【覚醒剤で逮捕】3つのパターンと刑罰、事例をあげて弁護士が徹底解説
この記事を読んで理解できること
- 覚醒剤で逮捕される主な3つのパターン
- 覚醒剤で逮捕される5つの行為と罰則、逮捕事例
- 覚醒剤事件の特徴、逮捕後の流れ
- 覚醒剤で逮捕されたら弁護士に依頼するのがおすすめ
あなたは、
「覚醒剤で逮捕されたらどうなるの?」
「覚醒剤で逮捕されるのはどんなケース?」
「家族が覚醒剤で逮捕されたらどうしたらいいの?」
などの不安や疑問をお持ちではありませんか?
結論から言うと、覚醒剤で逮捕された場合は、初犯でも起訴される可能性が高く、他の違法薬物と比べても重い罰則となっています。
なぜなら、覚醒剤は他の薬物と比べて、特に依存性が高い危険な薬物だからです。
さらに、本人の健康を害するだけでなく、幻覚等による傷害・殺人などの凶悪犯罪に発展する恐れも十分にあります。
覚醒剤で逮捕されて、有罪となり前科がついてしまうと、本人や家族の生活にとっては大きなデメリットとなります。
早期の解決とその後の生活への影響を最小限に抑えるには、できるだけ早い段階から弁護士に相談することが重要です。
覚醒剤で逮捕された時の特徴としては、次の3つがあげられます。
- 長期間身柄を拘束されることが多い
- 初犯でも起訴される可能性がある
- 営利目的や再犯の場合は重い処分になる
上の特徴であげたように、覚醒剤事件で逮捕された場合は、起訴されて実刑判決を受ける可能性が高くなっています。
覚醒剤事件で弁護士にできることは、主に次の5つです。
- 不利益な供述や取り調べを防げる
- 身柄の解放、勾留阻止を求める
- 不起訴処分を求める
- 執行猶予・減刑を求める
- 再犯防止のための活動をする
覚醒剤事件に強い弁護士に依頼することによって、逮捕後のリスクを最小限に抑えることができます。
1章:覚醒剤で逮捕される主な3つのパターン
覚醒剤は、覚醒剤取締法によって違反行為と罰則が定められています。
覚醒剤とは、アンフェタミン(「フェニルアミノプロパン」)、メタンフェタミン(「フェニルメチルアミノプロパン」)を含む物質です。
覚醒剤は依存性が非常に強く、神経を興奮させ眠気や疲労感がなくなり、頭が冴えたような感覚になるといわれています。
しかし、その後は激しい脱力感や疲労感、倦怠感などに襲われるようです。
覚醒剤事件は、検挙者数が最も多く毎年1万人を超えていて、再犯率も高く平成30年では65.9%となっています。
1-1:覚醒剤で逮捕される主な3つのパターンと逮捕事例
覚醒剤で逮捕されるパターンとして、主に次の3つがあげられます。
- 職務質問からの逮捕
- 売人の逮捕から芋づる式に逮捕
- 家族・友人などの通報からの逮捕
それぞれ、事理を上げて解説していきます。
1-1-1:【パターン1】職務質問からの逮捕
覚醒剤事件で最も多いのが、警察官による職務質問からの逮捕です。
覚醒剤常習者によくある行動や、不審な挙動から疑われて声を掛けられ、所持品や車内の検査が行われます。
その際、覚醒剤と疑われる品が発見されると、その場で簡易検査が行われ、覚醒剤の陽性反応が出た場合は、現行犯逮捕されます。
さらには、尿検査も行われ、結果陽性反応が出た場合は、覚醒剤使用の疑いで逮捕されることになります。
■読売新聞の記者、覚醒剤使用容疑で逮捕 検査で陽性反応
朝日新聞デジタル(2020年2月4日)
この事例では、東京・歌舞伎町で職務質問を受けた男性が、任意での尿検査で覚醒剤の陽性反応が出たため覚醒剤取締法違反(使用)の疑いで緊急逮捕されています。
警察によると、挙動が不審だった男性に職務質問をしたところ、所持品から注射器が発見されたということです。
