食事だけで不倫・慰謝料が認められる3つのケースと注意点|弁護士監修
この記事を読んで理解できること
- 既婚者と食事に行くだけでは不倫にあたらない
- 食事だけでも不倫だと認められる3つのケース
- 食事だけなのに慰謝料の支払い義務が発生する3つのケース
- 食事だけでも慰謝料を請求するための3ステップ
- 食事だけなのに慰謝料を請求されたときの3つの対処法
あなたは、
- 食事だけでも不倫に該当するの?
- 食事だけで不倫の慰謝料を請求されることはあるの?
- 不倫相手に、食事だけでも慰謝料を請求できるの?
などとお考えではありませんか?
結論として、既婚者が異性と食事に行っただけでは原則として不倫には該当しません。
不倫が成立する条件の「肉体関係」がないからです。
しかし、状況によっては慰謝料の請求が認められます。
「不倫関係が認められるか」と「慰謝料が認められるか」は別問題なので注意しましょう。
この記事を読めば、どのケースが不倫にあたるか、そして慰謝料の請求が認められるケースがわかります。
また、慰謝料を請求するステップや請求されたときの対処法も記載していますので、食事だけで慰謝料を請求するとき、されたときの参考にできるでしょう。
具体的には、
1章では、既婚者と食事に行くだけでは不倫にはあたらないこと、
2章では、食事だけでも不倫だと認められる4つのケース、
3章では、食事だけなのに慰謝料の支払い義務が発生する3つのケース、
4章では、食事だけでも慰謝料を請求するための3ステップ、
5章では、食事だけなのに慰謝料を請求されたときの3つの対処法
について詳しく説明します。
「今すぐ慰謝料請求したい」という方は4章を、「食事だけなのに慰謝料請求されてしまった」という方は5章をお読みください。
この記事を読んで、食事と不倫の関係について理解し、対処法について考えましょう。
目次
1章:既婚者と食事に行くだけでは不倫にあたらない
冒頭でお伝えしたとおり、既婚者と食事に行くだけでは原則として不倫には該当しません。
本当に食事だけの関係ならば、肉体関係はないからです。
そもそも「不倫」とは何でしょうか。
詳しく解説します。
1-1:そもそも「不倫」とは
不倫、不貞、浮気の3つは混同されがちです。
■不倫について
「不倫」は日常で使われる用語であり、人によって不倫に該当する範囲は違うでしょう。
法律用語では、不倫は「不貞」と呼ばれています。
「不倫」と「不貞」に大きな違いはありませんが、ここでは婚姻、内縁、婚約の関係にある者が、離婚や慰謝料を請求されるような不適切な交際をすることを「不倫」、中でも肉体関係を伴う不倫を「不貞」と呼びます。
■不貞について
「不貞」は、以下のように定められています。
配偶者(夫か妻)のある者が、配偶者(夫か妻)以外の異性と自由な意思に基づいて、性的関係を持つこと
(最高裁昭和48年11月15日判決)
不貞行為は不法行為とされているので、既婚者が配偶者以外の異性と肉体関係を持つと慰謝料を支払う義務が生じます。
手をつなぐこと、抱擁、キスなどは不貞行為にはあたりません。
つまり、食事だけでは不貞行為があったとは見なされず、慰謝料を支払わなくてよいのです。
■浮気について
「浮気」とは結婚しているか関係なく、パートナー以外と交際することです。
不倫や不貞と違い、男女両方とも独身でも成り立ちます。
浮気も日常で使われる用語であり、法律用語ではありません。
婚姻、婚約、内縁の関係がなかったり、肉体関係がない浮気では慰謝料を請求することはできません。
1-2:不倫関係が認められるかと慰謝料が認められるかは別問題
不貞行為(肉体関係)があったと判断された場合、慰謝料の請求が裁判所によって認められます。
しかし、実際には不貞行為(肉体関係)がなく、食事だけの関係なのに慰謝料を請求されるケースもあります。
不倫関係の証拠を探し出すことは難しく、状況証拠から不倫関係にあったと見なされることがあるからです。
また、不倫だと認められなくても、2人の関係が常識の範囲を超えていて精神的苦痛を負ったとして慰謝料の請求が認められるケースもあります。
2章:食事だけでも不倫だと認められる3つのケース
前の章で解説したとおり、食事だけでは不倫にはあたりません。
しかし、状況によっては不貞行為があったと認められたり、離婚の原因になってしまうケースもあります。
ポイントは、夫婦関係を侵害する行為があったかどうかです。
具体的には、以下の3つのケースがあります。
- 異性の家で食事した
- ホテルの部屋で食事した
- やめるように言っても食事を繰り返した
それぞれ説明します。
2-1:異性の家で食事した
