慰謝料をローンで払うメリット・デメリットと支払う前に交渉すること
この記事を読んで理解できること
- 慰謝料をローンで支払う前に交渉すべきこと
- 慰謝料の支払いで使えるローンまとめ
- 慰謝料をローンで支払う場合のメリット
- 慰謝料をローンで支払う場合のデメリット
あなたは、
- 慰謝料を一括で支払えない場合、ローンで支払えないか知りたい
- 慰謝料をローンで支払う前にやるべきことは?
- 慰謝料をローンで支払うメリット・デメリットが知りたい
などとお考えではありませんか?
結論から言うと、慰謝料を一括で支払えない場合、ローンを組んで支払うことはできます。
ただし、示談に合意する前であれば、まずは次の5つの点を検討する必要があります。
- 慰謝料を拒否できないか
- 慰謝料を減額できないか
- 分割払いに応じてもらえないか
- 不倫相手へ求償権を行使できないか
- 親に借りられないか
そのため、一度冷静になって最善の解決策を見極めるために、慰謝料問題に精通している弁護士に相談し、適確なアドバイスを受けることが重要です。
また、慰謝料をローンで支払う場合は、支払いに使えるローンの内容や、慰謝料をローンで支払う場合のメリット・デメリットについても十分理解することが重要です。
そこでこの記事では、
1章では、慰謝料をローンで支払う前に交渉すべきこと
2章では、慰謝料の支払いで使えるローンまとめ
3章では、慰謝料をローンで支払う場合のメリット
4章では、慰謝料をローンで支払う場合のデメリット
について解説します。
この記事を読んで、内容をしっかり理解し、慰謝料が支払えない場合の対処法として参考にしてください。
目次
1章:慰謝料をローンで支払う前に交渉すべきこと
この章では、慰謝料をローンで支払う前に交渉すべきことについて解説します。
- 慰謝料を拒否できないか
- 慰謝料を減額できないか
- 分割払いに応じてもらえないか
- 不倫相手へ求償権を行使できないか
- 親に借りられないか
それぞれ説明します。
1-1:慰謝料を拒否できないか
慰謝料を請求された場合、相手が主張する不法行為の加害者として、損害を賠償する責任を負っているか確認する必要があります。
(不法行為による損害賠償)
第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
不法行為による損害賠償請求権が認められる条件は、次の4つです。
- 故意または過失があること
- 権利・利益の侵害があること
- 損害が発生していること
- 侵害行為と損害の間に因果関係があること
これら4つの条件は、原則として被害者が立証する必要があり、条件を満たしていない場合は、慰謝料請求を拒否できます。
1-2:慰謝料を減額できないか
慰謝料を請求された場合、被害者の請求する金額は一応の希望額にすぎませんので、減額交渉の余地があることになります。
例えば、減額交渉できる場合として、次の4つがあげられます。
- 請求額が相場よりも高額である
- 被害者にも落ち度がある
- 加害者に支払いが困難な事情がある
- 被害者が早期の解決を求めている
これらの場合は、被害者が交渉に応じることが前提とはいえ、慰謝料を減額できる可能性があります。
1-3:分割払いに応じてもらえないか
慰謝料の支払いは基本的には一括払いになりますが、一括で払えない場合は、慰謝料の分割払いに応じてもらえないか交渉します。
分割払いは、請求者としては完済する前に支払いが滞る不安もあるため、応じてもらえない可能性もありますが、誠意をもって経済的に一括では支払えないことを説明し交渉することが重要です。
できれば、慰謝料の一部だけでも準備して支払い、残りのすぐには支払えない部分を分割払いとして認めてもらう方が、相手に応じてもらえる可能性が高まります。
また、分割払いでは、長期に渡って支払いが続くため不払いのリスクがありますが、「執行認諾文言付公正証書」を作成することで、不払いとなった際にすぐに差し押さえなどの対応ができます。
1-4:不倫相手へ求償権を行使できないか
不倫の慰謝料を請求された場合は、「求償権」を行使して支払った慰謝料の一部を不倫の当事者(共同不法行為者)である不倫相手に請求できます。
求償権とは、不倫の当事者の一人が慰謝料を支払った場合、もう一人の当事者に対して「支払った慰謝料の一部を請求できる権利」のことです。
例えば、慰謝料の金額が100万円の場合、責任の大きさによって負担割合は変わりますが、50万円程度を不倫相手に対して請求できます。
1-5:親に借りられないか
慰謝料の支払いが一括はもちろん、減額も分割も難しい場合、親に借りられないかお願いすることです。
慰謝料の生じる原因には、上述したように様々な態様がありますが、日ごろの親子関係によるとはいえ、事情を打ち明けて援助をお願いできるのは親ということになります。
