万引きは現行犯以外でも後日逮捕される!事例をもとに弁護士が徹底解説


この記事を読んで理解できること
- 万引きには現行犯逮捕以外に「後日逮捕」がある
- 万引きで後日逮捕されたときの流れ
- 未成年者(20歳未満)が逮捕された場合
- 万引きで後日逮捕されたときにやるべきこと
- 万引きで後日逮捕された場合に弁護士に依頼するメリット
あなたは、
「万引きは現行犯以外でも捕まるのかな?」
「万引きで現行犯以外にはどうやって逮捕されるの?」
「万引きの現行犯以外で逮捕されたらどうなる?」
などの不安や疑問をお持ちではないでしょうか。
結論から言うと、万引きでは現行犯逮捕以外にも「後日逮捕」されることがあります。
万引きで逮捕されると、「窃盗罪(刑法235条)」にあたり、さらに窃盗罪を常習的に繰り返すと常習累犯窃盗罪となり、罰金刑、執行猶予付き判決、または実刑になる可能性があります。
万引きの現行犯では捕まらなかった場合は、後日逮捕されて刑事事件になる前に、弁護士に相談して解決を図ることが重要です。
逮捕される前であれば、弁護士とともに被害者との示談を成立させることによって、後日逮捕されないで済む可能性が高くなるからです。
十分に反省しているのであれば、後日逮捕を心配したまま過ごすのではなく、逮捕された場合の様々なデメリットを招かないように行動することが大事です。
※この記事では、万引きで現行犯以外の逮捕、「後日逮捕」された場合について解説していきます。
目次
1章:万引きには現行犯逮捕以外に「後日逮捕」がある
万引きで逮捕された場合に最も多いのが、犯行直後に現場で逮捕される「現行犯逮捕」です。
犯行を目撃した店員や警備員によって、店外に出たところを取り押さえられるケースです。
その他に、店から被害届が出されて警察による捜査が進められ、後日、逮捕状に基いて逮捕されることもよくあります。
この章では、万引きの後日逮捕について事例も合わせて解説していきます。
1-1:後日逮捕とは
後日逮捕とは、警察や検察の捜査によって逮捕状に基いて逮捕(通常逮捕)されることです。
ここでまず、万引き事件の後日逮捕の一般的な流れを説明します。
- 万引きが行われる(複数回の場合も)
- 被害者が被害を確認し、警察に被害届を提出
- 警察による捜査開始
- 証拠収集、被疑者の特定
- 証拠に基づいて裁判所に逮捕状を請求
- 逮捕状の発布
- 逮捕状を提示して被疑者を逮捕
万引きは、防犯カメラを設置した店舗での犯行が多いので、防犯カメラの映像をもとに被疑者が特定され、後日逮捕される場合がよくあります。
また、万引きは、日にちをおいて何度も同じ店舗で繰り返し行われることも多いので、お店側にも要注意人物として警戒されている場合もあります。
そこで、再度来店した時に警察に通報されて、逮捕される場合もあります。
コラム
万引き事件として疑いをかけられて逮捕されると、捜査・取り調べを受けて起訴されるまで、法律では被疑者(ひぎしゃ)として扱われます。
そして、被疑者が検察官によって起訴されると被告人になります。
ニュースや新聞などメディアでは、被疑者でなく容疑者と呼ばれていますが、これは「被疑者」が「被害者」と紛らわしいので使われているようです。
1-2:万引きで後日逮捕された事例
ここで、万引きで後日逮捕された事例を紹介していきます。
1-2-1:【事例1】転売目的の万引きで約半年後に逮捕
この事例では、新横浜の書店で写真集9冊を万引きした疑いで指名手配されていた男性が、犯行から約半年後に後日逮捕されています。
この事件では、警察は捜査によって被疑者を特定し、指名手配のうえ追跡捜査を行っていました。
警察の取り調べに対し男は「万引きしたことに間違いありません」と容疑を認め、転売して生活費にするためだったと供述しています。
※新横浜の書店で写真集9冊を万引き、指名手配中だった36無職の男を逮捕
1-2-2:【事例2】化粧品などの万引きで約8時間後に逮捕