1-1-2:【パターン2】密売人の逮捕から芋づる式に逮捕
別の覚醒剤事件で逮捕された被疑者の、通話履歴や顧客データなどをもとに捜査が進められ、複数の被疑者が特定され逮捕される場合です。
押収したスマホなどのメール、SMS、LINE等のデータから、ユーザーの登録・通信情報などが各キャリアに開示請求され捜査されます。
削減されたデータであっても、可能な限り復元され調査・分析されることになります。
■覚醒剤使用容疑など24人逮捕 愛知県警
読売新聞オンライン(2020/02/29)
この事例では、覚醒剤取締法違反などの疑いで計24人が逮捕されています。
警察によると、別の覚醒剤使用事件で逮捕された男のスマートフォンの通話履歴などから、捜査が進められたようです。
その結果、複数のイラン国籍の密売人が浮上し、密売人の顧客データも入手できたため、今回の大量摘発につながったということです。
1-1-3:【パターン3】家族・友人などの通報からの逮捕
被疑者の家族や周囲の人などから、性格の変化や異常な行動などから薬物の使用等を疑われ、警察に通報される場合です。
薬物によるショック症状などを引き起こして、搬送された病院から通報される場合などもあります。
■覚せい剤使用の疑いで70歳男を逮捕 日中に通報があり、職務質問
長野放送(2020.06.29)
この事例では、「不審な人がいる」という通報から警察官が駆けつけ、覚醒剤取締法違反の疑いで男が逮捕されています。
この男は、警察官の職務質問の際に、言動・挙動が不審だったため、所要の捜査が行われ覚醒剤の使用が疑われたようです。
刑事事件として疑いをかけられて逮捕されると、捜査・取り調べを受けて起訴されるまで、法律では被疑者(ひぎしゃ)として扱われます。
2章:覚醒剤で逮捕される5つの行為と罰則、逮捕事例
※併科とは、刑事裁判で同時に二つ以上の刑(懲役刑と罰金刑)を科することです。
覚醒剤取締法では、次の5つの違反行為があります。
- 使用
- 所持
- 譲渡・譲受
- 輸出・輸入
- 製造
それぞれに罰則が定められていて、営利目的での違反行為にはさらに重い処分が定められています。
2-1:覚醒剤を使用の疑いで逮捕
前述の【パターン1】職務質問から逮捕に至るケースであげたように、任意の尿検査によって覚醒剤の陽性反応が出た場合、覚醒剤使用の疑いで逮捕されることになります。
覚醒剤取締法違反の使用とは、法律上、覚醒剤を薬品として消費する一切の行為を指します。
覚醒剤を血管へ注射したり、経口摂取や炙って吸引するなどのすべての行為が対象となります。
また、他人に注射したり、吸引させたりする行為も使用に該当する可能性があります。
2-1-1:覚醒剤使用の罰則
- 営利目的なし:10年以下の懲役
- 営利目的あり:1年以上の有期懲役、又は情状により500万円以下の罰金との併科
初犯で営利目的のない単純使用の場合は、執行猶予付きの判決が下されることが多いようです。
営利目的での使用としては、報酬を得て他人に覚醒剤を注射した場合などがあげられます。
2-1-2:覚醒剤使用の逮捕事例
【覚醒剤使用容疑で岡山県笠岡市の男逮捕 広島県警福山東署、職務質問し尿検査で陽性】
山陽新聞(2020.07.20)
この事例では、6月に福山市内で職務質問された男が、尿検査の結果覚醒剤の陽性反応が出たため、覚醒剤取締法違反(使用)の疑いで逮捕されています。
警察によると男は、5月末から6月にかけて複数回覚醒剤を使用した疑いがあるということです。
2-2:覚醒剤を所持の疑いで逮捕
職務質問や家宅捜索の際に、覚醒剤が発見された場合、覚醒剤所持の疑いで逮捕されることになります。
