【弁護士が解説】痴漢の罪と刑罰、逮捕後の流れと示談成立のメリット
この記事を読んで理解できること
- 痴漢で逮捕された場合の罪と刑罰
- 痴漢で現行犯逮捕された後の流れ
- 痴漢事件では被害者との示談成立が最も重要
- 弁護士に依頼するその他のメリット
あなたは、
「痴漢は何罪になるのか知りたい」
「家族が痴漢で逮捕されたらどうなる?」
「家族が痴漢で逮捕されたらどうすればいいの?」
などとお考えではありませんか?
結論から言うと、痴漢で逮捕された場合、迷惑防止条例違反、強制わいせつ罪などに問われ、起訴されると罰金刑や懲役刑が科される可能性があります。
また逮捕後、検察官による勾留請求が裁判所に認められると、一般的に逮捕時から23日間、身柄を拘束されることになります。
当然、通常の生活を送ることはできないので、勾留期間が長引くほど、被疑者の社会生活に大きな悪影響を及ぼすものとなります。
そのため、痴漢で逮捕された場合は、できるだけ早く弁護士に依頼して、被害者との示談を成立させることが最も重要となります。
この記事では、1章で痴漢の罪と刑罰を、2章では、痴漢で現行犯逮捕された後の流れを、3章では、被害者との示談交渉について解説していきます。
さらに、痴漢事件を弁護士に依頼するメリットについても解説していきます。
個々の内容をしっかりと理解して、今後の行動に役立ててください。
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■痴漢で逮捕された場合の罪と刑罰
■痴漢の容疑で逮捕された後の流れ
■痴漢事件における示談成立のメリット
- 身柄を解放される可能性が高くなる
- 前科がつかない不起訴処分の可能性が高くなる
- 判決で減刑される可能性が高くなる
■痴漢事件を弁護士に依頼するメリット
- 示談成立には弁護士への依頼が必須である
- 弁護士であれば逮捕直後から面会できる
- 自分や家族にとって不利な供述を防げる
- 精神的負担や事務的な負担を軽減できる
1章:痴漢で逮捕された場合の罪と刑罰
痴漢で逮捕された場合に適用される罪と刑罰は、次の2つです。
- 迷惑防止条例違反:6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金
- 強制わいせつ罪:6ヶ月以上10年以下の懲役
さらに、痴漢行為によっては、その他の犯罪に問われる可能性もあります。
それぞれ解説していきます。
1-1:迷惑防止条例違反(6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金)
迷惑防止条例は、各都道府県が定めたもので、それぞれ内容や罰則に若干の違いがあります。
迷惑防止条例に違反する痴漢行為としては、一般的には直接または衣類の上から他人の身体に触れた場合となります。
罰則としては、例えば東京都の場合では、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。
初犯で痴漢行為が悪質でなく反省が見られる場合は、迷惑防止条例違反として罰金刑が科せられるケースが多いです。
1-2:強制わいせつ罪(6ヶ月以上10年以下の懲役)
強制わいせつ罪は、刑法によって定められており、一般的には着衣の中に手を入れたり、長時間触り続けるなど、痴漢行為が悪質な場合となります。
被害者が13歳未満だった場合は、比較的軽度な痴漢行為であっても、強制わいせつ罪が適用されます。
罰則としては、罰金刑はなく6ヶ月以上10年以下の懲役という重いものになっています。
強制わいせつ罪は、初犯であっても起訴される可能性があり、罰金刑がないので、有罪になれば執行猶予付き判決か実刑になってしまいます。
1-3:痴漢行為で問われるその他の犯罪
痴漢行為を行った際に、問われる可能性があるその他の犯罪をあげます。
- 公然わいせつ罪:6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料
不特定多数の人から認識される可能性がある場所で、性器を露出したり自慰行為を行った場合に適用されます。 - 暴行罪:2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料
