【不倫|違法性の境界線】慰謝料請求の対象となる不貞行為とは


この記事を読んで理解できること
- 違法な不倫とは何かを解説
- 違法性ない不倫とそうでない不倫の具体例
- 違法な不倫に対して仕返し・制裁をする方法
- 違法な不倫に対してやってはいけない仕返し・制裁
あなたは、
「不倫は違法だと知っているけど犯罪ではないの?」
「違法なのに犯罪じゃないってどういうこと?」
「そもそも不倫って違法なの?」
「どこからが違法な不倫になるんだろう?」
「違法なら、どんな法的な制裁を与えられるのかな?」
などの疑問、悩みをお持ちではありませんか?
違法な不倫についての一般的なルールは下のようにまとめることができます。
- 不倫は、原則、肉体関係があった場合に限り違法な不倫となる(不貞行為)。
- キスやデートだけでは原則、違法にならない。
- 違法な不倫であっても、民法上違法な行為(不法行為)であるにとどまり、犯罪が成立するわけではない(逮捕もされない。)。
- 肉体関係がある違法な不倫に対しては、慰謝料請求や離婚といった民事上の制裁が与えられる。
この記事では、まずは不倫の違法性や法律上のルールを解説し、それから違法な不倫とそうでない不倫を具体例と共に解説します。
しっかり読んで、これからの行動に役立ててくださいね。
目次
1章:違法な不倫とは何かを解説
それではさっそく、違法な不倫とはどのようなものか解説していきます。
1-1:違法な不倫になるかは、肉体関係があるかどうかで決まる!
そもそも、不倫について辞書的には以下のように定義されることが多いようです。
「男女関係において、道徳に外れた行為」
つまり、男女関係において倫理的、道徳的に良くない行為のことが不倫と言われることが多いです。
しかし、実は法律上は不倫という言葉は使いません。
不倫の中で、以下のような条件に当てはまることを法律上は「不貞行為」と呼んでいます。
- 婚姻、婚約、内縁関係がある場合
- パートナー以外の人と肉体関係(性交渉や性交類似行為)を持った場合
不貞行為に該当するような違法な不倫は「婚姻共同生活の平和の維持」という権利・利益を侵害する行為であり、不倫された側は、精神的苦痛という被害を受けることになります。
不貞行為に該当するような違法な不倫は、民法上の違法行為である「不法行為」にあたるため、違法行為の被害者である一方の配偶者に損害賠償をしなければなりません。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
他方、
- キス
- ハグ
- デート
などの行為は肉体関係ではないため、不貞行為ではあたらず、原則的には違法ではありません。
(ただし、その態様や程度において、精神的苦痛が大きい場合には違法行為になるときがあります。)
※不貞行為の定義について詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
1-2:不倫は違法なのに犯罪ではないの?
実は、肉体関係まで至った不倫は違法なのですが、それは犯罪が成立するという意味ではないのです。
犯罪が成立するかは刑法等に規定されているのですが、不倫を犯罪とする法律は存在しません。
ですので、不倫をしたことで逮捕されたり有罪になることはありません。
1-3:不倫は「犯罪」ではないが慰謝料請求の対象になる
先に解説したように、不貞行為に該当するような違法な不倫は、民法上の違法行為である「不法行為」にあたるため、「犯罪」ではありませんが慰謝料請求の対象になります。
そのため、不貞行為による精神的苦痛を被った被害者は、配偶者や不倫相手に対して慰謝料を請求することができます。
不倫の慰謝料の金額や請求する方法については、3章で解説します。
2章:違法な不倫とそうでない不倫の具体例
不倫は明らかに違法な不貞行為に該当するようなものから、違法性の判断が難しいものまで多岐にわたります。
そこでこの章では、今まで多くのご相談者様とお話しした経験から、
- 実は違法な不倫であるということに驚かれるケース
- 実は違法な不倫ではないということに驚かれるケース
について解説します。
2-1:「え!?こういう場合も違法なの?」とご相談者様に驚かれるケース
法的な定義でのご説明ですと、わかりづらいと思われますので、具体的に「こういう場合にも不倫になってしまうんですね」とご相談者様に驚かれるケースをいくつか紹介します。
- 向こうからしつこく誘われて断り切れなかっただけなのに、、
- 酔った際の過ちで、、
- たった1回だけの過ちなんですけど、、
- パートナーが先に不倫しているから、自分も不倫をしただけなのに、、
- 同性と不倫してもですか、、
順番に説明します。
