【不倫の示談書】テンプレート付!内容と作成の流れ、よくある失敗例
この記事を読んで理解できること
- 不倫の示談書の役割とメリット
- 不倫の示談書のテンプレートと内容
- 不倫の示談書を交わす流れ
- 示談書は公正証書にするのがおすすめ
- 示談書を自分で作成した際のよくある失敗例
あなたは、
「不倫の示談書の書き方が知りたい」
「不倫の示談書のテンプレートが欲しい」
「不倫の示談後にトラブルが起きないようにしたい」
などとお考えではないですか。
不倫相手に対して慰謝料の請求を行い、不倫関係の解消や慰謝料等の各条件について合意が得られた場合は、示談書を作成し、合意した内容を書面に残しておくことが重要です。
できれば、不倫の示談交渉の段階から示談書の作成も含めて、弁護士に依頼することをおすすめします。
なぜなら、不倫問題についての話し合いで合意が得られただけでは、慰謝料や接触禁止などの大切な条件が口約束だけになってしまうため、示談後に守られない可能性があるからです。
また、示談書を公正証書にすることによって、相手からの慰謝料の支払いが約束に反した場合は、裁判手続きを取ることなく給料や財産を差し押さえることもできます。
そのため、示談書に書くべき内容や作成する流れ、示談書を公正証書にするための手続きなどをしっかり理解することが重要です。
この記事では、1章で不倫の示談書の役割とメリットを、2章では不倫の示談書のテンプレートと内容を、3章では不倫の示談書を交わす流れなどについて解説します。
さらに、4章では示談書を公正証書にするメリットを、5章では示談書を自分で作成した際のよくある失敗例を紹介していきます。
個々の内容をしっかりと理解して、今後の行動に役立ててください。
1章:不倫の示談書の役割とメリット
この章では、不倫相手との話し合いで、慰謝料や各条件について合意が得られた場合に作成する、示談書の役割とそのメリットについて解説していきます。
1-1:示談書の役割
ここまで解説してきたように、示談書とは当事者の合意内容を書面化したものですが、その役割としては次の4つがあげられます。
- 合意した内容を明確にする
- 約束した内容を示談書で立証する
- 約束に反した場合の違約金を定める
- 示談後のトラブルを予防する
書面化することで合意内容が明確になり、お互いの認識に齟齬が生じることは無くなるため、口頭の約束にありがちな示談後のトラブルを避けることができます。
また、相手が約束に反した場合には、記載した内容は強力な証拠となるため、違約金を定めておくことによって、違約金を支払う義務を負わせることができます。
示談書と誓約書の違いとしては、誓約書は一方が相手に対して「内容を必ず守ります」と署名・押印して約束するものとなります。
例えば、配偶者に対してだけでなく、不倫相手に対しても、和解はしたくないが不倫の解消や連絡・接触しないことを約束してほしい場合は、誓約書になります。
1-2:不倫の示談書のメリット
不倫の示談書を作成することによって、慰謝料を請求する側も請求される側も、双方にとってメリットが生じます。
それぞれ解説していきます。
1-2-1:慰謝料を請求する側
慰謝料を請求する側の示談書の1つ目のメリットは、不倫の再発防止になります。
示談後も配偶者と婚姻関係を続けていく場合、不倫相手との関係を断ち切り、相手にそれを守らせることは最も重要な条件となります。
示談書に合意内容として不倫関係の解消と接触禁止、違約金を記載することで、不倫の再発を防止できるメリットがあります。
示談書の2つ目のメリットは、訴訟の際の強力な証拠となります。
示談書を作成することによって、不倫された被害者は、慰謝料の請求が正当な理由によるものであるということを証明できます。
そのため、示談後に相手が不倫を認めなかったり慰謝料を支払わない場合は、示談書は裁判所が事実関係を判断する強力な証拠となります。
1-2-2:慰謝料を請求される側
慰謝料を請求される側の示談書のメリットは、示談後に問題を蒸し返されないことです。
示談書に清算条項を記載して、示談書に定めた以外の債権債務が存在していないことを相互に確認することによって、示談後にさらなる請求を受けることはありません。
また、示談書に守秘義務や迷惑行為の禁止条項を記載して、示談後に不倫の事実を第三者に口外しないように約束させることができます。
2章:不倫の示談書のテンプレートと内容
この章では、不倫の示談書を自分で作成する際に参考となる示談書のテンプレートと、記載する内容について解説していきます。
2-1:不倫の示談書のテンプレート
不倫の示談書のテンプレートは、次のようになります。