この事例では、ドラッグストアで化粧品など33点(販売価格4万4000円相当)を万引きした女性が、犯行から日付をまたいで約8時間後に後日逮捕されています。
警察によると、被害店舗からの届け出を受けて捜査を行い、同町内に住む被疑者を特定して逮捕を行ったようです。
逮捕されたのは、犯行翌日となる午前1時10分で、被疑者は容疑を認めています。
1-2-3:【事例3】「生活費の足しに」万引きで約10ヶ月後に逮捕
この事例では、大型スーパーの家電売り場で、加湿空気清浄機など計4点(販売価格計6万464円)を盗んだ疑いで、約10ヶ月後に男性が後日逮捕されています。
警察によると、店内の防犯カメラの映像から被疑者を特定し捜査を行っていたようです。
後日逮捕された被疑者は、「生活費の足しにするため盗んだ」として容疑を認めています。
1-2-4:【事例4】万引き後暴行を働き約3ヶ月後に逮捕
この事例では、スーパーで缶ビール3点(販売価格計623円)を万引きした男が、逃走の際に警備員に暴行したとして「事後強盗」の疑いで、約3ヶ月後に後日逮捕されています。
警察は、防犯カメラなどの映像を解析して被疑者を特定し、捜査を行っていたようです。
被疑者は市役所職員で、万引き後駐車場まで追い掛けてきた警備員を投げ倒して逃走しています。
幸い警備員にケガはなかったようですが、暴行を働いたことで、万引きの「窃盗罪」ではなく事後強盗「強盗罪」の疑いで後日逮捕されています。
強盗罪は、窃盗罪に比べると極めて罪が重く、「5年以上の有期懲役」となり、罰金刑もなく原則として執行猶予もつきません。
万引きをして逃げるために行った行為が、このように重い罪に問われる可能性もあるので、逮捕される前に弁護士に相談するなど適切な対応をすることが大事です。
2章:万引きで後日逮捕されたときの流れ
万引きで後日逮捕された場合に、逮捕から判決が決まるまでの流れは、上の図のようになります。
この章では、逮捕後の流れにそって1つずつ解説します。
2-1:後日逮捕から送致
万引きで警察に後日逮捕されると、警察に連行後に取り調べが行われます。
さらに、警察では逮捕後48時間以内に、被疑者本人や、事件の証拠・資料などを検察官に引き継ぐ手続き「送致」をします。
つまり、万引き事件の被疑者として、起訴の決定をする検察官のもとに送られるかは、この48時間で決められます。
2-2:送致から勾留
勾留とは、被疑者の身柄を留置所など刑事施設に拘束することです。
送致後、検察官の判断で引き続き身柄拘束が必要な場合には、24時間以内に裁判所に対して勾留請求されます。
この24時間の間に、弁護士を通して検察官、裁判官に対して勾留しないように働きかけて、早期釈放を得ることも可能です。
被害者との示談が成立している場合は、さらに勾留されない可能性が高くなります。
2-2-1:勾留されると身柄事件として捜査される
裁判所が勾留を認めると、被疑者の身柄は引き続き警察の留置場で拘束され、身柄事件として捜査が続けられます。
身柄事件になった場合は、原則として10日間の勾留期間が認められており、その間に捜査が終わらない場合は、さらに10日間の勾留延長が請求されます。
勾留決定されると、警察に逮捕された後、最長23日間も身柄を拘束されてしまいます。
このように、被疑者の身柄が長期間拘束されると、仕事など日常生活に支障が出るため、一日も早く身柄の解放を求めることが重要です。
すでに、勾留決定されたあとであっても、弁護士に依頼することで準抗告という不服申し立てをすることができます。
2-2-2:釈放されると在宅事件として捜査される
検察官が勾留請求をしなかった場合や裁判所が勾留を決定しなかった場合は、被疑者の身柄は釈放されます。
被疑者は普段通りの生活ができ、会社や学校にも行くことができますが、釈放されても無罪というわけではなく、被疑者在宅のまま在宅事件として捜査は進められます。
在宅事件とされる可能性が高い場合として、
