【弁護士が解説】万引き逮捕後の流れと早期解決の為にやるべきこと

著者情報

住川 佳祐
(QUEST法律事務所 代表弁護士)

東京弁護士会所属。東京大学法学部卒。『NHK あさイチ』のTV出演の他、『プレジデント』『ダイヤモンド・セレクト』などメディア掲載多数。QUEST法律事務所のHPはこちら。

【弁護士が解説】万引き逮捕後の流れと早期解決の為にやるべきこと

あなたは、

「つい、万引きをしてしまった。逮捕されるかな?」

万引きで逮捕されたらどうなるの?

家族が万引きで逮捕されたらどうすればいいの?

などの、不安や悩みをお持ちではないですか?

結論から言うと、万引きで逮捕された場合は、「窃盗罪(刑法235)」にあたり、さらに窃盗罪を常習的に繰り返すと常習累犯窃盗罪となり、罰金刑、執行猶予付き判決、または実刑になる可能性があります。

万引きで逮捕された時に大事なのは、できるだけ早く被害者との示談交渉を成立させて、早期釈放や、前科のつかない不起訴処分を得ることです。

なぜなら、逮捕されると次のようなリスクがあるからです。

  • 会社や学校に行けないので、逮捕されたことを知られる可能性がある
  • 示談交渉が遅れると前科が付く可能性が高くなる

そこでこの記事では、万引きによる逮捕について詳しく解説していきます。

まずは、万引きで逮捕された場合の、「現行犯逮捕」と「後日逮捕」の違いを1章で、2章では逮捕されたときの処分や刑罰について、3章では逮捕後の流れについて、4章では未成年者が逮捕された場合について、さらに5章では有罪が確定して前科がついてしまった場合の、本人や家族のデメリットなどについて解説します。

万引きで逮捕された後の対処法をすぐに知りたい方には、6章で早期釈放、早期解決を得るためにやるべきことを、7章で弁護士に依頼するメリットなどを解説しています。

個々の内容をしっかりと理解して、今後の行動に役立ててください。

記事の目次


目次

1章:万引きによる逮捕には「現行犯逮捕」「後日逮捕」の2種類がある

現行犯・後日逮捕

万引きとは、スーパーやコンビニ、書店など店頭で商品を隠し持ち、精算を済まさずに店外に持ち出し盗むなどの犯罪行為を指します。

万引きで逮捕されるケースとしては、

  • 現行犯逮捕:店員や警備員による逮捕(私人逮捕)
  • 後日逮捕:防犯カメラなどの映像による犯罪捜査での逮捕など

以上、2種類があります。

万引きの疑いをかけられて逮捕されると、捜査・取り調べを受けて起訴されるまで、法律では被疑者として扱われます。

※ニュースや新聞などメディアでは、被疑者でなく容疑者と呼ばれていますが、これは「被疑者」が「被害者」と紛らわしいので使われているようです。

1-1:現行犯逮捕とは

万引きで逮捕された場合に最も多いのが、犯行直後に現場で逮捕される現行犯逮捕です。

犯行を目撃した店員や警備員、または他のお客さんによって、犯行後店外に出たところを取り押さえられるケースで、その時点または警備室に連れていかれた時点で逮捕が成立します。

現行犯逮捕後は、警察を呼ばれて引き渡され、身柄を拘束されることになります。

お店の店員や警備員による現行犯逮捕は、私人逮捕として犯行直後で緊急を要する場合に認められていますが、見間違いによる誤認逮捕や、行き過ぎた対応などのトラブルになる場合もあります。

1-2:後日逮捕とは

後日逮捕とは、犯行直後の現行犯逮捕ではなく、防犯カメラなどの映像をもとにした捜査によって逮捕される場合です。

万引きの犯行後、被害店舗で商品の在庫確認や防犯カメラの映像によって、犯行が確認される場合があります。

そして、被害者から警察に被害届が出され、被疑者を特定できる画像や犯行を認められる相当な理由がある場合は、捜査が開始されます。

その後、数日から数週間の捜査の結果、被疑者が特定されると、警察に「逮捕状」を示されて後日逮捕(通常逮捕)されることになります。

万引きの場合は、現行犯逮捕が一般的ですが、最近では被害金額が大きい場合や常習性複数店舗で確認された場合などは、防犯(監視)カメラ映像を活用して後日逮捕されるケースも多くなっているようです。

 