異性の家で食事をしたというのは、他人を自宅に招いたという行為から親密な関係であることが推測できます。
判断基準として、以下の4つが考慮されます。
- 家で食事をした事実
- 滞在時間
- 頻度
- 時間帯
夜に滞在していたり、頻度が多かったりすれば不倫関係だと認められる可能性が高くなるでしょう。
2-2:ホテルの部屋で食事した
ホテルの部屋で食事をしたことは不倫関係、不貞行為(肉体関係)があったと判断されやすいです。
食事が目的ならば、ホテルの部屋ではなくレストランを選ぶのが自然だからです。
ホテルの部屋に一緒に入った時点で、不貞行為がないという弁解は極めて認められにくいでしょう。
ただし、ホテルであっても第三者の目がある、レストランのような場所で食事をしただけなら不倫とは認められません。
2-3:やめるように言っても食事を繰り返した
やめるように言っても何度も食事に行くことは、夫婦関係を破綻させる原因になります。
親密な様子で食事に何度も行かれれば悲しくなりますし、帰りが遅くなれば不安になるでしょう。
肉体関係がなくても、家族をないがしろにして異性との交際を続けている場合、離婚事由として認められる可能性があります。
コラム:既婚者から食事に誘われたときの断り方
既婚者から食事に誘われたらはっきりと断りづらいですよね。
上司など自身より立場が上の人に誘われたという理由で、上手に断れず困っていないでしょうか。
結論として、はっきりと断ることがオススメです。
「既婚者と2人きりで食事には行けません」と伝えれば大丈夫です。
パワハラや無用なトラブルを避けるために、丁寧に断りましょう。
どうしても断れないのであれば、他の人も誘いましょう。
悪い噂を流されないためにも、既婚者と2人で食事には行かないことが大切です。
3章:食事だけなのに慰謝料の支払い義務が発生する3つのケース
1章で説明したとおり、「不倫関係が認められるか」と「慰謝料の請求が認められるか」は別問題です。
不倫相手と不貞行為(肉体関係)がなくても、慰謝料の支払い義務が発生する可能性があります。
食事だけなのに慰謝料の支払い義務が発生する可能性のあるケースは、以下の3つです。
- 「もう食事に行かない」と約束したのに破った
- 愛情表現があった
- 抱擁やキスしていた
それぞれ説明します。
3-1:「もう食事に行かない」と約束したのに破った
以前、食事に行くことを注意したことがあり、「もう食事に行かない」と約束したのに破られた場合、慰謝料の請求が認められる場合があります。
夫婦関係が、侵害されたと考えられるからです。
慰謝料を請求するなら、合意書や念書などの食事に行かない約束をした証拠が必要です。
口約束のみだと、「約束をした覚えはない」と言われる可能性があるので注意しましょう。
3-2:愛情表現があった
日常的に相手に「好き」「愛している」といった愛情表現があった場合、慰謝料の請求を検討できます。
このような愛情表現が日常的にあれば、配偶者は傷つき悲しむでしょう。
しかし、明らかに冗談で言っている場合、慰謝料は請求できません。
冗談だと受け取られないような証拠として、以下の証拠が有効です。
- 愛情表現の前後を含むやりとり
- 親密な関係性であることがわかるLINEや画像
2人の間に、冗談ではないような愛情表現があったことを示すのが大切です。
3-3:抱擁やキスしていた
抱擁やキスがあった場合も、夫婦婦関係を侵害したとして慰謝料の請求が認められる場合があります。
しかし、不貞行為があった場合とくらべて請求できる額は少ないです。
慰謝料は本来、不貞行為があったときに請求するものだからです。
慰謝料を請求するなら、証拠として2人が抱擁やキスをしている写真や動画を用意しておきましょう。
4章:食事だけでも慰謝料を請求するための3ステップ
不貞行為(肉体関係)がなかったとしても、慰謝料は請求できます。
しかし、慰謝料を請求するには、入念な準備が必要です。
何の準備もしないで慰謝料を請求しても、相手は応じないでしょう。
慰謝料は、以下の3ステップで請求しましょう。
- 親密な交際があった証拠を集める
- 内容証明郵便で慰謝料を請求する
- 弁護士に相談する
それぞれ解説します。
4-1:①親密な交際があった証拠を集める
まずは、親密な関係であったことがわかる証拠を集めることから始めましょう。
以下のような証拠が有効です。
- 複数回にわたる食事のレシート
- ホテルでのルームサービスや滞在時間の記録
- 不倫関係であったことが推測されるLINEやメール
- 手をつないだりキスしたりする写真・動画
これらの動かぬ証拠を集めてから、次の行動に移しましょう。
