
あなたは、
「不倫の慰謝料請求のために、示談書を作成したい」
「示談書には何を書けば良いのか知りたい」
などの疑問をお持ちではありませんか?
不倫の慰謝料請求において、示談書の作成はとても重要なポイントです。
なぜなら、間違った方法で作成すると、
「慰謝料を相手が支払ってくれない」
「相手が不倫の事実を会社の同僚に言いふらしている。」
「相手はもう二度と夫(嫁)と接触しないと言ったのに,まだ二人で隠れて会っている。」
といったことになりかねないからです。
そのため、合意したことをしっかり相手に守らせるためには、これから紹介するポイントを押さえて示談書を作成することが大事です。
そこでこの記事では、そもそも示談書とはどのようなもので、どのように作るべきなのか、基本的な知識と、示談書に記載すべき8つのことを具体的に解説します。
さらに、より確実に示談書を作成するために、公正証書にする方法や、弁護士に作成を依頼した方が良い理由についても紹介します。
おすすめなのは弁護士に依頼して示談書を作成してもらうことですが、自分で作成する場合は、この記事を参考にして、作成していってくださいね。
目次
1章:不倫慰謝料請求の示談書とは?
それではさっそく、不倫の慰謝料請求について、
- 示談書とは
- 示談書を作成するメリット
- 示談書で約束できること
という基本的なことから解説します。
それより、具体的な作成方法から知りたい場合は、2章からお読みください。
1−1:示談書とは
不倫慰謝料請求における示談書とは、不倫の解決のために、不倫した側(加害者)と不倫された側(被害者)の間で話し合い、まとまった内容を書面で約束するものです。
示談書には「互いの署名」「押印」をして、契約書にします。
一見、ただの書面に見えますが、書いた内容を相手に守らせるためには、定められた書き方にのっとって書く必要があります。
示談書を作成することで、不倫相手に履行させる(守らせる)義務を明確化できます。
1−2:示談書を作成するメリット
示談書を作成することには、以下のようなメリットがあります。
【不倫をされた被害者側のメリット】
- 不倫された被害者は、慰謝料の請求が正当な理由によるものであるということを証明できる
- 離婚しない場合、配偶者が再度不倫したときに違約金の支払を約束することができる
- 不倫相手に対して、不倫トラブルがあったことについて口外しないように約束することができる(守秘義務)
- 離婚する場合、不倫トラブルの責任が配偶者にあったことを証明できる
【不倫をした加害者側のメリット】
- 不倫した加害者側は、示談書に書かれた慰謝料の支払で不倫トラブルを解決したことを証明できるため、追加で金銭の支払を要求されることを防ぐことができる
- 不倫の事実を第三者に口外しないように約束させる。
こうしたメリットがあるため、正しい書き方で示談書を作成することが大事なのです。
1−3:示談書作成の上での注意点
示談書は、慰謝料請求について合意してから準備し始めるものではなく、合意する前から示談書にどのように記載するのか考え、準備を進めなければなりません。
そのため、示談書を作成する上では、以下の注意点を守る必要があります。
①示談書を作成する上では、簡単に譲歩しない
交渉を進める中で、慰謝料の金額や支払方法、金銭以外の面での約束についても合意していきますが、示談書を作成する段階になって、相手がごねて譲歩を求めてくることがあります。
例えば、
「慰謝料を支払いたくない」
「慰謝料を減額して欲しい」
「慰謝料の支払を〇月まで待って欲しい」
などです。
しかし、そこで簡単に相手の要求を受け入れてはなりません。
ここで相手の要求に従って示談書を作成すると、後になって、
「あのとき、減額しなければ良かった」
「すぐに支払わせれば良かった」
と後悔する事になりかねません。
決めたことは、確実に示談書に記載して守らせましょう。
②重要なポイントに絞って書く
示談書は、大抵A4用紙1枚程度に簡潔に記載するものです。そのため、あまり細かく、長文で書きすぎるのはおすすめしません。
重要なポイントが分かりづらくなってしまうからです。
そのため、示談書では重要なポイントにそって、端的に書くようにしましょう。
③示談書は自分側で作成する
示談書は相手に作成を任せず、不倫の被害者であるあなた自身か、あなたが弁護士に依頼して作成してもらいましょう。
なぜなら、加害者である相手に任せれば相手にとって有利な書き方にされてしまう可能性があるからです。
【コラム】誓約書と示談書の違い
示談書と似た言葉に誓約書というものがあります。これは、似ていますが異なるものです。
誓約書とは、不倫相手が一方的にあなたに対して約束する内容のもので、書面には不倫相手が守ることの内容と、不倫相手のサイン+押印のみが記載されます。
