- 2023.07.11
- 2025.01.07
- #給料未払い
【未払い給料を取り戻す2つの方法】具体的なステップを弁護士が解説
この記事を読んで理解できること
- 給料の未払いは違法行為で罰則の対象になる
- 給料の未払い分を請求する2つの方法
- 未払い給料が少額の場合は裁判所の民事手続
- 未払い給料を請求する前に必ずやるべき2つのこと
- 会社が倒産した場合は未払賃金立替払制度が利用できる
あなたは、
「給料が未払いのままで困る」
「給料の未払いはどこに相談すればいいの?」
「未払い給料を請求する方法が知りたい」
などとお考えではないですか?
結論から言うと、給料が未払いになっている、あるいは適正な給料が支払われていない場合は、会社に未払い給料を請求することができます。
なぜなら、給料の未払いは、労働基準法第24条に違反する行為だからです。
労働基準法第24条(賃金の支払い)
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。
これに違反した場合、会社は30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
そのため、次のような場合でも、未払いの給料を取り返せる可能性があります。
- 会社に言っても払ってくれない
- 会社が倒産してしまった
- すでに退職してしまった
ただし、取り返すためには、行動するための「正しい知識」が必要です。
そこでこの記事では、1章で給料の未払いは違法行為にあたることを、2章では給料の未払いを請求する2つの方法を、3章では未払い給料が少額の場合の裁判所の民事手続について解説します。
さらに、4章では未払い給料を請求する前に必ずやるべき2つのことを、5章では会社が倒産した場合に利用できる未払賃金立替払制度について解説していきます。
未払いの給料が請求できるのは、時効が成立する3年までです。
最後までしっかり読んで、すぐにでも行動を開始しましょう。
目次
1章:給料の未払いは違法行為で罰則の対象になる
先にあげたように、給料の未払いは、違法行為にあたり罰則の対象になります。
そこで、給料が未払いのケースはどういった状態なのか、またその相談先としてあげられる労働基準監督署について解説していきます。
1-1:給料の未払いは労働基準法第24条に違反する
労働基準法第24条では、賃金について、(1)通貨で、(2)直接労働者に、(3)全額を、(4)毎月1回以上、(5)一定の期日を定めて支払わなければならないと、「賃金支払いの5原則」が規定されています。
給料の未払いは、会社の都合で給与の全額が支払われず、月1回一定期日の支払いが遅れることになるため、労働基準法に違反していることになります。
そのため、給料の未払いは、労働基準法違反として会社には30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
労働基準法違反については、労働基準監督署が調査・勧告を行い、未払い給料の支払いが命じられ、悪質な場合は経営者が逮捕されることもあります。
1-2:給料が未払いのケース
給料が未払いの主なケースとしては、次の4つがあげられます。
- 先月の給料が全額または一部支払われていない
- 給料の支払いが毎月定期的に行われていない
- 残業代や休日手当などが正しく支払われていない
- 割増賃金が正しく計算されていない
未払いになる理由としては、会社の経営不振によるものや、故意に残業代や休日手当等を支払わないなど悪質なものもあります。
また、時間給を計算すると最低賃金を下回っていたり、給料から罰金などが勝手に引かれている場合も、その差額や引かれている金額が未払い給料と認められる可能性があります。
このように、未払い給料が発生した場合は、それぞれ適正な金額を未払い給与として請求できます。
1-3:労働基準監督署に相談・申告する
給料の未払いは、労働基準法に違反する問題ですから、労働基準監督署に相談・申告することができます。
また、給料の未払いなど労働条件に関する相談窓口も各都道府県に設置してあります。
労働基準監督署への申告は、以下のような流れで可能です。
このような流れで労働基準監督署に申告することができるのですが、この方法は「未払い給料を請求したい場合」は、あまりおすすめではありません。
なぜなら、労働基準監督署は、労働基準法に違反している会社の行為を「正す」機関であり、あなたの未払い給料を取り返してくれる機関ではないからです。
そのため、未払い給料を請求したいというあなたのために、積極的に動いてくれる可能性は低いです。
また、労働基準監督署は、労働者からのすべての申告で動くわけではありません。