- 被害金額が少なく、反省している
- 逃亡や証拠隠滅の恐れがない
- 身元(住所/氏名/勤務先など)がはっきりしている
- 身元引受人、同居家族がいる
などの条件を満たすケースがあげられます。
被害者との示談が成立している場合は、勾留されない可能性が高くなります。
2-3:起訴、不起訴の判断
身柄事件の場合は、最長23日間の勾留期間が切れると検察官によって、起訴または不起訴の判断が下されます。
在宅事件の場合は、すでに釈放されていて勾留期限などの拘束がなく、捜査状況の進展に合わせて手続きが進められます。
在宅事件の場合の手続きまでの流れは、次のようになります。
- 被疑者の検察への呼び出し
- 取り調べ
- 供述調書の作成
- 起訴または不起訴の判断
起訴が決まると、略式起訴による罰金刑または、通常裁判による懲役刑の処分が判断されます。
不起訴になると刑事裁判にはならず、そのまま身柄を解放されます。
その場合は、無罪放免に近く再度逮捕される可能性は非常に低くなります。
2-4:略式裁判と罰金刑
略式裁判とは、被疑者の同意のもとに、検察官の請求(略式起訴)によって提出された書面を審理するという簡略化した裁判です。
略式裁判では、簡易裁判所の管轄となる100万円以下の罰金または科料に相当する事件のみが対象となります。
2-4-1:略式起訴
略式起訴とは、懲役刑を求めるほどの事件内容ではなく、さらに被疑者が罪を認めている場合に、検察官の判断によって裁判所に対して罰金刑を請求することです。
略式起訴による簡略化された略式裁判の場合でも、有罪の判決を受けたことに変わりはないので、前科がつくことになります。
2-4-2:罰金刑と相場(20~30万円程度が多い)
万引きなどの窃盗罪では、略式起訴として50万円以下の罰金刑が請求され、略式裁判によって被疑者の同意のもとに、有罪の認定と罰金刑が決定されます。
罰金金額としては、被害額や万引きなどの前科の有無によって違いもありますが、おおむね20~30万円程度の場合が多いようです。
身柄事件の場合は、家族または弁護士によって罰金を納付すると被疑者は釈放されます。
在宅事件の場合は、裁判所に出頭する必要はありませんが、罰金の納付書に指定された方法で罰金を支払います。
2-5:通常裁判(刑事裁判)
万引きでも、懲役刑が妥当と判断された場合や、被疑者が犯行を認めていない場合は、通常裁判として公判が開かれます。
2-5-1:執行猶予付きの判決
万引きで後日逮捕された場合でも、初犯の場合や被害者との示談が成立している場合は、執行猶予付きの判決が下される可能性が高くなります。
執行猶予とは、有罪の判決を下されたが、その刑の執行を猶予する期間を与えるという意味です。
例えば、「懲役3年・執行猶予5年」の場合は、執行猶予期間中の5年間は、刑務所に入れられることはなく、通常の生活を送ることができます。
その執行猶予の5年間に罪を犯さなければ、懲役3年の刑は消滅しますが、期間中に罪を犯すと執行猶予は取り消され、懲役3年の刑と犯した罪の懲役刑と合わせた期間、刑務所に入れられることになります。
裁判によって懲役刑が下されるか、執行猶予つきの判決が下されるかでは、被告人の今後の人生にとっては大きな違いがあります。
弁護士による執行猶予を求める弁護活動は、被告人にとってはとても重要なものとなります。
2-5-2:懲役刑
懲役刑とは、刑事施設に拘置して所定の作業(刑務作業)を行わせる刑罰です。
裁判によって懲役刑となる可能性が高いのは、次のようなケースです。
- 被害額が高額である
- 万引きなどの前科がある
- 余罪がある
- 犯行の状況が悪質である
通常裁判の場合は、被疑者は必ず出廷し、検察、弁護人それぞれの証拠等をもとに、裁判官が判決を下すことになり、最終的に有罪の判決を受けた場合は前科がつくことになります。
3章:未成年者(20歳未満)が逮捕された場合
万引きは、犯罪行為としては簡単に行えるため、未成年者(20歳未満)による犯行も多くなっています。