所持とは、その場で携帯している場合だけでなく、自宅や車に保管していたり、他人に預けていた場合も該当する可能性があります。
所持していた覚醒剤が大量で、個人の単純使用とは考えにくい場合や、小分けして所持していた場合などは、営利目的での所持が疑われます。
2-2-1:覚醒剤所持の罰則
- 営利目的なし:10年以下の懲役
- 営利目的あり:1年以上の有期懲役、又は情状により500万円以下の罰金との併科
初犯で営利目的のない単純所持の場合は、執行猶予付きの判決が下されることが多いようです。
営利目的での所持の場合は、初犯でも執行猶予がつかない場合が多いです。
さらに、犯罪の経緯やその他の具体的な事情によっては、1年以上の有期懲役(20年以下)と、500万円以下の罰金が合わせて科せられることになります。
2-2-2:覚醒剤所持の逮捕事例
【覚醒剤営利目的所持疑い 道警が暴力団幹部逮捕】
北海道新聞(2020.07.21)
この事例では、男が覚醒剤約150グラム(末端価格1千万円相当)を販売目的で所持していたとして、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)の疑いで逮捕されています。
警察によると、6月に札幌市内の路上で、覚醒剤を営利目的で所持していた疑いで男を現行犯逮捕し、その後関係先のマンションから小分けした覚醒剤を押収し再逮捕しています。
2-3:覚醒剤を譲渡・譲受の疑いで逮捕
覚醒剤を譲渡し又は譲受けした疑いによる逮捕です。
友人・知人から覚醒剤を譲り受けたり、逆に密売人のように、営利目的で不特定多数の人に有償で譲り渡した場合などがあげられます。
逮捕されてから、覚醒剤を譲り受けた時点では「覚醒剤とは知らなかった」と主張しても、「知らなかった」ことを証明する手立てもありません。
「何らかの薬物かもしれない」という思いがあったことで、法律上は故意が認められると判断されます。
2-3-1:覚醒剤譲渡・譲受の罰則
- 営利目的なし:10年以下の懲役
- 営利目的あり:1年以上の有期懲役、又は情状により500万円以下の罰金との併科
営利目的での覚醒剤譲渡・譲受は、営利目的による使用・所持と同じく、初犯でも執行猶予がつかない場合が多いです。
さらに、犯罪の経緯やその他の具体的な事情によっては、1年以上の有期懲役(20年以下)と、500万円以下の罰金が合わせて科せられることになります。
営利目的での覚醒剤の譲渡は、違法薬物である覚醒剤を自らの利益のために多数の人に広める行為にあたり、非常に重い罰則となっています。
2-3-2:覚醒剤譲渡・譲受の逮捕事例
【覚醒剤を営利目的譲渡疑い 静岡・富士の男逮捕】
産経ニュース(2020.06.18)
この事例では、静岡在住の男が大阪市の知人の自宅に、有償で覚醒剤を送ったとして、覚醒剤取締法違反(営利目的譲渡)の疑いで逮捕されています。
警察によると、昨年4月に覚醒剤取締法違反(使用)の疑いで逮捕された男の、入手経路を捜査した結果、大阪市の男ら2人を覚醒剤取締法違反(営利目的譲渡)の疑いですでに逮捕していました。
2-4:覚醒剤を輸出・輸入の疑いで逮捕
覚醒剤を輸出・輸入した場合、覚醒剤取締法違反の疑いで逮捕されます。
個人がインターネット取引で輸入したケースや、大掛かりな国際密輸組織による大量の覚醒剤密輸事件など、さまざまなケースがあります。
2-4-1:覚醒剤輸出・輸入の罰則
- 営利目的なし:1年以上の有期懲役
- 営利目的あり:無期もしくは3年以上の有期懲役、又は情状により1000万円以下の罰金との併科
営利目的のない個人使用のための覚醒剤輸入の場合、1年以上の有期懲役が科せられます。
