- 更新日:2024.08.28
- #慰謝料請求されたら
【示談書雛形付き】不倫で慰謝料請求されたら?慰謝料を減額・回避する方法
この記事を読んで理解できること
- 慰謝料を請求された場合にやってはいけない6つのこと
- 慰謝料請求されたら支払う必要があるか確認しよう
- 慰謝料を減額できる可能性がある4つの要素と求償権の放棄
- 慰謝料減額交渉の流れとポイント
- 示談書を作成する上での注意点
- 示談で解決しなかった場合はどうなるのか
- 慰謝料請求を免除、減額できた解決事例
- 不倫トラブルに強い弁護士に依頼しよう
あなたは、不倫トラブルに巻き込まれたことがありますか?
私は弁護士として不倫トラブルにも多数関わってきましたが、多くの相談者の方が、
「まさか、自分が不倫で慰謝料請求されるとは思わなかった」
「自分だけは絶対に不倫がバレないと思っていた」
とおっしゃいます。
しかも、慰謝料請求されて焦って行動してしまった結果、
- 本当は慰謝料を支払う必要がないのに、支払ってしまった
- 示談書を巻いた後に弁護士に相談したら「もっと低く抑えられたのに。取り返しがつかないですね。」と言われてしまった。
- 相手の言い値で高額の慰謝料を支払ってしまった
- 職場や周囲に不倫がばらされ、退職や転居を余儀なくされた
などのことも少なくありません。
そのため、今現在不倫のトラブルとは無縁だという場合も、万が一不倫で慰謝料を請求された場合の対処法を知っておくことをおすすめします。
この記事では、1章で慰謝料を請求された場合にやってはいけない6つのことを、2章で慰謝料請求されたら支払う必要があるか確認することを、3・4章では慰謝料が減額できる可能性がある4つの要素や交渉のポイントを解説します。
さらに、5章では示談書を作成する上での注意点を、6・7章では示談で解決しなかった場合のことや慰謝料を減額できた解決事例などを解説していきます。
今後のために、気になる所からぜひご覧ください。
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■慰謝料請求された場合にやってはいけないこと
- 相手の言い値で高額な慰謝料を支払う
- 相手が作った示談書にすぐにサインしてしまう
- 要求されるまま退職、引越をしてしまう
- 感情的になって相手の感情を逆なでしてしまう
- 事実と異なることを認めてしまう
- 決定事項を口約束だけして慰謝料を支払ってしまう
自分一人で判断して取り返しのつかない結果になる前に、不倫トラブルに強い弁護士に依頼することをおすすめします。
■慰謝料を支払う必要がないケース
- 婚姻・婚約・内縁関係ではない
- 3年の時効が過ぎている
- 故意、過失がない
■慰謝料が減額できる可能性がある4つの要素
- 婚姻期間や同居期間
- 不倫が始まった時点の夫婦関係
- 不倫が始まった経緯や回数・期間
- 反省や謝罪の有無
■求償権放棄を条件に慰謝料を減額できる可能性がある
目次
1章:慰謝料を請求された場合にやってはいけない6つのこと
不倫の慰謝料を請求された場合に、自分で対応したり、弁護士に相談する前にしてはいけないことが6つあります。
- 相手の言い値で高額な慰謝料を支払う
- 相手が作った示談書にすぐにサインしてしまう
- 要求されるまま退職、引越をしてしまう
- 感情的になって相手の感情を逆なでしてしまう
- 事実と異なることを認めてしまう
- 決定事項を口約束だけして慰謝料を支払ってしまう
このような対応をとってしまうと、あなたの名誉が害されたり、不必要な金銭的損害を被る可能性があります
順番に解説します。
1-1:相手の言い値で高額な慰謝料を支払う
不倫の慰謝料請求された時に、やってはいけないのが、相手の言い値で慰謝料を支払ってしまうことです。
確かに、不倫していることがバレて慰謝料を請求されると、誰でも不安な気持ちになり、「早く対処してトラブルを終わらせたい」と思うものです。
しかし、相手の言うとおりに慰謝料を支払ってしまうと、次の2つの理由からあなたは大きく損をしてしまう場合があります。
- 不倫慰謝料には支払わなくて良いケースがある
→状況により、不倫をしたとしても慰謝料を支払う必要がない場合がある。
- 不倫慰謝料には相場がある
→不倫の慰謝料には相場があり、相場を大きく超える高額な慰謝料請求を呑む必要はない
1-2:相手が作った示談書にすぐにサインしてしまう
不倫の慰謝料を請求されて、相手が作った示談書を提示された場合、すぐにサインすることは絶対にやめてください。
なぜなら、示談書の内容が相手に有利に作られていることがほとんどだからです。
例えば
- 相場を大きく上回る高額な慰謝料を支払うことにされている
