万引きの被害届が出されたら?示談の成立と弁護士に依頼するメリット

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住川 佳祐
(弁護士法人QUEST法律事務所 代表弁護士)

著者情報 弁護士法人QUEST法律事務所 代表弁護士 住川佳祐

東京弁護士会所属。東京大学法学部卒。『NHK あさイチ』のTV出演の他、『プレジデント』『ダイヤモンド・セレクト』などメディア掲載多数。弁護士法人QUEST法律事務所のHPはこちら。

万引きで被害届が出された場合のポイント

    あなたは、

    万引きで被害届を出されたらどうなる?」

    「万引きの被害届を出されたら捜査される?」

    「万引きの被害届を取り下げてもらいたい」

    などとお考えではありませんか。

    結論から言うと、万引きの被害者から被害届が出されて、届け出を受けた警察が、犯罪が発生している可能性があると判断した場合は、捜査が開始されます。

    警察によって、防犯カメラの映像や目撃者の証言等の捜査が行われ、その結果犯人が特定された場合は、裁判所に逮捕状を請求し通常逮捕されることになります。

    この記事では、1章で、万引きで被害届を出されたらどうなるのか、2章では、万引きの被害届と示談成立のメリットについて解説します。

    さらに、3章では、万引きで逮捕された後の流れと処分・刑罰を、4章では、万引き事件を弁護士に依頼するメリットについて解説していきます。

    個々の内容をしっかりと理解して、今後の行動に役立ててください。

    【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】

    ■万引きで被害届が出された場合、捜査が始まるきっかけとなります。

    後日、犯人が特定された場合は、通常逮捕されます。

    ■万引きの被害届が出された場合は、示談を成立させることが、加害者にとって大きなメリットになります。

    ■万引きで逮捕された後の流れ

    処分と刑罰の流れ

    ■万引き事件を弁護士に依頼するメリット

    • 早期の示談成立が見込める
    • 弁護士であれば逮捕直後から面会できる
    • 精神的負担や事務的な負担を軽減できる
    • 被害者の不当な要求を拒否できる

    万引きで被害届が出された場合のポイント

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    1章:万引きで被害届を出されたらどうなるのか?

    万引きで被害届が出されたらどうなるのか、次の4つの項目について解説していきます。

    • 万引きの被害届とは
    • 犯人が現行犯逮捕された場合
    • 犯人に逃げられた、または特定できない場合
    • 捜査による犯人の特定と後日逮捕 

    1-1:万引きの被害届とは

    被害届とは、被害者が警察に対して、被害を受けた事実を申告するための書類です。

    万引きの場合は、「万引き専用被害届※」を使用して、原則として、被害現場において店長や店員等の被害関係者から受理することになっています。

    万引きの場合は通常、被害品だけでなく、犯人もある程度防犯カメラ等で確認された状態で被害届が提出されます。

    万引きの捜査においては、この防犯カメラの映像が、大きな助けとなりまた証拠にもなりえます。

    ※万引き専用の被害届の様式について

    1-2:犯人が現行犯逮捕された場合

    万引きで逮捕された場合に最も多いのが、犯行直後に現場で逮捕される現行犯逮捕です。

    犯行を目撃した店員や警備員、または他のお客さんによって、犯行後店外に出たところを取り押さえられるケースで、その時点または警備室に連れていかれた時点で逮捕が成立します。

