婚姻関係の破綻とは?破綻の定義と認められやすい6つのケースを解説

監修者

弁護士法人新橋第一法律事務所
代表弁護士 住川 佳祐

婚姻関係の破綻とは?破綻の定義と認められやすい6つのケースを解説
チェック
この記事を読んで理解できること
  • 婚姻関係の破綻とは?
  • 婚姻関係の破綻が認められやすい6つのケース
  • 婚姻関係の破綻が認められにくいケース
  • 婚姻関係の破綻を認めてもらうために必要なこと

あなたは、

  • 婚姻関係の破綻とはどんな状態?
  • 婚姻関係の破綻を理由に離婚できるか知りたい
  • 破綻が認められる・認められないケースを知りたい

などとお考えではありませんか?

婚姻関係の破綻とは、夫婦に婚姻生活を継続する意思がなく、夫婦関係を回復できる見込みがない状態をいいます。

なおかつ、破綻に至った原因が法定離婚事由にあたる場合は、婚姻関係が破綻していると認められることが多いです。

しかし、夫婦生活は夫婦にしかわからないことが多く、第三者から見ても判断できないこともあります。

婚姻関係の破綻を理由に離婚する場合は、長期間の別居や離婚協議をしているなど、破綻していることを証明することが必要です。

どんなに夫婦の間でお互いに冷めきっていると思っていても、どちらかに離婚する意思がなく有責性がない場合は、婚姻関係の破綻を理由とする離婚が難しい場合があります。

そこで、この記事では、

1章では、婚姻関係の破綻とは?

2章では、婚姻関係の破綻が認められやすい6つのケース

3章では、婚姻関係の破綻が認められにくいケース

4章では、婚姻関係の破綻を認めてもらうために必要なこと

について解説します。

この記事を読んで、婚姻関係の破綻が認められやすいケースや、破綻が認められにくいケース、婚姻関係破綻を証明する証拠集めのポイントをよく理解してください。

不倫の慰謝料でお悩みのあなたへ、まずはお気軽にご相談ください
不倫の慰謝料でお悩みのあなたへ、まずはお気軽にご相談ください

1章:婚姻関係の破綻とは?

婚姻関係の破綻は、夫婦の間で婚姻継続の意思がなく、夫婦としての共同生活を回復させる見込みがないほど悪化している状態をいいます。

破綻に至った原因が、法定離婚事由に該当する場合は、裁判所など第三者から認められやすくなります。

しかし、性格の不一致などが原因で、夫婦の間が冷めきっていると思っている場合は、婚姻関係の破綻を証明することは難しくなります。

  • 婚姻関係の破綻の定義
  • 婚姻関係の破綻と別居の有無

それぞれ解説します。

1-1:婚姻関係の破綻の定義

婚姻関係破綻の定義は、明確に定められているわけではありません。

しかし、次の3つの条件を満たす場合、婚姻関係の破綻が認められる可能性があります。

  • 長期間別居している場合
  • 婚姻関係の継続の意思がなく離婚協議や離婚訴訟をしている場合
  • 夫婦関係が悪化した原因が法定離婚事由にあたる場合

民法752条では「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められています。

これらに反している場合は、婚姻関係が破綻していると判断される可能性があります。

※(同居、協力及び扶助の義務)

第七百五十二条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

1-2:婚姻関係の破綻と別居の有無

夫婦の別居の有無は、婚姻関係の破綻を判断する重要なポイントです。

離婚に向けた別居期間が長期的に続いている場合は、破綻が認められる可能性が高くなります。

ただし、長期間の別居でも、仕事の都合などやむを得ない場合はこれにあたりません。

あくまでも、離婚に向けて長期的に別居している場合に、婚姻関係が破綻していると判断されやすくなります。

具体的な別居期間は明確に定められているわけではなく、同居期間に対する別居期間や、子どもの有無なども含めて判断されます。

2章:婚姻関係の破綻が認められやすい6つのケース

婚姻関係の破綻が認められるには、主に次のような6つのケースがあげられます。

  • 長期間の別居をしている
  • DVやモラハラなど暴力がある
  • 配偶者が犯罪行為により服役中である
  • 配偶者が家庭を省みない悪意の遺棄がある
  • 夫婦間で離婚の意思がある
  • 不就労・過度な飲酒・浪費癖がある