- 清算条項がなく、慰謝料を支払っても再度請求される可能性がある
- 慰謝料の支払い期日が短く、期日までに支払うことが困難
- 高額な違約金が定められている
などです。
そして、一度相手が作った示談書にあなたがサインしてしまうと、後から「この内容では自分に不利だ」と気づいたとしても、よほど特殊な場合でない限りその不利な内容を変更することはできなくなります。
弁護士がついて適切に示談書を作成すれば、そういったトラブルや負担も未然に防ぐことができます。
※示談書について詳しくは以下の記事をご覧ください。
【雛形付き】不倫慰謝料請求でスムーズに示談書を作成する全手法
1-3:要求されるまま退職、引越しをしてしまう
慰謝料を請求された時に、それに併せて「遠くへ引越してください」「今の会社を辞めてください」と、金銭以外の要求をされることもあります。
このような要求をされても、絶対に従わないでください。
なぜなら、相手には、あなたの引越しや退職を強制する法的な権利はないからです。
相手が感情的になり自分の配偶者から離れて欲しいという思いから、このような要求をされることがあるのですが、このような要求に法的な強制力はありません。
あなたに、そのような不当な要求を呑む義務はないのです。
したがって、相手の言うとおりに、引越しや退職をしてしまうことは絶対に避けてください。
1-4:感情的になって相手の感情を逆なでしてしまう
不倫相手の奥さんから慰謝料請求された時、感情的になって「慰謝料なんて支払わない!」「不倫なんてしてない!」と強く反論したり、「そんなだから彼は私の方に来たのよ」などと奥さんの感情をあおることがないようにしてください。
なぜなら、不倫相手の奥さんはあなたに対する強い怒りを持っており、あなたが感情を逆なでするようなことを言ってしまうと、職場や近所、ネットなどに不倫をばらされる可能性があるからです。
不倫をばらされた場合、奥さんを名誉毀損で刑事告訴できる可能性はありますが、警察が動いてくれない場合も多いです。
また、周囲の人やネットにばらされてしまえばそのことを消すことはできず、あなたは社会的な信用を失ってしまい取り返しがつきません。
そのため、奥さんから慰謝料請求され、あなたにも言い分があったとしても、感情的に反論することはせず、まずは落ち着いて行動することが大事です。
具体的には、
- いつ、どこで、何をしたことを不倫だと言われているのか冷静に聞く
- 何を根拠(証拠)として不倫だと言っているのか冷静に聞く
- 相手が感情的になったら「冷静にお話しましょう」と言う
などの対応をしてみましょう。
自分で対応できないなと感じるのであれば、「弁護士に相談してからお答えしますのでお待ちください。」と言ってしまうのもよいと思います。
相手があまりにも感情的で話し合いができない状態なら、弁護士に相談することをおすすめします。
感情的な奥さんでも弁護士が出てきたときは、冷静に対応することが多いです。
1-5:事実と異なることを認めてしまう
突然不倫相手の奥さんから慰謝料請求されると、焦ってしまい、事実と異なることを認めたり、不利な条件で合意してしまう場合もあります。
例えば、
- 肉体関係はないのに、肉体関係があったと認めてしまう。
- 自分から誘っていないのに、誘ったことにされる
- 不倫した回数や期間を実際より多く認めてしまう
- 相場を大きく超える高額の慰謝料を支払うと言ってしまう
といったことです。
不倫相手の奥さんは感情的になっていることが多い上、あなたが加害者という立場であるため、相手の勢いに負けてしまうことがあるのです。
しかし、このようなことを認めたり、合意してしまうとあなたにとって不利になってしまいます。
そのため、慰謝料請求されても事実と異なることは違うと主張すること、相手の言ってくる条件をその場で認めたりしないことが大事です。
1-6:決定事項を口約束だけして慰謝料を支払ってしまう
奥さんから慰謝料請求され、その場で慰謝料の金額や支払い回数、支払い期限などを決めてしまう場合もあるかもしれません。
もしそのような話になった場合、決定事項を書面化せず口約束にしたまま、奥さんに慰謝料を支払うのは絶対にやめましょう。
決定事項を口約束にして慰謝料の支払いだけ先にしてしまうと、
- 慰謝料を一度支払ったのに再度請求される
- 話し合った内容について、後で「言った」「言わない」のトラブルになる
- 後から「やっぱりあの金額は少なかった」と高額請求される
といった可能性があります。
後からトラブルを再発させないためにも、決定事項は書面化することが大事なのです。
ただし、法的な知識がなければ、あなたにとって不利な内容の書面にされてしまう可能性もあります。