この章では、14歳以上の未成年が逮捕された場合と14歳未満の場合について説明します。
3-1:14歳以上の未成年者が後日逮捕された場合
14歳以上の未成年者が後日逮捕された場合は、少年事件として、成人と同じように警察から検察官に被疑者として送致され勾留されます。
警察・検察による捜査が終了すると、たとえ被害者と示談が成立していたとしても、原則としてすべての少年事件は家庭裁判所へ全件送致されます。
家庭裁判所に送致されると、少年鑑別所で身柄を拘束する観護処置を必要とするか審判が行われ、決定すると原則として最大4週間少年鑑別所に収容されることになります。
家庭裁判所では、調査官による事件や被疑者の家庭環境等の調査が行われ、裁判官に調査票として報告されます。
調査の結果、少年審判の必要がないと判断されると「審判不開始」となり身柄を釈放されますが、それ以外の場合は、少年審判が行われ裁判官によって被疑者の更生を目指した処分が下されます。
処分としては、次の4つとなります。
- 不処分:将来再び非行を行う危険性がないと判断される
- 保護観察:保護観察官や保護司の指導・監督を受ける
- 児童自立支援施設又は児童養護施設への送致:原則として自由で開放的な環境の中で生活指導・訓練を受ける
- 少年院送致:少年院に収容して矯正教育を受ける
3-2:14歳未満の未成年者が後日逮捕された場合
14歳未満の未成年者が後日逮捕された場合は、「触法少年」と呼ばれ、刑事事件を問われることはなく、逮捕されることはありません。
しかし、現実的には事件についての調査として、14歳以上の少年と同じように警察での事情聴取や身柄の拘束を受けることになります。
警察の調査によって保護措置が必要と判断されると、児童相談所に送致され本人、並びに保護者に指導や注意、さらには一時保護という形で身柄を拘束されることになります。
児童相談所長によって家庭裁判所の審判を受けることが適当であると認められた場合には、家庭裁判所に送致され、一般的な少年事件と同じ流れになります。
4章:万引きで後日逮捕されたときにやるべきこと
万引きで後日逮捕されたときにやるべきことは、早期釈放・早期解決を目指した行動をとることです。
なぜなら、万引きで前科がついた場合だけでなく、前科がつかなかった場合でも、身柄の拘束が長引き「逮捕されたこと」自体が周りに知られてしまうと、本人だけでなく家族に対する悪影響が大きいからです。
この章では、早期釈放・早期解決を実現するために重要な「弁護士への相談」と「被害者との示談」について解説します。
早期釈放とは、逮捕されてから検察官に送致されて勾留が決まるまでの72時間までに身柄の釈放を求めることです。
早期解決とは、検察官が起訴の必要性を判断する13~23日間までに、示談成立など解決を図る行動をすることです。
4-1:できるだけ早く弁護士に相談することが重要
万引きで後日逮捕された場合は、できるだけ早く弁護士に相談されることをお勧めします。
被疑者は逮捕後に身柄を拘束されていても、一度だけ当番弁護士を呼ぶことはできますが、家族としても早めに弁護士を選んで、面会(接見)やその後の弁護活動を依頼することが重要です。
※当番弁護士とは、当番弁護士制度によって、逮捕後一度だけ無料で依頼することのできる弁護士のことです。
なぜなら、逮捕直後から被疑者本人を守り、身柄を解放するための積極的な働きかけをするには、弁護士による適切なアドバイスや釈放を求めるための迅速な行動が必要だからです。
また、被疑者に前科・前歴がある場合や余罪がある場合は、さらに重い処分が下される可能性があるため、すぐに弁護士に依頼することが重要です。
ここで、早期釈放と不起訴処分を求める弁護活動について解説します。
4-1-1:逮捕後72時間以内に早期釈放を求める
弁護士を通して、警察で送致前の釈放を求めたり、検察官、裁判官に対して勾留しないように働きかけることで、早期釈放を得られる可能性が高まります。
