離婚後に妊娠した|パートナーを法律上の父にするための3つの方法

監修者

弁護士法人QUEST法律事務所
代表弁護士 住川 佳祐

離婚後に妊娠した|パートナーを法律上の父にするための3つの方法
チェック
この記事を読んで理解できること
  • 離婚後に妊娠したら、最初に必ず知っておくべきこと3個
  • 離婚後300日問題とは
  • 前夫ではなく今のパートナーを父にする手続き
  • 前夫の戸籍にいったん入った場合の対処法

あなたは、

  • 離婚後に妊娠したら、どうすべきなのか知りたい
  • 離婚後の妊娠には、何か注意点があったはずだ
  • 結婚している時の妊娠と離婚後の妊娠は、どのような点で異なるのか

このようにお考えではありませんか?

「離婚したのに戸籍上は前の夫の子供になる、という話を聞いたこともあるし、どうしたらいいんだろう…」と不安になりますよね。

離婚後の妊娠には、注意しなければならない点がいくつかあります。

離婚後300日以内に生まれた子供は、血縁関係がなくても前夫の戸籍に入る」というルールもそのうちの1つです。

結論から言えば、離婚後300日以内の出産でも、前夫の戸籍に入れずに済む方法はあります。

なぜなら、血のつながった父親を父親として認めることを想定した、法的な手続きが存在するからです。

また2024年の4月1日の民法改正により、戸籍の問題を解決するためのハードルは格段に下がりました。

この記事を読むことで、離婚後に妊娠したら必ず知っておくべき知識が得られ、今後の対応の参考にできます。

さらに前夫ではなく、今のパートナーを法律上の父にするためには、何をしたらよいかもわかるでしょう。

そこで、この記事では、

1章で、離婚後に妊娠したら、最初に必ず知っておくべきこと3個

2章で、離婚後300日問題とは

3章で、前夫ではなく今のパートナーを父にする手続き

4章で、前夫の戸籍にいったん入った場合の対処法

について解説します。

この記事を読んで必要な知識を身につけ、不安を取り除いてベストな状態で出産に臨みましょう。

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1章:離婚後に妊娠したら、最初に必ず知っておくべきこと3個

この章では、離婚後に妊娠したら必ず知っておくべきことを紹介します。

具体的には、以下の3つです。

  • 法律上の父親と血縁上の父親が別になる可能性がある
  • 実父を法律上の父とするにはさまざまな手続きが必要になる
  • 出生届を出さない無戸籍児にはリスクがある