そのため、書面を作成する場合は、弁護士に相談することが大事です。
2章:慰謝料請求されたら支払う必要があるか確認しよう
不倫の慰謝料を請求された場合、あなたが不貞行為をした場合は慰謝料を支払わなければなりませんが、状況によっては慰謝料を支払わなくても良いケースがあります。
それぞれ解説していきます。
2-1:不貞行為をした場合は慰謝料を支払わなければならない
そもそも、違法な不倫であり、慰謝料請求の対象になる「不貞行為」とは、以下のように定義されています。
【不貞行為とは】
夫婦や婚約している恋人同士、もしくは内縁関係の男女の一方が、パートナー以外の異性と自由な意思で肉体関係を持つこと。
不倫(不貞行為)があれば、離婚する場合もしない場合も、被害者はパートナーや不倫相手に対して慰謝料請求できるのが一般的です。
なぜなら、不倫(不貞行為)は、民法上の「不法行為(違法行為)」であるとされているからです(民法709条)。
不倫(不貞行為)が不法行為(違法行為)となる理由は、不倫(不貞行為)は夫婦関係(もしくは婚約・内縁関係のパートナーとの関係)に大きなダメージを与える行為であり、パートナーは精神的に苦痛を受けるためです。
つまり、法律上、不倫(不貞行為)によって被った精神的苦痛に対する慰謝料請求が認められることになるのです。
※不貞行為の定義について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
【不貞行為とは?】不貞行為になるもの・ならないものを弁護士が解説
2-2:慰謝料を支払わなくて良いケース
不貞行為を行った場合、基本的に慰謝料請求されたら支払う必要があることを説明しましたが、以下のようなケースでは、慰謝料請求されても支払う必要がないことが私の経験・判例上多いです。
【慰謝料を支払う必要がないケース】
- 婚姻・婚約・内縁関係ではない
- 3年の時効が過ぎている
- 故意、過失がない
順番に解説します。
2-2-1:婚姻・婚約・内縁関係ではない
婚姻・婚約・内縁関係ではないただの恋人関係などの場合、他の異性と性交渉や性交類似行為をしても、不貞行為ではありません。
そのため、慰謝料請求されても、慰謝料を支払う必要はありません。
ただし、婚姻(夫婦関係)ではなくても、
- 婚約した恋人同士
- 婚姻届は出していないものの、事実上の夫婦関係にある(内縁)
場合は、慰謝料請求された場合、支払い義務が発生する可能性が高いため、注意してください。
2-2-2:3年の時効が過ぎている
不倫(不貞行為)の慰謝料請求には、3年の時効があります。
つまり、上記の基準になる日(起算点)から3年が経過すると、不倫の事実が明らかでも、慰謝料請求が認められないのです。
そのため、時効が経過している場合は、慰謝料請求されても慰謝料を支払う必要がありません。
時効について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
2-2-3:故意、過失がない
不倫(不貞行為)の慰謝料請求が認められるのは、不貞行為に故意、過失がある場合です。
法律的な表現では、慰謝料の責任を負うのは、加害者に「故意」または「過失」がある場合とされています。
不貞行為の場合は、それぞれ以下の意味になります。
- 故意・・・既婚者だと知っていながら不倫していた場合。
- 過失・・・相手が既婚者であるかもしれないと注意すべき状況であったのに、注意を怠った場合
そのため、あなたが、相手からすると「不倫相手」の立場だった場合で、相手のことを未婚者だと思い込んでしまっても仕方がないような状況だった場合は「故意」「過失」が共に成立しないため、慰謝料請求ができないのです。
注意すべきなのは,相手が既婚者だと知らなかったり未婚者だと信じていたりしたとしても、「過失」があれば、慰謝料請求が認められてしまうということです。
【故意、過失がなく、慰謝料請求が困難な例】
例えば、
- 婚活パーティーで出会っていた
- 出会い系サイトやアプリで出会っていた
- 相手の家族にも紹介されたなど
- 婚約指輪をもらっていた
などの場合です。
婚活パーティーや出会い系アプリなどで出会った場合に、通常相手が未婚であることが前提ですし、このような場合にまで「既婚者かもしれないと」注意しなければならないのであれば、恋愛は怖くてできません。
また、相手の家族に紹介されたり婚約指輪をもらっていたりしたような場合は、相手が誠実に自分とお付き合いしてくれていると信じても仕方がない状況だと言えます。
このような場合に、実は既婚者だったとわかって「もっと注意すべきだっただろう」と言われて過失が認められるのは不合理です。
このような理由から「既婚者だと注意すべき状況」がないものとして「過失」が認められないのです。
