逮捕・勾留されると、最長23日間身体を拘束される可能性があります。

                  逮捕から判決までの流れ

                  逮捕直後から警察の取り調べは始まり48時間以内に検察官に送致され、検察官の取り調べを受けます。

                  その後、検察官は、10日間の勾留が必要と判断した場合は、逮捕後72時間以内に、裁判所に対して勾留を請求します。

                  裁判所に勾留が認められた場合は、原則として10日間の勾留期間が認められており、その間に捜査が終わらない場合は、さらに10日間の勾留延長が請求されます。

                  勾留が決定されると、警察に逮捕された後、最長23日間、身柄を拘束されることになります。

                  4-3:検察による起訴・不起訴の判断

                  最長23日間の勾留期間が切れると検察官によって、起訴または不起訴の判断が下されます。

                  在宅事件の場合は、すでに釈放されていて勾留期限などの拘束がなく、捜査状況の進展に合わせて手続きが進められます。

                  そのため、起訴または不起訴の判断は、事件発生から数ヶ月後となる場合もあります。

                  起訴が決まると、通常裁判による懲役刑の処分が判断されます。

                  不起訴になると刑事裁判にはならず、そのまま身柄を解放されます。

                  その場合は、無罪放免に近く再度逮捕される可能性は非常に低くなります。

                  刑事事件解決に関するトラブルでお悩みのあなたへ まずはご相談ください

                  まとめ

                  ここまで、強制わいせつの4つの罪と刑罰や、強制わいせつで逮捕された場合の4つのリスクなどについて解説してきました。

                  最後に、今回の内容をまとめます。

                  ■強制わいせつに関連する罪

                  • 強制わいせつ罪(悪質な痴漢行為や13歳未満に対する行為など)「6ヶ月以上10年以下の懲役刑」
                  • 準強制わいせつ罪(泥酔状態の相手に対する行為など)「6ヶ月以上10年以下の懲役刑」
                  • 監護者わいせつ罪(親や養父母の立場を利用した行為など)「6ヶ月以上10年以下の懲役刑」
                  • 強制わいせつ等致死傷罪(わいせつ行為をはたらき死傷させた場合)「無期または3年以上の懲役刑」

                  強制わいせつで逮捕された場合、早期解決を図るためには、被害者との示談を成立させることが最も重要です。

                  なぜなら、示談が成立し被害者の許しを得ることによって、逮捕されない可能性や、身柄の解放や不起訴処分を得られる可能性が高まるからです。

                  ただし、弁護士でなければ、被害者との示談交渉は難しいため、すぐに弁護士に示談交渉を依頼する必要があります。

                            この記事の内容を参考にして、これからの行動に役立ててください。

                             

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