それぞれ解説します。

1-1:戸籍上の父親と血縁上の父親が別になる可能性がある

生まれてくる子供の父親が元夫ではない場合、戸籍上の父親と血縁上の父親が別になる可能性があります。

なぜなら、誰を戸籍上の父親とするかは、民法によって定められているからです。

民法では、「結婚生活の中で妻が妊娠した子供は、夫の子」、さらに「離婚後300日以内に生まれた子は、結婚中に妊娠したもの」と推定します。

そのため、離婚してから300日以内に子供が生まれると、たとえ血縁関係がなかったとしても、戸籍上は元夫の子供となってしまうのが原則です。

赤ちゃんが元夫の子供ではない場合、このルールを受け入れることはなかなか難しいでしょう。

これがいわゆる「離婚300日問題」です。

詳しくは2章で解説します。

1-2:実父を法律上の父とするにはさまざまな手続きが必要になる

では、離婚してから300日以内の子供でも、元夫ではなく実父を法律上の父とすることはできるのでしょうか。

結論から言うと、実の父親を法律上の父とすることは可能です。

ただし、それにはさまざまな手続きを必要とします

手続きの具体的な内容については3章で解説しますので、早く知りたい方は読み飛ばしていただいても構いません。

1-3:出生届を出さない無戸籍児にはリスクがある

戸籍上の父親が元夫になるのを避けたいからと、出生届を出さないままの方もいます。

その場合、子供は「無戸籍児」として、大変なリスクを背負うことになるのです。

戸籍を必要とするサービスが受けられないため、

  • 身分を証明できない
  • 病院や学校に行けない
  • 結婚や就職に支障が出る

といった問題が起こり、生きていく上で多くの困難にさらされるでしょう

人間関係がうまくいかなかったり、心身を病んでしまったりというのも珍しくありません。

「元夫の戸籍に子供を入れたくない」という気持ちは当然ですが、そのために無戸籍を選ぶことのないようにしましょう。

2章:離婚後300日問題とは

この章では、「離婚後300日問題」とは何かを解説していきます。

また、民法改正の前と後では、どのような点が異なるかについても把握しておきましょう。

  • 離婚後300日以内に生まれたら、戸籍の上では前夫の子になる
  • 2024年3月31日までと、4月1日以降の違い

それぞれ解説します。

2-1:離婚後300日以内に生まれたら、戸籍の上では前夫の子になる

ここでは、離婚後300日問題がどのように起こるのかを説明します。

本来、生まれてくる子供が困らないようにと定められたのが、以下2つのルールです。

  • 法律上の父親を決める嫡出推定
  • 推定の重複を防ぐ再婚禁止期間

ところが、今日ではこれらのルールが離婚300日問題を引き起こしています。

それぞれ解説します。

2-1-1:法律上の父親を決める嫡出推定

民法772条では「結婚して200日が経過したあと、または離婚後300日以内に生まれた子供は、前の夫の子供と推定すると定められています。

現行民法の300日規定

たとえ離婚しても、父親である以上は子供に対する責任があり、養育費を支払う義務が生じます

明治時代にできたこの法律は、扶養義務のある父親が誰であるかを早いうちに確定し、生まれてきた子供の権利を守るためのものでした。

  • 結婚している間に妊娠したら夫の子供と推定する
  • 結婚してから200日経過したあと、または離婚が成立してから300日以内に生まれた子供は、結婚している間に妊娠したものと推定する

このルールが「嫡出推定規定」です。

2-1-2:推定の重複を防ぐ再婚禁止期間

前に述べた「嫡出推定規定」では、前夫の子なのか再婚後の子なのかを判断できないケースがあります。

そのようなケースを防ぐため、法律によって定められたのが「再婚禁止期間」です。

たとえば前の夫と離婚して10日後に再婚し、再婚から280日後(離婚して290日後)に子供が生まれたとしましょう。

その場合、

  • 結婚してから200日が経過しているため、現在の夫の子である
  • 離婚が成立してから300日以内であるため、再婚後夫の子である

推定の重複を防ぐ再婚禁止期間

上2つのどちらにも該当し、推定が重複して、誰の子供であるか決められない状態になってしまうのです。

そこで、生まれてくる子供が誰の子なのかを明確にするため、離婚した女性に対し、再婚してはいけない100日間を設けました。

これが「再婚禁止期間」です。

2-2:2024年3月31日までと、4月1日以降の違い

明治時代から120年以上続いていた、家族のあり方に関する民法も、2024年4月1日をもって改正されることになりました。

具体的には、

  • 嫡出推定制度の見直し
  • 再婚禁止期間の廃止
  • 母と子も嫡出否認が可能

上の3つの点で変わります。

順番に解説します。

2-2-1:嫡出推定制度の見直し

生まれてくる子供の父親を推定する「嫡出推定」のルールは、2024年4月1日を境に異なります。

嫡出推定のルール

■2024年3月31日まで

離婚から300日以内に生まれた子供は、前の夫の子と推定する

■2024年4月1日以降

再婚している場合、離婚から300日以内に生まれた子供でも、現在の夫の子と推定する

生まれてくる子供の権利を守るためのルールも、血縁上の父親が前夫であれば問題ありません。

しかし血縁上の父親が別である場合、改正前の民法だと困ったことが起こります。

離婚後300日以内に出産したら、戸籍に記載される父親と、血の繋がりを持つ父親が別になってしまうのです。

この戸籍の問題を回避したいからと、あえて出生届を出さないでいると、子供は無戸籍児として生きることを強いられます。

このたびの法改正は、上記の問題を解決するために行われたものでした。

2-2-2:再婚禁止期間の廃止

 嫡出推定規定の変更に伴い、これまで女性に対して設けられていた、100日間の再婚禁止期間が廃止になります。

■2024年3月31日まで

離婚成立から100日を経過した後でなければ、再婚することができない

■2024年4月1日以降

前夫との離婚が成立すれば、いつでも再婚できる

(再婚禁止期間の廃止)