    現行犯逮捕後は、警察を呼ばれて引き渡され、身柄を拘束されることになります。

    被害届は、前述したように被害現場において店長や店員等の被害関係者から受理することになっています。

    1-3:犯人に逃げられた、または特定できない場合

    万引き被害が発覚後、犯人に逃げられた、または特定できない場合は、防犯カメラの映像や店員・警備員等の証言をもとに、被害届を受理するか判断されることになります。

    被害届が受理された場合は、捜査を開始するきっかけとなりますが、犯人を特定するための証拠が不十分な場合は、被害届が受理されないこともあります。 

    1-4:捜査による犯人の特定と後日逮捕

    万引きの被害届が受理された場合は、犯人の特定に向けて捜査が行われます。

    警察は、特に防犯カメラの映像を重点的に解析して、犯人の特定を目指しますが、他にも従業員や警備員の目撃情報や、近隣での聞き込み、逃走経路の確認なども行われます。

    特定された被疑者の犯行を裏付ける証拠が揃った場合は、裁判所に逮捕状を請求し、逮捕状に基いて被疑者を通常逮捕します。

    さらに、万引きの証拠品となる被害物が、被疑者の自宅にあると疑われる場合は、捜査令状をもとに家宅捜索が行われます。

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    2章:万引きの被害届と示談成立のメリット

    万引きの被害届とは、前述したように被害者が警察に対して、被害を受けた事実を申告するための書類です。

    これに対して、示談とは、加害者が被害者の損害を賠償し、許してもらうための話し合いになります。

    この章では、被害届と示談との関係を、次の3つの項目で解説していきます。

    • 示談を成立させるメリット
    • 示談交渉の流れ
    • 示談と被害届の取り下げ

    2-1:示談を成立させるメリット 

    示談を成立させるメリットとしては、次の4つがあげられます。

    • 被害届を取り下げてもらえる可能性がある
    • 罪に問われない微罪処分や不起訴処分の可能性がある
    • 身柄を釈放される可能性が高くなる
    • 判決で減刑される可能性が高くなる

    被害者との示談とは、加害者が被害者に示談金を支払うことによって、損害賠償問題を解決し、被害者に許しを得ることです。

    逮捕前であれば、被害届を取り下げてもらうことで、一般的には、それ以上問題にはなりません。

    なぜなら、示談が成立しているということは

    「被害者との損害賠償問題は解決している」

    「被害者との和解が成立し、許しを得ている」

    「被疑者は十分反省している」

    と、警察や検察官、裁判官に判断されるからです。

    また、弁護士を通して被害者との示談交渉を進めていることで、逮捕されるリスクを抑えることもできます。

    逮捕後であっても、示談が成立することによって、身柄を解放され不起訴処分になる可能性が高まります。

    2-2:示談交渉の流れ

    示談交渉の流れは、次のようになります。

    1. 被害者と連絡を取る
    2. 被疑者の謝罪文を提出する
    3. 被害者と示談金額、示談条件を交渉する
    4. 示談書を作成する
    5. 示談内容を履行する

    万引きの示談金とは、被害金額+慰謝料(迷惑料)となることが多いです。

    また、示談条件には、被害者が被害届を取り下げる条項を入れる場合も多いです。

    示談金額は、当事者間で決められるため、被疑者の反省の度合いや再犯の可能性、また被害者の感情によって、被害金額を超えて高額な示談金額が求められる場合もあるようです。

    また、大手のチェーン店では、企業の対応として示談交渉に応じない姿勢を示しているところもあります。 

    2-3:示談と被害届の取り下げ

    万引き事件では、被害者に示談金を支払うことで、加害者の処罰を求めず、被害届を取り下げてもらえる可能性が高いです。

    被害届が取り下げられたことによって、捜査がすべて終了するとは限りませんが、逮捕されるリスクを抑えることができます。

    また、検察による起訴不起訴の刑事処分が判断される前であれば、不起訴処分になる可能性が高まります。

    被害届の取り下げは、警察や検察に対して書面によって行われるので、弁護士による示談交渉の際には、示談書とともに被害届取り下げの書面が用意される場合もあります。

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    3章:万引きで逮捕された後の流れと処分・刑罰

    処分と刑罰の流れ

    万引きで逮捕された後の流れと、処分・刑罰は、上の図のようになります。

    万引き事件では、逮捕後の流れの中で、罪に問われない「微罪処分」「不起訴処分」が得られる場合と、起訴されて罰金刑または懲役刑が科される場合があります。

    それぞれ解説していきます。

    3-1:罪に問われない場合もある

    万引きで逮捕されて警察や検察による事情聴取の後、「微罪処分」「不起訴処分」として罪に問われずに釈放される場合があります。

    3-1-1:警察での微罪処分

    微罪処分とは、万引きで逮捕されて警察へ連行された場合に、警官による厳重注意などで刑事手続きを終了し、釈放されるケースです。

    微罪処分になる可能性が高い場合として、

    • 初犯である
    • 反省が見られ、素行不良ではない
    • 偶発的で再犯の恐れがない
    • 身元引受人があり、逃亡の恐れがない
    • 被害金額が少なく、被害弁償等されている
    • 被害者が許し、寛大な処分を望んでいる