それは、全国には400万を超える法人があるにもかかわらず、日本の労働基準監督署の人員は、非常勤の職員を含めても約2,400人しかおらず、明らかに人員不足だからです。
そのため、危険作業や労働災害などの「人命に関わる問題」などが優先して処理されるため、「給料の未払い」では、直ちに動いてもらえない可能性もあります。
2章:給料の未払い分を請求する2つの方法
給料の未払い分を請求する方法として、次の2つがあげられます。
- 自分で会社に内容証明を送って請求する
- 弁護士に未払い給料の請求を依頼する
それぞれ解説していきます。
2-1:自分で会社に内容証明を送って請求する
給料が未払いの場合、会社に直接「配達証明付き内容証明郵便」を送って給料を請求することで、給料を取り返せる可能性があります。
内容証明とは、差し出した日付、差出人の住所・氏名、宛先の住所・氏名、文書に書かれた内容を、日本郵便が証明してくれる手紙の一種です。
配達証明とは、配達した日付や宛名を証明してくれる郵便の制度です。
「配達証明付き内容証明」で会社に請求書を送ることで、会社は「そんなもの届いていない」とほっておくことができなくなります。
「配達証明付き内容証明郵便」を送って未払い給料を請求する流れは、以下の4つのステップからなります。
- 証拠を集める
- 未払い給料を計算する
- 会社に配達証明付き内容証明郵便を送る
- 自分で会社と交渉する
それでは解説します。
① 証拠を収集する
未払いの給料を請求するために、最も重要なポイントは「未払いの給料がある」ことを証明することです。
そのため、証拠集めをする必要があります。
必要な証拠について、詳しくは4章で解説しています。
② 未払い給料を計算する
①で集めた証拠をもとに、未払いの給料がどれだけあるか計算します。
大まかな数字だけでも計算し、未払い給料の見当を付けるだけでも有効です。
もし弁護士に依頼した場合は、あなたが集めた証拠を基に、正確に請求金額を計算してもらうことができます。
③ 時効を止める
「配達証明付き内容証明」を会社に郵送することで、時効を半年間止めることができます。
未払いの給料を請求できるのは、3年の時効が成立するまでの間と、法律で決められています。
そのため、もし時効を止めなければ、毎月の給料日が来るたびに、請求できる給料が1か月分消滅してしまいます。
つまり、内容証明を送ることで、手続きや交渉を進めることができる期間が半年延びるのです。
そのためできるだけ早く、会社に対して、未払いの給料などを記載した内容証明を送ることが重要です。
内容証明のひな形を下記に示しますので参考にしてください。
私は○○年○○月○○日、貴社に入社し、○○年○○月○○日に退社した者です。
私は、令和○○年○○月○○日から令和○○年○○月○○日(以下「請求期間」とします。)まで、貴社において、労働に従事いたしましたが、貴社からは、一切、給料をお支払いただいておりません。
よって、私は、貴社に対し、請求期間内の未払賃金の合計額である★円の支払を請求いたしますので、本書面到達後1週間以内に、以下の口座に振り込む方法によるお支払をお願いいたします。
○○銀行○○支店
○○預金(普通・定期などの別)
口座番号○○
口座名義人○○
なお、本書面到達後1週間を過ぎても貴社から何らご連絡いただけない場合は、やむを得ず訴訟を提起させていただくことをあらかじめ申し添えます。
ステップ③で内容証明を送ったところから会社との交渉がスタートします。
運が良ければ、内容証明が届いた時点で支払いに応じてもらえるかもしれません。
しかし、多くの会社は、あなたになるべく給料を払いたくないため、顧問弁護士等を介して減額の交渉をしてくるでしょう。
どの金額で折り合いがつくかは、あなた次第ですが、相手は、法律のプロである弁護士なので本来もらえる額より少ない金額で妥協しなくてはならない可能性が高いです。
また、1人で交渉しても会社に対してはあまり圧力とならないため、相手にしてもらえず、内容証明を送っても無視されるという可能性もあります。
そこで、未払い給料を取り返す場合には、最初から弁護士に依頼することをおすすめします。
2-2:弁護士に未払い給料の請求を依頼する
未払い給料を請求する場合、成功する確率を上げるためには、弁護士に依頼することをおすすめします。
なぜなら、未払い給料の計算や交渉は、専門的な知識が必要なため、1人で戦っては会社側の弁護士に負けてしまうおそれがあるからです。
実は、弁護士に依頼すると言っても「訴訟(裁判)」になることは少ないです。
ほとんどが、交渉や労働審判という、訴訟(裁判)よりも簡単な手続きで解決します。