ここまで解説してきたように、逮捕されると同時に警察の取り調べは始まり48時間以内に検察官に送致され、検察官の取り調べを受けて必要であれば24時間以内に裁判所に勾留が請求されます。
この、逮捕直後から勾留請求されるまでの72時間の間に、できるだけ早く早期釈放を求めることが重要です。
弁護士に依頼することによって、被害者との示談が成立している場合は、さらに勾留されない可能性が高くなります。
釈放され在宅事件となった場合は、捜査は続いていますが、被疑者は普段通りの生活ができ、会社や学校にも行くことができます。
これだけでも、万引きで逮捕されたマイナスを、少なからず抑えることができます。
4-1-2:逮捕後13日以内に不起訴処分を求める
万引きで後日逮捕された場合に、被疑者に前科をつけないための弁護活動は、大変重要となります。
検察官が起訴の必要性を判断する逮捕後13~23日以内に、弁護士を通して示談書や意見書を提出して、検察官から不起訴処分を得なければいけません。
不起訴処分には、次の3つの理由があります。
- 嫌疑なし
- 嫌疑不十分
- 起訴猶予
それぞれ解説していきます。
1、嫌疑なし
これは、被疑者は罪を犯していないという理由です。
万引きの現行犯逮捕の場合は、明らかな誤認逮捕などがあげられます。
後日逮捕の場合は、真犯人が出てきたなどの可能性はあります。
2、嫌疑不十分
被疑者が犯罪を起こした疑いはあるものの、決定的な証拠がないという理由です。
万引きの現行犯逮捕の場合でも、逮捕時の状況によっては、証拠が不十分とされることがあります。
後日逮捕の場合は、証拠とする監視カメラの画像や、被害品の特定など、検察が有罪を確定させられないと判断した場合、嫌疑不十分として不起訴になる可能性はあります。
3、起訴猶予
起訴猶予は、不起訴の3つの理由のうち最も多く重要なものです。
被疑者の犯行であることは明らかですが、犯行に及んだ被疑者の状況や深く反省していて更生の可能性が高いこと、被害も少なく示談も成立しているなどの状況を考慮して決められます。
弁護士に依頼することによって、被害者との示談交渉は早急に進められ、示談交渉が成立する可能性が高くなります。
また示談交渉だけでなく、被疑者に有利な実情をまとめて検察官に意見書として提出するなど、不起訴処分を得るための適確な行動をとることができます。
被疑者に有利な実情としては、
- 初犯である
- 家族があり再犯の可能性が低い
- 定職につき真面目に生活している
など、被疑者の生活状況を考慮したものがあげられます。
このように、弁護士に依頼することで、不起訴処分を得る可能性が確実に高まります。
このあと解説する被害者との示談交渉も、次のような場合は一刻も早く弁護士に依頼すべきです。
- 本人が逮捕され身柄が拘束されている
- 在宅事件でいつ起訴されるかわからない
- 被害者に面会できない
- 示談交渉がもめている
- 法外な示談金を請求されている
4-2:できるだけ早く被害者との示談を成立させる
早期釈放や早期解決を目指すための最優先事項として、すぐに被害品の返品や弁償を行い、できるだけ早く被害者との示談を成立させることが重要です。
被害者と直接交渉することが難しい場合は、弁護士に依頼することで、被害者の対応も変わり交渉がうまくいき示談が成立する可能性が高まります。
ここでは、示談について次の4つの項目を解説します。
- 示談のメリット
- 示談金の相場
- 示談交渉の流れ
- 示談書の内容
4-2-1:示談のメリット
万引き事件における示談のメリットは、この章の始めの図で示したように、
- 罪に問われない微罪処分や不起訴処分の可能性が高くなる
- 身柄を釈放される可能性が高くなる
- 判決で減刑される可能性が高くなる
などがあげられます。
なぜなら、示談が成立しているということは
「被害者と和解し、許しを得ている」
「被疑者は十分反省している」