コラム:もしあなたが誤認逮捕された場合の注意点

自分が万引きをしていないにも関わらず逮捕されることを誤認逮捕といいます。

万引きを疑われ、何らかの証拠によって、無実にもかかわらず現行犯逮捕や事情聴取後逮捕された場合です。

万引きを疑われても、

「自分は、明らかに万引きはしていないから大丈夫だ」

「すぐに無実が認められて釈放されるだろう」

と思われるでしょう。

しかし、犯罪の嫌疑をかけられ、警察の取り調べというプレッシャーの中で、しかも自分一人で自身の無実を証明することは、大変難しいことが多いです。

さらに、一度でも適切な対応を誤ったり、間違った供述をしてしまうと、無実を証明することは非常に困難になります。

確実に自身の無実を証明し、早期解決を目指すためには、早めに弁護士にご相談されることをお勧めします。


2章:万引きで逮捕されたときの処分と刑罰

処分と刑罰

処分と刑罰の流れ

万引きで逮捕されたときの処分と刑罰は、上の図のようになります。

この章では、万引きで逮捕された場合に適用される可能性の高い2つの処分「微罪処分」「不起訴処分」と2つの刑罰「罰金刑」「懲役刑」について説明します。

2-1:罪に問われない場合もある

万引きの現行犯逮捕の場合に、警察や検察による事情聴取の後、「微罪処分」「不起訴処分」として罪に問われずに釈放される場合があります。

2-1-1:警察での微罪処分

微罪処分とは、万引きで逮捕されて警察へ連行された場合に、警官による厳重注意などで刑事手続きを終了し、釈放されるケースです。

微罪処分になる可能性が高い場合として、

  • 初犯である
  • 反省が見られ、素行不良ではない
  • 偶発的で再犯の恐れがない
  • 身元引受人があり、逃亡の恐れがない
  • 被害金額が少なく、被害弁償等されている
  • 被害者が許し、寛大な処分を望んでいる

などの条件を満たすケースがあげられます。

微罪処分の場合は、刑罰が科されることはありませから、被疑者に前科はつきません。

しかし、警察から「微罪処分事件報告書」として検察官に報告され、前歴は残されます。 

2-1-2:検察による不起訴処分

不起訴処分とは、検察官が被疑者を刑事裁判にかけない、つまり罪に問わない決定をすることです。

不起訴処分になる可能性が高い場合として、

  • 初犯である
  • 余罪がない
  • 反省が見られ、素行不良ではない
  • 偶発的で再犯の恐れがない
  • 身元引受人があり、逃亡の恐れがない
  • 被害金額が少なく、被害弁償等されている
  • 被害者が許し、寛大な処分を望んでいる

などの条件を満たすケースがあげられます。

不起訴処分になると、罰金刑も懲役刑も適用されず、被疑者には前科はつきませんが、微罪処分と同じく前歴は残されます。

弁護士

ここで、簡単に前歴前科の違いを説明します。

前歴は、被疑者として逮捕されたが、微罪処分や不起訴になったという記録です。 

前科は、逮捕後に起訴され、有罪判決を受けた事実・経歴ですから、たとえそれが軽い犯罪で罰金刑になった場合でも、本人、家族には大きなデメリットとなります。

前科や前歴は、警察庁、検察庁、市区町村で記録として保管されていますが、当然公開はされていませんし、たとえ本人でも確認することはできません。

2-2:罰金刑と相場(2030万円程度が多い)

罰金刑とは、犯罪に対する刑罰として強制的に金銭を取り立てることで、万引きの場合は窃盗罪として50万円以下の罰金となっています。

万引きで逮捕された場合は、被害額や万引きなどの前科の有無によって量刑も異なりますが、初犯であれば罰金刑になる可能性が十分考えられます。

また、検察官が、罰金刑が相当と考えている場合には、通常裁判という形ではなく、被疑者の同意のもとに略式裁判という簡略化された手続によって、有罪の認定と罰金刑が決定される場合が多いです。

罰金額としては、こちらも被害額や万引きなどの前科の有無によって決定されますが、おおむね2030万円程度の場合が多いようです。

罰金刑を科された場合は、当然、前科がつくことになります。

※通常裁判、略式裁判については、次の3章で解説します。

2-3:通常裁判による懲役刑

懲役刑とは、刑事施設に拘置して所定の作業(刑務作業)を行わせる刑罰です。

万引きで逮捕された場合に、懲役刑となる可能性が高いのは次のようなケースです。

  • 被害額が高額である
  • 万引きなどの前科がある
  • 余罪がある
  • 犯行の状況が悪質である

実際は、懲役刑となった場合でも、執行猶予がつくケースが多いようです。

ただし、個々の状況によって違いはありますが、

  • 被害金額が高額で弁済が行われていない
  • 反省が見られず再犯の恐れがある

などの場合は、執行猶予のつかない実刑判決が出される可能性もあります。

懲役刑を科された場合も、当然、前科がつくことになります。

ここで、執行猶予について簡単に解説します。

執行猶予とは、有罪の判決を下されたが、その刑の執行を猶予する期間を与えるという意味です。

例えば、「懲役3年・執行猶予5年」の場合は、執行猶予期間中の5年間は、刑務所に入れられることはなく、通常の生活を送ることができます。

その執行猶予の5年間に罪を犯さなければ、懲役3年の刑は消滅しますが、期間中に罪を犯すと執行猶予は取り消され、懲役3年の刑と犯した罪の懲役刑と合わせた期間、刑務所に入れられることになります。