- 器物損壊罪:3年以下の懲役又は30円以下の罰金若しくは科料
過去の判例では、射精して被害者の衣服に精液を付着させた行為に対して、それぞれ適用されています。 - 強制性交等罪:5年以上の有期懲役
暴行・脅迫を用い、性交、肛門性交、口腔性交を行った場合に適用されます。13歳未満の者に対しては、暴行・脅迫を用いない場合でも適用されます。
2章:痴漢で現行犯逮捕された後の流れ
痴漢で現行犯逮捕された後の流れは、上図のようになります。
- 警察で取り調べ(逮捕後、48時間以内)
- 検察で取り調べ(逮捕後、72時間以内)
- 勾留期間中(10日間、勾留延長10日間)
- 検察による起訴・不起訴の判断(逮捕後最長23日間)
- 刑事裁判(起訴後、約1~2ヶ月)
流れに沿って、それぞれ解説していきます。
2-1:警察で取り調べ(逮捕後、48時間以内)
痴漢で現行犯逮捕された場合は、被疑者として身柄を拘束され、警察の取り調べを受けます。
担当刑事の取り調べでは、犯行に至るまでの状況、内容等の聞き取りが行われ「供述調書」が作成されます。
さらに、写真撮影や指紋採取、DNA鑑定に必要な資料の確保等の必要な捜査が行われます。
その後、逮捕から48時間以内に、事件の被疑者・書類・証拠物を検察官に送致します。
被疑者が初犯で、身元がしっかりしていて逃亡の恐れがなく、深く反省していて前科・前歴もない場合などは、身柄が解放される場合もあります。
その場合は、「供述調書」などの捜査書類だけが、検察官に送致(報道では「書類送検」)されて、在宅事件として捜査が続けられます。
2-2:検察で取り調べ(逮捕後、72時間以内)
送致された後は、検察官による被疑者に対する聞き取りが行われ、送致から24時間以内に検察官は、被疑者の勾留を請求するか判断します。
これによって、被疑者は、逮捕後72時間以内に勾留請求の判断が下されることになります。
検察官の勾留請求を受けて、裁判所に勾留が認められた場合は、10日間の勾留が決定し、更に捜査が必要であれば、最大10日間延長されることになります。
このとき、被疑者に前科前歴が無く、自らの痴漢行為を全面的に認め、身元が明確な場合は、検察官は勾留請求をしないこともあります。
または、勾留請求がされても、裁判所が勾留請求を客観的に判断することで却下され、釈放される場合もあります。
しかし、被疑者に前科前歴がある場合や、痴漢行為を否認する場合などは、さらなる捜査が必要として勾留請求され、また裁判所も勾留請求を認める可能性は高くなります。
痴漢で逮捕された場合の社会生活におけるリスクを最小限にするためには、逮捕直後から勾留請求されるまでの72時間の間に、できるだけ早く釈放を求めることが重要です。
2-3:勾留期間中(10日間、勾留延長10日間)
勾留が決定すると、その日から原則として10日間、被疑者は警察署の留置場で身柄を拘束されることになります。
さらに、DNA鑑定などで時間がかかり捜査が終わらない場合や、被疑者が痴漢行為を否認し続けていたり、他に余罪があり捜査が必要な場合は、検察官は勾留延長を請求することができます。
裁判所がこの請求を認めた場合は、勾留はさらに10日間延長されることになります。
通常、被疑者が、痴漢行為を否認している場合は、勾留延長が認められるケースがほとんどです。
2-4:検察による起訴・不起訴の判断(逮捕後最長23日間)
一般的に、検察官は、逮捕後23日が経過するまでに、起訴・不起訴を判断します。
検察官によって起訴された場合は、刑事事件として裁判手続きが行われ、被疑者は被告人となります。
検察官に罰金刑が相当と判断され、被疑者が手続きに同意した場合は、略式起訴として刑事手続きは終わり、被疑者は釈放されます。
略式起訴は、100万円以下の罰金・科料に相当する事件で行われ、被疑者には有罪判決が下されたことになるので前科がつきます。
痴漢事件では、罰金刑を規定されている迷惑防止条例違反の場合に、略式起訴される可能性があります。