    などの条件を満たすケースがあげられます。

    微罪処分の場合は、刑罰が科されることはありませから、被疑者に前科はつきません。

    しかし、警察から「微罪処分事件報告書」として検察官に報告され、前歴は残されます。 

    3-1-2:検察による不起訴処分

    不起訴処分とは、検察官が被疑者を刑事裁判にかけない、つまり罪に問わない判断をすることです。

    不起訴処分になる可能性が高い場合として、

    • 初犯である
    • 余罪がない
    • 反省が見られ、素行不良ではない
    • 偶発的で再犯の恐れがない
    • 身元引受人があり、逃亡の恐れがない
    • 被害金額が少なく、被害弁償等されている
    • 被害者が許し、寛大な処分を望んでいる

    などの条件を満たすケースがあげられます。

    不起訴処分になると、罰金刑も懲役刑も適用されず、被疑者には前科はつきませんが、微罪処分と同じく前歴は残されます。

    弁護士
    弁護士

    ここで、簡単に前歴と前科の違いを説明します。 前歴は、被疑者として逮捕されたが、微罪処分や不起訴になったという記録です。

    前科は、起訴されて有罪判決を受けた事実・経歴ですから、たとえそれが軽い犯罪で罰金刑になった場合でも、本人、家族には大きなデメリットとなります。

    前科や前歴は、警察庁、検察庁、市区町村で記録として保管されていますが、当然公開はされていませんし、たとえ本人でも確認することはできません。

    3-2:罰金刑と相場(20~30万円程度が多い)

    罰金刑とは、犯罪に対する刑罰として強制的に金銭を取り立てることです。

    万引きで罰金刑になる場合は、窃盗罪として50万円以下の罰金になります。

    万引きで逮捕された場合は、被害額や万引きなどの前科の有無によって量刑も異なりますが、初犯であれば罰金刑になる可能性が十分考えられます。

    また、検察官が、罰金刑が相当と考えている場合には、通常裁判という形ではなく、被疑者の同意のもとに略式裁判という簡略化された手続によって、有罪の認定と罰金刑が決定される場合が多いです。

    罰金額としては、こちらも被害額や万引きなどの前科の有無によって決定されますが、おおむね20~30万円程度の場合が多いようです。

    罰金刑を科された場合は、当然、前科がつくことになります。

    3-3:通常裁判による懲役刑

    通常裁判による懲役刑とは、刑事施設に拘置して所定の作業(刑務作業)を行わせる刑罰です。

    万引きで逮捕された場合に、懲役刑となる可能性が高いのは次のようなケースです。

    • 被害額が高額である
    • 万引きなどの前科がある
    • 余罪がある
    • 犯行の状況が悪質である

    実際は、懲役刑となった場合でも、執行猶予がつくケースが多いようです。

    ただし、個々の状況によって違いはありますが、

    • 被害金額が高額で弁済が行われていない
    • 反省が見られず再犯の恐れがある

    などの場合は、執行猶予のつかない実刑判決が出される可能性もあります。

    懲役刑を科された場合も、当然、前科がつくことになります。

    刑事事件解決に関するトラブルでお悩みのあなたへ まずはご相談ください

    4章:万引き事件を弁護士に依頼するメリット

    万引き事件を弁護士に依頼するメリットとしては、つぎの4つがあげられます。

    • 早期の示談成立が見込める
    • 弁護士であれば逮捕直後から面会できる
    • 精神的負担や事務的な負担を軽減できる
    • 被害者の不当な要求を拒否できる

    それぞれ解説していきます。 

    4-1:早期の示談成立が見込める

    弁護士に依頼することで、早期の示談成立が望めます。

    弁護士に依頼するメリットは、次の通りです。

    • 弁護士は被害者と連絡を取れる可能性がある
    • 被害者が示談交渉に応じてくれる可能性が高くなる
    • 被害者に、加害者の反省や謝罪を受け入れてもらえる可能性が高くなる
    • 適正な示談金の金額がわかる
    • 加害者への寛大な処分を求める嘆願書を依頼することができる
    • 被害届を取り下げてもらえる可能性が高まる
    • 示談書の作成を任せられる