逆に、故意はないが過失が認められるいうケースもあります。
例えば、
- 元々既婚者であると聞いていたが、相手方に「別れた」と言われ安易に信じた。
- 同じ職場の同僚(結婚しているか調べるのは容易)
などです。
このような場合は、既婚者だと知らなかったとしても、「既婚者かもしれない」と調査すべきでしょうから,過失が認められやすくなり、慰謝料請求が認められる可能性が高いです。
3章:慰謝料を減額できる可能性がある4つの要素と求償権の放棄
不倫の慰謝料には、以下の相場があります。
【不倫の慰謝料相場】
- 不倫はしたが夫婦関係は継続:50万円~100万円
- 不倫が原因で別居に至った:100万円~200万円
- 不倫が原因で離婚に至った:150万円~300万円
したがって、上記の金額を大幅に超えるような慰謝料を請求されている場合は、減額できることが多いです。
さらに、不倫の慰謝料は過去の裁判例から決まるため、以下の「減額」の要素が多ければ減額できるケースもあります(年数や回数はあくまで目安です)。
慰謝料を減額できる可能性がある要素は、次の4つです。
- 婚姻期間や同居期間
- 不倫が始まった時点の夫婦関係
- 不倫が始まった経緯や回数・期間
- 反省や謝罪の有無
さらに、求償権放棄を条件に慰謝料を減額できる可能性があります。
それぞれ解説していきます。
3-1:婚姻期間や同居期間
不貞行為の慰謝料は、婚姻期間や同居期間が数年(3年以内)の場合は、婚姻期間が短いとみなされて慰謝料が減額される可能性があります。
婚姻関係が長く続いているほど破綻した時の精神的ショックが大きいと考えられるため、婚姻期間が短ければ減額交渉のポイントとなります。
逆に婚姻期間が15年以上の場合には、婚姻期間が長いとみなされて高額な慰謝料が認められる可能性があります。
3-2:不倫が始まった時点の夫婦関係
不倫が始まった時点で夫婦が別居している場合は、すでに夫婦関係は破綻していたと主張することで、慰謝料請求が認められない可能性もあります。
また不倫が始まった時点で、夫婦関係はすでに冷え切った状態であり、離婚に向けた話し合いをしていたことなどが証明できる場合は、減額交渉のポイントとなります。
3-3:不倫が始まった経緯や回数・期間
不倫が始まった経緯が、配偶者が既婚者であることを伝えていなかった、あるいは偽っていたり、夫婦関係が破綻し離婚する予定だと伝えていて、不倫相手がそれを信じていた場合は、不倫の慰謝料が減額される可能性があります。
また、不貞行為の回数が少ない(3回以下)、あるいは期間が短い(3ヶ月以内)場合は、不倫が長期間にわたり回数も多い場合に比べて、不倫による精神的苦痛は比較的少ないため減額交渉のポイントとなります。
3-4:反省や謝罪の有無
配偶者や不倫相手が関係を断ち、十分に謝罪し反省している場合は、精神的苦痛も少なくなると考えられるため、慰謝料が減額される可能性があります。
また、配偶者がすでに謝罪し金銭を支払った場合は、慰謝料の請求権が消滅したと認められることがあります。
例えば、不貞行為による客観的に妥当な慰謝料金額が300万円と評価される場合、配偶者と不倫相手に300万円を請求できることになります。
ここで、配偶者から300万円の慰謝料を受け取った場合は、すでに不貞行為による損害の全額の支払いを受けているため、不倫相手に対して慰謝料を請求することはできません。
3-5:求償権放棄を条件に慰謝料を減額できる可能性がある
あなたが、不倫相手の配偶者から慰謝料を請求されている場合は、求償権の放棄を条件に慰謝料を減額できる可能性があります。
そもそも、不倫は配偶者と不倫相手の両方に責任があるとされているため、慰謝料の支払い義務は二人にあります。
例えば、慰謝料の金額が100万円なら、50万円ずつ負担する、という考え方です。
(必ず半分ずつになるわけではなく、責任の大きさによって負担割合が変わります)
そのため、一人で慰謝料を負担した場合、もう一人の当事者に対して、慰謝料の半額程度を請求することができます。
これが「求償権」です。
求償権で慰謝料を減らせる可能性があるのは、夫婦が離婚しない場合です。
仮に、あなたが不倫相手側である場合、側慰謝料を100万円を請求されたとしても、50万円分を後からもう一人の当事者(図における「夫」)に請求することができます。
すると、夫婦の家庭から考えると、100万円をもらって、後から50万円を支払うことになるため、結局50万円しか残りません。
そのため、慰謝料について交渉するときに「求償権とはどういうものか」ということを相手に説明し、「求償権を後から行使しないので、最初から慰謝料を半額にしてください」と交渉することが大事です。