実際の文面は状況や関係性によって異なるため、詳しい書き方が分からない場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。
2-2:示談書の内容
示談書に記載する内容としては、主に次のようになります。
- タイトル、人物名
- 不倫の事実(期間や内容)
- 慰謝料の金額、支払方法、求償権の放棄
- 関係解消(接触禁止)、守秘義務、迷惑行為の禁止
- 違約金条項
- 完全解決条項
- 清算条項
- 作成日と氏名・住所
上記の内容は、一般的に取り決められることが多い内容となっていますが、合意内容に応じて条項を追加あるいは削除する必要があります。
それぞれ解説していきます。
2-2-1:タイトル、人物名
示談書のタイトルとして、「示談書」あるいは「合意書」「和解書」と記載します。
次に、示談書の当事者の氏名を記載します。
テンプレートでは、以下のように記載しています。
- 鈴木花子(甲):不倫されて慰謝料を請求している当事者
- 不倫知子(乙):慰謝料を請求されている不倫の当事者
配偶者にも慰謝料を請求する場合は、その氏名を記載します。
- 鈴木太郎(丙):鈴木花子の夫で不倫の当事者
2-2-2:不倫の事実(期間や内容)
「第1条(不貞行為)」として、不倫の事実(期間や内容)について簡潔に記載します。
ここでは、乙と丙によって不倫が確かに行われたことと、甲が不倫によって被害を受けたことを、事実として確認するために記載します。
主な内容としては、次のようになります。
- 不倫の期間(いつからいつまで行われたのか)
- 不倫の当事者(誰と誰による不貞行為なのか)
- 不倫による被害(精神的苦痛など)
特に、不倫の慰謝料請求の場合は、夫婦関係へのダメージや、その結果受けた精神的苦痛などを、忘れずに記載することが大事です。
2-2-3:慰謝料の金額、支払方法、求償権の放棄
「第2条(慰謝料)」として、慰謝料の金額や支払方法、求償権の放棄などを記載します。
ここでは、不倫の示談書において、最も重要なポイントとなる慰謝料について記載します。
主な内容としては、次のようになります。
- 慰謝料の支払義務があること
- 慰謝料の金額
- 慰謝料を振込む期限
- 振込先や支払方法(銀行振込み、現金など)
- 配偶者に対する求償権の放棄
乙に慰謝料の支払い義務があることを確認したうえで、慰謝料の金額や支払期限、支払方法などは、交渉によって自由に決めることができます。
ただし、法外な金額の慰謝料が記載されている場合は、裁判所の判断によって示談書が無効となることがあります。
求償権とは、不倫の当事者(共同不法行為者)2人の内一方(乙)が、自身の責任部分を超えて慰謝料を支払った場合に、もう一方の当事者(丙)に自己の責任を超過する分を請求できることをいいます。
求償権の放棄を記載することによって、慰謝料の全額を不倫相手1人に請求することになります。
ただしこの場合は、不倫相手から
「求償権を放棄する代わりに、慰謝料を減額してほしい。」
と要求されることがあるため、慰謝料の金額が少なくなってしまう場合があります。
2-2-4:関係解消(接触禁止)、守秘義務、迷惑行為の禁止
第3条~第5条に、関係解消(接触禁止)、守秘義務、迷惑行為の禁止など、金銭以外の条件について記載します。
示談後も配偶者と婚姻関係を続ける場合は、不倫関係を完全に解消し、今後一切の接触を禁止する条項を記載します。
また甲及び乙はお互いに、不倫トラブルをみだりに口外しない守秘義務や、嫌がらせなどの相手方に不利益となる一切の行為(迷惑行為)を禁止する条項を記載します。
2-2-5:違約金条項
「第6条(違約金)」として、乙が示談書の条項に違反した場合の違約金について記載します。
違約金の支払いを定め金額等を明確に記載することで、相手が違反する可能性が低くなります。
ただし、法外に高額な違約金を定めた場合は、公序良俗(民法90条)に反するなどの理由で無効となることもあるため、慰謝料の金額以下に設定するのが一般的です。
慰謝料や違約金の金額については、弁護士に相談することをおすすめします。
2-2-6:完全解決条項
「第7条(完全解決)」として、示談書の条項を誠実に履行することによって、不倫トラブルが完全に解決したことを記載します。
完全解決の条項を記載することによって、不倫トラブルを再度蒸し返すことがないように取り決めることができます。
2-2-7:清算条項
「第8条(清算条項)」として、示談書に定めた以外に、なんらの債権債務も存在していないことをお互いに確認します。
例えば、示談書を交わした後に、
