労働基準法に違反する10個の具体例と罰則や対処法を弁護士が解説
この記事を読んで理解できること
- そもそも労働基準法とはどのようなものなのか
- 労働基準法を違反したときの罰則とは
- 労働基準法違反になる具体的なケース(チェックリスト付き)
- 労働基準法違反に対する対処法
あなたは、
「労働基準法に違反するとどうなるんだろう?どんな罰則があるんだろう?」
「労働基準法違反になるのは、どんな場合なんだろう?」
「自分の会社が労働基準法に違反している場合、どうしたら良い?」
などと思っていませんか?
労働基準法とは、労働者を守るための法律です。
そのため、労働時間や賃金(給与、残業代等)、労働環境等について細かくルールが定められています。
違反している場合は、会社に対して「罰則」が与えられます。
しかし、労働問題に多く取り組んできた弁護士である私の経験上、非常に多くの会社が労働基準法に違反しており、多くの労働者が
「残業代を貰えていない」
「長時間残業を強いられている」
等の状況にあります。
そこでこの記事では、まずは労働基準法とはどのようなものなのか詳しく解説します。
そして、詳しい罰則の内容や、労働基準法違反になるケースについて詳しく解説します。
さらに、もしあなたが違法な状況にいる場合の対処法もお伝えします。
最後までしっかり読んで、損しないようための知識を学びましょう。
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■労働基準法とは
労働者(会社員、契約社員、派遣社員、アルバイト・パート)を守るためにあるもので、違反すると罰則が与えられる。
■労働基準法違反になるケース
- 労働時間・残業に関する違反
→36協定を締結せずに、残業させられた。36協定があっても、上限を超えて残業させられた。 - 残業代、深夜手当、休日手当に関する違反
→残業、深夜労働、休日労働をしたのに、割増賃金が出ない - 休憩時間に関する違反
→休憩時間が、6時間を超える労働に45分、8時間を超える労働に60分与えられない。 - 法定休日に関する違反
→36協定を締結せずに、法定休日も出勤させられた。 - 給料に関する違反
→給料が最低賃金以下、もしくは分割払いや遅延がある。 - 妊娠・出産に関する違反
→妊娠中や出産後1年以内なのに、残業を強制される。また、出産前後に休暇を取らせてくれない。 - 労働災害(労災)に関する違反
→労働災害(労災)を申請してくれない。 - 解雇に関する違反
→30日前までの解雇を伝えられ、解雇予告手当も貰えなかった。
■労働基準法違反の対処法
- 労働基準監督署に通報(申告)する
- 労働問題に強い弁護士に依頼する
目次
1章:そもそも労働基準法とはどのようなものなのか
それでは、詳しい罰則の内容の前に、労働基準法の基礎知識について簡単に解説します。
そもそも、労働基準法とは、労働時間、賃金、休日等の、最低限の条件について定められた法律のことです。
対象となるのは、正社員だけではありません。契約社員、派遣社員、アルバイト、パート等の全ての労働者が対象です。
※ただし、個人事業主で、請負契約等の契約の場合は、労働基準法の対象にはなりません。
会社が、労働基準法で定められた条件に違反した場合、違法ですので、労働基準監督署によって指導・罰則を受けます。
それでは、これから具体的な罰則の内容を解説します。
2章:労働基準法を違反したときの罰則とは
それではこれから、労働基準法に違反した場合の罰則について、
- 罰則の内容
- 罰則を受ける「使用者」について
- 罰則の「両罰規定」
順番に詳しく解説します。
2-1:労働基準法違反によって与えられる罰則
労働基準法に違反した会社・経営者には、違反した内容によって、以下の罰則が与えられます。
【労働基準法に違反した場合の罰則】
- 1年以上10年未満の懲役または20万円以上300万円以下の罰金
- 1年以下の懲役または50万円以下の罰金
- 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
- 30万円以下の罰金
「懲役」とは、「刑務所などに拘置されて、労働(刑務作業)させられる刑罰のことです。