裁判によって懲役刑が下されるか、執行猶予つきの判決が下されるかでは、被告人の今後の人生にとっては大きな違いがあります。

弁護士による執行猶予を求める弁護活動は、被告人にとってはとても重要なものとなります。

コラム:精神疾患者クレプトマニア(窃盗症)の場合

万引きを繰り返す人の中には「万引きをやめたくてもやめられない」と常習化し、何度も逮捕されてしまう人がいます。

その中には、商品を買うお金がないからなどという理由ではなく、精神疾患による場合があり、大きく分けると、次の3つがあげられます。

  • 高齢者の認知症
  • 摂食障害などの周辺症状
  • 万引きそのものへの依存

高齢者の認知症の場合は、倫理観の低下や認識能力の欠如によって、あまり罪悪感もなく万引きを繰り返してしまうなどのケースです。

摂食障害の場合は、常に頭から食べ物のことが離れずに、気付いたら食べたい衝動にかられて万引きをしていたなどのケースです。

万引きそのものへの依存症の場合は、クレプトマニア(窃盗症)と呼ばれる精神疾患があげられます。

それぞれ、すでに窃盗を繰り返しているためさらに重い刑罰となりますが、犯行時の責任能力や本人の治療意欲など諸事情から減刑される場合もあります。

このように、お金を持っているにもかかわらず、衝動的に万引きを繰り返し、罪を重ねている場合などは、精神科などで診断・カウンセリング等を受ける必要があるかもしれません。

弁護士
万引きで逮捕された後の流れはこの後の3章で、前科がついた場合のデメリットについては第5章で詳しく解説します。

3章:万引きで逮捕された後の流れ

逮捕後の流れ

判決までの流れ

万引きで逮捕された場合に、逮捕から判決が決まるまでの流れは、上の図のようになります。

万引きで逮捕された後の流れは、2章で説明したとおり、微罪処分、不起訴処分として釈放される場合もありますが、他の犯罪と同様に、検察官への送致、捜査段階での勾留(身柄の拘束)起訴、そして刑事裁判による判決という流れになります。

この章では、逮捕後の流れにそって1つずつ解説します。

3-1:逮捕から送致

万引きで警察に逮捕されると、警察に連行後に取り調べが行われます。

さらに、警察では逮捕後48時間以内に、被疑者本人や、事件の証拠・資料などを検察官に引き継ぐ手続き「送致」をします。

つまり、万引き事件の被疑者として、起訴の決定をする検察官のもとに送られるかは、この48時間で決められるので、この間に示談を成立できれば微罪処分を得られる可能性があります。

3-2:送致から勾留

勾留とは、被疑者の身柄を留置所など刑事施設に拘束することです。

送致後、検察官の判断で引き続き身柄拘束が必要な場合には、24時間以内に裁判所に対して勾留請求されます。

この24時間の間に、弁護士を通して検察官、裁判官に対して勾留しないように働きかけて、早期釈放を得ることも可能です。

被害者との示談が成立している場合は、さらに勾留されない可能性が高くなります。

3-2-1:勾留されると身柄事件として捜査される

裁判所が勾留を認めると、被疑者の身柄は引き続き警察の留置場で拘束され、身柄事件として捜査が続けられます。

身柄事件になった場合は、原則として10日間の勾留期間が認められており、その間に捜査が終わらない場合は、さらに10日間の勾留延長が請求されます。

勾留決定されると、警察に逮捕された後、最長23日間も身柄を拘束されてしまいます。

このように、被疑者の身柄が長期間拘束されると、仕事など日常生活に支障が出るため、一日も早く身柄の解放を求めることが重要です。

弁護士

すでに、勾留決定されたあとであっても、弁護士に依頼することで準抗告という不服申し立てをすることができます。

この準抗告が認められれば、勾留決定は取り消され、直ちに釈放されます。

3-2-2:釈放されると在宅事件として捜査される

検察官が勾留請求をしなかった場合や裁判所が勾留を決定しなかった場合は、被疑者の身柄は釈放されます。

被疑者は普段通りの生活ができ、会社や学校にも行くことができますが、釈放されても無罪というわけではなく、被疑者在宅のまま在宅事件として捜査は進められます。

在宅事件とされる可能性が高い場合として、

  • 被害金額が少なく反省している
  • 逃亡証拠隠滅のおそれがない
  • 身元(住所/氏名/勤務先など)がはっきりしている
  • 身元引受人同居家族がいる

などの条件を満たすケースがあげられます。

被害者との示談が成立している場合は、勾留されない可能性が高くなります。

3-3:起訴、不起訴の判断

身柄事件の場合は、最長23日間の勾留期間が切れると検察官によって、起訴または不起訴の判断が下されます。

在宅事件の場合は、すでに釈放されていて勾留期限などの拘束がなく、捜査状況の進展に合わせて手続きが進められるため、起訴または不起訴の判断は事件発生から数ヶ月後となる場合もあります。