営利目的での覚醒剤密輸の場合、無期もしくは3年以上の有期懲役と1000万円以下の罰金の両方が科せられる可能性が高いようです。
量刑については、覚醒剤の密輸量や被疑者の密輸における役割などによって変わってきますが、傾向としては軽くなく罰金も高額となっています。
2-4-2:覚醒剤輸入・輸出の逮捕事例
【覚醒剤6千万円相当密輸疑い 清水署が男女逮捕、美容用品偽装か】
静岡新聞(2020.07.15)
この事例では、米国から国際郵便で覚醒剤を密輸したとして、男女2人が覚醒剤取締法違反(営利目的輸入)の疑いで逮捕されています。
警察によると、2人は昨年の3月に仲間と共謀し、米国から覚醒剤915グラム(末端価格6千万円相当)を美容用品の小包に隠して密輸入した疑いです。
警察では、さらに2人が密売組織と関係しているとみて入手ルートや販売ルートの捜査を進めています。
2-5:覚醒剤を製造の疑いで逮捕
覚醒剤のメタンフェタミンは、風邪薬などにも含まれているエフェドリン類を原料として主に密造されます。
エフェドリン類は、麻黄(マオウ)という生薬から抽出したり、化学原料等によって製造することもできます。
覚醒剤製造の疑いで逮捕された被疑者の供述によると、インターネットなどから覚醒剤の製造法を入手し、エフェドリンを含む市販薬を原料として作ることもできるようです。
2-5-1:覚醒剤製造の罰則
- 営利目的なし:1年以上の有期懲役
- 営利目的あり:無期もしくは3年以上の有期懲役、又は情状により1000万円以下の罰金との併科
営利目的のない個人使用のための覚醒剤製造の場合、1年以上の有期懲役が科せられます。
営利目的での覚醒剤製造の場合、無期もしくは3年以上の有期懲役と1000万円以下の罰金の両方が科せられる可能性が高いようです。
2-5-2:覚醒剤製造の逮捕事例
【覚醒剤に変えられる液体所持容疑 5億円分製造可能な量】
朝日新聞デジタル(2018.02.22)
この事例では、化学反応させれば覚醒剤に変えられる液体を大量に所持し、覚醒剤を製造しようとしたとして、覚醒剤取締法違反(製造予備)の疑いで男が逮捕されています。
警察によると、男は覚醒剤約7.8キロ分(末端価格約5億円)に変えられる液体をペットボトルに小分けして保管し、覚醒剤を製造しようとした疑いがあるということです。
3章:覚醒剤事件の特徴、逮捕後の流れ
覚醒剤事件は、被疑者本人の健康を害するだけでなく、幻覚等による傷害・殺人などの凶悪犯罪に発展する恐れがあります。
また、その覚醒剤の売買には、暴力団などの反社会勢力の関与も疑われるために、その捜査も厳しく起訴される確率も他の事件に比べてかなり高くなっています。
この章では、覚醒剤事件の特徴と逮捕後の流れについて解説していきます。
3-1:覚醒剤事件の特徴
覚醒剤で逮捕された時の特徴としては、次の3つがあげられます。
- 長期間身柄を拘束されることが多い
- 初犯でも起訴される可能性がある
- 営利目的や再犯の場合は重い処分になる
それぞれ解説していきます。
3-1-1:長期間身柄を拘束されることが多い
覚醒剤事件で逮捕された場合は、逮捕後から起訴されるまで、身柄の拘束が許される最長23日間、拘束(勾留)されることが多いです。
なぜなら、覚醒剤事件の場合は、覚醒剤の入手先として組織的な密売人などとの関係が疑われ、身柄を解放することによって、それらの入手先と連絡を取り、証拠隠滅や逃亡の恐れがあるからです。
さらには、覚醒剤は依存性が高いので、再犯の恐れも十分考えられるからです。
また、身柄の拘束だけでなく、外部との接触を断つために、通常面会が許される勾留期間中も接見禁止となることもあります。
3-1-2:初犯でも起訴される可能性がある