再婚後に生まれた子供は一律で現在の夫の子と推定されるようになったため、推定の重複する期間がなくなりました。

その結果、再婚禁止期間が廃止となったのです。

2-2-3:母と子も嫡出否認が可能

嫡出推定された子供と、法律上の父子関係を否定するための手続きを、「嫡出否認」といいます。

この嫡出否認についても、変更がありました。

■2024年3月31日まで

  • 嫡出否認の訴えを起こせる者は夫のみ
  • 訴えを起こせるのは、子供の出生を知ったときから1年以内

■2024年4月1日以降

  • 嫡出否認の訴えを起こせるのは夫、母と子および前夫
  • 訴えを起こせるのは、子供の出生を知ったときから3年以内

嫡出否認内容

2024年3月31日までは、法律上の父に対してのみ、嫡出否認を訴える権利が認められていました。

しかし民法改正後は母と子、および前夫も否認できるようになります。

ただし、否認権の濫用を防ぐため、母や前夫が嫡出否認できるのは「子供の利益を害さない場合のみ」と定められていることもポイントです。

訴えを起こせる期間も延長され、子の出生を知ってから1年以内だったものが、3年以内に変更されます。

旧民法では「いったん前夫の戸籍に入れると、前夫以外は嫡出否認ができない」ため、母親が出生届の提出をためらい、無戸籍児ができる原因になっていました。

今回の民法改正は、無戸籍児を減らし、生まれてくる子供と母親の権利を守ることにつながるでしょう。

3章:前夫ではなく今のパートナーを父にする手続き

この章では、前夫ではなく今のパートナーを法律上の父とする手続きについて解説します。

民法改正がなされた2024年4月1日以降は、出産までに再婚するのがもっともシンプルで簡単な方法です。

ただし、さまざまな事情から、すぐには再婚できない方もおられるでしょう。

その際には、以下のような手続きが必要です。

  • 出生届と同時に「懐胎時期に関する証明書」を提出する
  • いったん出生届を提出しあとで訂正する
  • 出生届を出さず子供の住民票だけ先に作成する

それぞれ解説します。

3-1:出生届と同時に「懐胎時期に関する証明書」を提出する

医師の証明書を添えることで、離婚後300日以内の出産であっても、元夫を父としない特別な出生届の提出が認められています

下のポストにあるように、「子供を元夫の戸籍に入れたくない」場合には有効な手段です。

 その証明書は「お腹の赤ちゃんを妊娠したのは離婚後である」と医師が証明するもので、「懐胎時期に関する証明書」といいます。

この証明があれば「嫡出推定が及ばない」とされ、生まれてくる子供を、自分(母親)の非嫡出子とした出生届が提出できるのです。

ただし、「懐胎時期」は明確な日にちを決めるものではなく、「◯年◯月◯日から●年●月●日まで」といった形で表記されます。

離婚成立が懐胎時期よりも後であった場合、この方法は使えないので注意しましょう。

3-2:いったん出生届を提出しあとで訂正する

前夫を戸籍上の父とした出生届をいったん提出してしまい、あとで戸籍を訂正するというのがこのパターンです。

ただしこの方法は、裁判所で嫡出否認の手続きを行う必要があり、時間やお金もかかることを理解しておきましょう。

実父を法律上の父とする手続きについては、4章で解説します。

3-3:出生届を出さず子供の住民票だけ先に作成する

実は出生届を出さなくても、住民票は作成できます

 