有罪判決が出れば、当然「前科者」になってしまいます。
「罰金」とは、労働基準法違反の罰として、決められた金額を罰金として支払わなければならないというものです。
2-2:罰則を受けるのは経営者や会社そのもの
労働基準法違反の罰則が与えられるのは、労働基準法で定められた「使用者」です。
【労働基準法の使用者】
この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。
(労働基準法第10条)
つまり、「経営者」はもちろんですが、それだけでなく、各事業の実質的な権限を持つ人も使用者になります。
「部長」「店長」「所長」などの、経営者以外の人でも、その事業の業務命令や、労働者の指揮監督を行う場合は、使用者です。
そのため、会社が違法行為をしていた場合、その行為について実際の権限を持っていた人が「使用者」であり、罰則の対象になるのです。
労働基準法に違反した場合、「使用者」だけでなく、会社そのものも罰則の対象になります。
これを「両罰規定」と言います(労働基準法第121条)。
3章:労働基準法違反になる具体的なケース(チェックリスト付き)
労働基準法違反になるケースについて、ポイントや、実際に違反して公表されたケースを順番に解説します。
3-1:労働時間・残業に関する違反
【労働時間に関する違反】
- 36協定を締結せずに、1日8時間・週40時間を超えて労働させられている(第32条)
→1日8時間・週40時間を超えた労働は、36協定を締結しなければ違法です。
※36協定とは、残業を可能にするために会社と労働者の間で締結するものです。 - 労働基準法上の残業の上限を超えた、長時間の残業時間がある
→労働基準法では、36協定を締結していても月の残業時間は45時間まで、さらに上限が延長できる特別条項付き36協定を締結していても、延長できる回数や条件にルールがあります。
上記のように、労働時間に関する違反は、
- 36協定が締結されていない場合
- 36協定が締結されている場合
- 特別条項付き36協定が締結されている場合
で異なります。
しかし、すべて「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という罰則が与えられます。
36協定について、詳しくは以下の記事で解説しています。
36協定とは?5分で分かる定義・役割と、違法性が分かる判断基準
労働時間に関して労働基準法に違反し、罰則を受けた(送検された)会社は、平成29年6月1日〜平成30年5月31日までの1年間で57件ありました(440件中)。
具体的には、
- 36協定を締結することなく、残業させた
- 36協定の上限を超える長時間残業をさせた
という会社に罰則が与えられています。
【労働時間の違法性のチェックリスト】
- 36協定が締結されていないのに、1日8時間・週40時間を超えた労働がある
- 36協定が締結されているが、月45時間を超える残業がある
- 特別条項付き36協定が締結されているが、年6回を超えて月45時間を超える残業がある
これらに1つでも当てはまる場合、あなたは違法な状況に置かれていますので、4章で解説する対処法を実践してください。
3-2:残業代、深夜手当、休日手当に関する違反
【残業代、深夜手当、休日手当に関する違反】
残業代、深夜手当、休日手当が支払われない(第37条)
→残業、深夜労働、休日出勤の事実があれば、適正な金額の手当が支払わなければならず、支払われていなければ違法です。「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」の罰則の対象になります。
以上のような場合は、労働基準法に違反しているため、会社には、
「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」
の罰則の対象になります。
- 残業代:1日8時間・週40時間を超えた労働
- 深夜労働:22時〜翌朝5時までの労働
- 法定休日出勤:週1日の法定休日の労働
上記の労働をした場合、以下の通りの「割増賃金」が支払われなければなりません。