覚醒剤事件で逮捕された場合は、犯罪を裏付ける証拠が十分そろっている場合が多いため、初犯でも起訴される可能性があります。
覚醒剤事件では、覚醒剤所持による現行犯逮捕や、尿検査による陽性反応、家宅捜索による証拠品の押収など、はっきりとした証拠が押さえられているケースがほとんどです。
しかも、覚醒剤事件は、大麻などの他の薬物に比べてもその違反行為に対する罰則は重く、厳しく罰せられる犯罪なので、不起訴になる可能性は低いと言えます。
さらに、窃盗や傷害といった他の刑事事件とは異なり、覚醒剤事件の場合は被害者が存在しないため、被害者との示談によって起訴を免れるということもありません。
覚醒剤事件においては、「令和元年版 犯罪白書」によると、平成30年の起訴率は76.9%とかなり高くなっています。
さらに、令和元年の覚醒剤取締法違反者の再犯者率は66.3%と高いので、これも起訴率が高い要因となっています。
3-1-3:営利目的や再犯の場合は重い処分になる
2章で示した罰則表で分かるように、営利目的での違反行為に対する罰則は、特に厳しく重いものとなっています。
営利目的での使用・所持・譲渡・譲受では、
「1年以上の有期懲役、又は情状により500万円以下の罰金の併科」
となっており、懲役刑だけでなく罰金刑も同時に科せられる場合があります。
さらに、営利目的の輸出・輸入・製造の場合は、
「無期もしくは3年以上の有期懲役、又は情状により1000万円以下の罰金の併科」
となっており、非常に重い罰則となっています。
初犯でも違反行為が営利目的と認められた場合は、執行猶予がつくことなく実刑判決が下されることになります。
また、薬物犯罪による前科があり、再度逮捕された「再犯」の場合は、執行猶予はつかず実刑判決が下されることになります。
さらに、執行猶予期間中の再犯の場合は、執行猶予は取り消され、前回の懲役刑と今回判決を受けた懲役刑と合わせた期間、刑務所に入れられることになります。
3-2:覚醒剤事件で逮捕後の流れ
この章では、覚醒剤事件で逮捕された後の流れについて説明します。
逮捕から判決までの流れは、上図のようになります。
3-2-1:逮捕から72時間以内に勾留が決定する
覚醒剤事件で逮捕後、48時間以内に警察から検察官に身柄が送致されます。
検察官はその後、24時間以内に裁判所に対して引き続き身柄の拘束を求める勾留請求を行います。
覚醒剤事件では、前述したように、通常裁判所の勾留決定によって身柄はそのまま拘束され、警察署内の留置場等で最長23日間勾留されることが多いです。
この勾留が決定されるまでの72時間は、家族でも被疑者と面会することはできず、弁護士しか面会(接見)できません。
3-2-2:起訴・不起訴の判断が下される
勾留期間の10日間と勾留延長を含めた合計20日間の間に、検察官によって被疑者を起訴するか不起訴とするか判断されます。
先に説明した通り、覚醒剤事件で逮捕された場合は、他の刑法犯より起訴率が高く、初犯でも不起訴処分を得ることは大変難しくなっています。
それでも、この勾留期間中の弁護士による起訴をされないための弁護活動は、被疑者本人にとっては最も重要なものとなります。
なぜなら、不起訴になると刑事裁判にはならず、原則として罪に問われることなくそのまま身柄を解放されますが、起訴されてしまうとかなり高い確率で有罪となり前科がついてしまうことになるからです。
3-2-3:起訴から裁判まで
覚醒剤事件の場合は、起訴される確率は高く、刑事裁判として公判が開かれます。
起訴された後、薬物の使用・所持事件で初犯の場合には、身元引受人を用意することで保釈が許可されることもありますが、通常、判決が出るまではそのまま身柄を拘束されます。