また、未払い給料請求に積極的に取り組んでいる「完全成功報酬制」の弁護士に依頼すれば、「相談料」や「着手金」ゼロで依頼することができます。
弁護士に依頼した場合、
- 交渉
- 労働審判
- 訴訟
という流れで、解決に向けて手続きが進められていきます。
その内容について順番に解説します。
2-2-1:弁護士が会社と交渉する
交渉とは、弁護士が会社との間に入って、電話・書面・対面で直接会社と話し合いトラブルの解決を図るものです。
弁護士が、あなたからヒアリングした内容をもとに交渉するため、あなたが会社の人と会ったり、会社に出向く必要はありません。
また、あなたが在職中で、これから退職を考えている場合、実際に交渉を開始する時期については相談可能です。
つまり、会社にばれないようにこっそり準備を進め、退職と同時に未払い給料を請求し、交渉を開始することも可能です。
交渉は、弁護士と会社との間の話し合いによるトラブル解決がゴールであり、合意できた場合は、会社から未払い給料が支払われることになります。
交渉で合意に至らなかった場合は、労働審判や訴訟に進むことになります。
2-2-2:労働審判を申し立てる
交渉で決着が付かなかった場合は、労働審判を申し立てます。
労働審判とは、裁判所に行き、会社・あなた・裁判官などの専門家で問題の内容を確認し、解決の方法を探す方法です。
裁判よりも手続きが簡単で、費用も少なく、解決までの期間も短いのが特徴です。
労働審判では、最低1回は裁判所に出向く必要がありますが、会社側の人と入れ替わりで部屋に入って話し合う形式のため、直接顔を合わせることはありません。
労働審判は、以下のような流れで解決まで進められます。
労働審判の回数は、最大3回までと決められているため、裁判のように何回も裁判所に行ったり、長期化することがないのが特徴です。
あなたも初回の労働審判のみは参加する必要がありますが、それ以降は参加しなくて良い場合もあります。
多くの場合、「交渉」か「労働審判」で決着が付きますが、労働審判において決定されたことに不服がある場合は、訴訟(裁判)へ移行します。
2-2-3:訴訟を提起する(裁判)
訴訟(裁判)は労働審判と違い、何回までという制限がなく、長期に渡り争い続ける可能性があります。
ただし、あなたはほとんど出廷する必要がありません。
行く必要があるのは本人尋問のときだけです。
訴訟(裁判)では、裁判所で「原告(あなたもしくは、あなたが依頼した弁護士)」と「被告(会社)」が主張し合い、裁判官が判決を下します。
訴訟の流れは、次のようになっています。
最高裁まで行くことはほとんどないため、多くは地方裁判所までの1〜2年程度で終わるようです。
裁判になると数年単位で争うこともありますが、先ほどお伝えした通り、ほとんどは裁判まで行くことはなく、交渉・労働審判で解決します。
このように、弁護士に相談すれば、あなたが思うよりも手間・時間・お金をかけずに、残業代を請求することができるのです。
2-3:未払い給料の請求に強い弁護士に依頼することが重要!
未払い給料の請求方法について、理解することはできたでしょうか?
ただし、弁護士に依頼して請求する場合は、一つ注意点があります。
それは、「未払い給料の請求に強い弁護士」を選ぶということです。
あなたは「弁護士さんは全員法律の知識があるのだから、誰でも良いのでは?」と思うかもしれません。
しかし、実際は法律の知識は広い範囲に及ぶため、自分の得意分野以外の件については、あまり知識がない弁護士が多いのです。
そのため、未払い給料の請求に強い弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士の選び方や相談の流れ、かかる費用については、こちらの記事で詳しく解説しています。
今すぐ始めよう!未払い給料の2つの請求方法と弁護士が教える請求のコツ
3章:未払い給料が少額の場合は裁判所の民事手続
「未払い給料の金額が数万円程度の時は、どうやって請求したらいいんだろう。」
未払いの給料が少額の場合でも、2章で紹介したような方法で請求することができます。
また、少額の給料の請求には、以下の制度が使われることも多いです。
- 支払督促
- 少額訴訟
- 民事調停
これから詳しく解説します。
3-1:支払督促
「支払督促」とは、簡易裁判所を通して、会社に「未払いの給料を払ってください」という旨の文書を送ることです。
会社が督促を無視すると、「強制執行」と言って、強制的に会社から給料を取り立てることができます。
支払督促は、少額の費用で行えることから、数万円程度の未払い金を回収するために使われることが多いです。