と、警察や検察官、裁判官に判断されるからです。
起訴された後でも、示談が成立し被害者の許しが得られたと判断されれば、量刑が軽くなり罰金刑になる可能性や、執行猶予がつき実刑を免れる可能性も高くなります。
4-2-2:示談金の相場
万引きの示談金とは、被害金額+慰謝料(迷惑料)なりますが、多くの場合は、被害金額と同額程度で済むようです。
ただし、示談金額は、当事者間で決められるため、被疑者の反省の度合いや再犯の可能性、また被害者の感情によって、被害金額を超えて高額な示談金額が求められる場合もあるようです。
また、大手のチェーン店では、企業の対応として示談交渉に応じない姿勢を示しているところもあります。
4-2-3:示談交渉の流れ
示談交渉の流れは、次のようになります。
- 被害者と連絡を取る
- 被疑者の謝罪文を提出する
- 被害者と示談金額、示談条件を交渉する
- 示談書を作成する
- 示談内容を履行する
- 示談書を検事や裁判所に提出する
以上のような流れとなります。
被疑者の家族の方で、被害者との示談交渉が難しくなかなか進まないという場合は、早急に弁護士に依頼されることをお勧めします。
4-2-4:示談書の内容
示談書の主な内容としては、次のようになります。
- 示談の対象となる事件の内容
- 被疑者の謝罪文
- 示談金額や示談条件
- 清算条項
- 接触禁止条項
- 被害者の宥恕(加害者を許すといった文言)
- 守秘義務条項
- 日付
- 両当事者のサイン
などとなります。
清算条項とは、示談で取り決めた事項以外に、一切の債権債務がないことを、お互いに確認する条項です。
5章:万引きで後日逮捕された場合に弁護士に依頼するメリット
ここまで解説してきたように、万引きで後日逮捕された場合は、早期の解決を目指してポイントを抑えた素早い行動が必要です。
この章では、早めに弁護士に依頼するメリットとして次の5つがあげられます。
- 早期の示談成立が見込める
- 逮捕直後から連絡が取れる
- 精神的負担や事務的な負担を軽減できる
- 自分にとって不利な供述を防げる
- 被害者の不当な要求を拒否できる
それぞれ解説していきます。
5-1:早期の示談成立が見込める
示談交渉を弁護士に依頼することで、早期の示談成立が望めます。
弁護士に依頼するメリットは、次の通りです。
- 弁護士は被害者と連絡を取れる可能性がある
- 被害者が示談交渉に応じてくれる可能性が高くなる
- 被害者に、加害者の反省や謝罪を受け入れてもらえる可能性が高くなる
- 適正な示談金の金額がわかる
- 加害者への寛大な処分を求める嘆願書を依頼することができる
- 示談書の作成を任せられる
なぜなら、逮捕された被疑者本人や家族では、被害者と直接示談交渉することは難しい場合もありますが、弁護士であれば被害者の対応も変わり示談交渉を進めやすくなります。
また、弁護士を通して示談交渉をすると、被害者に対して冷静に被疑者の反省の度合いや、謝罪を受け入れてほしい家族などの現在の状況を伝えることができます。
「4-2」で解説したように、被害者との示談成立は、早期解決に向けての最優先事項となります。
こうして、弁護士による早期の示談が成立すれば、処分が軽くなり、不起訴になる可能性も高くなります。
起訴された後でも、示談が成立し被害者の許しが得られれば、執行猶予がつき実刑を免れる可能性や、罰金刑になるなど量刑が軽くなる可能性も高くなります。
5-2:弁護士であれば逮捕直後から面会できる
弁護士であれば、逮捕直後から被疑者と面会(接見)することができます。
被疑者と家族が面会できるのは、警察から連絡があってから捜査が進み、勾留が決定された後になります。
つまり、逮捕直後から勾留が決定されるまでの約3日間は、家族でも面会は認められていません。
弁護人による接見は、原則として自由に面会することができるので、必要なものや書類などを差し入れすることもできます。