検察官によって不起訴処分となった場合は、刑事裁判にはならず、そのまま身柄を解放され、再度逮捕される可能性は非常に低くなります。
この起訴が決定される最長23日間までに、検察官に対して、証拠が不十分で被疑者に対する嫌疑が認められないことや、示談書や意見書を提出して、不起訴処分を求めることが大変重要です。
2-5:刑事裁判(起訴後、約1~2ヶ月)
刑事裁判の場合は、検察官の起訴から約1~2ヶ月後に、第1回公判が開かれます。
公判では、被告人は必ず出廷し、検察、弁護人それぞれの証拠等をもとに、裁判官が判決を下すことになります。
痴漢事件では、被疑者が犯行を認め事実関係に争いがなければ、最初の1回で審理が終了し、公判から約1ヶ月以内に判決が言い渡されることが多いです。
最終的に有罪の判決を受けた場合は、前科がつくことになります。
【コラム】痴漢事件での後日逮捕(通常逮捕)
痴漢事件では、痴漢の疑いをかけられ現行犯逮捕されなかった場合でも、その後の捜査によって後日、犯人として特定される場合もあります。
捜査によって犯人が特定されるケースとしては、
- 防犯カメラの映像で犯人として特定された
- DNA鑑定によって犯人として特定された
場合などがあげられます。
犯人として特定された場合は、逮捕されず任意同行を求められ、その後の取り調べの後、身柄を解放され在宅事件として処理されたり、逮捕状による通常逮捕(後日逮捕)されることになります。
この場合も当然、起訴される可能性もあるので、示談を成立させるなど不起訴処分を目指した弁護活動が重要となります。
3章:痴漢事件では被害者との示談成立が最も重要
痴漢事件では、被害者との示談を成立させることが、最も重要となります。
この章では、
- 示談交渉を弁護士に依頼する必要性
- 示談を成立させるメリット
- 示談交渉の流れ
について、それぞれ解説していきます。
3-1:示談交渉を弁護士に依頼するメリット
痴漢事件において、被害者との示談を成立させるためには、弁護士に依頼することが必須と言えます。
なぜなら、痴漢の被害者は、加害者やその家族との接触を避けるため、弁護士でなければ、被害者の連絡先を教えてもらうことが非常に難しいからです。
弁護士を通すことで、被害者の心証も変わり、ようやく連絡先を教えてもらうことが許されて、示談交渉が始められるケースが多いです。
弁護士が代理人として、被害者との示談交渉を進めることによって、被害者の心情を考慮したうえで、適切な内容、示談金による示談が成立する可能性が高まります。
3-2:示談を成立させるメリット
痴漢事件において、被害者との示談を成立させるメリットは、次の3つです。
- 身柄を解放される可能性が高くなる
- 前科がつかない不起訴処分の可能性が高くなる
- 判決で減刑される可能性が高くなる
なぜなら、被害者との示談が成立しているということは、
「被害者とのトラブルは解決している」
「被害者の許しを得ている」
「被疑者は十分反省している」
と、警察や検察官、裁判官に判断されるからです。
そのため、示談が成立することによって、早期に身柄を解放される可能性や、初犯であれば不起訴処分になる可能性も高くなります。
不起訴処分とは、検察官が被疑者を刑事裁判にかけない、つまり罪に問わない決定をすることです。
また、起訴された後でも、示談が成立し被害者の許しが得られたと判断されれば、量刑が軽くなり罰金刑になる可能性や、執行猶予がつき実刑を免れる可能性も高くなります。
執行猶予とは、有罪の判決を下されたが、その刑の執行を猶予する期間を与えるということなので、被告人はすぐに社会復帰することができます。
そのため、痴漢事件においては、なるべく早い段階で、被害者との示談を成立させることが最も重要です。
3-3:示談交渉の流れ
弁護士による示談交渉の流れは、次のようになります。
1.検察官を通じて被害者と連絡を取る
2.被害者に被疑者の謝罪文を提出する
3.被害者と示談金額、示談条件を交渉する
4.示談書を作成する
5.示談内容を履行する
6.示談書を検察官や裁判所に提出する
弁護士に依頼することによって、示談交渉を進められるだけでなく、適正かつ妥当な示談条件・示談金額で示談を成立させことが望めます。
