【養育費の相場】離婚後にしっかりと受け取るための4つのポイント
この記事を読んで理解できること
- 養育費とは
- 養育費の金額の決め方と相場
- 養育費の分割払い・一括払いのメリット・デメリット
- 養育費をしっかり受け取るためのポイント
あなたは、
「養育費はどうやって決めるの?」
「養育費はいくらくらいか相場が知りたい」
「養育費をきちんと受け取れるか心配だ・・・」
などの、疑問や不安をお持ちではないですか?
結論から言うと、養育費の金額は、夫婦双方の話し合いで合意が得られれば、自由に決めることができます。
また、養育費の相場としては、双方の親の収入をもとに、裁判所が養育費の金額を算定した「養育費算定表※」が、一般的な基準とされています。
一例として、子供が一人の時の養育費の相場としては、次の表のようになります。
この表は、養育費を受ける親の年収が、100~200万円の場合で、子供の人数が1人の時の相場です。
※平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
ただし、離婚後に養育費をめぐるトラブルを避けるためには、子供の親権を決めるときに、養育費の具体的な内容を法的に効力のある書面に残しておくことが重要です。
なぜなら、養育費が支払われていないケースが非常に多く、母子世帯で養育費を受け取っている割合は24%ほどとなっているからです。
これに、養育費を「過去に受けたことがある」と答えた方を足しても、全体の40%にも満たない結果となっています。
養育費は、離婚後の子供の生活、成長を支えるための大切な資金です。
離婚をする際には、今後の生活を見据えて、子供のための養育費を、具体的にしっかりと取り決めておくことが重要です。
この記事では、1章で、養育費の基本的な考え方と、養育費を請求する方法を、2章では、養育費の金額の決め方と、年収や子供の人数別の養育費相場などについて解説していきます。
さらに、3章では、養育費の支払い(受け取り)方法について、4章では、養育費をしっかり受け取るためのポイントについて解説していきます。
子供にとって大切な養育費について、個々の内容をしっかりと理解して、今後の行動に役立ててください。
1章:養育費とは
養育費とは、親が離婚した未成年の子供が自立するまでの、食費、学費、医療費、家賃などの子供の生活全般にかかる費用のことです。
子供と一緒に暮らす親(監護権者)が、子供と暮らさない親に対して養育費を請求することができます。
1-1:養育費の基本的な考え方
養育費の基本的な考え方は、離婚をして子供を育てていない親(非監護権者)には、子供に対して養育費を支払う義務があるということです。
この養育費の支払い義務は、子供の生活を最低限保持するための扶養的な義務(生活扶助義務)ではなく、子供に対して親と同じ程度の生活を常にさせる義務(生活保持義務)として定められています。
そのため養育費は、養育費を負担する親(義務者)が、自分の生活を維持するお金を除いて、どれだけ子供を監護する親(権利者)に支払えるかで算定されています。
養育費の金額の決め方と相場については、この後の2章で詳しく解説します。
1-2:養育費を請求する方法と流れ
養育費を請求する方法としては、一般的に離婚紛争の際に、親権を求める手続きと同時に進められることが多いです。
またその流れとしては、次の表のようになります。
それぞれ解説していきます。
離婚の際に、親権を獲得するためのポイントなど、詳しくはこちらの記事で解説しています。
1-2-1:夫婦間の話し合い(協議)で決める
離婚と同じく養育費も、夫婦間の話し合いから始まり、双方の合意によって決められます。
子供の将来を考えて、親として子供の利益を最優先事項として話し合い、養育費を決めることが重要です。
養育費の決め方としては、現在子供を育てるのにかかっている費用や、今後の成長に伴って必要とされる費用、お互いの財産や今後の収入の増減などを想定して決めていく形が一般的です。
離婚に関する合意が得られた場合は、合意の内容だけでなく、養育費の具体的な取り決めを記載した離婚協議書を作成します。
養育費の具体的内容としては、金額や支払い時期、支払い方法、支払期間等があげられますが、後日養育費の未払い等のトラブルが生じないように公正証書にしておく方が賢明です。
公正証書とは、公証役場で公証人が法律にしたがって作成する公文書のことです。
公正証書に記載された養育費の未払いが発生した際は、裁判を起こさなくても、相手の給料や財産を差し押さえるなど法的手続きをとることができます。