割増賃金とは、あなたの1時間当たりの賃金(基礎時給と言います)に、以下の割合をかけたものです。
残業代、深夜手当、休日手当に関して労働基準法に違反し、罰則を受けた(送検された)ケースは、平成29年6月1日〜平成30年5月31日までの1年間で6件(440件中)です。
あなたも違法な状況ではないか、以下のチェックリストで確認してみてください。
【残業代、深夜手当、休日手当のチェックリスト】
- 1日8時間・週40時間を超えて労働しても、残業代が出ない
- 22時〜翌朝5時まで労働しても、深夜手当が出ない
- 法定休日に出勤しても、休日手当が出ない
- みなし残業代制で、どれだけ残業しても残業代が変わらない
- 歩合給制、年俸制、フレックスタイム制、変形労働時間制等を理由に、残業代が出ない
- 管理職を理由に残業代が出ない
- 「残業は禁止」と言われているが、定時では終わらない業務を指示され、サービス残業させられている
- タイムカードを切る前に行わなければならない業務がある
上記の場合は、違法である可能性が高いです。
それぞれ、詳しくは以下の記事をご覧ください。
【残業代について】
【深夜手当について】
【休日手当について】
【みなし残業代制について】
【歩合給制、年俸制、フレックスタイム制、変形労働時間制について】
歩合給制とは?誰でも5分でわかる正しい意味と不当な低賃金への対処法
【年俸制でも残業代が出る】その理由と残業代の計算方法を徹底解説
【管理職の残業代について】
【「残業は禁止」と言われている場合】
【早出出勤がある場合】
【未払い残業代を請求する場合】
3-3:休憩時間に関する違反
【休憩時間に関する違反】
労働基準法で定められた通りの休憩時間が与えられていない場合(第34条)
休憩時間は、
- 6時間を超える労働→45分以上
- 8時間を超える労働→60分以上
が与えられなければなりません。
もし、以上の休憩時間がなければ、労働基準法違反ですので、会社には、
「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」
が与えられます。
休憩時間に関して労働基準法に違反し、罰則を受けた(送検された)ケースは、平成29年6月1日〜平成30年5月31日までの1年間で0件です。
それでは、あなたも違法な状況ではないかチェックリストをやってみてください。
【休憩時間の違法性のチェックリスト】
- 6時間を超えて働いているのに、休憩が45分以下
- 8時間を超えて働いているのに、休憩が60分以下
- 休憩時間も、電話待ち、客待ちの対応等で職場を離れられない
- 休憩時間が、労働時間の最後にしか取れない
- 休憩時間に、上司からやるべきことを指示されている
これらに一つでも当てはまる場合、あなたの状況は違法です。
詳しくは、以下の記事をご覧ください。
労働基準法上の45分・60分の休憩の「3つの原則」正しいルールを解説
3-4:法定休日に関する違反
【法定休日に関する違反】
週1回の休日(法定休日)が与えられていない(第35条)
→労働者には、週1日以上の休日を与えられる権利があるため、週に1度も休日がない場合は違法なのです。そのため、罰則の対象になります。
以上のような場合は、労働基準法に違反しているため、会社には、
「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」
が与えられます。
「自分は週1日も休まない日があるぞ」
と思われることもあるかもしれませんが、法定休日も3-1でお伝えした36協定を締結していれば、違法ではなくなります。
ただし、36協定が締結されていても、3-2で解説した「休日手当」が出ていなければ違法です。
休日に関して労働基準法に違反し、罰則を受けた(送検された)ケースは、平成29年6月1日〜平成30年5月31日までの1年間で12件(440件中)です。
具体的には、
「36協定を締結することなく、休日出勤をさせた」
という会社が罰則を受けています。
さらに、休日出勤に関する違反は、残業に関する違反と合わせて行われることも多いです。
休日について詳しくは、以下の記事をご覧ください。
労働基準法上の休日の定義とよくある4つの疑問を弁護士が徹底解説!