一方で示談書は、互いに約束することを記載し、互いのサインと押印をするものです。
つまり、示談書は二人で約束するもので、誓約書は一人だけが一方的に約束するものなのです。
2章:不倫慰謝料請求で示談書に記載すべき8つのこと
それでは、これから不倫慰謝料請求で作成する示談書に記載するべき、8つのことについて詳しく解説します。
【示談書に記載すべき8つのこと】
- 人物名
- 不倫の事実(期間や内容)
- 慰謝料の金額、支払方法
- 金銭以外の約束(接触禁止、守秘義務、迷惑行為の禁止)
- 違約金条項
- 完全解決条項
- 清算条項
- 署名、押印
ぜひ流れにそって、一緒に作成してみてください。
示談書のテンプレートは、以下からダウンロードして使ってください。
※なお、実際の文面は状況や関係性によって異なるため、ここで紹介する内容をそのまま書けば良い、というわけではありません。詳しい書き方が分からなければ、弁護士に依頼することをおすすめします。
2−1:タイトル、人物名
まず、示談書のトップに「示談書」と記載します。
実際には、示談書ではなくても「合意書」「和解書」などでも問題ありません。
次に記載しなければならないのは、不倫トラブルに関わる「人物名」です。
テンプレートでは、以下のように記載しています。
- 不倫され、慰謝料請求をしている当事者・・・鈴木花子
- 鈴木花子の夫で、不倫の当事者・・・鈴木太郎
- 不倫した側で、慰謝料請求されている・・・不倫知子
名前は、本名を正しく記載しましょう。
実際の文面を抜粋すると、以下のようになります。
「鈴木花子(以下「甲」という。)と不倫知子(以下「乙」という。)は、次のとおり合意した。」
※この記事では、不倫の加害者である不倫相手に慰謝料を請求する形で書いています。しかし、慰謝料は不倫の加害者の一人である、あなたの配偶者に請求することもできますので、その場合は、配偶者の名前で別に内容証明を作成しましょう。
2−2:不倫の事実(期間や内容)
名前の次には、「第1条」として、不倫の事実について簡潔に記載しましょう。
ここでは、不倫が確かに行われたこと、そして不倫によって被害を受けたことを、事実として確認するために書く部分です。
第1条で書くべきなのは、以下のことです。
- 不倫の期間(いつからいつまで行われたのか)
- 不倫の関係者(誰と誰の間での行為なのか)
- 不倫による被害(精神的苦痛、など)
特に、慰謝料請求は何らかの損害(不倫の場合は、夫婦関係へのダメージや、その結果受けた精神的苦痛など)に対して行うものですので、どのような損害が発生したのか、忘れずに記載することが大事です。
具体的には、以下のような文面になります。
「第1条(不貞行為)
乙は、平成XX年XX月より、甲の夫である鈴木太郎(以下「丙」という。)と、反復継続的な不貞行為(以下「本件不貞行為」という。)を伴う不倫関係にあり、甲丙の夫婦の平穏を侵害し、甲に対して精神的苦痛を与えたことを認める。」
2−3:慰謝料の金額、支払方法
次に、慰謝料の金額や支払方法について記載します。
これが、慰謝料請求の示談書において最も重要なポイントの一つです。
記載するのは、
- 慰謝料の支払義務があること
- 慰謝料の金額
- 振り込みの期限
- 振込先や支払方法(銀行振り込み、現金など)
についてです。
金額や支払期限、支払方法などは、互いが自由に決めることができます。
具体的には、以下のような文面になります。
「第2条(慰謝料)
1.乙は、甲に対し、本件不貞行為に関する損害賠償金として、金50万円(以下「慰謝料」という。)の支払義務があることを認め、これを本示談書締結日から30日以内に、甲の指定する下記金融機関の口座へ振込む方法により支払う。また、振込手数料は乙の負担とする。
2.乙は、丙に対する、本件不貞行為に関する慰謝料支払債務に基づく求償権を放棄する。」
上記の文面には「求償権」という言葉が入っていますが、これも重要なポイントです。
不倫(不貞行為)は、不倫した当事者の両方に責任があるとされています。
そのため、慰謝料の支払義務は二人にあります。たとえば、慰謝料の金額が100万円なら、配偶者と不倫相手は50万円ずつ負担する、という考え方です。
不倫相手は、一人で慰謝料を負担した場合、もう一人の当事者に対して、慰謝料の半額を請求することができます。これが「求償権」です。
しかし、夫婦が離婚しない場合は、求償権を行使されると無駄な手間が発生します。
仮に、不倫相手に100万円を請求したとしても、不倫相手は50万円分を、後から請求することができます。
すると、夫婦単位で考えると、100万円をもらって、後から50万円を支払うことになるため、結局50万円しか残りません。
そのため、交渉時には、不倫相手が持っている「求償権」を放棄してもらい、今後慰謝料の半額を請求しないことを、要求することもできます。