それぞれ解説します。

2-1:長期間の別居をしている

先にも述べた通り、離婚を前提とした長期間の別居は、婚姻関係の破綻が認められやすいです。

配偶者の不貞行為などの有責性にかかわらず、夫婦関係の回復が見込めない場合は、さらに認められやすくなります。

別居期間は定められているわけではなく、同居期間や家族構成などにもよりますが、3年から5年程度が目安です。

2-2:DVやモラハラなど暴力がある

配偶者に対するDVやモラハラなどの、身体的・精神的暴力は、婚姻関係を破綻させる原因として認められる可能性があります。

また、加害者側は、離婚原因をつくった有責配偶者になる可能性もあるでしょう。

DVやモラハラなどの暴力がある場合、病院の診断書や、暴言の動画や録音した音声データがあると、婚姻関係の破綻を証明しやすくなります。

2-3:配偶者が犯罪行為により服役中である

配偶者が犯罪行為により服役中で、もう一方の配偶者に社会的な影響が及び、経済的・社会的に追い詰められた場合は、婚姻関係の破綻が認められる可能性があります。

離婚訴訟においても、犯罪行為や服役したことが、婚姻関係を破綻させたと判断される可能性もあるのです。

たとえば、犯罪行為を何度も繰り返し、複数回の服役をしている場合は、婚姻関係の破綻が認められる可能性が高くなります。

2-4:配偶者が家庭を省みない悪意の遺棄がある

配偶者が家庭を省みず、趣味や仕事などにのめり込んでしまった場合、婚姻関係の破綻が認められる可能性があります。

家庭よりも趣味や宗教活動などに過度にのめり込み、生活に著しい支障をきたしている場合は、悪意の遺棄としてみなされることがあります。

また、家庭以外のことを優先するあまり、生活費を入れない場合なども悪意の遺棄にあたる可能性があるでしょう。

2-5:夫婦間で離婚の意思がある

夫婦間でお互いに離婚の意思があり、離婚協議や離婚訴訟を行っている場合は、婚姻関係の破綻が認められる可能性があります。

ただし、夫婦の一方だけに離婚の意思がある場合はこれに該当しません。

夫婦がお互いに離婚の意思があり、具体的な離婚条件を話し合う場があることが前提となります。

話し合いは、夫婦間のみならず調停や裁判などの場合も、婚姻関係の破綻が認められる可能性があります。

2-6:不就労・過度な飲酒・浪費癖がある

夫婦のうちどちらか一方が、健康上に問題がないのに不就労で生計が困窮する場合は、婚姻関係が破綻していると認められる可能性があります。

過度な飲酒や浪費癖がある場合も、夫婦で協力して生活することに支障をきたすため、破綻が認められやすくなるでしょう。

飲酒癖の悪さによっては、DVやモラハラに発展する恐れもあります。

浪費癖も借金を抱えるレベルになると、生計に影響するため、婚姻生活を継続しがたい原因になります。

3章:婚姻関係の破綻が認められにくいケース

夫婦関係を回復できる見込みがある場合、婚姻関係の破綻が認められにくくなります。

この場合、どんなに夫婦間で冷めきっていると感じていても、法的に婚姻関係の破綻を認めてもらうことは難しくなります。

  • 同居している場合
  • 家族で仲良く過ごしたり家族行事を計画・実施している
  • 別居期間が短期的で離婚に向けた具体的な話し合いがない

それぞれ解説します。

3-1:同居している場合

夫婦が同居していて性生活や会話がある場合、婚姻関係の破綻は認められにくくなります。

ときどき夫婦ケンカがあったり、会話のない日があったりしても、夫婦が協力して生活している場合は、夫婦関係の回復の余地があると判断されるからです。