在宅事件の場合の手続きまでの流れは、次のようになります。

  1. 被疑者の検察への呼び出し
  2. 取り調べ
  3. 供述調書の作成
  4. 起訴または不起訴の判断

起訴が決まると、略式起訴による罰金刑または、通常裁判による懲役刑の処分が判断されます。

不起訴になると刑事裁判にはならず、そのまま身柄を解放されます。

その場合は、無罪放免に近く再度逮捕される可能性は非常に低くなります。

3-4:略式裁判(略式起訴)

略式起訴とは、懲役刑を求めるほどの事件内容ではなく、さらに被疑者が罪を認めている場合に、検察官の判断によって裁判所に対して罰金刑を請求することです。

万引きなどの窃盗罪では、略式起訴として50万円以下の罰金刑が請求され、略式裁判によって被疑者の同意のもとに、有罪の認定と罰金刑が決定されます。

身柄事件の場合は、家族または弁護士によって罰金を納付すると被疑者は釈放されます。

在宅事件の場合は、裁判所に出頭する必要はありませんが、罰金の納付書に指定された方法で罰金を支払います。

罰金金額としては、被害額や万引きなどの前科の有無によって違いもありますが、おおむね2030万円程度の場合が多いようです。

簡略化された略式裁判の場合でも、有罪の判決を受けたことに変わりはないので、前科がつくことになります。

3-5:通常裁判(刑事裁判)

万引きでも、懲役刑が妥当と判断された場合や、被疑者が犯行を認めていない場合は、通常裁判として公判が開かれます。

裁判によって懲役刑となる可能性が高いのは、次のようなケースです。

  • 被害額が高額である
  • 万引きなどの前科がある
  • 余罪がある
  • 犯行の状況が悪質である

さらには、執行猶予のつかない実刑判決が出される可能性もあります。

通常裁判の場合は、被疑者は必ず出廷し、検察、弁護人それぞれの証拠等をもとに、裁判官が判決を下すことになり、最終的に有罪の判決を受けた場合は前科がつくことになります。


4章:未成年者(20歳未満)が逮捕された場合

未成年者の逮捕

万引きは、犯罪行為としては簡単に行えるため、未成年者(20歳未満)による犯行も多くなっています。

この章では、14歳以上の未成年が逮捕された場合と14歳未満の場合について説明します。

4-114歳以上の未成年者が逮捕された場合

未成年者の場合の流れ

14歳以上の未成年者が逮捕された場合は、少年事件として、成人と同じように警察から検察官に被疑者として送致され勾留されます。

警察・検察による捜査が終了すると、たとえ被害者と示談が成立していたとしても、原則としてすべての少年事件は家庭裁判所へ全件送致されます。

家庭裁判所に送致されると、少年鑑別所で身柄を拘束する観護処置を必要とするか審判が行われ、決定すると原則として最大4週間少年鑑別所に収容されることになります。

家庭裁判所では、調査官による事件や被疑者の家庭環境等の調査が行われ、裁判官に調査票として報告されます。

調査の結果、少年審判の必要がないと判断されると「審判不開始」となり身柄を釈放されますが、それ以外の場合は、少年審判が行われ裁判官によって被疑者の更生を目指した処分が下されます。

処分としては、次の4つとなります。

  1. 不処分:将来再び非行を行う危険性がないと判断される
  2. 保護観察:保護観察官や保護司の指導・監督を受ける
  3. 児童自立支援施設又は児童養護施設への送致:原則として自由で開放的な環境の中で生活指導・訓練を受ける
  4. 少年院送致:少年院に収容して矯正教育を受ける