2-1-1:向こうからしつこく誘われて断り切れなかっただけなのに、、
自分にその気がなくても、向こうからしつこく誘われて仕方なく肉体関係を持ってしまった、という場合もあるかもしれません。
しかし、この場合も違法な不倫(不貞行為)に該当します。
いくらしつこかったとしても、断ろうと思えば断れるはずなのであなたにも責任があると裁判官は考えるものなのです。
最終的には自分の意思で肉体関係を持ったのですから、違法な不倫(不貞行為)に該当し、離婚事由や慰謝料請求が認められる可能性が高いです。
ただし、あなたの意思に反して強姦された場合などは違法な不倫には該当しません。
2-1-2:酔った際の過ちで不倫したケース
酔っ払った勢いで肉体関係を持ってしまったという場合も、違法な不倫(不貞行為)に該当します。
確かに、普段は貞操観念のある人がお酒の勢いで普段は絶対にしない不倫を行ってしまったというケースは、不倫についてノーカウントと考えたい気持ちはわかります。
しかし、酔っ払っていたとしても、自分の意思で肉体関係を持ったのは間違いないのですから、違法な不倫(不貞行為)だと法的には判断されることになってしまうのです。
お酒の場では、タガが外れて許されるかもと思われる方もいるのですが、そのような場合でも不倫は違法なので理性を保ちましょう。
しかし、意識がないほど酩酊していて、抵抗できない状態で、一方的に性交渉されたという場合は、違法な不倫には該当しません。
なぜなら、不貞行為が違法な不倫になるのは、やめようと思えばやめることができたのに行ってしまった点に責任があるからです。
2-1-3:たった1回だけの過ちで不倫したケース
お酒の勢いで肉体関係を持ってしまったケースとかぶりますが、たった1回の過ちで肉体関係をもってしまった場合でも、違法な不倫(不貞行為)に該当します。
法的には、肉体関係を持ってしまうことが違法の原因なので、違法かどうかは回数の多い少ないは関係ないのです。
ただし、1回だけの過ちの場合、違法性の程度が低いと考えられ、慰謝料の金額は相場より低くなる可能性があります。
違法ではあるものの、被害者への精神的苦痛の程度が、複数回の不倫よりも低いと考えられるからです。
2-1-4:パートナーが先に不倫しているから、自分も不倫したケース
パートナーが不倫をしているから、腹いせに自分も他の異性と肉体関係を持った、というケースも見受けられます。
しかし、このような場合でも、肉体関係を持っている以上、違法な不倫(不貞行為)に該当します。
パートナーが不倫した場合は、法的には自分の方が慰謝料を請求できたり離婚請求できたりと有利なので、自分が不倫という違法行為でやり返すのではなく、法的に責任追及をしていきましょう。
ただし、すでに別居しているなどの夫婦関係が破綻している場合は、不貞行為をしても慰謝料請求は認められない可能性があります。
2-1-5:同性と不倫したケース
従来、同性との不倫は不貞行為なのかどうかは見解が分かれてきました。
しかし令和3年の裁判例では、妻が女性と性行為をもったことについて、夫が女性に慰謝料請求をしたケースで、女性の違法性を認めて夫の慰謝料請求を認めています。
裁判官も、同性愛についても、夫婦関係を壊すものだと考えるようになっているのではないかと考えられます。
2-2:違法な不倫にならないことにご相談者様に驚かれるケース
下記のような不倫については、違法であると思われることもあるかもしれませんが、原則的には不法行為には該当しません。
- 手をつなぐ、キス、ハグなど
- 恋人のような愛情表現(「愛してる」など)が含まれたメールを送っているだけ
- デートをしただけ
- 性風俗店に行く
順番に説明します。
2-2-1:手をつなぐ、キス、ハグなど
一般的な考えでは、配偶者が異性と手をつないだり、キスやハグをしていれば違法な不倫と考えることが多いかもしれません。
しかし、法律上は、これらの行為は違法な不倫(不貞行為)とはみなされません。
なぜなら、繰り返しになりますが、不倫が違法であるためには原則的に肉体関係が必要だからです。
ただし、回数や程度があまりにも度が過ぎる場合には、離婚事由と認められたり、慰謝料請求が認められたこともあります。
なお、単にパートナー以外の異性に片思いしているという場合も、違法な不倫(不貞行為)ではありません。
しかし、過度に他の異性に入れ込んで、パートナーとの生活に悪影響を及ぼしている場合、離婚事由になる可能性があります。
2-2-2:恋人のような愛情表現(「愛してる」など)が含まれたメールを送っているだけ
ただ単に「愛してる」「好きだよ」などの愛情表現が含まれているメールのやり取りをしているだけでは違法な不倫(不貞行為)ではありません。
