- 2023.03.01
- 2025.01.08
- #タクシー運転手年収
タクシー運転手の年収は280万円?より良い待遇で働くためのポイント
この記事を読んで理解できること
- タクシー運転手の年収は280万円(令和3年)
- タクシー運転手は時給単価の賃金が安い?その理由を解説
- ブラックなタクシー会社を見分けるポイント
- ブラックなタクシー会社の4つの特徴
- タクシー運転手になるための条件
あなたは、
「タクシー運転手として自分の年収は多いのか?」
「タクシー運転手の年収はどのくらいだろう?」
「タクシー運転手の給与体系や勤務体系が知りたい」
などとお考えではないですか?
タクシー運転手は、運転手の腕次第で稼げる金額が大きく異なるため、「年収の平均はどのくらいだろう」と気になりますよね。
結論から言えば、タクシー運転手の年収の全国平均は、280万円(令和3年賃金構造基本統計調査※)というデータがあります。
ただし、タクシー運転手の給与は歩合制の占める割合が多いため、個人差が大きいだけでなく都道府県や性別、また年毎に年収は変わっていきます。
さらに、「平均よりずっと少ない」という人も、それは勤務する会社がブラックで、本来もらうべき給料がもらえていない可能性があります。
そこでこの記事では、都道府県別・年齢別の年収と全産業労働者の比較と、タクシー運転者の賃金・労働時間の推移や給与体系について解説します。
また、タクシー運転手の時給単価が安い、その理由について解説します。
さらに、ブラックなタクシー会社を見分けるポイントと、求人案内に見るブラックなタクシー会社の特徴、そしてこれからタクシー運転手になりたいという人のために、必要な資格について紹介します。
最後までしっかり読んで、タクシー運転手としてより良い環境で働くために役立ててください。
目次
1章:タクシー運転手の年収は280万円(令和3年)
先に紹介したように、タクシー運転者の年収のデータは、厚生労働省の令和3年度賃金構造基本統計調査によると、次のようになっています。
- 平均年収: 2,804,000円
- 月額給与: 225,300円
- 年間賞与: 100,400円
- 労働時間/月: 163時間/月
- 超過労働: 13時間/月
- 平均年齢: 60.7歳
- 勤続年数: 10.5年
また、タクシー運転手の給与は歩合制の占める割合が多いため、個人差が大きいだけでなく都道府県や性別、また年毎に年収は変わっていきます。
この章では、
- 県別・年齢別の年収と全産業労働者の比較
- タクシー運転者の賃金・労働時間の推移
- タクシー運転手の3つの給与体系
それぞれについて順に解説していきます。
1-1:都道府県別・年齢別の年収と全産業労働者の比較
都道府県別のタクシー運転者と全産業労働者の、月間労働時間と給与の比較表は、次のようになります。
※一般社団法人 全国ハイヤー・タクシー連合会
令和3年 タクシー運転者賃金・労働時間の現況
給与の年間推計額で比較すると、タクシー運転者と全産業労働者の実額の差は208万9,100円で、労働時間について比較すると、全国平均は同じ176時間となっています。
また、主な都道府県のタクシー運転者の賃金を比べてみると、東京が最も高く336万9,100円で、最も低いのは沖縄の175万300円となっています。
また、年齢階級別のタクシー運転者と全産業労働者の給与の比較は、次のようになっています。
タクシー運転手の年収を年齢別に比較すると、40歳〜44歳が348万3,700円と最も高いことが分かります。
それ以降は徐々に下がっていき、70歳以上が234万6,900円と最低になっています。
また、全産業労働者との比較では、全産業労働者は45歳から60歳未満の3つの階級で、給与の年間推計額の差を引き上げているのが分かります。
1-2:タクシー運転者の賃金・労働時間の推移
タクシー運転者の賃金・労働時間の推移を、全産業労働者と比較した表は、次のようになっています。
タクシー運転者の賃金の年間推計額は、平成5年が最高で411万円となっていて、平成23年(2011年)の東日本大震災後の24、25年と、コロナ禍の令和3年は300万円を切っています。
また、令和3年は、全産業労働者との賃金格差が265万円と最も大きくなっていますが、労働時間はコロナ禍の令和2年にぐっと差が縮まり、3年には初めて全産業労働者より60時間短くなっています。
1-3:タクシー運転手の3つの給与体系
タクシードライバーの給与体系は、大きく分けて次の3つがあげられます。
- 固定給制
- 完全歩合制
- 基本給+歩合制
【固定給制】
固定給制は、毎月決められた金額が支給されるもので、個人的にいくら売上を上げても給与が変わることはありません。