痴漢事件の示談金は、示談交渉の際に当事者間の話し合いによって決められますが、痴漢事件の被害の程度や内容によって、その金額は大きく変わってきます。
痴漢事件で適用される、「迷惑行為防止条例違反」と「強制わいせつ罪」それぞれの示談金相場としては、次のようになります。
- 迷惑行為防止条例違反:10~50万円程度
- 強制わいせつ罪:30~150万円程度
罰則の重い「強制わいせつ罪」の方が、痴漢行為も悪質になるため、示談金も高額になる傾向があります。
このように、痴漢事件での被害者との示談交渉は、連絡や交渉、示談金額の判断においても、弁護士でなければ成立しえないものと言えます。
4章:弁護士に依頼するその他のメリット
痴漢で逮捕された場合に、弁護士に依頼するその他のメリットとして、次の3つがあげられます。
- 弁護士であれば逮捕直後から面会できる
- 自分や家族にとって不利な供述を防げる
- 精神的負担や事務的な負担を軽減できる
それぞれ解説していきます。
4-1:弁護士であれば逮捕直後から面会できる
痴漢で逮捕され身柄を拘束された場合は、家族であっても勾留が決定されるまでの約3日間は、被疑者と面会することはできません。
依頼された弁護士(弁護人)だけが、唯一逮捕直後から被疑者との接見(面会)を認められます。
弁護人による接見は、原則として自由に面会することができるので、必要なものや書類などを差し入れすることもできます。
さらに、接見の際に立会人が付くこともなければ時間制限もないので、被疑者に今後の流れや状況を説明し、適切なアドバイスをすることが可能になります。
家族による面会でさえ逮捕後、約3日後となるため、弁護士による接見は、被疑者にとっては大きな支えとなります。
4-2:自分や家族にとって不利な供述を防げる
弁護士は、逮捕直後から被疑者に接見することができるので、逮捕後の捜査・取り調べの流れなどの説明や、取り調べでの誤った自白や不利益な供述などを避けるための具体的なアドバイスをすることができます。
特に、痴漢冤罪で逮捕された被疑者にとっては、痴漢行為の自白やあたかも痴漢行為を行ったかのような供述は、有罪と判断される有力な証拠とされてしまいます。
弁護士による、早い段階からの接見によって、そのような不利益な供述をするリスクを、最小限にすることができます。
また、自白調書や不利な供述調書が作成されるのを防ぐためには、黙秘権を行使する必要がありますが、本人一人で最後まで続けることは容易ではありません。
極度のプレッシャーをかけられる取り調べの現場で、最後まで黙秘を貫くためには、信頼する弁護士の継続的な励ましがとても重要となります。
4-3:精神的負担や事務的な負担を軽減できる
痴漢の疑いで逮捕された場合、被疑者本人はもとより家族も、どうしてよいのかわからず混乱されることが多いようです。
弁護士に依頼することで、経験に基づいた今後の見通しや適切なアドバイス受けられるので、被疑者や家族の精神的な負担を軽減することができます。
さらに、迅速な行動によって、すぐに弁護活動にとりかかることで、早期の身柄の解放を目指すことができます。
また、弁護士に依頼することによって、警察、検察さらには裁判所に対する手続きや、意見書の作成など様々な事務的負担を軽減することができます。
弁護士に依頼することで、逮捕後の被疑者・家族の不安や精神的負担を最小限にすることができます。
まとめ
ここまで、痴漢で逮捕された場合の罪と刑罰、逮捕後の流れ、被害者との示談交渉を弁護士に依頼するメリットなどについて解説してきました。
最後に、今回の内容をまとめます。
■痴漢で逮捕された場合の罪と刑罰
■痴漢の容疑で逮捕された後の流れ
■痴漢事件における示談成立のメリット
- 身柄を解放される可能性が高くなる
- 前科がつかない不起訴処分の可能性が高くなる
- 判決で減刑される可能性が高くなる
■痴漢事件を弁護士に依頼するメリット
- 示談成立には弁護士への依頼が必須である
- 弁護士であれば逮捕直後から面会できる
- 自分や家族にとって不利な供述を防げる
- 精神的負担や事務的な負担を軽減できる
この記事の内容を参考にして、これからの行動に役立ててください。