実際に求償権を行使した場合は、不倫の経緯などによって二人の負担割合が決まるため、必ずしも半分ずつになるとは限りませんが、求償権を放棄して慰謝料を減額してもらう場合、半額にするのが一般的です。
4章:慰謝料減額交渉の流れとポイント
慰謝料を請求された場合、以下の流れで慰謝料を減額できることがあります。
- 請求内容を確認する
- 回答書を作成・送付する
- 減額交渉を行う
- 示談書を作成する
それでは、順番に解説します。
4-1:請求内容を確認する
不倫慰謝料を請求された場合、まずは請求内容を確認することが大事です。
慰謝料が内容証明郵便などの書面で請求された場合は書面の記載を、電話などの口頭で請求された場合は相手の言っている内容をよく確認しましょう。
請求内容について、確認する点は以下の点です。
【確認すべきこと】
- 相手は、何を根拠に慰謝料を請求しているのか
→根拠(証拠など)がなければ、慰謝料請求が認められないか、減額できる可能性があるため - 相手は、今どんな状況なのか(離婚しようとしている、別居している、など)
→相手の状況によって、慰謝料の相場が異なるため - いくらの慰謝料を請求してきているのか
→慰謝料が相場を大きく超える場合は、減額できる可能性が高いため - 「職場にバラす」「ネットで拡散する」など脅迫めいたことを言っていないか
→脅迫されている場合は、脅迫罪として逆に訴えたり、それを交渉材料に減額させられる可能性もあるため
相手の根拠によっては、そもそも慰謝料を支払う必要がない場合もあります。
また、請求額が不当に高額であったり、慰謝料以外のこと(勤務先からの退職や引っ越しなど)まで請求されている場合、交渉してあなたが損することのないようにしなければなりません。
したがって、まずは請求された段階で、冷静になって相手の根拠や要求を正確に聞くことが大事です。
4-2:回答書を作成・送付する
相手の請求内容を確認したら、できるだけ早めに「回答書」を作成して送付する必要があります。
弁護士に依頼すれば、弁護士が作成・送付してくれますが、あなたが自分だけで行う場合は、自分で正しい内容を作成して送付しなければなりません。
回答書を自分で作成・送付する場合のポイントを説明します。
4-2-1:回答書をひな形をもとに作成する
回答書には記載すべきことがありますので、まずは下記のひな形をご覧ください。
平成○年○月○日
(請求者の氏名)様
(被請求者の住所)
(被請求者の氏名)印
回答書
この度の内容証明による慰謝料請求に対して次のように回答致します。
私が貴方様のご主人様と平成〇年〇月ころまで交際していたことは事実です。
奥様に多大な精神的苦痛を与えてしまったことを心からおわび申し上げます。
また、奥様とご主人様の婚姻関係が危機的な状態に陥っていることを知り、私の犯した罪の重さを痛感致しました。深く反省しております。
慰謝料をお支払いしたいのですが、何分にも経済的余裕がなく、○○○万円をお支払いさせていただきます。
つきましては、お支払いする前に示談書等を取り交わしておきたいと考えております。私の方で示談書を作成致しましたのでお目を通していただき、ご同意いただければご署名、ご捺印の上、ご返送くださいますようお願い致します。
この度は本当に申し訳ございませんでした。
回答書のひな型を下記に準備しておりますので、ダウンロードして使ってください。
このひな形をもとに、回答書を作成してください。
次に、回答書に記載すべき内容のポイントを説明します。
回答書には下記の項目をしっかり記載するのがポイントですので、これから説明します。
4-2-2:謝罪・反省の意思を記載する
回答書のひな型にもあるように、回答書には「謝罪」「反省」の姿勢を見せる内容を記載することが大事です。
なぜなら、2章でも説明したように、慰謝料の金額を左右する要素の一つに「反省の意思を見せているかどうか」というものもあるからです。
反省の意思を見せることで、必ず慰謝料を減額できるとは限りません。
しかし、反省の意思を見せることがあなたに有利に働く可能性もあるため、
「奥様に多大な精神的損害を与えてしまったことを心からおわびいたします。」
というような内容を記載することが大事です。
文言は状況に応じて変更する必要がありますが、上記の文言が一般的です。
4-2-3:減額理由を記載する
不倫の慰謝料について、減額したい場合は減額理由を記載する必要があります。
たとえば、
- あなたの年収、資産に対して高額すぎて支払えないこと
- 不倫の回数や期間に対して、高額すぎること
- 相手が離婚や別居に至っていない場合は、相場が低いこと
などを記載し、減額をお願いしましょう。