支払督促を行い、相手の会社が、給料を払わないと「異議申立て」した場合は、通常の訴訟に持ち込まれることになります。
これは後ほど紹介する「少額訴訟」ではなく「通常訴訟」なので、支払督促で解決しなかったから、少額訴訟や労働審判にしよう、ということはできません。
しかも、会社は、強制執行は避けたいので、訴訟に持ち込まれることが多く、最初から訴訟をした方が良い場合も多いです。
支払督促は、このようにあまり効果があるとは言えないため、「とりあえずやるだけやってみる」という程度の方法と覚えておいてください。
3-2:少額訴訟(60万円以下の請求に限る)
「少額訴訟」とは、60万円以下の未払い給料を請求するために、簡易裁判所で行うことができる訴訟のことです。
少額訴訟は、1回の審理で結論が出ます。
そのため、請求したい給料の金額が少額で、早く解決してしまいたいという人が使うことが多いです。
少額訴訟は、手続きが簡単なため法律知識がなくても、弁護士に依頼せずに自分で手続きを進めることができます。
少額訴訟の場合も、会社が判決に満足せず「異議申立て」した場合は、通常の訴訟に移って争うことになります。
少額訴訟のみで解決することもありますが、通常訴訟に移行することになれば時間・手間が余計にかかることになり、弁護士への依頼が必要です。
3-3:民事調停
「民事調停」とは、訴訟のように勝ち負けをはっきり付けるのではなく、裁判所で話し合って解決する方法です。
裁判所で手続きした上で話し合うため、個人的に話し合うよりは、円滑に解決できる可能性があります。
民事調停は、以下のような手続きで行うことが出来ます。
民事調停の場合は、強制的に結論を出すことはないため、合意に至らなければそこで終了となります。
ただし、その後あらためて訴訟など他の方法をとることはできます。
民事調停はあくまでも「話し合い」なので、あなたと会社の間で意見がくいちがっている場合などに、利用することがおすすめです。
「会社がまったく払う気がない」「会社に無視される」などの場合は、「少額訴訟」や弁護士に依頼して解決を図ることをおすすめします。
以上の3つの方法は、あまりお金をかけず、少ない手間・時間で行うことができるというメリットはありますが、確実に解決させる力はありません。
そのため、どうしても給料を取り返したいなら、一度、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
【コラム】アルバイト・パート・派遣社員でも請求できる
「未払いの給料があるけれど、自分は正社員じゃないから泣き寝入りするしかないのかな?」
そんな悩みを持っている人もいるようです。
しかし、アルバイトやパート、派遣社員でも、正社員と同じ労働基準法が適用されます。
そのため、給料が未払いになっている場合は、違法行為にあたり罰則の対象になります。
雇用形態に関係なく、堂々と会社に給料を請求しましょう。
4章:未払い給料を請求する前に必ずやるべき2つのこと
未払い給料を請求する前に、必ずやるべきことは次の2つです。
- 未払い給料を確定させる
- 労働を行った事実を証明する証拠を集める
これから、詳しく解説します。
4-1:未払い給料を確定させる
まずは、未払い給料を確定させるために、
- もらえるはずの給料の金額
- 未払い給料が存在すること
という2つを証明する必要があります。
【本来の給料の金額を示す証拠】
まずは、そもそもあなたがいくらの給料をもらう契約になっていたのかを示す証拠が必要です。
そこで、以下のものなどが証拠になります。
- 雇用契約書
- 労働条件通知書
【実際に払われた給料の金額を示す証拠】
次に、もらえるはずだった給料が未払いにされていることを証明する証拠が必要です。
以下のものが、証拠になります。
- 給与明細
- 給与口座の取引明細(通帳)
- 源泉徴収票
「本来の給料の金額を示す証拠」と「実際に払われた給料の金額を示す証拠」を比較して、実際に払われた給料の金額が少なければ、未払いになっていることが証明できます。
4-2:労働を行った事実を証明する証拠を集める
次に、あなたが会社で労働していたという実態を示す証拠が必要です。
「勤怠管理している会社」と「勤怠管理をしていない会社」の、それぞれで必要な証拠を解説します。
- タイムカード
- 会社のパソコンの利用履歴
- 業務日報
- 運転日報
- メール・FAXの送信記録
- シフト表
これらの証拠になるものについて、会社から証拠隠滅されないように、パソコンの画面、シフト表、日報などを写真に撮ったりして、保存しておきましょう。
また、これらの証拠になるものがなくても、諦める必要はありません。
勤怠管理してない会社でも、以下のようなものが証拠になり得ます。