そのため、この制度はあまり使われていませんが、最近では一部の介護・福祉タクシーなどの運転者で、固定給制による採用も見受けられます。
【完全歩合制】
完全歩合制は、乗せたお客様の分だけ歩合で給与が支払われるため、成績の良い運転手であれば高収入を得ることができます。
ただし、初めてタクシー運転者になられた方や、その地域に初めて転職された方にとっては、売上が作れるようになるまでは時間もかかるため、厳しい給与制だといえます。
【基本給+歩合制】
この給与制は、最低限の基本給に加えて、売上に応じて歩合給が支給されるため、タクシー運転者の給与体系としては主流になっています。
最低限の基本給は確保することはできますが、その金額や内容は会社によって差があり、また歩合率も会社やその地方によって差があるため、就職・転職する際は十分な確認が必要です。
都道府県別の年収を比べてみると、300万円を超える年収は東京を含めて4か所ですが、250万円を下回る道府県は26か所にも及びます。
次にタクシー運転手の拘束時間や給与体系など、仕事の実態から、年収が低い理由を解説します。
2章:タクシー運転手は時給単価の賃金が安い?その理由を解説
1章で紹介したように、タクシー運転手は、
- 他の職種と比べて年収が低い
- 年を取るほど年収が下がる
という特徴があります。
それは、タクシー運転手が、「賃金の時給単価が安い仕事」だからです。
この章では、タクシー運転手の拘束時間や、給与体系と合わせて解説します。
2-1:拘束時間が長く時給換算で賃金が安い
先に解説したように、タクシー運転者の労働時間は、令和3年を除くと全産業労働者より長くなっており、その賃金を時給換算すると全産業労働者よりかなり低いことが分かります。
例えば、令和元年のデータで算出した場合、
- タクシー運転者の時給
360万3,800円÷2,340時間=1,540円
- 全産業労働者の時給
560万9,700円÷2,136時間=2,626円
となります。
また同様に、令和3年のデータで算出すると、
- タクシー運転者の時給:1,328円
- 全産業労働者の時給:2,515円
となります。
タクシー運転手の業務は、常に客を乗せて運転できるわけではないため、客を乗せずに待っている「手待ち時間」が発生します。
しかも、お客を一人でも多く乗せて稼ごうと思えば、労働時間を増やすしかなく、その分手待ち時間も延びていきます。
そのため、他の職種と比べて労働時間が長い一方で、時給単価の賃金が延びず、年収が低いのです。
稼いでいる運転手は、
- 客を乗せやすい場所を開拓する
- リピーターを増やす
などの工夫で、できるだけ手待ち時間を減らす工夫をしているようです。
2-2:歩合給制のため実力で年収が左右される
先に解説したように、タクシー運転手の多くが、「歩合給制」を取り入れた給与体系で働いているため、個人の実力で年収が左右されます。
そのため、タクシー運転手が自分の年収を上げるためには、手待ち時間を減らして、少ない時間の中でできるだけたくさんの客を乗せて稼げるように、実車率を上げる工夫をしなければなりません。
また転職する際は、個人の工夫や努力だけでなく、都心部の会社や歩合率の良い会社を選ぶなど、稼ぎやすい会社や環境が年収に大きく影響してきます。
さらに、タクシー運転手の年収が低い原因があります。
それは、歩合給制を理由に、残業代が支払われないことが多いということです。
2-3:タクシー運転手は残業代がごまかされやすい
タクシー業界では、歩合制による給与の割合が多く、運転者自体も歩合給を稼ぐために残業したり、休憩時間を返上したりするケースが多くあります。
そのため、タクシー業界は、歩合制という給与体系を悪用して残業代の支払いをごまかしている場合があります。
この章では、歩合制と残業代、残業代の割増賃金について解説していきます。
2-3-1:タクシー運転手の歩合制と残業代
タクシー会社の中には、
「残業代は歩合給に含まれているから、それ以上は支払わないよ。」
と言って、残業しても残業代が一切支払われないという会社もあります。
このような会社の場合は、残業代がごまかされることで、年収がその分下がっている可能性があります。
間違っている人も多いですが、歩合給制の場合、残業代の計算方法が通常とは異なるだけで、残業の事実があれば残業代が発生します。
そのため、残業しても歩合給制を理由に残業代が一切出なければ、それは違法である可能性が高いです。
歩合給制の詳しい内容や、残業代の計算方法について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
歩合給制とは?正しい意味と違法なケース、未払残業代の計算方法を解説