ただし、この場合、不倫相手から,「求償権を放棄する代わりに,慰謝料を減額してほしい。」と要求されることがあり,その場合には慰謝料の金額が少なくなってしまうことがあります。。
2−4:金銭以外の約束(接触禁止、守秘義務、迷惑行為の禁止)
慰謝料についての約束の次に、金銭以外の約束について記載します。
不倫トラブルを交渉して解決する場合、
- 接触禁止
- 守秘義務
- 迷惑行為の禁止
などについても、交渉で相手と合意すれば示談書に記載することができます。
順番に解説します。
①接触禁止
不倫されたが配偶者と離婚しない場合、
「もう不倫相手と二度と会わないで欲しい」
と思いますよね。
そのような場合は、交渉の中で二度と接触しないことを合意し、それを示談書に記載することができます。
具体的には、以下のような文面で記載します。
「第3条(接近禁止)
乙は、丙に対し、今後一切の面会、連絡をしないものと約束する。」
②守秘義務
不倫されたが配偶者と離婚しない場合、不倫トラブルが発生したことを職場や知人などに知られたくないということもありますよね。
その場合は、交渉の中で「みだりに口外しないこと」を約束し、示談書に記載することができます。
ただし、不倫相手側も弁護士をつけるために相談することがありますので、一切の口外を禁止することはできません。そのため「みだりに口外しない」という文面にします。
具体的には、以下のような文面になります。
「第4条(守秘義務)
甲(及び乙)は、本件に関し、相互にインターネットへの書き込み・書面掲載・口頭による情報の流布・架電・電子メールその他方法の如何を問わず、本件に関する情報をみだりに第三者に対し口外しないことを約束する。」
③迷惑行為の禁止
不倫トラブルは、慰謝料請求によっていったんは解決できても、感情面でのわだかまりを残し、後になって不倫相手が嫌がらせをしてくることがあります。
また、逆に、不倫された側の被害者が、加害者である不倫相手に対して嫌がらせをすることもあります。
そのため、被害者、加害者双方の迷惑行為を禁止し、注意喚起するために「迷惑行為の禁止」を示談書に記載することが大事です。
記載する場合は、
- 自宅への訪問
- 誹謗中傷
など、具体的な予測される迷惑行為だけでなく、その他の「相手の不利益になる一切の行為」を禁止する、と書く必要があります。
具体的には、以下のような文面になります。
「第5条(迷惑行為の禁止)
甲及び乙は、相手方を訪問すること、当事者のいずれかを誹謗中傷すること、名誉を害すること、その他相手方に不利益となる一切の行為を行ってはならない。」
2−5:違約金条項
ここまで、慰謝料請求や金銭以外の面での要求についてお伝えしましたが、それらが守られるようになっていなければ、意味がありません。
そのため、示談書に記載したことが違反した場合のペナルティとして、違約金を定めることも大事なポイントです。
違約金の支払を約束し、違反した場合にペナルティがあることが明確に書かれていれば、相手が違反する可能性が低くなります。。
ただし、違約金として認められる金額は裁判例上一定の上限があるため、法外に高額な違約金を定めても、後に支払が認められず、示談書の内容を守らせる上で意味がないこともありますので、慰謝料の金額よりも少なく設定するのが一般的です。違約金の金額の裁判例上の上限については,弁護士に相談すれば教えてくれるでしょう。
具体的には、以下のような文面になります。
「第6条(違約金)
乙が、本示談書の定めにいずれか違反した場合は、違反した都度、違約金として金50万円を、甲へ支払わなければならない。」
2−6:完全解決条項
不倫トラブルでは、不倫された被害者側が、加害者に対して、
「このくらいの金額では足りない」
と何度も慰謝料を求めることがあります。
これではいつまで経っても、互いに不倫トラブルを引きずりますし、特に加害者側は何度も慰謝料を請求されて、精神的にも金銭的にも負担が大きいです。
そのため、示談書には、
「これで今回の不倫トラブルに関しては、完全に解決したことにします」
という約束を記載することをおすすめします。
これが「完全解決」という条項です。
完全解決の条項を記載することで、不倫トラブルを再度蒸し返すことがないように取り決めることができます。
具体的には、以下のような文面になります。
「第7条(完全解決)
甲及び乙は、本示談書の定めが誠実に履行されることを条件として、本件についてはすべて解決したものとし、本示談書の定めに違約があった場合等を除き、以後、互いに何らかの追加的な請求を行うこと、又は異議申し立てを行ってはならない。」
2−7:清算条項
示談書には「清算条項」と言う項目を入れるのも必須です。