ただし、減額してくださいと言ったからと言って、相手が応じてくれるとは限りません。
回答書を送付しても、拒否される可能性もあります。
拒否された場合は、あなたが自分で被害者と話して減額交渉しなければなりません。
そのため、回答書を作成・送付する前に弁護士に依頼し、弁護士に減額の交渉を行ってもらうことをおすすめします。
回答書を作成したら、必ず届いたことが確認できるように、配達証明郵便で送付しましょう。
4-3:減額交渉を行う
回答書を送付し、内容について相手と合意できなかった場合は、それから減額交渉を行うことになります。
減額交渉は、
- 支払う必要がない場合は、慰謝料請求が無効であることを主張する
- 慰謝料が相場より高い場合は、減額を交渉する
ということが大事です。
それぞれ簡単に解説します。
4-3-1:慰謝料を支払う必要がない場合にやるべきこと
慰謝料を支払う必要がない場合は、支払う必要がないという根拠を示して、請求相手と交渉する必要があります。
なぜなら、慰謝料を支払う必要がないからと言ってそのまま請求を無視していると、相手が逆上してあなたの家や職場まで押しかけてきたりすることもあり得るからです。
そのため、慰謝料を支払う必要がない場合でも、相手に対して慰謝料を支払う必要がない根拠を示す必要があるのです。
ただし、慰謝料を支払う必要がないという根拠を示すためには、
- 慰謝料を支払う必要がないことを示せる、法律や過去の裁判例に関する知識
- 相手に納得させる交渉テクニック
などが必要です。
あなたが普段の生活を送りながら、相手を納得させられるだけの正しい法律的知識を得ることは大変です。
また、相手は「自分は被害者だ!」と思って感情的になっている可能性もあり、そんな相手を交渉で納得させることも、あなた一人だけでは難しいです。
そのため、実際に慰謝料免除の交渉をするためには、弁護士に依頼することをおすすめします。
相談無料の弁護士も多く、自分の状況が「支払い義務がないかどうか」確認するためだけでも、まずは電話してみてください。
4-3-2:慰謝料が相場より高い場合は、減額を交渉する
慰謝料を支払わなければならないという場合は、減額交渉をすることが必要です。
多くの場合、被害者は加害者に対して、不当に高額な慰謝料をふっかけてきます。
「相手は『不倫がばれている』という弱い立場なのだから、高額でも支払ってくれるだろう」と考えていたり、「減額交渉されて多少減るだろうから、最初は高く請求しておこう」と考えているのです。
しかし、2章でも説明したように不倫慰謝料には「50万円〜300万円」という相場があり、相場を大きく超える慰謝料を請求された場合は、減額できる可能性が高いです。
そのため、相場より高い場合は、必ず減額交渉をすることが大事です。
3章でも説明したように、慰謝料は過去の裁判例から、状況に応じた相場があります。
そのため、あなたの状況ではどのくらいの慰謝料が妥当なのか、根拠を知っておき、さらに相手に納得させる必要があります。
- 慰謝料が相場よりも高いこと
- 相場より高い慰謝料は裁判に持ち込んでも認められにくいこと
しかし、あなたは「不倫がばれた」という弱い立場ですから、相手に対して強く交渉することは難しいと思います。
そのため、自分で交渉するよりも、法律や判例に関する専門知識を持ち、交渉テクニックも持っている、不倫トラブルに強い弁護士に依頼することをおすすめします。
5章:示談書を作成する上での注意点
慰謝料の免除、減額交渉がまとまったら、最後に書面にて示談書を作成しましょう。
示談書とは、交渉でまとまった内容を書面にし、サイン・押印して、互いに確認したことを証拠として残すものです。
【示談書のサンプル】
示談書を作成することで、後に再びトラブルになることを避けることができます。
特に、慰謝料を請求された側(加害者側)は、被害者から何度も慰謝料を請求され、支払ってしまうケースも見受けられますので、そうしたトラブルを避けるためにも、示談書が必要なのです。
示談書には、以下の項目を書きますが、あなたが弁護士をつけていない限り,示談書は請求者側かその弁護士が書くことになりますので、あなたは示談書を書く機会はないかもしれません。
しかし、示談書の内容があなたにとって不利ではないかかどうかを確認することが大事です。
上の見本はあなたに最大限有利な示談書となっており、あなたが弁護士をつけていないのであれば、このような条項を相手が作ってくることは考えにくいです。
示談書の内容があなたにとって不利かどうかを見極め、かつ、有利な示談書を作るためにも弁護士に依頼することをお勧めします。
【示談書に記載する8つのこと】
- 人物名
- 不倫の事実(期間や内容)
- 慰謝料の金額、支払い方法