3-2:家族で仲良く過ごしたり家族行事を計画・実施している

家族で仲がよく、家族行事の計画をしたり実際に出かけたりしている場合も、婚姻関係の破綻が認められにくくなります。

夫婦間で多少冷めていた場合でも、夫婦の相互義務を果たしているとみなされる可能性があるためです。

家族で仲がよいということは、日常的に会話があることや、一緒に食事をしていることが考えられます。

この場合は別居に至る可能性も低いため、婚姻関係の破綻は認められにくいでしょう。

3-3:別居期間が短期的で離婚に向けた具体的な話し合いがない

別居期間が短期的で、離婚に向けた具体的な条件などの話し合いがない場合も、婚姻関係の破綻は認められにくくなります。

夫婦ゲンカをして、一時的に夫婦の一方が実家に帰る場合や、車中泊をした場合などがこれにあたります。

また、夫婦間で離婚に向けた具体的な話し合いがない場合、夫婦間で離婚の意思があるとはいいきれません。

そのため、夫婦関係の回復の見込みがあると判断されるケースが多いです。

4章:婚姻関係の破綻を認めてもらうために必要なこと

調停や裁判で婚姻関係の破綻を認めてもらうためには、破綻していることを証明できる具体的な事実を主張することと、婚姻関係の破綻を立証できる証拠が必要です。

  • 婚姻関係の破綻についての具体的な事実の主張
  • 婚姻関係が破綻している証拠を集める

それぞれ解説します。

4-1:婚姻関係の破綻についての具体的な事実の主張

婚姻関係の破綻を認めてもらうためには、夫婦間で離婚の意思がある離婚を前提とした別居などの具体的かつ主張できる事実が必要です。

たとえば、夫婦間で離婚条件の話し合いをしている場合、離婚条件に関するメールなどのやり取りがあることがあげられます。

そのほかでは、離婚を前提とした別居であることがわかる夫婦間のやり取りや音声データなども有効です。

4-2:婚姻関係が破綻している証拠を集める

婚姻関係の破綻を立証できる証拠を集めることも、調停や裁判において、婚姻関係の破綻を認めてもらうために必要なことです。

たとえば、DVやモラハラなどが原因の場合は、怪我や病院からの診断書の画像やコピー、暴言を録音した音声データなどがあげられます。

また、別居を開始したことを立証できる、賃貸借契約書や住民票なども証拠になるでしょう。

離婚について弁護士に依頼する場合は、離婚協議書なども証拠になる可能性があります。

まとめ:婚姻関係の破綻が認められる6つのケース

最後に、これまでの内容を振り返ります。

■婚姻関係の破綻とは?

  • 長期間別居している場合
  • 婚姻関係の継続の意思がなく離婚協議や離婚訴訟をしている場合
  • 夫婦関係が冷めた原因が法定離婚事由にあたる場合

■婚姻関係の破綻が認められやすい6つのケース

  • 長期間の別居をしている
  • DVやモラハラなど暴力がある
  • 配偶者が犯罪行為により服役中である
  • 配偶者が家庭を省みない悪意の遺棄がある
  • 夫婦間で離婚の意思がある
  • 不就労・過度な飲酒・浪費癖がある

■婚姻関係の破綻が認められにくいケース

  • 同居し、家族行事の計画をたてるなど良好な関係性を築いている場合
  • 別居期間が短期的で離婚に向けた具体的な話し合いがない

■婚姻関係の破綻を認めてもらうために必要なこと

  • 婚姻関係の破綻についての具体的な事実の主張
  • 婚姻関係が破綻している証拠を集める

この記事の内容を参考にして、婚姻関係の破綻を理由に離婚する際に、役立ててください。