2-3-2:タクシー運転手の残業代と割増賃金
労働基準法では、労働時間の上限は法定労働時間として「1日8時間・週40時間」と決められていて、これを超えた時間が残業時間となります。
法定労働時間を超えた残業時間に対しては、会社は基礎時給の1.25倍に割増した残業代を支払う必要があります。
また、タクシー運転手は、厚生労働省の基準で、始業時刻から終業時刻までの時間(休憩時間を含む)「拘束時間」が決められています。
拘束時間の上限は、原則として日勤の場合が1か月299時間、隔日勤務の場合が1か月262時間となっています。
例えば日勤の場合、勤務日数が月20日で1日の休憩時間が2時間の場合、月の拘束時間の上限が299時間のため、そこから月間の休憩時間40時間を引いた259時間が、1か月の労働時間とな
また、1か月の法定労働時間を考えた場合、週40時間なので、1か月では約170ります。
時間になります。
そのため、この場合の1か月の残業時間は、最低でも、月の労働時間259時間から、1か月の法定労働時間約170時間を引いた89時間以上となります。
会社は、固定給の場合、最低でも基礎時給の1.25倍に割増した残業代を支払う必要があります(歩合給の場合、基礎時給が低くなり、割増率も0.25倍になります)。
ここまで解説してきたように、タクシー運転手の勤務時間は長く、また勤務パターンも変則的なため、給与や残業代の算出は一般的な労働者に比べてかなり複雑になります。
そのため、就業規則の確認だけでなく、自身の売上、拘束時間・労働時間等をしっかり把握し、適正な給与が支払われているか注意していくことが重要です。
3章:ブラックなタクシー会社を見分けるポイント
タクシー運転手として、ある程度の年収を稼ぐためには、「ブラックタクシー会社」を避けて就職・転職することが大事なポイントです。
ブラックタクシー会社を見分けるポイントとして、次の3つがあげられます。
- 優良事業所の認定を受けているか
- 事故を起こした時の補償があるか
- 歩合給の取り分はいくらか
もし、あなたがすでにタクシー会社で働いているなら、あなたの会社がこの3つのポイントに当てはまらないか、チェックしてみてください。
それでは、順番に解説します。
3-1:優良事業者の認定を受けているか
東京や大阪のタクシー会社の場合は、優良事業者の車両表示で、ブラックタクシー会社を見分けるという方法があります。
東京の優良事業者の認定とは、公益財団法人「東京タクシーセンター」が行っている、東京都内の法人タクシー事業者の安全・サービス等に関する評価制度です。
同じく大阪では、公益財団法人「大阪タクシーセンター」が、大阪市域交通圏及び北摂交通圏のタクシー事業者を対象として、優良事業者等評価制度を実施しています。
3-2:事故を起こした時の補償があるか
ブラックタクシー会社の中には、「事故を起こしたときの補償がない」場合があります。
事故を起こしてしまった場合に、普通であれば会社の保険で負担するのが当然ですが、ブラックタクシー会社の中には、自己負担で払えといわれるケースもあります。
タクシー運転手は、どれだけ運転に慣れていても、常に事故のリスクを抱えています。
そのため、タクシーの営業車両には、任意保険の加入が義務づけられています。
しかし、一部のブラックタクシー会社の場合は、
- 任意保険に加入していない
- 加入していても、補償内容や補償額が手薄
- 事故を起こすと、会社が運転手に損害賠償請求する
などの可能性があります。
そのため、事故を起こした時の補償はあるか、しっかり確認することが重要です。
3-3:歩合給の取り分はいくらか
ブラックタクシー会社を見分けるポイントとして、「歩合給の取り分が少ない」ということもあります。
ほぼ全てのタクシー会社は歩合給制を取り入れており、「売上げの○%が歩合給になる」と決められています。
一般的に、売上げのうちの運転手の取り分となる「歩合率」は、60%程度であれば大丈夫ですが、それより大きく下がるようなら、ブラックタクシー会社である可能性があります。
売上高のうち、歩合給としてあなたに支払われる部分の割合が少ないと、あなたは「どれだけ売上げをあげても、あまり稼げない」タクシー運転手になってしまいます。
そのため、売上げのうち、あなたの歩合給の取り分はいくらか、しっかり確認することが重要です。
4章:ブラックなタクシー会社の4つの特徴
タクシー会社に就職・転職する時に気をつけたいブラックなタクシー会社の特徴は、次の4つです。
- 求人が常に掲載されている
- 残業や残業手当を曖昧にしている
- 休日や有給休暇が少ないもしくは取れない
- 福利厚生が無い
それぞれ解説していきます。
4-1:求人が常に掲載されている