- 金銭以外の約束(接触禁止、守秘義務、迷惑行為の禁止)
- 違約金条項
- 完全解決条項
- 清算条項
- 署名、押印
示談書について詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
【雛形付き】不倫慰謝料請求でスムーズに示談書を作成する全手法
6章:示談で解決しなかった場合はどうなるのか
慰謝料請求された時に、裁判を提起されることがあります。
裁判を提起されると、自宅に「訴状」が届き、裁判所に指定された日程に裁判所に足を運ばなければなりません。
裁判は1度では終わらないことがほとんどであるため、自分だけで対応する場合は、何度も裁判所に行って裁判官や被害者側の当事者や弁護士と話し合う必要があります。
さらに、様々な手続きを自分だけで行わなければなりません。
そのため、あなたにとっては、
- 裁判所に行く時間や手間がかかる
- 「答弁書」を作成する法的な知識が必要になる
- 心理的ストレスが大きい
などの影響があります。
したがって、特に裁判を提起された場合は、不倫慰謝料に強い弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士に依頼すれば、
- 基本的に一度も裁判所に行く必要はない。
- 遠方の弁護士なら電話会議を使えるためかえって、日当や交通費がかからずお得。
- 手間や時間、心理的ストレスを最小限にできる
などのメリットがあります。
②の電話会議とは、弁護士が法律事務所にいながら、裁判所まで出廷せずに、裁判手続きを行う手続きです。
裁判所から遠方の事務所の場合、この電話会議を認めてもらえる可能性があり、かつ、その場合日当や交通費はかからない事務所が多いです。
もしすでに訴状が届いたという場合は、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。
7章:慰謝料請求を免除、減額できた解決事例
私の過去の相談実績から、実際に不倫で慰謝料を請求され、免除、減額できた具体例を紹介します。
あくまで一例ですが、参考にしてください。
7-1:不倫相手を独身だと信じていた例
合コンで知り合った男性を、独身だと信じていたことから、請求を取り下げさせたケースがあります。
この相談者は、合コンで出会った男性のことを未婚者だと信じており、信じていたことを示すやり取りや行動の証拠もありました。
一般的に考えても、合コンに来るのは通常未婚者であると考えられ、「既婚者かもしれない」と注意する状況にあったというのはあまりにも酷です。
そのため、裁判までいたった場合、慰謝料は認められないと考えて粘り強く相手と交渉した結果、慰謝料を取り下げさせました。
地方在住の方でしたが、事務所との契約は郵送で行えますし、相手との交渉はすべて弁護士が行うため、一度も事務所に行くことなく、かつ、相手に接触することなく解決することができました。
7-2:夫婦関係は破綻していたと不倫相手から聞かされていた例
夫婦関係が破綻していたと聞いていたため、慰謝料を5分の1に減額できた事例があります。
この相談者は、20代の独身男性で、知り合った女性と4年にわたって不倫関係にありました。
相手の女性のことは、既婚者だと知っていましたが、夫婦関係は完全に破綻していて、別居状態にあると言われていました。
そのため、それなら交際しても問題ないと考えて、交際していたのです。
相談者は、本当に夫婦関係が破綻していると思っており、それを示す証拠もありました。
請求金額が相場を超えた高額だったこともあり、慰謝料は500万円から100万円まで減額することができました。
7-3:数回しか関係していなかった事例
職場の上司から強く誘われていたことを理由に、慰謝料を200万円もの額を減額できた例があります。
相談者の女性は、直属の上司から強く誘われ、断れず、数回だけ不貞行為をしてしまいました。
それがバレた結果、相談者は上司の妻から、慰謝料を300万円請求され、さらに会社を辞めることまで要求されました。
しかし、不貞行為の回数が少なく、上司との関係襄強く誘われると断れなかった、ということが減額要素になると判断し、慰謝料を300万円から100万円まで減額することができました。
7-4:請求者夫婦が離婚、別居していないことから減額できた例
不倫してしまった30代の女性が、400万円の慰謝料を請求されましたが、50万円まで減額できた事例があります。
この相談者は、同窓会で再会した同級生と1年以上も不倫関係にあり、不倫相手の妻から400万円の慰謝料を請求されてしまいました。
この場合、
- 不倫相手とその妻が、別居や離婚に至っていないこと
- 将来的に不倫相手の男性に対する求償権を放棄することを前提に半額にせよとねばったこと