恋愛関係にはなくても、男女がふざけあってこのような文章を送りあうということも有りうるからです。
ただし、メールのやり取りの中に「明日泊まりに行く」「昨日のセックス良かったよ」など性交渉を予測させるような表現がある場合は、違法な不倫(不貞行為)があったと認められることもあります。
2-2-3:デートをしただけ
あなたの配偶者が、異性と二人だけで繰り返し食事、デートに行っている場合でも、それだけでは違法な不倫(不貞行為)とは認められません。
そのため、離婚や慰謝料請求をすることもできません。
ただし、二人だけで会っているのが深夜の時間帯であった場合、違法な不倫であると認められるケースもあります。
つまり、結局は不倫が違法かどうかは肉体関係の存在が推認できるかどうかで判断されるのです。
2-2-4:性風俗店に行く
不倫が違法であるかどうかは、肉体関係があるかどうかといってきました。
しかし、風俗は少し事情が違うのです。
風俗に行く場合は、男性は女性に特別な恋愛感情を持っているわけではなく、単に性欲を満たすためだけに行くことが多いのです。
そのような場合は、妻としては決して気分のよいものではないでしょう。
しかし、法的には、恋愛感情や思い入れのある女性との肉体関係とは別のものと考えられ、違法な不倫(不貞行為)にはならないとされることが多いのです。
1~2回風俗を利用した程度では、離婚請求は認められないと考えた方がよいでしょう。
もちろん、その風俗嬢に特別な感情を持ち、何回も肉体関係を繰り返しているのであれば、一般的な恋愛感情ある不倫と同じように考えることができるので、違法な不倫となるでしょう。
3章:違法な不倫に対して仕返し・制裁をする方法
「不倫をされたため、相手に仕返しをしたい」
「不倫相手に何らかの形で制裁を与えたい」
という場合は、下記のように合法的な方法で行動することが大事です。
- 慰謝料を請求する
- 配偶者に離婚を請求する
順番に説明します。
3-1:慰謝料を請求する
ここまで解説してきたように、違法な不倫(不貞行為)に対しては、配偶者や不倫相手に対して、慰謝料を請求できます。
慰謝料を請求する方法には、大きく分けて、
- 裁判外の交渉による請求
- 裁判による請求
という2つの方法があります。
裁判外の交渉とは、夫婦と不倫相手の間で(場合によっては弁護士をつけて)話し合いによって慰謝料の金額に折り合いを付ける方法のことです。
これで解決しなかった場合に、裁判によって慰謝料を求めていくことになります。
以下の流れで請求することができます。
ステップ①証拠集め
↓
ステップ②弁護士への相談、依頼
↓
ステップ③裁判外の交渉(話し合い)による和解
↓
ステップ④裁判(訴訟)での解決
という順番で進めていきます。
弁護士に依頼した場合は、後の手続きはほとんど弁護士が代理で行います。
裁判外の交渉だけなら、早ければ数ヶ月程度で終わりますが、裁判(訴訟)になった場合は、もっと期間が延び、長いケースでは1年以上かかることもあります。
そのため、多くの場合で裁判(訴訟)は最終手段であり、できるだけ交渉で解決できるように弁護士が行動します。
また、裁判(訴訟)になると、自分が出廷して発言しなければならないようなイメージをお持ちかもしれませんが、弁護士に依頼すれば、弁護士が代理人として出廷するため、あなたが裁判所に行く必要はありません。
慰謝料請求の詳しい流れやポイントについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
【保存版】不倫で慰謝料請求!高額請求のポイントと知っておきたい知識
※慰謝料の相場や金額が決まるポイントについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
【2024年度版】不倫慰謝料相場は50万~300万円!金額を決める7つの要因と高額請求法
3-2:配偶者に離婚を請求する
不倫(不貞行為)は、法律上離婚事由になる違法な行為です。
そのため、配偶者の不倫(不貞行為)が明らかなら、離婚請求をして認めてもらうことが可能です。
(民法770条1項1号)
離婚請求は、以下の流れで行われます。
離婚の方法には、
①協議離婚:話し合いによる離婚
②調停離婚:家庭裁判所を使った離婚手続き
③裁判離婚:協議や調停で条件が合意できなかった場合の、最終的な離婚手続き
の3つがあり、たいていは①で解決されます。
①が最もスピーディーかつ手間が少なく、③が最も時間、手間、お金(裁判や弁護士費用)がかかります。①で解決しない場合では、裁判所での話し合いである②調停を行います。
そのため、多くは協議離婚で解決されるのです。
また、どの方法であっても、配偶者の不貞行為が明らかなら慰謝料請求が認められます。