    逮捕された被疑者の家族では、被害者と直接示談交渉することは難しい場合もありますが、弁護士であれば被害者の対応も変わり示談交渉を進めやすくなります。

    また、弁護士を通して示談交渉をすると、被害者に対して冷静に被疑者の反省の度合いや、謝罪を受け入れてほしい家族などの現在の状況を伝えることができます。

    また、2章で解説したように、被害者との示談成立は、早期解決に向けての最優先事項となります。

    こうして、弁護士による早期の示談が成立すれば、被害届を取り下げてもらえる可能性もあるので、処分が軽くなり、不起訴になる可能性も高くなります。

    起訴された後でも、示談が成立し被害者の許しが得られれば、執行猶予がつき実刑を免れる可能性や、罰金刑になるなど量刑が軽くなる可能性も高くなります。

    4-2:弁護士であれば逮捕直後から面会できる

    万引きで逮捕され身柄を拘束された場合は、家族であっても勾留が決定されるまでの約3日間は、被疑者と面会することはできません。

    依頼された弁護士(弁護人)だけが、唯一逮捕直後から被疑者との接見(面会)を認められます。

    弁護人による接見は、原則として自由に面会することができるので、必要なものや書類などを差し入れすることもできます。

    さらに、接見の際に立会人が付くこともないので、被疑者に今後の流れや状況を説明し、適切なアドバイスをすることが可能になります。

    家族による面会でさえ逮捕後、約3日後となるため、弁護士による接見は、被疑者にとっては大きな支えとなります。

    4-3:精神的負担や事務的な負担を軽減できる

    弁護士に依頼することによって、被害者との対応をはじめ、逮捕後の流れなど経験に基づいた適切なアドバイスが得られるので、被疑者や家族の精神的な負担を軽減することができます。

    また弁護士は、被害者との示談交渉や、警察、検察さらには裁判所に対する手続き、示談書・意見書の作成などを行うことによって、様々な事務的負担を軽減することができます。

    万引きで逮捕された場合、被疑者本人はもとより、家族もどうしてよいのかわからず混乱されることが多いようです。

    弁護士に依頼することで、逮捕後の被疑者・家族の不安や負担を最小限にすることができます。 

    4-4:被害者の不当な要求を拒否できる

    弁護士に被害者との対応を任せることによって、被害者から不当な要求があった場合でも、その要望に応じて示談すべきか、拒否した方がいいのか判断を得ることができます。

    被疑者の家族による示談交渉の場合、被害者が感情を損ねて、過度の謝罪要求や高額な示談金など、不当とも思える要求をしてくることがあります。

    弁護士が法律の専門家として冷静に示談交渉を進めることで、被害者の対応も変わり妥当な示談金による解決を図れる可能性が高まります。

    万引きで逮捕された場合に、被疑者の不利益を最小限にするためには、早めに弁護士に依頼されることをお勧めします。

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    まとめ

    ここまで、万引きで被害届を出されたらどうなるのか、万引きの被害届と示談成立のメリット、弁護士に依頼するメリットについて解説してきました。

    最後に、今回の内容をまとめます。

    ■万引きで被害届が出された場合、捜査が始まるきっかけとなります。

    ■後日、犯人が特定された場合は、通常逮捕されます。

    ■示談を成立させるメリット

    • 被害届を取り下げてもらえる可能性がある
    • 罪に問われない微罪処分や不起訴処分の可能性がある
    • 身柄を釈放される可能性が高くなる
    • 判決で減刑される可能性が高くなる

    ■万引きで逮捕された後の流れ

    処分と刑罰の流れ

    ■万引き事件を弁護士に依頼するメリット

    • 早期の示談成立が見込める
    • 弁護士であれば逮捕直後から面会できる
    • 精神的負担や事務的な負担を軽減できる
    • 被害者の不当な要求を拒否できる

    この記事の内容を参考にして、これからの行動に役立ててください。

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