4-214歳未満の未成年者が逮捕された場合

14歳未満の未成年者が逮捕された場合は、「触法少年」と呼ばれ、刑事事件を問われることはなく、逮捕されることはありません。

しかし、現実的には事件についての調査として、14歳以上の少年と同じように警察での事情聴取や身柄の拘束を受けることになります。

警察の調査によって保護措置が必要と判断されると、児童相談所に送致され本人、並びに保護者に指導や注意、さらには一時保護という形で身柄を拘束されることになります。

児童相談所長によって家庭裁判所の審判を受けることが適当であると認められた場合には、家庭裁判所に送致され、一般的な少年事件と同じ流れになります。


5章:万引きで前科がついた場合のデメリット

前科のデメリット

万引きによる逮捕で、前科がつくと被疑者本人だけでなく、その家族にも様々なデメリットが生じます。

この章では,「本人への影響」と「家族への影響」について解説します。

5-1:本人への影響、デメリット

前科がつくことによって、本人が受ける影響、デメリットとして次の4つがあげられます。

  • 学校や会社で処分・解雇される
  • 資格取り消し資格制限を受ける
  • 就職活動でマイナスになる 
  • 社会的信用を失う

それぞれ解説していきます。

5-1-1:学校や会社で処分・解雇される

万引きによる前科がついたことを、学校や会社に知られた場合、重い処分としては退学解雇される可能性があります。

学生の退学処分については、学生の年齢などの個別の条件や学校側の裁量などによって分かれますが、会社員の場合は、会社の職務規定就業規則などによって解雇される可能性は十分にあります。

こうしたデメリットを回避するには、逮捕後一刻も早く釈放してもらい普段の生活を続けることが必要になります。

捜査の段階で、事件自体が学校や会社に関係がなければ、警察の方から学校や会社に連絡がいくことは通常ないので、知られないためにはまず早期釈放を目指すことが重要です。

5-1-2:資格取り消し・資格制限を受ける

国家資格など公的な資格の多くは、前科がつくと資格停止免許の取り消し、新たな免許や登録を受けられない理由(欠格事由)となります。

国家・地方公務員・教員はもちろん、弁護士や税理士などの士業系、医師や薬剤師、看護師等の医療系など様々な資格において取消となります。  

5-1-3:就職活動でマイナスになる

就職の際、過去に前科があることが企業側に知られた場合は、就職はどうしても不利になります。

企業に就職する際に必要な履歴書に、賞罰欄があれば前科を記入する必要があります。

また、面接などで前科の有無を聞かれた時は、正直に答える必要があります。

そこで、虚偽の申告をすれば、経歴詐称となり、採用されてもその事実が発覚した場合は、懲戒免職や解雇となってしまう可能性があります。

5-1-4:社会的信用を失う

先に上げた学校や会社だけでなく、前科があることが周囲に知られてしまうと、社会的信用を失ってしまうことになります。

家族や友人、婚約者など周りの人間関係にひずみが生じたり、隣人関係の悪化や仕事関係では取引関係者や融資先とのトラブルになったり、社会的信用を失いマイナスの影響が出る可能性が大いにあります。

5-2:家族への影響、デメリット

前科がつくことによって、家族が受ける影響、デメリットとして次の2つがあげられます。

  • 普通の生活を送ることが不自由になる可能性がある
  • 家族関係が悪化する可能性がある

それぞれ解説していきます。

5-2-1:普通の生活を送ることが不自由になる可能性がある

家族が万引きで逮捕され有罪となり前科がついた場合は、逮捕された本人さらには家族が、普段の社会生活を送ることが不自由になるような扱いを周囲から受けてしまうことがあります。

具体的には、近隣の人々から無視されたり疎まれたり、子供がいじわるやいじめを受けたり、さらにはSNSなどによって個人情報をさらされてしまうなど様々なトラブルがあげられます。

もちろん警察がこうした個人情報を流すことはありませんが、実際には人の噂によって知られてしまうことが多いようです。

さらに現代では、インターネットやSNSの普及によって、噂は拡散されやすくなり、さらに長期間にわたって誰もが知りえる状態になっています。

その為、家族に対しても本人と同様に社会的信用を失い、それまでの社会生活がしづらく不自由になる可能性が高くなります。

5-2-2:家族関係が悪化する可能性がある

普段の社会生活を送ることが不自由になるような扱いを、本人だけでなく家族まで受けるようになると、当然家族関係は今までのようにはいかず悪化する可能性が高くなります。

これは、本人の前科が消えることがないのと同じように、家族にも残ることとなり、その影響は計り知れない程大きなものとなります。


6章:早期釈放、早期解決を得るためにやるべきこと

早期釈放、早期解決のためにやるべきこと

万引きで逮捕された時には早期釈放・早期解決を目指すことがとても重要です。

なぜなら、5章で解説した前科がついた場合のデメリットだけでなく、運よく前科がつかなかった場合でも、身柄の拘束が長引き「逮捕されたこと」自体が周りに知られてしまうと、本人だけでなく家族に対する悪影響が大きいからです。