3-5:給料に関する違反
【賃金に関する違反】
- 決められた給料が支払われない、もしくは最低賃金を下回っている(最低賃金法第4条)
→給料は、各地域で定められている最低賃金を超える金額が支払われなければなりません。 - 給料日に給料が支払われない(第24条)
給料は、「全額」が定められた「給料日」に支払われなければなりません。違反している場合は、「30万円以下の罰金」の罰則の対象になります。
最低賃金については、労働基準法ではありませんが「最低賃金法」で定められています。
そのため、あなたの給料を1時間当たりの給料(基礎時給と言います)にした場合に、最低賃金を下回っていたら、最低賃金法違反であり、「50万円以下の罰金」の罰則が与えられます。
基礎時給の計算方法について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
【図解】残業代の時給の計算方法と損しないために注意すべきポイント
さらに、一部のブラック企業や、経営が傾きかけている会社では、給料日に給料が全額支払われず、
「分割払いにされる」
「○月までに支払うと、待つように言われる」
ということがありますが、これは労働基準法違反であり、「30万円以下の罰金」の罰則が与えられます。
賃金に関して労働基準法に違反し、罰則を受けた(送検された)会社は、平成29年6月1日〜平成30年5月31日までの1年間で53件(440件中)と多いです。
具体的には、
- 従業員に3ヶ月分の給料を支払わなかった
- 従業員に、給料を部分的にしか支払わなかった
というものが多いです。
あなたも、自分が違法な状況にないか以下のチェックリストで確認してください。
【賃金に関する違法性のチェックリスト】
- 給料を1時間当たりの賃金(基礎時給)にした時に、最低時給以下になる
- 給料日に給料が出ない
- 給料が分割で支払われる
一つでも当てはまる場合、あなたの状況は違法ですので、4章で解説する対処法を実践してください。
3-6:労働者の妊娠・出産に関する違反
【労働者の妊娠・出産に関する違反】
- 出産前、出産後休暇を認めない(第65条)
- 妊産婦(妊娠している人や出産後1年以内の人)が、「残業をしない」という要求をしたのに、残業をさせる(第66条)
- 生後1年未満の子供を育てる人に、育児時間を与えない(第67条)
労働基準法では、労働者の妊娠・出産・育児に関しても、ルールが規定されています。
そのため、上記の場合は、労働基準法違反になり、「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」の罰則が与えられるのです。
労働者の妊娠・出産・育児に関して労働基準法に違反し、罰則を受けた(送検された)会社は、平成29年6月1日〜平成30年5月31日までの1年間で0件(440件中)です。
あなたも、自分が違法な状況に置かれていないか、以下のチェックリストで確認してみてください。
【妊娠・出産・育児に関する違法性のチェックリスト】
- 出産前や出産後に休暇を申請したが、拒否された。
- 妊娠中や出産後1年以内の間に、残業をしないことを会社に申請したのに、会社から残業を強要された。
- 生後1年未満の子供がいるため、休憩時間以外に育児のための時間を会社に請求したが、拒否された。
以上の場合は違法ですので、4章で紹介する対処法を実践してください。
3-7:労働災害(労災)に関する違反
【労働災害(労災)に関する違反】
- 労働災害(労災)によって病気やケガになったのに、療養補償、休業補償、障害補償がない(第75条、76条、77条)
- 労働災害(労災)によって家族が死亡したのに、遺族補償や葬祭料を支払わない(第79条、80条)
労働災害とは、仕事中や通勤中に、病気やケガになることです。
以上の場合は、労働基準法に違反しているため、
「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」
の罰則の対象になります。
従業員が労働災害(労災)を起こした場合、会社は必ず労働基準監督署に報告しなければなりません。
報告しなければ、従業員に補償を受けさせることができないからです。
しかし、会社は、
- 危険作業を行わせたことを、認めたくない
- 従業員にケガや病気、死亡という被害を与えてしまった責任を負いたくない
などの理由から、労働災害(労災)を隠すこともあります。
労働災害(労災)を隠されたら、労働者にとっては損でしかありません。
そのため、上記の場合は罰則の対象になるのです。
労働災害(労災)に関して労働基準法に違反し、罰則を受けた(送検された)会社は、平成29年6月1日〜平成30年5月31日までの1年間で48件(440件中)です。