タクシー業界も人手不足ですが、求人が常に掲載されている場合は、ブラックなタクシー会社の特徴といえます。
例えば、給与や各種手当などの待遇面が他社に比べて良い条件にもかかわらず、求人情報が常に掲載されている場合は、離職率が高い可能性があります。
つまり、社内に求人条件以上のブラックな面があるか、あるいは求人情報の条件自体が実際は適用されていない可能性があります。
4-2:残業や残業手当を曖昧にしている
タクシー運転手の業務は長時間に及ぶにもかかわらず、残業や残業手当が曖昧で残業代が明確にされていない場合は、ブラック企業の特徴といえます。
ここまで解説してきたように、タクシー運転手の拘束時間は長いため、勤務時間や休憩時間、残業時間の区別がつきにくい場合が多いです。
また、歩合給の割合が多いだけでなく、残業代の割増率も通常の時間外労働、深夜労働、休日労働など複雑になりがちです。
そのため、ブラックなタクシー会社では、残業代を歩合給の中に組み込んで曖昧に処理しているケースが多いです。
4-3:休日や有給休暇が少ないもしくは取れない
ブラックなタクシー会社の特徴として、休日が少なく有給休暇が取れないことがあげられます。
特に、従業員が少ない会社の場合は、長時間の業務にもかかわらず、人手不足のため休みが少なかったり、希望する休みが取れないケースが多いです。
また、1日おきに勤務する隔日勤務の場合、1か月の平均的な休日は17日~18日になりますが、勤務終了後は継続 20 時間以上の休息期間をとる必要があるため、休日として扱った場合でも認められない場合があります。
4-4:福利厚生が無い
ブラック企業の中には、厚生年金や社会保険に加入していない会社もあります。
さらには、給与から社会保険料を天引きしているにもかかわらず、実際には未加入なケースもあります。
また、住宅手当や交通費、健康診断などの福利厚生がない場合も、ブラック企業の特徴といえます。
それでは最後に、タクシー運転手になるために必要な資格について紹介します。
5章:タクシー運転手になるための条件
タクシー運転手になるには、
- 第二種自動車運転免許
- 一部の地域では地理試験の合格
が必要です。
それぞれ解説します。
5-1:第二種自動車免許が必要
第二種自動車免許とは、タクシー運転手になるためには必須の免許です。
普通の自動車免許(第一種普通自動車免許)とは異なるもので、試験を受けて合格する必要があります。
【第二種自動車免許の取得に必要な条件】
①普通自動車免許(第一種普通自動車免許)の取得から3年以上経過していること
②21歳以上であること
第二種自動車免許には、適性試験、学科試験、技能試験があります。
- 適性試験・・・視力、聴力、運動能力の検査
- 学科試験・・・マークシートの試験で、第一種の試験よりも難易度が高い
- 技能試験・・・教習コースを走行する試験で、第一種の試験よりも難易度が高い
5-2:一部の地域では地理試験に合格する必要もある
さらに、
- 東京都(23区、武蔵野市、三鷹市)
- 神奈川県(横浜市、川崎市、横須賀市、三浦市)
- 大阪府(大阪市他)
などの地域でタクシー運転手になるには、各地域のタクシーセンターでの「地理試験」に合格する必要があります。
地理試験とは、正確には「輸送の安全及び利用者の利便の確保に関する試験」という試験で、80%以上の正答率で合格になります。
タクシー運転手に必要な資格は、これらの試験に合格することだけですので、これからタクシー運転手になりたいという方は、参考にしてください。
まとめ:タクシー運転手の年収は?
最後に今回の内容を振り返ってみましょう。
タクシー運転手の年収は、
- 平均年収: 2,804,000円
- 月額給与: 225,300円
- 年間賞与: 100,400円
- 労働時間/月: 163時間/月
- 超過労働: 13時間/月
- 平均年齢: 60.7歳
- 勤続年数: 10.5年
タクシー運転手の年収の特徴
- 他の職種と比べて年収が低い
- 年を取るほど年収が下がる
タクシー運転手の年収が少ない理由
- 拘束時間が長く時給換算で賃金が安い
- 歩合給制のため実力で年収が左右される
- タクシー運転手は残業代がごまかされやすい
タクシー運転手の給与体系は、以下の2種類の歩合給制のどちらかであるのが一般的です。
① 固定給+歩合給…固定給にプラスして、売上高に応じて給与が支払われる
② 完全歩合給制…給与のすべてが売上高に応じて支払われるれる
ブラックなタクシー会社の特徴
- 求人が常に掲載されている
- 残業や残業手当を曖昧にしている
- 休日や有給休暇が少ないもしくは取れない
- 福利厚生が無い
これから就職・転職するという人は、この記事の内容を参考にして、ぜひより良い会社を探してください。