この章では、早期釈放・早期解決を実現するために重要な「弁護士への相談」と「被害者との示談」について解説します。

早期釈放とは、逮捕されてから検察官に送致されて勾留が決まるまでの72時間までに身柄の釈放を求めることで、早期解決とは、検察官が起訴の必要性を判断する1323日間までに、示談成立など解決を図る行動をすることです。

6-1:逮捕された場合は、できるだけ早く弁護士に相談することが重要

万引きで逮捕された場合は、できるだけ早く弁護士に相談されることをお勧めします。

被疑者は逮捕後に身柄は拘束されていても、一度だけ当番弁護士を呼ぶことはできますが、家族としても早めに弁護士を選んで、面会(接見)やその後の弁護活動を依頼することが重要です。

※当番弁護士とは、当番弁護士制度によって、逮捕後一度だけ無料で依頼することのできる弁護士のことです。 

なぜなら、逮捕直後から被疑者本人を守り、身柄を解放するための積極的な働きかけをするには、弁護士による適切なアドバイスや釈放を求めるための迅速な行動が必要だからです。

また、被疑者に前科・前歴がある場合や余罪がある場合は、さらに重い処分が下される可能性があるため、すぐに弁護士に依頼することが重要です。

ここで、弁護士に依頼することで得られる、早期釈放と不起訴処分について解説します。

6-1-1:逮捕後72時間以内に早期釈放を得る

弁護士を通して、警察で送致前の釈放を求めたり、検察官、裁判官に対して勾留しないように働きかけることで、早期釈放を得られる可能性が高まります。

ここまで解説してきたように、逮捕されると同時に警察の取り調べは始まり48時間以内に検察官に送致され、検察官の取り調べを受けて必要であれば24時間以内に裁判所に勾留が請求されます。

この、逮捕直後から勾留請求されるまでの72時間の間に、できるだけ早く早期釈放を求めることが重要です。

弁護士に依頼することによって、被害者との示談が成立している場合は、さらに勾留されない可能性が高くなります。

釈放され在宅事件となった場合は、捜査は続いていますが、被疑者は普段通りの生活ができ、会社や学校にも行くことができます。

これだけでも、万引きで逮捕された

マイナスを、少なからず抑えることができます。

6-1-2:逮捕後13日以内に不起訴処分を得る

万引きで逮捕された場合に、被疑者に前科をつけないためには、検察官が起訴の必要性を判断する逮捕後13~23日以内に、弁護士を通して示談書や意見書を提出して、検察官から不起訴処分を得なければいけません。

不起訴処分には、次の3つの理由があります。

  1. 嫌疑なし
  2. 嫌疑不十分
  3. 起訴猶予

それぞれ解説していきます。

1、嫌疑なし

これは、被疑者は罪を犯していないという理由です。

万引きの現行犯逮捕の場合は、明らかな誤認逮捕などがあげられます。

後日逮捕の場合は、真犯人が出てきたなどの可能性はあります。

2、嫌疑不十分

被疑者が犯罪を起こした疑いはあるものの、決定的な証拠がないという理由です。

万引きの現行犯逮捕の場合でも、逮捕時の状況によっては、証拠が不十分とされることがあります。

後日逮捕の場合は、証拠とする監視カメラの画像や、被害品の特定など、検察が有罪を確定させられないと判断した場合、嫌疑不十分として不起訴になる可能性はあります。

3、起訴猶予

起訴猶予は、不起訴の3つの理由のうち最も多く重要なものです。

被疑者の犯行であることは明らかですが、犯行に及んだ被疑者の状況や深く反省していて更生の可能性が高いこと、被害も少なく示談も成立しているなどの状況を考慮して決められます。

弁護士に依頼することによって、被害者との示談交渉は早急に進められ、示談交渉が成立する可能性が高くなります。

また示談交渉だけでなく、被疑者に有利な実情をまとめて検察官に意見書として提出するなど、不起訴処分を得るための適確な行動をとることができます。

被疑者に有利な実情としては、

  • 初犯である
  • 家族があり再犯の可能性が低い
  • 定職につき真面目に生活している

など、被疑者の生活状況を考慮したものがあげられます。

このように、弁護士に依頼することで、不起訴処分を得る可能性が確実に高まります。

弁護士

このあと解説する被害者との示談交渉も、次のような場合は一刻も早く弁護士に依頼すべきです。

  • 本人が逮捕され身柄が拘束されている
  • 在宅事件でいつ起訴されるかわからない
  • 被害者に面会できない
  • 示談交渉がもめている
  • 法外な示談金を請求されている