証拠があれば相手も無視できず、慰謝料の請求に応じるので証拠を集めることが大切です。
4-2:②内容証明郵便で慰謝料を請求する
慰謝料請求は、当事者の話し合いだけで行われる場合もあります。
当事者のみで話し合う場合は、間に弁護士を入れず自身で内容証明郵便を送り、慰謝料請求の手続きを行います。
※内容証明郵便とは、法的に効力のある郵便のことです。
書類の内容だけでなく、送った時期、誰から誰に送ったかという記録も残るというメリットがあります。
4-3:③弁護士に相談する
ステップ②までで慰謝料の請求が終わればよいですが、交渉がうまくいかない場合もあります。
そのようなときは、弁護士に相談するのがオススメです。
慰謝料を請求された側が弁護士に対応を依頼することも多く、素人が弁護士に対応するのは大変です。
それだけでなく、相手が慰謝料を支払ってくれなかったり、連絡が取れなくなったりすることもあります。
弁護士が代理人として交渉してくれるだけでなく、書類も作成してくれるので慰謝料請求がラクになります。
慰謝料請求は、スムーズに進むことの方が珍しいので、困ったらすぐに弁護士に相談しましょう。
コラム:慰謝料の請求には期限がある
不倫の慰謝料請求は、不貞行為があることと、相手の個人情報を知ってから3年以内に行いましょう。
3年以上経ってしまうと、時効となり慰謝料を請求できなくなってしまうからです。
また、不貞行為があったことを知らなくても、不貞行為が行われてから20年経つと、同じように時効となるので注意しましょう。
5章:食事だけなのに慰謝料を請求されたときの3つの対処法
慰謝料を請求されたときの対処法は、主に以下の3つです。
- 請求者に対して、慰謝料の支払い義務がないことを説明する
- 食事をしただけで不倫関係ではないことを説明する
- 弁護士に相談する
それぞれ解説します。
5-1:対処法① 請求者に対して、慰謝料の支払い義務がないことを説明する
1章で説明したとおり、食事だけだと不倫にはあたらないので、そもそも慰謝料を支払う義務はありません。
しかし、請求者は怒って慰謝料を請求しているので、
- 支払い義務がないこと
- 今後はもう食事にも行かないこと
の2点を丁寧に伝えましょう。
支払い義務がないことだけを伝えると、ネットで「この人は不倫をしている」と誹謗中傷される可能性があります。
また、慰謝料を請求された場合、無視をするのはやめましょう。
慰謝料支払い請求の、訴訟をされる可能性があるからです。
それだけでなく、請求者が職場に電話をかけてきたり書類を送ったりする可能性もあります。
慰謝料を請求されたときは、正しく対処することで無用なトラブルに発展することを防げます。
5-2:対処法② 食事をしただけで不倫関係ではないことを説明する
請求者は、怒っていて冷静でないことが多いです。
不倫関係ではないことを説明することと、誤解を与えたことを謝罪すると、請求を取り下げてくれることもあります。
対処法①と同じように、あわせて「今後はもう食事に行かない」と約束すると効果的です。
5-3:対処法③ 弁護士に相談する
慰謝料を請求された場合、弁護士に相談するのがオススメです。
食事だけでも、請求が認められるケースがあるからです。
さらに、請求者が弁護士に相談して慰謝料を請求してくることもよくあります。
その場合、素人が弁護士に対応するのは大変です。
弁護士に依頼すれば、代理人として交渉してくれたり、書類の作成を代わりにしてくれたりするので安心できます。
慰謝料の請求で対応を間違えると請求が認められてしまうので、困ったら弁護士に相談しましょう。
まとめ:食事だけでは不倫にあたらない!
既婚者と食事に行っただけでは、不倫にはあたりません。
しかし、「不倫関係が認められるか」と「慰謝料が認められるか」は別問題なので注意が必要です。
不倫関係が認められなくても慰謝料が認められるケースは、具体的に以下の3つのケースがあります。
- 「もう食事に行かない」と約束したのに破った
- 愛情表現があった
- 抱擁やキスしていた
慰謝料を請求したい場合は、以下の3ステップで請求できます。
- 親密な交際があった証拠を集める
- 内容証明郵便で慰謝料を請求する
- 弁護士に相談する
また、食事だけなのに慰謝料を請求されたら、以下の3つの方法で対処しましょう。
- 請求者に対して、慰謝料の支払い義務がないことを説明する
- 食事をしただけで不倫関係ではないことを説明する
- 弁護士に相談する
不倫問題は複雑で、自身の力のみで解決するのは難しいです。
食事だけでも慰謝料を請求できるケースがあるので、確実に解決したい方は不倫問題に詳しい弁護士に相談してみましょう。