特に、建設業や運送業、製造業の工場等の、危険な現場での業務によって発生することが多いようです。
あなたも、自分の状況が違法ではないか、チェックリストで確認してみてください。
【労働災害(労災)の違法性のチェックリスト】
- 仕事中や通勤中にケガや病気をしたのに、会社が申請してくれない
- 労働災害(労災)の内容や発生状況を、会社が偽って申請していた
1つでも当てはまれば、あなたの会社は違法行為をしていますので、4章で解説する対処法を実践してください。
3-8:労働条件に関する違反
【労働条件に関する違反】
- 採用時に、労働条件を明らかにしていなかった(第15条)
- 就業規則を作成しない、届け出しない(第89条)
- 就業規則を職場の見えやすい所に掲示していない、従業員に周知していない(第106条)
以上の場合は、労働基準法に違反しているため、
「30万円以下の罰金」
の罰則の対象になります。
会社は、どういった条件であなたの雇用するのか、労働条件を明らかにする必要があります。
さらに、会社で従業員にどのように働いて貰うのか、就業規則で規定し、労働基準監督署に届け出、認められたら従業員が誰でも見ることが出来るように掲示・周知する必要があるのです。
これらが労働基準法で規定されているため、違反すると罰則があるのです。
労働条件に関して労働基準法に違反し、罰則を受けた(送検された)会社は、平成29年6月1日〜平成30年5月31日までの1年間で0件(440件中)です。
あなたも、自分が違法な状況ではないかチェックリストで確認してください。
【労働条件に関する違法性のチェックリスト】
- 採用時に労働条件が明示されなかった
- 採用時と入社後の労働条件が異なる
- 就業規則が作成されていない
- 就業規則がどこにあるか分からない、上司に聞いても教えてくれない
一つでも当てはまる場合は違法ですので、4章でお伝えする対処法を実践してください。
3-9:解雇に関する違反
【解雇に関する違反】
解雇予告や解雇予告手当なしの解雇
→労働者を解雇する時は、少なくとも30日以上前に解雇することを伝えなければなりません。
もし30日前に予告しなければ、30日分の賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。
(労働基準法第20条)
解雇予告せず、解雇予告手当も支払わなかった場合は労働基準法違反です。
「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」の罰則が与えられます。
解雇に関して労働基準法に違反し、罰則を受けた(送検された)会社は、平成29年6月1日〜平成30年5月31日までの1年間で0件(440件中)です。
あなたも、自分が違法な状況ではないかチェックリストで確認してください。
【解雇に関する違法性のチェックリスト】
- 30日以内に解雇することを伝えられた
- 30日以内に解雇されたのに、30日分の解雇予告手当を貰えなかった
一つでも当てはまる場合は違法である可能性が高いため、4章でお伝えする対処法を実践してください。
3-10:その他の違反
【その他の違反】
- 国籍、信条、社会的身分、男女の差別的扱い(第3条、4条)
→どのような理由があっても上記のような理由で差別的な扱いをすることは違法です。「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられます。 - 労働契約不履行に対する違約金・賠償金の予定(第16条)
→○ヶ月以内に退職した場合は賠償金を支払う、等のように違約金・賠償金を予定することは労働基準法違反です。そのため、「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられます。 - 労働基準監督署に、会社の違法行為を申告したことによって会社から不利益な扱いを受けた(104条2項)
「6ヶ月以下の懲役または30万円以上の罰金」の罰則の対象になります。 - 労働者を二重派遣した場合(中間搾取、第6条)
→「中間搾取」は、通常の派遣は対象にはなりませんが、二重派遣等の行為は「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」の罰則の対象になります。 - 満15歳以下の児童を労働させた場合(児童労働)
→「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」の罰則の対象になります。ただし、軽く健康を害しない労働で行政の許可を得たものや、映画、演劇の出演等については、児童労働に該当しません。