詳しく解説していきます。

6-2:できるだけ早く被害者との示談を成立させる

示談のメリット

早期釈放や早期解決を目指すための最優先事項として、すぐに被害品の返品や弁償を行い、できるだけ早く被害者との示談を成立させることが重要です。

被害者と直接交渉することが難しい場合は、弁護士に依頼することで、被害者の対応も変わり交渉がうまくいき示談が成立する可能性が高まります。

ここでは、示談について次の4つの項目を解説します。

  • 示談のメリット
  • 示談金の相場
  • 示談交渉の流れ
  • 示談書の内容

6-2-1:示談のメリット

万引き事件における示談のメリットは、この章の始めの図で示したように、

  • 罪に問われない微罪処分不起訴処分の可能性が高くなる
  • 身柄を釈放される可能性が高くなる
  • 判決で減刑される可能性が高くなる

などがあげられます。

なぜなら、示談が成立しているということは

被害者と和解し、許しを得ている

被疑者は十分反省している

と、警察や検察官、裁判官に判断されるからです。

2-1で説明したように、微罪処分や不起訴処分を得るための要点でもあり、身柄を釈放し在宅事件として扱われるための重要な事項となっています。

起訴された後でも、示談が成立し被害者の許しが得られたと判断されれば、量刑が軽くなり罰金刑になる可能性や、執行猶予がつき実刑を免れる可能性も高くなります。

6-2-2:示談金の相場

万引きの示談金とは、被害金額+慰謝料(迷惑料)となりますが、多くの場合は、被害金額と同額程度で済むようです。

ただし、示談金額は、当事者間で決められるため、被疑者の反省の度合いや再犯の可能性、また被害者の感情によって、被害金額を超えて高額な示談金額が求められる場合もあるようです。

また、大手のチェーン店では、企業の対応として示談交渉に応じない姿勢を示しているところもあります。

6-2-3:示談交渉の流れ

示談交渉の流れは、次のようになります。

  1. 被害者と連絡を取る
  2. 被疑者の謝罪文を提出する
  3. 被害者と示談金額、示談条件を交渉する
  4. 示談書を作成する
  5. 示談内容を履行する
  6. 示談書を検事や裁判所に提出する

以上のような流れとなります。

弁護士
被疑者の家族の方で、被害者との示談交渉が難しくなかなか進まないという場合は、早急に弁護士に依頼されることをお勧めします。

6-2-4:示談書の内容

示談書見本

示談書の主な内容としては、次のようになります。

  1. 示談の対象となる事件の内容
  2. 被疑者の謝罪文
  3. 示談金額や示談条件
  4. 清算条項
  5. 接触禁止条項
  6. 被害者の宥恕(加害者を許すといった文言)
  7. 守秘義務条項
  8. 日付
  9. 両当事者のサイン

などとなります。

清算条項とは、示談で取り決めた事項以外に、一切の債権債務がないことを、お互いに確認する条項です。


7章:万引きで逮捕された場合に弁護士に依頼するメリット

弁護士に依頼するメリット

ここまで解説してきたように、万引きで逮捕された場合は、早期の解決を目指してポイントを抑えた素早い行動が必要です。

この章では、早めに弁護士に依頼するメリットとして次の5つがあげられます。

  • 早期の示談成立が見込める
  • 逮捕直後から連絡が取れる
  • 精神的負担や事務的な負担を軽減できる
  • 自分にとって不利な供述を防げる
  • 被害者の不当な要求を拒否できる

それぞれ解説していきます。

7-1:早期の示談成立が見込める

示談交渉を弁護士に依頼することで、早期の示談成立が望めます。

弁護士に依頼するメリットは、次の通りです。

  • 弁護士は被害者と連絡を取れる可能性がある
  • 被害者が示談交渉に応じてくれる可能性が高くなる
  • 被害者に、加害者の反省や謝罪を受け入れてもらえる可能性が高くなる
  • 適正な示談金の金額がわかる
  • 加害者への寛大な処分を求める嘆願書を依頼することができる
  • 示談書の作成を任せられる