から、慰謝料を3ヶ月で50万円まで減額することができました。
7-5:離婚後に不倫が発覚し慰謝料請求された例
離婚後に不倫が発覚し、500万円の慰謝料を請求されましたが、50万円まで減額できた事例があります。
相談者の男性は、同じ部署の部下の女性と不倫関係にありました。
そして、その部下が離婚後に相談者の男性と部下との間に不倫関係があったことが、部下の元夫に発覚し、500万円の慰謝料を支払えと言われたのです。
請求された時の書面で「支払わないと家族や会社に請求の連絡が行く可能性がある」と書かれていたため、焦って私に相談してきたのです。
この事例では、離婚前、元夫は不倫の事実に気づいておらず、不倫は離婚の原因になっていなかったことから、慰謝料を50万円まで減額することができました。
7-6:肉体関係がなかったのに請求されていた例
肉体関係がなかったのに慰謝料を請求され、慰謝料の支払いを免除できた事例があります。
この相談者の女性は、パート先の既婚者の社員とキスや抱擁、恋人のようなLINEでのやり取りをしていました。
不貞行為はしていませんでしたが、LINEのやり取りなどを証拠に、不倫相手の妻から200万円の慰謝料を請求されました。
この事例では、
- LINEの画像だけでは十分な証拠にならないこと
- 不貞行為の証拠が存在しなかったこと
を理由に、
慰謝料請求を取り下げさせることに成功しました。
7-7:慰謝料を再度請求された例
一度慰謝料を支払っていたのに、再度請求され、その請求を免除した事例があります。
相談者は、会社の既婚者の同僚と「バレないだろう」と思って不倫関係にありました。
その不倫が相手の夫にバレて、150万円の慰謝料を1度支払いました。
そして、その後は一切不倫関係はなかったのですが、再度「あと100万円支払え」「支払わないとネットで拡散する」と連絡が来たのです。
このケースでは、
- すでに支払った事実があり、かつ、示談書に清算条項と解決条項が入っていたため、何度も支払う必要がないこと
- ネットで拡散することは名誉毀損罪になること
を交渉材料に、慰謝料の請求を取り下げさせることができました。
8章:不倫トラブルに強い弁護士に依頼しよう
繰り返しになりますが、不倫で慰謝料請求され、免除、減額したい場合は弁護士に依頼することをおすすめします。
なぜなら、弁護士に依頼することで、
- 感情的になって交渉が進まなくなることを避けられる
- 法外な慰謝料の支払いを認めてしまったり、支払う必要がないのに支払いを認めてしまうことを避けられる
- 適切な示談書を巻くことで、何度も慰謝料を請求されることを防止できる
- 被害者側からの嫌がらせを防止できる
といったメリットがあるからです。
■不倫トラブルに強い弁護士への依頼が大事
ただし、
「弁護士なら誰でも良いから、とにかく早く依頼しよう」
とは思わないでください。
なぜなら、医者に「内科」「眼科」などの専門があるように、弁護士にも「交通事故」「労働問題」「不倫」などの分野があるからです。
弁護士ならどの分野のこともできると思われがちですが、実は自分が強い分野以外は詳しくないという弁護士も少なくありません。
もし、不倫慰謝料請求に強くない弁護士に依頼してしまうと、
- 慰謝料の免除や減額に失敗し、本来支払う必要がない金額の慰謝料を支払ってしまう
- 会社や家族に不倫をバラされ、仕事や信用を失ってしまう
などのことにもなりかねません。
そのため、不倫で慰謝料を請求されたら、不倫慰謝料請求に強い弁護士を探して、依頼することが大事なのです。
不倫慰謝料請求に強い弁護士の探し方等について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
【保存版】不倫トラブルを弁護士に依頼して最大限有利に解決する全手法
まとめ:不倫で慰謝料を請求されたら?
いかがでしたか?
最後に今回の内容をまとめます。
■不倫の慰謝料を請求された場合にやってはいけないことは、相手に言われるままに慰謝料を支払ったり、相手の要求をそのまま受け入れてしまうことです。
自分一人で判断して取り返しのつかない結果になる前に、不倫トラブルに強い弁護士に依頼することをおすすめします。
【慰謝料を支払う必要がないケース】
- 婚姻・婚約・内縁関係ではない
- 3年の時効が過ぎている
- 故意、過失がない
■慰謝料が減額できる可能性がある4つの要素
- 婚姻期間や同居期間
- 不倫が始まった時点の夫婦関係
- 不倫が始まった経緯や回数・期間
- 反省や謝罪の有無
■求償権放棄を条件に慰謝料を減額できる可能性がある
不利な立場に置かれることがないように、適切な方法で行動をはじめてください。