親が事情を酌んで貸してくれるというのであれば、高い利息のローンを組むよりもそれが一番望ましいことです。
一般的には、返済時期や返済方法についても配慮されることと思われます。
また、利息の支払いや返済を怠った場合の強制執行も心配しないで済むでしょうから、慰謝料を調達できる安全な方法が親からの借り入れだといえます。
2章:慰謝料の支払いで使えるローンまとめ
この章では、慰謝料の支払いで使えるローンまとめについて解説します。
- 銀行のローン
- カードローン
- 消費者金融
それぞれ説明します。
2-1:銀行のローン
銀行のローンは、大別して、目的別ローン、フリーローンとカードローンに分けられます。
目的別ローンは、あらかじめ決められた目的のためのローンで、主なものとして、住宅ローン、教育ローン、医療費ローンなどがあります。
目的別ローンは、フリーローンやカードローンに比べ、金利が低い場合が多いといえます。
フリーローンは、基本的に自由に使えるローンです。
フリーローンの借り入れ回数は1回のみで、追加で借り入れる場合には再度審査を受け直す必要があります。
慰謝料を銀行から借り入れる場合、フリーローンや離婚関連ローンを利用することも行われているといわれています。
慰謝料の支払いに困った場合には、銀行のフリーローンや離婚関連ローンを利用できないか窓口で相談することも考えてみましょう。
銀行のカードローンからお金を借り入れる場合についても確認しておきます。
まず最初に、銀行、クレジット会社及び信販会社(以下「クレジット・信販会社」といいます)及び消費者金融のカードローンからお金を借り入れる場合に、これらに共通するメリットについて見ておきますと、
- 利用限度額の範囲内であれば繰り返し借り入れできること
- 借り入れたお金の使い道が自由であること
- 担保・保証人なしで借り入れできること
以上のようになります。
銀行のカードローンからお金を借り入れるメリットとしては、
- クレジット・信販会社や消費者金融と比較して金利(利息)が低い傾向にある
- 銀行が運営しているので信頼度・安心感がある
- 本人に収入がなくても、家族や配偶者に十分な返済能力があれば借り入れできる場合もある
- 借り入れには後述するいわゆる「総量規制」がない
ことが挙げられます。
他方、銀行のカードローンからお金を借り入れるデメリットとしては、審査に時間がかかること、即日には借り入れできないことが挙げられます。
2-2:カードローン
銀行のローン及び消費者金融を除いた、クレジット・信販会社のカードローンについて考えてみましょう。
クレジット・信販会社のカードローンからお金を借り入れるメリットとしては、審査や融資にかかる時間が銀行よりも短いこと、消費者金融よりも金利が低い傾向にあることが挙げられます。
クレジット・信販会社のカードローンからお金を借り入れるデメリットとしては、銀行よりも金利が高い傾向にあること、借り入れには後述する「総量規制」があることが挙げられます。
2-3:消費者金融
慰謝料を約束通りに支払えない場合、最後の手段として、消費者金融のカードローンを利用しようと考えるかも知れません。
消費者金融は、財務局長又は都道府県知事の登録を受けている正規の貸金業者です。
違法な貸し付けや取り立てを行ういわゆる「ヤミ金」とは異なります。
そして、消費者金融は、個人に対してお金の貸し付けを行う金融機関のひとつです。
金融機関が個人向けに行うお金の貸し付けサービスのことを「カードローン」といいますので、消費者金融のお金の貸し付けも「カードローン」に含まれます。
消費者金融でお金を借り入れるときは、銀行、クレジット・信販会社と同様に審査があり、審査に通りますと借り入れが可能になります。
消費者金融の上限金利は、貸付額に応じて年1割5分から年2割までと利息制限法で定められています。
審査に通ったとしても、借り入れできる金額は個人によって異なります。
それは、貸金業法で定められている「総量規制」があるからです。
借り入れできる金額は、総量規制により、年収の3分の1と制限されています。
そのため、すべての借入先からの合計額は、年収の3分の1を超えることができません。
消費者金融からお金を借り入れるメリットとしては、
- 慰謝料を早急に準備しなければならないときに短時間で借り入れできる
- 毎月の返済日を自分の都合に合わせて設定できる
ことが挙げられます。
他方、消費者金融からお金を借り入れるデメリットとしては、
- 金利が銀行からの借り入れに比べ高い傾向にある
- 自分が設定した日に必ず返済しなければならない
- 返済が遅れた場合には高めの遅延損害金が発生し、返済すべき金額が増えてしまう
- 総量規制がある