「あなたの配偶者に対して、〇万円のお金を貸していたので、配偶者の代わりにあなたがその全額を返済してください。」
などと要求されることを防ぐために記載します(あなたの配偶者が借りたお金を返す必要はそもそもありませんが、清算条項を設けることで、あなたが請求を受けてしまう可能性をより低くすることができます。)。
このように、一度解決した不倫トラブルが再度蒸し返され、再び交渉を続けなくてはならなくなることを防ぐために、示談書に記載したこと以外についても、全て清算済みということを互いに確認します。
2-2-8:作成日と氏名・住所
示談書の最後に、作成日と示談書の当事者2名の氏名・住所をそれぞれが自署し押印します。
甲は、慰謝料を請求する被害者(鈴木花子)が、乙は、加害者である不倫相手(不倫知子)が記入します。
署名は、「実名」「手書き」で行う必要があり、押印は、実印でも認め印でも良いので署名の横に押します。
※シャチハタは使用不可となります。
3章:不倫の示談書を交わす流れ
不倫相手に対して慰謝料を請求した場合に、示談書を交わす流れとしては、次のようになります。
- 示談書の内容の話し合い
- 示談書の案文と加筆・修正
- 合意後の署名・押印
それぞれ解説していきます。
3-1:示談書の内容の話し合い
不倫の示談内容の話し合いの際には、まず不貞行為を行っていたことを相手が認め、慰謝料の支払いと慰謝料金額の合意に向けて話し合いを進めていく必要があります。
また、2章で解説した示談書の内容について、項目を確認したうえで示談書案を提示します。
不貞行為を相手が認めなかったり、慰謝料の金額や支払い等で話し合いを進めることが難しい場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。
3-2:示談書の案文と加筆・修正
不倫相手との話し合いで、ある程度示談の条件等が決まった場合は、示談書の案文を作成し郵便またはメールで相手に確認を求めます。
作成した示談書の案文を基に双方で内容を確認し、最終的な合意に向けて加筆・修正を行っていきます。
示談書の案文を作成したものの、その内容に不安がある場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
3-3:合意後の署名・押印
作成した示談書の内容に問題なく合意が得られた場合は、作成日を記入しお互いの氏名を署名・押印します。
示談書に署名・押印をした後に、その内容を変更することは容易ではないため、示談書の内容に誤りがないか十分に確認することが重要です。
4章:示談書は公正証書にするのがおすすめ
示談書による不倫慰謝料の合意が得られた場合は、公正証書にすることをおすすめします。
この章では、公正証書と示談書の違いやそのメリット、さらには公正証書を作成するデメリットについて解説していきます。
4-1:公正証書とは
公正証書とは、公証役場において法務大臣に任命された公証人が作成し、その合意書の内容を証明する公文書のことです。
そのため、示談後に慰謝料の支払いが約束に反した場合は、公正証書(強制執行認諾文言付公正証書)にすることで、裁判手続きを取ることなく相手の給料や財産を差し押さえることができます。
4-2:公正証書のメリット
公正証書のメリットとしては、次の3つがあげられます。
- 証拠としての価値が高い
- 給料や預金を差し押さえるできる
- 内容に誤りがなく確実性が高い
それぞれ解説していきます。
4-2-1:証拠としての価値が高い
示談書は、不倫問題の当事者が作成する私文書としての契約書になりますが、公正証書は公文書となるため、そこに記載された内容は公に証明されます。
そのため、慰謝料や違約金などの支払い等に関してトラブルになったとしても、公正証書に記載されている支払金額や支払い期日等の内容が、決定的な証拠になります。
4-2-2:給料や預金を差し押さえるできる
公正証書は高い証明力を持つため、相手が慰謝料や違約金など金銭の支払いを怠った場合は、裁判手続きを取ることなく相手の給料や財産を差し押さえることができます。
もし、示談書のままで公正証書にしなかった場合は、改めて慰謝料を請求する裁判を行う必要があるため、その分時間と費用が掛かることになります。
4-2-3:内容に誤りがなく確実性が高い
公正証書は、法律の専門家である公証人が内容をチェックして作成する公文書なので、記載された内容には誤りがなく確実性が高いです。
示談書は、当事者同士で話し合いを行い作成することはできますが、文言が適切でなかったり、誤記・誤植によって合意内容と異なる記載になったり、体裁の不備によって無効となる場合もあります。
4-3:公正証書のデメリットは時間と費用