1-2-2:調停による仲介によって決める
夫婦間の話し合いで離婚の合意が得られない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てて、離婚の話し合いの中で養育費も決められます。
調停では、裁判官1名と調停委員2名からなる調停委員会によって、双方の意見の聞き取りや条件面の話し合いが夫婦別々に行われます。
養育費の話し合いでは、現在子供を育てるのにかかっている費用や、今後の成長に伴って必要とされる費用、お互いの財産や今後の収入の増減など、双方からの聞き取りが行われます。
調停による話し合いの結果、夫婦双方が合意した場合は、養育費の合意した内容が調停調書に記載されます。
また、養育費の請求は、離婚調停・訴訟の際に取り決められることが一般的ですが、離婚後に養育費請求の申し立てを行うこともできます。
養育費請求の調停が成立した場合は、調停調書が作成されます。
養育費請求調停での話し合いがまとまらない場合は、自動的に家庭裁判所の審判によって養育費が決められ審判調書が作成されます。
家庭裁判所の調停や審判で養育費が決められた場合は、将来養育費が不払いの際に、強制執行(差押え)もできます。
1-2-3:離婚訴訟によって決める
離婚を争う離婚調停で合意が得られない場合は、離婚訴訟の際に、離婚の成否と一緒に親権や養育費も判決によって決められます。
離婚訴訟の流れとしては、次のようになります。
- 家庭裁判所に離婚裁判の訴状を提出
- 裁判所から口頭弁論期日の呼出状
- 第1回口頭弁論が開かれる
- 第2回目以降も口頭弁論が開かれる
- 判決、裁判の終了
離婚訴訟の内容はもちろん様々ですが、裁判にかかる期間は1年以上と言えます。
離婚訴訟では、離婚協議・調停のような話し合い、合意による決定ではなく、提出された訴状・書面等をもとに、裁判官の判断によって離婚の成否や養育費等が決められます。
離婚の問題について、ここまで合意が得られずに離婚訴訟にまで及んだ場合は、弁護士への依頼を強くおすすめします。
なぜなら、離婚訴訟では、法的なアドバイスだけでなく、あなたに有利な実情を論理的に説明し、必要な証拠等を揃えて裁判所との対応を有利に進めることが必要となるからです。
また、養育費等の相場などを踏まえて、スムーズに交渉を進めることが可能となります。
さらに、弁護士に依頼することで、離婚訴訟の際に必要となる煩雑な法律手続きや申請書類などの作成を全て任せることができます。
離婚問題、特に未成年のお子様を抱えて、親権や養育費のことでお悩みの場合は、離婚協議の段階から弁護士に交渉を依頼されることをおすすめします。
1-3:養育費を貰える期間
養育費を貰える期間は、基本的には子供が成人するまでとするのが一般的です。
ただし、子供が大学に進学し経済的自立が難しく、学費などがかかる場合は、養育費を負担する親(義務者)との話し合いによって養育費の期間の延長など決めることになります。
逆に、子供が高校を卒業して就職した場合などは、経済的自立が認められるとして、18歳で養育費の支払いが終えられることが多いです。
2章:養育費の金額の決め方と相場
養育費の金額は、夫婦双方の話し合いで合意が得られれば、自由に決めることができます。
しかし、1章で説明したように、養育費の支払い義務として、「子供に対して親と同じ程度の生活を常にさせる義務(生活保持義務)」が定められています。
そのため、双方の親の収入をもとに、裁判所が養育費の金額を算定した「養育費算定表※」を基準として、決められるのが一般的です。
この養育費算定表では、夫婦それぞれの収入や子の人数、年齢に応じて、標準的な養育費が算出されています。
これから、この養育費算定表をもとに、年収や子供の人数、年齢別の養育費の相場について解説していきます。
※平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
2-1:年収や子供の人数、年齢別の養育費の相場
裁判所の養育費算定表では、夫婦それぞれの収入ごとの養育費が、子供が1~3人、年齢が0~14歳、15歳以上という条件別に算出されています。
ここでは、養育費を受ける親の年収が、100~200万円の場合で、子供の人数が1人の場合、2人の場合に分けて、おおよその養育費の相場を表にしていきます。
また、下の表は、養育費を支払う側の職業が、給与所得者の場合の算定表となっています。
養育費を支払う側の職業が自営業の場合は、下の表の養育費の相場より、それぞれ1~2万円ほど高くなります。