刑事裁判の場合は、被告人は必ず出廷し、検察、弁護人それぞれの証拠等をもとに、裁判官が判決を下すことになり、最終的に有罪の判決を受けた場合は前科がつくことになります。
コラム:覚醒剤で逮捕されると実名報道される場合がある
覚醒剤で逮捕されると、地方都市などでは実名報道されたり、近所に噂が広まったりする可能性があります。
薬物で逮捕されたことが、周囲の人に知られることになると、本人はもとより家族に対しても厳しい目が向けられることになります。
当然、普段の生活を続けることが難しくなるだけでなく、有罪判決を受けて前科がついてしまうと、本人の将来にとっては大きなデメリットとなります。
4章:覚醒剤で逮捕されたら弁護士に依頼するのがおすすめ
覚醒剤で逮捕された場合は、できるだけ早い段階から弁護士に依頼されることをおすすめします。
なぜなら、薬物で逮捕された場合は、2-1で説明したように、
- 長期間身柄を拘束されることが多い
- 初犯でも起訴される可能性がある
- 営利目的や再犯の場合は重い処分になる
などの特徴があるからです。
薬物事件で弁護士にできることは、主に次の5つです。
- 不利益な供述や取り調べを防げる
- 身柄の解放、勾留阻止を求める
- 不起訴処分を求める
- 執行猶予・減刑を求める
- 再犯防止のための活動をする
それぞれ解説していきます。
4-1:不利益な供述や取り調べを防げる
逮捕直後の取り調べの段階から弁護士に依頼することで、被疑者にとって不利益な供述や取り調べを防ぐことができます。
なぜなら、弁護士であれば逮捕直後から被疑者に面会(接見)して、今後の捜査の見通しや状況を説明し、適切なアドバイスをすることができるからです。
薬物事件で逮捕された場合は、逮捕後3日間(72時間)家族でも被疑者と面会することはできません。
また、被疑者との面会は、家族であっても警察署の定める面会時間に合わせて事前に連絡を取り、10分~20分程度面会できるだけで、その他にも、留置場で被疑者と面会するにはいろいろな制限が定められています。
さらに、場合によっては共犯者や犯罪組織とのつながりを疑われて、勾留期間中も接見禁止となることもあります。
弁護士による接見は、原則として自由に面会することができるので、被疑者にとっては大きな支えとなります。
4-2:身柄の解放を求める
覚醒剤で逮捕された場合は、覚醒剤の入手先などの証拠隠滅の恐れや、薬物依存による再犯の恐れがあるため、そのまま身柄を拘束される場合が多くあります。
しかし、弁護士が、検察官に被疑者の身柄の解放を求める意見書を提出したり、裁判所に勾留決定に対する準抗告を行うことによって、釈放される場合もあります。
釈放してもらうための主な条件としては、次のようなものがあげられます。
- 初犯である
- 十分反省していて再犯の可能性がない
- 薬物の単純使用・所持である
- 薬物の押収、家宅捜索なども終え、鑑定結果も既に出ている
- 入手先などの信用できる供述をしている
身柄を解放されても在宅事件として捜査は続きますが、被疑者は普段の生活に戻ることで、会社や学校にも行くことができます。
これだけでも、逮捕されたことを周囲に知られる心配を、少なからず抑えることができます。
4-3:不起訴処分を求める
弁護士に依頼することで、検察官に働きかけて不起訴処分を得られる可能性が高まります。
不起訴処分とは、検察官が被疑者を刑事裁判にかけない、つまり罪に問わない決定をすることで、当然前科はつきません。
不起訴処分の理由としては、下図の3種類があります。
被疑者が犯行を否認している否認事件の場合は、被疑者に有利となる証拠を集めて、検察官に無実の主張が合理的であることを訴えていきます。