清算条項とは、示談書に記載したこと以外のことについても「何の権利や義務もありませんよ」ということです
具体的には、示談書を交わした後になって、
「あなたの配偶者に対して、〇万円のお金を貸していたので、配偶者の代わりにあなたがその全額を返済してください。」
などと要求されることを防ぐために記載します。
こうしたことが起こると、一度解決した不倫トラブルが再度蒸し返され、再び解決まで交渉を続けなくてはならなくなります。
そのため、示談書に記載したこと以外についても、すべて清算済みですよ、ということを互いに確認するために、以下のような文面を入れます。
「第8条(清算条項)
甲及び乙は、両者の間に本示談書の定めの他、なんらの債権債務も存在していないことを相互に確認する。」
2−8:署名と押印
最後に、忘れずに署名を入れます。
署名は慰謝料を請求する被害者であるあなた(テンプレートの「甲=鈴木花子」)と、加害者である不倫相手(テンプレートの「乙=不倫知子」)の両者が、手書きで署名する必要があります。
署名は「実名」「手書き」で行うことが必要です。
偽名やプリントした文字などでは効力がないからです。
押印は実印でも認め印でも良いため、署名の横に押しましょう。
※シャチハタは使用しないでください。
3章:不倫慰謝料の示談書を公正証書で作成する方法
不倫の慰謝料請求において作成した示談書は「公正証書」で作成することをおすすめします。
そこで、
- 公正証書の基礎知識
- 公正証書で作成する流れ
について解説します。
3−1:公正証書とは
公正証書とは、公証人に立ち会ってもらい、示談書が双方の合意に基づいたものであることを証明する、書面の作成方法のことです。
分かりやすく言うと,示談書の内容について公的なお墨付きをもらう,ということです
「示談書に署名押印しただけでは、互いに合意したことが証明できないの?」
と思われるかもしれませんが、公正証書にすることで、示談書が偽造ではないことが100%証明できます。そのため、署名、押印するだけよりも内容が保障されるのです。
示談書を公正証書にしておくことで、
- 加害者が慰謝料の支払を拒否した場合
- 加害者が示談書の内容に違反したため、違約金を請求したい場合
などに、強制的に支払わせることができるというメリットがあります。
3−2:公正証書で作成する方法
示談書を公正証書にするためには、不倫の被害者であるあなたと、加害者である不倫相手の両者がそろって「公証役場」に行き、内容に違法性がないか審査してもらいます。
そして、その場で、署名・押印します(すでに署名しておいて、その場で署名が自分のもので間違いないことを認めるだけの場合もあります)。
以上の手続きを持って、示談書を公正証書にすることができます。
注意点は、被害者であるあなたと、加害者はそろって公証役場に行かなければならないということです。
あなただけではダメなのです。
公証役場の場所については「住んでいる地域名+公証役場」で検索してみてください。
4章:不倫慰謝料の示談書作成は弁護士に依頼しよう
不倫慰謝料の請求は、弁護士に依頼することをおすすめします。
なぜなら、自分たちだけで示談書を作成しようとすると、
- 間違った書き方をし、慰謝料を支払ってもらえない(不倫された被害者側)
- 間違った書き方をし、何度も慰謝料を請求される(不倫した加害者側)
- 示談書を作成する過程で、話し合いが進まなくなる、相手がごねる
- 膨大な手間や時間、相手と話し合う上でのストレスがかかる
といったデメリットがあるからです。
弁護士に任せれば、手間や時間、心理的なストレスを最小限にし、さらに強制力を持った示談書を作成することができます。
そのため、最初から示談書の作成を弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士に依頼する場合は、不倫トラブルに強い弁護士を選ぶ必要がありますので、詳しくは以下の記事をご覧ください。
【保存版】不倫トラブルを弁護士に依頼して最大限有利に解決する全手法
まとめ
いかがでしたか?
最後に今回のポイントを振り返ります。
【示談書を作成する上でのポイント】
- 示談書を作成する上では、簡単に譲歩しない
- 重要なポイントに絞って書く
- 示談書は自分側で作成する
【示談書に記載する8つのこと】
- 人物名
- 不倫の事実(期間や内容)
- 慰謝料の金額、支払方法
- 金銭以外の約束(接触禁止、守秘義務、迷惑行為の禁止)
- 違約金
- 完全解決
- 清算条項
- 署名
【より確実な示談書を作成するためのポイント】
- 公正証書にする
- 弁護士に依頼する
この記事を参考にして、示談書作成のための行動をはじめていきましょう。
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