2-1-1:子供が1人の時の相場
この表は、養育費を受ける親の年収が、100~200万円の場合で、子供の人数が1人の時の相場です。
養育費を受ける親の収入が、100万円未満の場合は、表の養育費の相場より1~2万円ほど高くなり、収入が200万円以上の場合は、逆に1~2万円ほど低くなります。
2-1-2:子供が2人の時の相場
この表は、養育費を受ける親の年収が、100~200万円の場合で、子供の人数が2人の時の相場です。
養育費を受ける親の収入が、100万円未満の場合は、表の養育費の相場より1~2万円ほど高くなり、収入が200万円以上の場合は、逆に1~2万円ほど低くなります。
2-2:養育費が増額・減額される場合もある
養育費は、夫婦間の合意があれば、公正証書を作成していても増額や減額することができます。
また、正当な理由があれば、裁判所によって変更が認められることもあります。
前述の2つの表でもわかるように、養育費は、夫婦それぞれの収入や、子供の年齢によってその金額は増減します。
特に、子供の年齢が15歳以上になると、高校進学や大学進学を目指して塾に行くなど、必要な教育費が増えてきます。
また、病気やケガなどによって、収入が減少したり、医療費が必要になるなど、お互いの生活状況が変化し、養育費の見直しが必要となる場合もあります。
ここで、養育費が増額・減額されるよくある事例をあげてみます。
また、次のような場合は、養育費の免除が認められることもあります。
- 養育費の免除に受け取る側が合意した
- 支払う側が生活保護を受けたり、病気で働けない
- 受け取る側が再婚し扶養義務が移行した
離婚後、夫婦それぞれの生活状況も年月が経つと変化し、当然子供の年齢も上がってきます。
そういう場合は、養育費の増額や減額について話し合いを求め、現状に合った養育費に変更することは可能です。
3章:養育費の分割払い・一括払いのメリット・デメリット
養育費の支払い方法としては、合意した条件のもと、決められた期限まで毎月一定額を、子供名義の口座に振り込む形が一般的です。
また別に、子供が高校や大学などに進学の際に、まとまった金額を支払うよう取り決めたケースもあります。
ここで簡単に、養育費の分割払い・一括払いのメリット・デメリットをそれぞれあげてみます。
3-1:養育費の分割払い
養育費の分割払いの、メリット・デメリットは、上の表のようになります。
受け取る側のメリットとしては、生活環境の変化によっては増額できる可能性があることです。
ただし、将来、養育費が支払われなくリスクもあります。
支払う側のメリットとしては、一括払いではないので、一度に多額の支払いをする必要がないことです。
デメリットとしては、支払いが長期間続き、子供がそれ以上のお金を必要な時には、増額請求される可能性もあることです。
3-2:養育費の一括払い
養育費の一括払いの、メリット・デメリットは、上の表のようになります。
受け取る側のメリットとしては、まとまったお金が受け取れて、分割払いの時の未払いの心配がないことがあげられます。
ただし、贈与税がかかる可能性もありますが、離婚後に相手との関わりを持ちたくない場合などは有効だといえます。
支払う側のメリットとしては、長期的な負担が減り、心機一転、前向きに次に進むことができます。
4章:養育費をしっかり受け取るためのポイント
離婚後に、養育費が支払われていないケースは非常に多く、母子世帯で養育費を受け取っている割合は、24%ほどとなっているからです。
その原因の一つとして、そもそも、養育費の取り決めをしていないケースが、前述の平成28年の資料※では、母子世帯のうち54.2%もあるという結果が出ています。
こういった養育費の未払いを防ぐ方法として、次の4つがあげられます。
- 養育費を必ず取り決める
- 養育費が決まったら公正証書を作る
- 子供との面会交流を定期的に認める
- 不払いの場合は強制執行を申し立てる
それぞれ解説していきます。
4-1:養育費を必ず取り決める
まず始めに必要なことは、離婚について話し合いを行い、未成年の子供がいる場合は、親権とともに養育費の取り決めを必ず行うということです。
前にも述べたように、養育費の決め方としては、現在子供を育てるのにかかっている費用や、今後の成長に伴って必要とされる費用、お互いの財産や今後の収入の増減などを想定して決めていく形が一般的です。
養育費の具体的内容としては、金額や支払い時期、支払い方法、支払期間等があげられます。
2章で解説した2つの表や、「養育費算定表※」を参考にして、子供の成長を考えて、できるだけ具体的に取り決めていくことが重要です。