なお、住民票の発行には一定の要件を満たす必要があります。

上のポストのように、まずは住んでいる自治体に事情を話し問い合わせてみましょう。

住民票があれば保険証が作れるだけでなく、児童手当も給付される上に、さまざまな行政サービスを利用できます。

ただし、出生届は必ず出さなければなりません。

嫡出否認など必要な手続きが終わり次第、速やかに出生届を提出して、子供が無戸籍のままでいることのないようにしましょう。

4章:前夫の戸籍にいったん入った場合の対処法

この章では、前夫の戸籍に入っている離婚後300日以内に生まれた子を、法律の上で実父の子供にするための方法について解説します。

具体的には、以下の3つの方法があります。

  • 嫡出否認を行う
  • 親子関係不存在確認をする
  • 強制認知の手続きをする

それぞれ順番に説明します。

4-1:嫡出否認を行う

嫡出否認調停を裁判所に申し立て、親子関係がないと認められれば、法律上の父親が元夫ではなくなります

民法改正後は母親からの嫡出否認の訴えが認められているため、元夫の協力がなくても手続きできるようになりました。

法律上の父子関係がなくなると、子供は非嫡出子として母親の戸籍に入ります。

そのあとは戸籍の訂正が可能になるため、実父に認知してもらいましょう。

子供の本籍地か住所のある役所に認知届を提出すれば、手続きができます。

4-2:親子関係不存在確認をする

別れた夫の子供であることを否定するには、原則として嫡出否認を行います。

ただし、子供が「推定されない嫡出子」である場合、話は別です。

すなわち、「明らかに元夫が父ではない」という事実が客観的に証明できるのであれば、裁判所に親子関係不存在確認調停を申し立てましょう。

この場合の客観的事実とは、

  • 海外赴任や長期の出張中だった
  • 別居をしていた
  • 服役中だった

などが該当します。

父と母がどちらも調停に合意し、父子の関係がないと認められれば、戸籍の訂正ができるようになります。

4-3:強制認知の手続きをする

親子関係不存在確認と同じく、子供が「推定されない嫡出子」である場合は、血縁上の父を相手に認知調停の申立てができます

これを「強制認知」といいます。

元夫がまったく関与することなく手続きを進められる点が、この方法の大きなメリットでしょう。

家庭裁判所の審判によって父子関係にあると認められた場合、戸籍の父親欄に実父の名前が記載されます

まとめ:離婚後300日以内の出産でも、生まれた子の実父として認められる方法はある

今回は、

  • 離婚後に妊娠したらどうすべきか
  • 離婚後300日問題と民法改正
  • パートナーである実父が法律上の父として認められる手続き
  • 前夫の戸籍にいったん入った場合の対処法

についてお伝えしました。

最後に、これまでの内容をまとめます。

■離婚後に妊娠したらどうすべきか

離婚後に妊娠したら、まず以下の3点について把握しましょう。

  • 法律上の父親と血縁上の父親が別になる可能性がある
  • 実父を法律上の父とするにはさまざまな手続きが必要になる
  • 出生届を出さない無戸籍児にはリスクがある

■離婚後300日問題と民法改正

「離婚後300日以内に生まれた子供は、戸籍上は前夫の子になる」というのが、離婚後300日問題です。

2024年4月の民法改正を受け、この離婚後300日問題も大きく形を変えました。

改正後は、以下のようになります。

  • 嫡出推定制度の見直し
  • 再婚禁止期間の廃止
  • 母と子も嫡出否認が可能

■パートナーである実父が法律上の父として認められる手続き

まだ婚姻関係にないパートナーを子供の法律上の父にする際は、以下のような手続きを取ります。

  • 出生届と同時に「懐胎時期に関する証明書」を提出する
  • いったん出生届を提出しあとで訂正する
  • 出生届を出さず子供の住民票だけ先に作成する

■前夫の戸籍にいったん入った場合の対処法

前夫と子供の法律上の父子関係を解消させたいといった場合には、以下のように対処します。

  • 嫡出否認を行う
  • 親子関係不存在確認をする
  • 強制認知の手続きをする

結婚していないパートナーでも、離婚後300日以内に生まれた子の実父として認められる方法はあります。

ただし方法によっては、法律の知識が必要とされ、裁判所に出向かなければならないかもしれません。

手続きについて疑問や不安などがあれば、弁護士に相談することをオススメします。

離婚後に妊娠して悩んでいる方にとって、この記事が参考になれば幸いです。

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