公正証書のデメリットとしては、時間と費用がかかることがあげられます。
公正証書を作成するためには、まず公正証書の案文を作成し、公証役場に公正証書の作成を予約します。
次に、公正証書の案文を公証人に送付し、公証人による案文の形式等のチェックを受けて作成が行われるため、おおよそ1~2週間ほど時間がかかります。
その後、公正証書作成の日に示談書を交わす当事者が公証役場に行き、公正証書の内容を確認の上、当事者それぞれと公証人が公正証書に署名・押印します。
公正証書作成の費用としては、次の図のようになります。
公正証書の費用は、原則としてその目的価額によって定められており、目的価額が高額になるほど、手数料も高額になります。
目的価額とは、合意した慰謝料によって得られる請求側の利益、相手からみれば支払わなければならない金銭的負担のことをいいます。
5章:示談書を自分で作成した際のよくある失敗例
示談書を自分で作成した際のよくある失敗例として、次の4つがあげられます。
- 失敗例①示談書が裁判所に認められなかった
- 失敗例②示談後に不倫相手からお金を要求された
- 失敗例③分割払いを認めたために支払いが滞った
- 失敗例④相手の違反行為に違約金を請求できなかった
それぞれ解説していきます。
5-1:失敗例①示談書が裁判所に認められなかった
示談書の内容に不備があった場合は、示談の証拠とは認められず裁判所に無効と判断される場合があります。
例えば、示談の当事者の署名や押印がない場合や、法外な金額の慰謝料や違約金が記載されている場合などです。
不倫相手が示談内容を守らなかった場合や、訴訟に進んだ際に、示談書を有効な証拠とするためには、記載内容を確認し法的に効力のある示談書を作成することが重要です。
5-2:失敗例②示談後に不倫相手からお金を要求された
示談書に清算条項や求償権の放棄を条項に含まなかった場合は、示談書を交わして不倫問題が解決したはずなのに、不倫相手からお金を返せなどと要求される場合があります。
2章で解説したように、一度解決した不倫トラブルが再度蒸し返され、再び交渉を続けなくてはならなくなることを防ぐために、示談書に記載したこと以外についても、全て清算済みということを互いに確認する必要があります。
5-3:失敗例③分割払いを認めたために支払いが滞った
不倫相手に慰謝料を一括で支払う資力がないからと分割払いを認めたために、約束通り支払ってもらえなかったり、滞納や払わずに逃げられてしまう場合があります。
示談交渉では、相手の求めに応じて即座に分割払いを許すのではなく、本当に一括払いできないのかよく検討してみる必要があります。
例えば、不倫相手の両親や親族に立て替えてもらったり、慰謝料を多少減額して一括で払ってもらう方法もあります。
あらかじめ弁護士に、慰謝料の分割払いを認めるリスクや、不払いが発生した時の対処法など、アドバイスを受けることが重要です。
5-4:失敗例④相手の違反行為に違約金を請求できなかった
示談書に違約金条項を入れなかった場合は、相手が示談内容に違反しても、お金を請求することができません。
例えば、不倫相手が接触禁止の条項に違反して配偶者と会っていた場合は、再度示談書の不履行によって被った精神的苦痛などの損害賠償を、不倫相手に請求することになります。
あらかじめ、違約金の条項を定めることによって、接触禁止に違反した場合は取り決めた違約金を請求することができるため、接触禁止の効力をより高めることができます。
まとめ
ここまで、不倫の示談書の役割とメリットや、不倫の示談書のテンプレートと内容を、公正証書をおすすめする理由などついて解説してきました。
最後に今回の内容をまとめます。
■示談書の役割
- 合意した内容を明確にする
- 約束した内容を示談書で立証する
- 約束に反した場合の違約金を定める
- 示談後のトラブルを予防する
■不倫相手との話し合いで、慰謝料や各条件について合意が得られた場合は、示談書を作成し合意した内容の証拠を残しておくことが重要です。
特に、慰謝料や違約金など金銭の支払いを含む場合は、公正証書にすることをおすすめします。
■不倫の示談書のテンプレート
■不倫相手に対して慰謝料を請求した場合に、示談書を交わす流れ
- 示談書の内容の話し合い
- 示談書の案文と加筆・修正
- 合意後の署名・押印
■示談書を公正証書にするメリット
- 証拠としての価値が高い
- 給料や預金を差し押さえるできる
- 内容に誤りがなく確実性が高い
有利な示談書を作成するための、最も有効なポイントは、弁護士に交渉と作成を依頼することです。
この記事の内容を参考にして、これからの行動に役立ててください。