そして、「嫌疑なし」「嫌疑不十分」として不起訴処分が得られるように求めていきます。
被疑者の犯行が証拠上明らかな場合は、事件内容によって様々ですが、主に次のような事情を訴えて、「起訴猶予」による不起訴処分を求めていきます。
- 薬物の所持量がごく微量なこと
- 使用回数が少なく依存性が低いこと
- 同種犯罪の前科前歴の有無
- 反省の度合い
- 更生に協力できる身元引受人の存在
不起訴処分の獲得を目指すには、早い段階からの弁護活動が大変重要となります。
4-4:執行猶予、減刑を求める
被疑者の犯行が証拠上明らかで起訴された場合は、執行猶予又は減刑を求める弁護活動を行います。
不起訴処分を求めた時と同様に、被疑者にとって有利となる実情を裁判官に対して訴えていきます。
覚醒剤事件の場合、初犯で営利目的でなければ、執行猶予付きの判決が出る可能性は高いです。
ここで、執行猶予について簡単に解説します。
執行猶予とは、有罪の判決を下されたが、その刑の執行を猶予する期間を与えるという意味です。
例えば、「懲役3年・執行猶予5年」の場合は、執行猶予期間中の5年間は、刑務所に入れられることはなく、通常の生活を送ることができます。
その執行猶予の5年間に罪を犯さなければ、懲役3年の刑は消滅します。
しかし、期間中に罪を犯すと執行猶予は取り消され、懲役3年の刑と犯した罪の懲役刑と合わせた期間、刑務所に入れられることになります。
裁判によって懲役刑が下されるか、執行猶予つきの判決が下されるかでは、被告人の今後の人生にとっては大きな違いがあります。
弁護士による執行猶予を求める弁護活動は、被告人にとってはとても重要なものとなります。
4-5:再犯防止のための活動をする
覚醒剤事件においては、弁護活動の中でも重要なものとして、再犯防止のための活動があげられます。
再犯防止のための活動は、被疑者・被告人にとっての有利な情状として検察官や裁判官にアピールするだけでなく、本人の将来を正常な状態にするためにはどうしても必要なものです。
覚醒剤事件では再犯の可能性もあるので、被疑者本人の自覚や反省はもちろんですが、家族や医療機関等の更生に向けた協力がとても重要となります。
弁護士は、本人の社会復帰後の再犯防止のために、本人や家族に対するアドバイスをはじめ、各種医療機関や施設等の紹介などの支援活動を行います。
覚醒剤をはじめとする薬物事件で、弁護士に相談すべきケースや、弁護士選び方、費用などについて詳しく知りたい方は、
こちらの記事をご覧ください。
【薬物で逮捕】弁護士に依頼すべきケース、依頼メリット、費用相場などを解説
まとめ
ここまで、覚醒剤で逮捕されたらどうなるのか、詳しく解説してきました。
最後に今回の内容をまとめます。
■覚醒剤で逮捕されるパターンとして、主に次の3つがあげられます。
- 職務質問からの逮捕
- 売人の逮捕から芋づる式に逮捕
- 家族・友人などの通報からの逮捕
■覚醒剤で逮捕されたときの罰則
※併科とは、刑事裁判で同時に二つ以上の刑(懲役刑と罰金刑)を科することです。
■覚醒剤事件の特徴、逮捕後の流れ
覚醒剤で逮捕された時の特徴としては、次の3つがあげられます。
- 長期間身柄を拘束されることが多い
- 初犯でも起訴される可能性がある
- 営利目的や再犯の場合は重い処分になる
■覚醒剤で逮捕されたら弁護士に依頼するのがおすすめ
弁護士にできることとして、次の5つがあげられます。
- 不利益な供述や取り調べを防げる
- 検察に早期釈放を求める
- 検察に不起訴処分を求める
- 執行猶予・減刑を求める
- 再発防止のための活動をする
この記事の内容を参考にして、これからの行動に役立ててください。