さらに、接見の際に立会人が付くこともないので、被疑者に今後の流れや状況を説明し、適切なアドバイスをすることが可能になります。
家族による面会でさえ逮捕後、約3日後となるため、弁護士による接見は、被疑者にとっては大きな支えとなります。
5-3:精神的負担や事務的な負担を軽減できる
弁護士に依頼すると、経験に基づいた適切なアドバイスによって、被疑者や家族の精神的な負担を軽減することができ、さらに迅速な行動によってすぐに示談交渉にとりかかることで、早期の示談成立を目指すことができます。
また弁護士に依頼することによって、被害者との対応をはじめ、警察、検察さらには裁判所に対する手続きや、示談書・意見書の作成など様々な事務的負担を軽減することができます。
万引きで逮捕された場合、被疑者本人はもとより、家族もどうしてよいのかわからず混乱されることが多いようです。
また、被疑者本人または家族にとって、逮捕直後からの取り調べや被害者との示談交渉は、精神的負担が大きく、被害者や警察、検察との対応など家族にとっては事務的な負担も大きくなります。
弁護士に依頼することで、逮捕後の被疑者・家族の不安や負担を最小限にすることができます。
5-4:自分にとって不利な供述を防げる
弁護士は、逮捕直後から被疑者に接見することができるので、逮捕後の捜査・取り調べの流れなどの説明や、取り調べでの誤った自白や不利益な供述などを避けるための具体的なアドバイスをすることができます。
被疑者は、万引きで逮捕されて、家族にも面会できない不安な状態で、警察による厳しい取り調べを受けると、間違った供述(不利益な供述)をしてしまう場合があります。
また、取調官の言いなりになって供述すると、十分な証拠や正当な手続きを得ないままの不当逮捕であっても、そのまま認めてしまったり、さらには被疑者に万引きを犯した事実がない場合でも、プレッシャーに負けて認めてしまうことがあるようです。
弁護士による、早い段階からの接見によって、そのような不利益な供述をするリスクを最小限にすることができます。
5-5:被害者の不当な要求に対応できる
弁護士に被害者との対応を任せることで、被害者の不当な要求に応じるべきか、拒否したほうがいいのかの判断が得られます。
被疑者本人やその家族による示談交渉のときには、被害者が感情を損ねて、過度の謝罪要求や高額な示談金など、不当とも思える要求をしてくる場合があります。
弁護士が法律の専門家として冷静に示談交渉をすすめることで、被害者の対応も変わり妥当な示談金による解決を図れる可能性が高まります。
万引きで逮捕された場合に、被疑者の不利益を最小限にするためには、早めに弁護士に依頼されることをお勧めします。
まとめ
いかがでしたか?
ここまで、万引きで後日逮捕された後はどうなるのか、やるべきことは何かについて解説してきました。
最後に今回の内容をまとめます。
■万引きには現行犯逮捕以外に「後日逮捕」がある
後日逮捕とは、警察や検察の捜査によって逮捕状に基いて逮捕(通常逮捕)されることです。
■万引きで後日逮捕された事例
【事例1】転売目的の万引きで約半年後に逮捕
【事例2】化粧品などの万引きで約8時間後に逮捕
【事例3】「生活費の足しに」万引きで約10ヶ月後に逮捕
【事例4】万引き後暴行を働き約3ヶ月後に逮捕
■万引きで後日逮捕されたときの流れ
■未成年者(20歳未満)が逮捕された場合
■万引きで後日逮捕されたときにやるべきこと
後日逮捕された場合は、一刻も早く弁護士に相談することが重要です。
- 逮捕後72時間以内に早期釈放を得る
- 逮捕後13日以内に不起訴処分を得る
- 一刻も早く被害者との示談を成立させる
■万引で後日逮捕された場合に弁護士に依頼するメリット
- 早期の示談成立が見込める
- 弁護士であれば逮捕直後から面会できる
- 精神的負担や事務的な負担を軽減できる
- 自分にとって不利な供述を防げる
- 被害者の不当な要求に対応できる
この記事の内容を参考にして、これからの行動に役立ててください。