なぜなら、逮捕された被疑者本人や家族では、被害者と直接示談交渉することは難しい場合もありますが、弁護士であれば被害者の対応も変わり示談交渉を進めやすくなります。

また、弁護士を通して示談交渉をすると、被害者に対して冷静に被疑者の反省の度合いや、謝罪を受け入れてほしい家族などの現在の状況を伝えることができます。

6-2」で解説したように、被害者との示談成立は、早期解決に向けての最優先事項となります。

こうして、弁護士による早期の示談が成立すれば、処分が軽くなり、不起訴になる可能性も高くなります。

起訴された後でも、示談が成立し被害者の許しが得られれば、執行猶予がつき実刑を免れる可能性や、罰金刑になるなど量刑が軽くなる可能性も高くなります。

7-2:弁護士であれば逮捕直後から面会できる

弁護士であれば、逮捕直後から被疑者と面会(接見)することができます。

被疑者と家族が面会できるのは、警察から連絡があってから捜査が進み、勾留が決定された後になります。

つまり、逮捕直後から勾留が決定されるまでの約3日間は、家族でも面会は認められていません。

弁護人による接見は、原則として自由に面会することができるので、必要なものや書類などを差し入れすることもできます。

さらに、接見の際に立会人が付くこともないので、被疑者に今後の流れや状況を説明し、適切なアドバイスをすることが可能になります。

家族による面会でさえ逮捕後、約3日後となるため、弁護士による接見は、被疑者にとっては大きな支えとなります。

7-3:精神的負担や事務的な負担を軽減できる

弁護士に依頼すると、経験に基づいた適切なアドバイスによって、被疑者や家族の精神的な負担を軽減することができ、さらに迅速な行動によってすぐに示談交渉にとりかかることで、早期の示談成立を目指すことができます。

また弁護士に依頼することによって、被害者との対応をはじめ、警察、検察さらには裁判所に対する手続きや、示談書・意見書の作成など様々な事務的負担を軽減することができます。

万引きで逮捕された場合、被疑者本人はもとより、家族もどうしてよいのかわからず混乱されることが多いようです。

また、被疑者本人または家族にとって、逮捕直後からの取り調べや被害者との示談交渉は、精神的負担が大きく、被害者や警察、検察との対応など家族にとっては事務的な負担も大きくなります。

弁護士に依頼することで、逮捕後の被疑者・家族の不安や負担を最小限にすることができます。

7-4:自分にとって不利な供述を防げる

弁護士は、逮捕直後から被疑者に接見することができるので、逮捕後の捜査・取り調べの流れなどの説明や、取り調べでの誤った自白や不利益な供述などを避けるための具体的なアドバイスをすることができます。

被疑者は、万引きで逮捕されて、家族にも面会できない不安な状態で、警察による厳しい取り調べを受けると、間違った供述(不利益な供述)をしてしまう場合があります。

また、取調官の言いなりになって供述すると、十分な証拠や正当な手続きを得ないままの不当逮捕であっても、そのまま認めてしまったり、さらには被疑者に万引きを犯した事実がない場合でも、プレッシャーに負けて認めてしまうことがあるようです。

弁護士による、早い段階からの接見によって、そのような不利益な供述をするリスクを最小限にすることができます。

7-5:被害者の不当な要求に対応できる

弁護士に被害者との対応を任せることで、被害者の不当な要求に応じるべきか、拒否したほうがいいのかの判断が得られます。

被疑者本人やその家族による示談交渉のときには、被害者が感情を損ねて、過度の謝罪要求や高額な示談金など、不当とも思える要求をしてくる場合があります。

弁護士が法律の専門家として冷静に示談交渉をすすめることで、被害者の対応も変わり妥当な示談金による解決を図れる可能性が高まります。

万引きで逮捕された場合に、被疑者の不利益を最小限にするためには、早めに弁護士に依頼されることをお勧めします。


まとめ

いかがでしたか?

ここまで、万引きで逮捕された後はどうなるのか、やるべきことは何かについて解説してきました。

最後に今回の内容をまとめます。

■万引きで逮捕される2種類のケース

現行犯・後日逮捕

  • 現行犯逮捕:店員や警備員による逮捕(私人逮捕)
  • 後日逮捕:防犯カメラなどの映像による犯罪捜査での逮捕など

■万引きで逮捕されたときの処分・刑罰とその後の流れは、次の図のようになります。 

処分と刑罰の流れ

■未成年者(20歳未満)が逮捕された場合

未成年者の場合の流れ

■万引きによる逮捕で、前科がつくと被疑者本人だけでなく、その家族にも様々なデメリットが生じます。

 本人への影響、デメリット

  • 学校や会社で処分、解雇される
  • 資格制限、取り消しを受ける
  • 就職活動でマイナスになる
  • 社会的信用を失う

 家族への影響、デメリット

  • 普通の生活を送ることが不自由になる可能性がある
  • 家族関係が悪化する可能性がある

■早期釈放、早期解決を得るためにやるべきこと

逮捕された場合は、一刻も早く弁護士に相談することが重要です。

  • 逮捕後72時間以内に早期釈放を得る
  • 逮捕後13日以内に不起訴処分を得る
  • 一刻も早く被害者との示談を成立させる

■万引きで逮捕された場合に弁護士に依頼するメリット

  • 早期の示談成立が見込める
  • 弁護士であれば逮捕直後から面会できる
  • 精神的負担や事務的な負担を軽減できる
  • 自分にとって不利な供述を防げる
  • 被害者の不当な要求に対応できる

この記事の内容を参考にして、これからの行動に役立ててください。