不貞行為が原因で離婚する場合の慰謝料相場としては、150万円~300万円程度になります。
詳しい方法は、離婚専門の弁護士に相談してみましょう。
不倫の慰謝料請求に強い弁護士について詳しく知りたい場合は、次の記事を参考にしてください。
【慰謝料請求に強い弁護士の特徴とは?】選ぶ基準を現役弁護士が解説
4章:違法な不倫に対してやってはいけない仕返し・制裁
不倫をされると怒りや悲しみから、相手に被害を与えるような行動を取ろうとするケースもあります。
しかし、下記のような行為をすることは絶対に避けてください。
- ネットやSNSで不倫の画像、動画、実名入りの文章などを拡散する
- 職場や近所に、電話、メールなどで不倫されたことをばらす、言いふらす
- 配偶者や不倫相手への暴力
- 脅迫してお金を請求する
順番に説明します。
4-1:ネット・SNSで不倫の画像、動画、実名入りの文章などを拡散する
ネット・SNSで不倫されたことが分かる画像や動画を公開したり、実名入りで不倫されたことをばらすような書き込みをした場合「名誉毀損罪」「侮辱罪」などの罪に問われる可能性が高いです。
なぜなら、たとえあなたが違法な不倫の被害者であったとしても、加害者である配偶者や不倫相手の信用を失わせるような行為は犯罪になるからです。
名誉毀損の場合は、3年以下の懲役もしくは禁固、または50万円以下の罰金という刑事罰が、侮辱罪の場合は、拘留または科料という刑事罰が科せられます。
こういった行為をすることで、あなたの方が違法な行為をしたことになってしまうのです。
そのため、ネット・SNSで不倫をばらすような方法で制裁を与えることは絶対に避けてください。
4-2:職場や近所に、電話、メールなどで不倫されたことをばらす、言いふらす
- 職場に不倫をばらすメールや電話をする、郵便物を送る
- 近所に不倫されたことを言いふらす
- 不倫相手の自宅前で「浮気女」「淫乱」などと叫ぶ
このような行為は、4−1と同様に「名誉毀損罪」「侮辱罪」といった刑事罰に問われてしまいます。
違法な不倫をされたあなた自身が、違法な行為を行ったことになってしまうのです。
そのため、どんなに制裁を与えたくてもこのような行為は絶対に避けましょう。
4-3:配偶者や不倫相手への暴力
不倫されて怒りのあまり、配偶者や不倫相手に殴る、蹴るなどの暴力をふるう人もいるようです。
しかし、たとえあなたが不倫の被害者であったとしても、暴力が正当化されることはありません。
暴力は暴行罪や傷害罪になります。
あなたが違法行為に手を染める必要はありません。
どれだけ感情的になっていても暴言、暴力は絶対にふるわないようにしてください。
4-4:脅迫してお金を請求する
不倫された場合、配偶者や不倫相手に「不倫をばらされたくなければ、〇〇円支払え」と脅迫する人も稀にいるようです。
しかし、相手が悪いとしても絶対に脅迫してお金を請求してはなりません。
脅迫罪は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金が科される犯罪です。
また、脅迫によって相手にお金を支払わせた場合、恐喝罪として10年以下の懲役が科されます。
もし相手に訴えられたえら、あなたが違法行為を行った犯罪者として罪に問われるのです。
したがって、お金を請求したい場合は必ず「慰謝料請求」という形で、合法的に行うようにしましょう。
まとめ:違法な不倫でトラブルになったら、早めに弁護士に相談しよう
最後に今回の内容を振り返ってみましょう。
【違法な不倫とは】
- 不倫は、原則、肉体関係があった場合に限り違法な不倫となる(不貞行為)。
- キスやデートだけでは原則、違法にならない。
- 違法な不倫であっても、民法上違法な行為(不法行為)であるにとどまり、犯罪が成立するわけではない(逮捕もされない。)。
- 肉体関係がある違法な不倫に対しては、慰謝料請求や離婚といった民事上の制裁が与えられる。
【原則的に、違法な不倫とならない場合】
- 手をつなぐ、キス、ハグなど
- 恋人のような愛情表現(「愛してる」など)が含まれたメールを送っているだけ
- デートをしただけ
- 性風俗店に行く
【不倫に対する法的な制裁】
- 慰謝料を請求する
- 配偶者に離婚を請求する
【違法な不倫に対してやってはいけない仕返し】
- ネットやSNSで不倫の画像、動画、実名入りの文章などを拡散する
- 職場や近所に、電話、メールなどで不倫されたことをばらす、言いふらす
- 配偶者や不倫相手への暴力
- 脅迫してお金を請求する
不倫の違法性をしっかり理解して、これからの行動に活用していってください。
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