ことが挙げられます。
なお、消費者金融からお金を借り入れる場合は、登録された貸金業者かどうかを必ず確認すること、金利が負担になることもありますので、毎月遅延なく返済でき、日常生活への影響を最小限に抑えるためにも、申し込み前に返済計画を立てることが重要になります。
3章:慰謝料をローンで支払う場合のメリット
この章では、慰謝料をローンで支払う場合のメリットについて解説します。
- 相手との関係をすぐに断てる
- 親や周りの人に頼らなくて済む
- 自己破産を避けられる
それぞれ説明します。
3-1:相手との関係をすぐに断てる
上述したローンのいずれを利用したとしても、借り入れたお金で相手(被害者)に対する慰謝料の支払いを終えることができます。
慰謝料が発生する原因には、上述したように、様々な態様がありますので、一概には言えないものの、慰謝料の支払いが済めば、多くの場合、相手との関係をすぐに断てることになるといえます。
3-2:親や周りの人に頼らなくて済む
上述したローンで慰謝料を支払ってしまえば、相手との問題は解決したことになりますので、それ以上お金の心配はしなくて済みます。
したがって、相手とは決着がついたことから、それ以上親や周りの人に頼らなくて済むことになります。
3-3:自己破産を避けられる
上述したローンで慰謝料の支払いを終えれば、少なくとも被害者との関係では債務負担がなくなります。
したがって、少なくとも一時的には自己破産を避けられたといえます。
慰謝料の支払い後は、上述したローンの借入先に対する債務が残るにすぎません。
では、慰謝料を支払えない場合はどうなるのでしょう。
加害者が、慰謝料の債務があるため自己破産の申し立てをし、裁判所の「破産手続開始決定」が出された場合、官報に公告(掲載)され、加害者が支払い不能の状態にあることが宣言されます。
そのうえ、加害者は、社会生活を送るうえで一定の制約を受けることになります。
その主なものは、以下のとおりです。
❶いわゆるブラックリストに登録される。
❷生活必需品以外の財産が処分される。
❸弁護士、公認会計士、税理士、警備員、後見人等の職業に就けない。
❹破産管財人が選任された場合は、次のような制限を受けることがある。
㊀居住制限を受ける(裁判所の許可なく転居や長期の旅行ができない)。
㋥郵便物等が破産管財人に転送される場合がある。
㊂破産管財人に対して財産状況などの説明義務を負う。
破産手続開始決定があったからといって、慰謝料の支払い義務がなくなるわけではありません。
支払いを免れるためには、裁判所の「免責許可決定」が必要です。
このように考えますと、自己破産を避けられることは、社会生活を送るうえで最善の選択といえます。
4章:慰謝料をローンで支払う場合のデメリット
この章では、慰謝料をローンで支払う場合のデメリットについて解説します。
- 金利分を余分に支払う必要がある
- 支払いが長期間かかる場合もある
- 他のローン審査に影響が出る
それぞれ説明します。
4-1:金利分を余分に支払う必要がある
上述したいずれのローンであれ、それらのローンからお金を借り入れた以上、金利を負担しなければなりません。
それは自ら招いたとはいえ、本来支払うべき慰謝料からすれば、金利分を余分に支払う必要があることになります。
4-2:支払いが長期間かかる場合もある
慰謝料を支払えば済むというものではなく、支払い後の自分の生活も考えなければなりません。
そのためには、返済計画を立てる必要があります。
その場合、毎月の返済額を少なく見積もって計画を立てれば、どうしても支払いが長期間かかる場合もあることになります。
4-3:他のローン審査に影響が出る
上述したいずれのローンであれ、それらのローンからお金を借り入れた場合には、借り入れ金額や申込日、返済遅延の事実などが信用情報として記録されます。
そのため、クレジットカードや各種カードなど他のローン審査に影響が出ることも考えられ、新たなサービスを利用できなくなるおそれがあります。
まとめ:慰謝料をローンで支払う前に、まずは弁護士に相談を!
■慰謝料をローンで支払う前に交渉すべきこと
- 慰謝料を拒否できないか
- 慰謝料を減額できないか
- 分割払いに応じてもらえないか
- 不倫相手へ求償権を行使できないか
- 親に借りられないか
■慰謝料をローンで支払う場合のメリット
- 相手との関係をすぐに断てる
- 親や周りの人に頼らなくて済む
- 自己破産を避けられる
■慰謝料をローンで支払う場合のデメリット
- 金利分を余分に支払う必要がある
- 支払いが長期間かかる場合もある
- 他のローン審査に影響が出る
もし、慰謝料の支払いでお悩みの場合には、慰謝料をローンで支払う前に、ぜひ、法律のプロである弁護士にご相談することを検討しましょう。