※平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
4-2:養育費が決まったら公正証書を作る
協議離婚の際に、養育費の具体的な内容、金額等を取り決めた場合は、公証役場で公証人が法律にしたがって作成する公正証書として残しておくことが重要です。
さらに、「養育費が未払いの際は、強制執行を認める」という強制執行認諾文言付きの公正証書にしておく必要があります。
夫婦間の話し合いで合意した内容でも、離婚後にトラブルになることは多いです。
養育費の未払いが発生した際は、この公正証書によって、裁判を起こさなくても相手の給料や財産を差し押さえるなど法的手続きをとることができます。
公正証書の内容は、養育費を支払う側だけでなく、受け取る側にも守る義務があります。
そのため、公正証書に記載する内容、金額以上のものを、むやみに請求することはできません。
4-3:子供との面会交流を定期的に認める
子供の養育費を滞りなく支払ってもらうためには、相手に子供の存在を身近なものとして受け止めてもらうことが大事です。
そのためには、子供との面会交流を定期的に認めてあげることも有効な方法だといえます。
特に子供がまだ小さい場合は、面会交流だけでなく、子供の運動会や行事ごとなどを見守る機会を与えることが、親だけでなく子供にとっても必要かもしれません。
当然、離婚の状況によっては、子供との面会を認めることが難しい場合もありますが、一般的には定期的な面会交流は認められるべきものだといえます。
4-4:不払いの場合は強制執行を申し立てる
養育費の支払いがない場合は、給与や財産の差し押さえなどの強制執行を求めることができます。
そのためには、次に上げる5つの書類のうちのいずれかが必要となります。
- 公正証書・・・協議離婚
- 調停調書・・・調停離婚
- 審判書・・・審判離婚
- 和解調書・・・和解離婚
- 判決書・・・裁判離婚
4-2で説明した公正証書のほか、これらの書類によって、裁判所に強制執行による差し押さえの申し立てを行うことができます。
養育費の強制執行では、相手の給与や預貯金に対して、未払い分や将来の養育費の分まで差し押さえができます。
相手の給料が差し押さえの対象となった場合は、裁判所から勤務先の会社に対して通知が送られ、給与から毎月一定額が控除されることになります。
コラム:「養育費保証」を利用する
「養育費保証」という、養育費の未払い防止に役立つサービスがあります。
養育費保証とは、相手が途中で養育費を支払わなくなった場合に、養育費の12ヵ月分を上限として、保証会社が養育費を立て替えてくれるというものです。
これによって、養育費の未払いがあった場合に、相手に催促したり、難しい強制執行の申し立ての手続きなどがすべて不要となります。
さらに、各自治体の中には、保証料として本人が負担した費用を一部補助する「養育費保証契約の補助(養育費保証促進補助金)」などの取り組みを行っているところもあります。
こうした養育費保証や、各種の補助事業等をよく調べて、活用されることをおすすめします。
まとめ
この記事では、離婚する際の子供の養育費について解説してきました。
最後に今回の内容をまとめます。
■養育費とは
養育費とは、親が離婚した未成年の子供が自立するまでの、食費、学費、医療費、家賃などの子供の生活全般にかかる費用のことです。
■養育費を請求する方法と流れ
養育費を請求する方法としては、一般的に離婚紛争の際に、親権を求める手続きと同時に進められることが多いです。
■養育費の金額の決め方と相場
双方の親の収入をもとに、裁判所が養育費の金額を算定した「養育費算定表※」を基準として、決められるのが一般的です。
※平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
【子供が1人の時の相場】
【子供が2人の時の相場】
※これらの表は、養育費を受ける親の年収が、100~200万円の場合の相場です。
■養育費が増額・減額される場合もある
■養育費の支払い方法とメリット・デメリット
■養育費をしっかり受け取るためのポイント
- 養育費を必ず取り決める
- 養育費が決まったら公正証書を作る
- 子供との面会交流を定期的に認める
- 不払いの場合は強制執行を申し立てる
この記事の内容を参考にして、これからの行動に役立ててください。
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