もし上記の違反に心当たりがある場合は、これから紹介する対処法を実践してください。
4章:労働基準法違反に対する対処法
もし、あなたの会社が労働基準法に違反している場合、会社の行為を改善させるためには、労働基準監督署に通報(申告)する必要があります。
労働基準監督署に通報(申告)することで、以下のようなことが期待できます。
①労働基準法にのっとった具体的なアドバイスをくれる
②悪質な場合は解決のために動いてくれることもある
それぞれ解説します。
①労働基準法にのっとった具体的なアドバイスをくれる
あなたが労働基準監督署に通報(申告)をした場合、まずは窓口の担当者から、あなたのトラブルの法律上の扱いや具体的な対処方法などを教えてもらうことができます。
②悪質な場合は解決のために動いてくれることもある
労働基準監督署に通報(申告)した場合、解決のために「調査」「是正勧告」「逮捕」などの行動をとってくれることもあります。
全国の労働基準監督署には、トータルで約3000人の「労働基準監督官」という専門職員が在籍しており、彼らは、
- 臨検監督
- 司法警察官
という強力な権限を持っています。
簡単に言うと、裁判所の許可がなくても、労働基準法違反が疑われる会社に、直接立ち入って調査をする(臨検監督)ことが可能であり、労働基準法に違反する会社については、警察官と同じように逮捕や強制捜査を行うことができる(司法警察官)のです。
これらの対応が取られることによって、会社には以下のような影響が与えられます。
【労働基準監督署への通報(申告)で会社に与えられる影響】
- 社会的信用を失う(書類送検された場合は厚生労働省のHPで公表される)
- 経済的ダメージ(罰金や社員への未払い賃金の支払い)
- 経営者の逮捕や懲役
通報(申告)して対応してもらうことができれば、あなたのトラブルが解決できるだけでなく、会社にも大きな影響があるのです。
労働基準監督署には、全国で約3000人の労働基準監督官がいますが、全国には400万もの会社があり、常に人手不足です。
そのため、労働災害(労災)、危険作業などの人命に関わる相談が優先され、そうではない相談では動いてくれないことがあるのです。
そのため、まずは一度労働基準監督署に相談し、それでも解決しなかったら、労働問題に強い弁護士に解決を依頼することをおすすめします。
それぞれの方法について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
【労働基準監督署に通報する方法】
【労働問題に強い弁護士に相談する方法】
まとめ
いかがでしたか?
最後に今回の内容をまとめます。
そもそも、労働基準法とは労働者(会社員、契約社員、派遣社員、アルバイト・パート)を守るためにあるものですので、違反すると罰則が与えられます。
【労働基準法に違反した場合の罰則】
- 1年以上10年未満の懲役または20万円以上300万円以下の罰金
- 1年以下の懲役または50万円以下の罰金
- 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
- 30万円以下の罰金
罰則の対象になるのは、「使用者」です。
【労働基準法の使用者】
この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。
(労働基準法第10条)
さらに、「両罰規定」があるため会社そのものも罰則の対象になります。
労働基準法違反になるのは、以下のようなものです。
【労働基準法違反になるケース】
- 労働時間・残業に関する違反
→36協定を締結せずに、残業させられた。36協定があっても、上限を超えて残業させられた。 - 残業代、深夜手当、休日手当に関する違反
→残業、深夜労働、休日労働をしたのに、割増賃金が出ない - 休憩時間に関する違反
→休憩時間が、6時間を超える労働に45分、8時間を超える労働に60分与えられない。 - 法定休日に関する違反
→36協定を締結せずに、法定休日も出勤させられた。 - 給料に関する違反
→給料が最低賃金以下、もしくは分割払いや遅延がある。 - 妊娠・出産に関する違反
→妊娠中や出産後1年以内なのに、残業を強制される。また、出産前後に休暇を取らせてくれない。 - 労働災害(労災)に関する違反
→労働災害(労災)を申請してくれない。 - 解雇に関する違反
→30日前までの解雇を伝えられ、解雇予告手当も貰えなかった。
会社が、労働基準法違反の行為をしている場合は、以下の対処法を取りましょう。
【労働基準法違反の対処法】
- 労働基準監督署に通報(申告)する
- 労働問題に強い弁護士に依頼する
正しい知識を覚えて、周りの人にも教えてあげてくださいね。