- 手書きの勤務時間・業務内容の記録(最もおすすめ)
- 残業時間の計測アプリ
- 家族に帰宅を知らせるメール(証拠能力は低い)
会社が勤怠管理をしていないため、自分で勤務時間を記録する場合は、毎日手書きで、1分単位で時間を書きましょう。
具体的な業務についても書くのがベストです。
家族に帰宅を知らせるメールは、裁判になると証拠としては弱いので、できるだけ手書きでメモを取りましょう。
証拠は、できれば3年分あることが望ましいですが、なければ一部でもかまいません。
できるだけ毎日の記録を集めておきましょう。
ただし、手書きの場合絶対に「ウソ」の内容のことを書いてはいけません。
証拠の中にウソの内容があると、その証拠の信用性が疑われ、証拠として利用できなくなり、残業していた事実を証明できなくなる可能性があります。
そのため、証拠は「19時30分」ではなく、「19時27分」のように、1分単位で記録するようにし、曖昧さが指摘されないようにしておきましょう。
5章:会社が倒産した場合は未払賃金立替払制度が利用できる
「もし、給料を払わないまま会社が倒産してしまったら?」
そんな場合でも諦めないでください。
会社が倒産したときに、条件を満たしていれば、国の「未払賃金立替制度」が利用できます。
未払賃金立替払制度とは、会社が倒産して給料や退職金が支払われないまま退職した労働者に対して、国が未払賃金の一部を立替払する制度です。
利用できる条件は以下の通りです。
【未払賃金立替払制度が利用できる条件】
● 未払賃金の合計が2万円以上あること
● 倒産後2年以内に立替払いを請求すること
● 会社の倒産の半年前から倒産後1年半の間に退職した人
● 倒産した会社が1年以上事業活動を行っていたこと
対象となるのは未払いの給料や退職金ですが、以下の範囲・期間の給料や退職金が立替払いの対象になります。
【立替払いの対象となる範囲】
● 毎月定期的に支払われる賃金(基本給、残業代、深夜手当、休日手当など)
※毎月一定の期日に支払われていた給料で、税金や社会保険料などの控除を差し引く前の金額
※賞与、福利厚生費、通勤手当などは含まれない
● 退職金
退職日の6か月前から、立替払い請求日までの間に支払期日が到来する未払い賃金
【支払われる賃金の金額】
● 原則的に賃金の8割
●以下の上限内で支払われる
《未払賃金支払いの上限》
退職日時点の年齢 | 未払い賃金の上限 | 立替払いの上限 |
30歳未満 | 110万円 | 88万円 |
30歳以上45歳未満 | 220万円 | 176万円 |
45歳以上 | 370万円 | 296万円 |
このように、未払い給料や退職金のうち最大8割が、総額88万〜296万円の範囲内で支払われます。
【立替金が振り込まれるタイミング】
未払賃金立替払制度では、立替金があなたの口座に振り込まれるタイミングはケースバイケースです。
そのため、いつまで振り込まれるのかは、手続きを行っている破産管財人や労働基準監督署の担当者に聞いてみなければ分かりません。
「未払賃金立替制度」を利用するステップは、「事実上の倒産」をしている会社と「法律上の倒産」をしている会社とで異なり、以下のようになります。
事実上の倒産の場合、認定申請書を提出することになりますが、認定申請書には、会社の事業活動の状況等を明らかにする資料の添付が要求されています。
しかし、このような資料がない場合は、認定申請書だけとりあえず出してもよいです。
なお、事実上の倒産(左側)の場合、認定申請を、退職日の翌日から起算して6か月以内に行わなければ、立替払いを受けられないので要注意です。
詳しくは、厚生労働省のサイトを参照してください。
まとめ:給料の未払いを請求する方法
最後に今回の内容を、もう一度振り返りましょう。
給料の未払いは、労働基準法第24条に違反する行為です
- 会社に「配達証明付き内容証明」を送る
- 弁護士に未払い給料の請求を依頼する
【給料を取り返すためにやるべき2つのこと】
① 未払い給料を確定させるために以下の証拠を集める。
- 雇用契約書
- 労働条件通知書
- 給与明細
- 給与口座の取引明細(通帳)
- 源泉徴収票
② 労働していた事実を証明する証拠を集める
- タイムカード
- 会社のパソコンの利用履歴
- 業務日報
- 運転日報
- メール・FAXの送信記録
- シフト表
- 手書きの勤務時間・業務内容の記録
- 残業時間の計測アプリ
- 家族に帰宅を知らせるメール
- 未払賃金立替制度を利用する
給料を取り返すことができるのは、時効が成立するまでの「3年」です。
少しでも多くの給料を取り返すために、今すぐ行動を開始しましょう。