【図解】残業代の時給の計算方法と損しないために注意すべきポイント

監修者

弁護士法人QUEST法律事務所
代表弁護士 住川 佳祐

【図解】残業代の時給の計算方法と損しないために注意すべきポイント
チェック
この記事を読んで理解できること
  • 正しい残業代の時給を知るための2つのポイント
  • 計算するのはまだ早い!残業時間は実はもっと多いかも
  • 残業代を請求しようと思ったら今すぐ行動を!

あなたは「毎月こんなに残業しているのに残業代がもらえない…」と思っていませんか?

実は、多くのブラック企業では利益を増やすために、 あなたが無知なのをいいことに残業代をごまかしているのです

ブラック企業が使っている手口を知り、正しい方法で残業代を計算すると、 あなたの本来の月収は約2倍になるかもしれません。 

なぜなら、残業したときの時給は1.25倍だけでなく、 条件によっては1.6倍になることもあるからです。

この記事を読めばあなたの残業代の時給、そして残業代込みの本来の月収が分かります。

この記事では、
第1章残業代の時給の出し方について、
第2章で多くの人がだまされている残業時間について解説していきます。

正しく計算することで、あなたの本来の月収が2.3倍になる場合もありますので、 この記事を読みながら計算してみましょう。

【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】

残業代の時給は、下記の式で計算できます。

「残業代の時給」=「基礎時給」×「割増率」

■基礎時給

あなたの月給を時給に換算した金額

■割増率

  • 法定労働時間を超えた労働:1.25倍
  • 法定休日の労働:1.35倍
  • 深夜労働(午後10時~翌午前5時):1.25倍

実は下記の時間は労働時間としてカウントできる可能性が高いため、下記の時間も計算に入れることが大事です。

■本来は、残業代が発生する可能性が高い「労働時間」の代表例
・掃除:始業前や就業後の掃除時間
・着替え:制服、作業服、防護服などに着替える時間
・休憩時間:休憩中の電話番や来客対応などを依頼された場合
・仕込み時間:開店前の準備やランチとディナーの間の仕込み時間
・準備時間:店舗などで開店前の準備をする時間
・待機時間:トラックの荷待ちの時間
・仮眠時間:警報や緊急事態に備えた仮眠の時間(特に警備や医療従事者など)
・研修:会社からの指示で参加した研修
・自宅の作業:仕事が終わらず自宅に持ち帰って仕事した時間

未払い残業代を取り返したいというあなたへ、まずはお気軽にご相談ください
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1章:正しい残業代の時給を知るための2つのポイント

残業代の時給を知るために重要なのは、 細かい数字の正確さではなく、大まかなルールを理解することです。

残業代の時給は以下のとおり算出されます。

「残業代の時給」=「基礎時給」×「割増率」

残業代の時給が分かれば、あとは残業時間をかけ算することで、 あなたが本来貰えるべき残業代のだいたいの合計金額が分かります。

1-1:残業代計算では、まず「基礎時給の把握」が大事

「残業代の時給」=「基礎時給」×「割増率」

まずは、基礎時給について解説します。

1-1-1:各種手当てを入れることで基礎時給が増える

「基礎時給」とは、あなたの月給を時給に換算した金額です。

正確に出すには、難しい説明が必要となるので、ここでは大まかに「月給」を「170時間*」で割った金額が「基礎時給」と考えてください。

* 170時間とは「契約で決められた平均労働時間」のことです。「契約で決められた平均時間」というのは、人にもよりますが160~174時間であることが多いようです。今回は計算しやすいように170時間としています。

まず手始めに、自分の月給を「170」で割ってみてください。

「あなたの月給(基本給)」÷ 170
「あなたの基礎時給」

例)月給(基本給)25万円の人の場合

月給(基本給)25万円÷170時間

基礎時給1, 471円

このとき、ポイントになるのが「月給(基本給)」です。

実は、この月給には、会社の給与明細に記載されている 「基本給」だけでなく、色々な手当も含めることができるのです。

つまり、

「本当の月給」 = 「給与明細の基本給」+「○○手当」

となります。

基礎時給の計算に入れてよい手当 基礎時給の計算に入れられない手当

「役職手当」
「役付手当」
「職務手当」
「営業手当」
「業務手当」
「地域手当」
「調整手当」など

「家族手当」
「通勤手当」
「別居手当」
「子女教育手当」
「住宅手当」
「賞与」
「残業手当」
「深夜手当」
「結婚のお祝い」など

※各種手当が基礎時給の計算に入れられるかどうかは、就業規則や就業実態によって変わる可能性があります。「残業手当」というような名目でも、専門家から見ると残業代ではないと判断することもあります。詳しくは社労士や弁護士にご相談ください。

もし、月給に入れるべき手当を入れずに計算すると 残業代を計算する元となる「基礎時給」が少なくなり、 非常に損をしてしまうので注意して下さい

例)基本給25万円の人が「営業手当5万円」「調整手当5万円」をもらっていた場合

(「基本給25万円 」+ 「営業手当5万円」+ 「調整手当5万円」)÷ 170時間
基礎時給2,059円

残業代 時給 正しい基礎時給の計算方法

1-2:時間帯や企業規模によって割増率が変わる

残業代の時給の公式
「残業代の時給」=「基礎時給」×「割増率」
のうち、「割増率」について解説します。

割増率は、「基礎時給の1.25~1.6倍」と幅広く、
① 深夜かどうか
② 出勤日か休日出勤か
③ 会社の規模
などによって決められています。

仮に基礎時給1,500円の方が深夜残業(深夜残業の時給は1.5倍になります)をする場合、 深夜時間帯の割増賃金(割増時給)は基礎時給の1.5倍、つまり残業代の時給は2,250円となります。

1-2-1:割増率を知れば、時給が最大1.6倍

中小企業の割増率(1.25~1.6倍)は下記の通りです。
例と図も確認して、各時間帯の割増率を理解しましょう。

・法定労働時間を超えた労働:1.25倍
・法定休日の労働:1.35倍
・深夜労働(午後10時~翌午前5時):1.25倍
・法定労働時間を超えた労働+深夜労働:
 1.25倍+1.25倍 = 合計1.5倍
・法定休日の労働+深夜労働:
 1.35倍+1.25倍 = 合計1.6倍


* 法定休日とは、簡単に言うと「1週間に1回は取らないといけない休日」のことです。

残業代 時給の割増率1

出勤日に残業した場合(深夜労働あり)

休日出勤した場合(法定休日 残業なし)

休日出勤した場合(法定休日 深夜労働あり)

※大企業の場合は中小企業よりも割増率が高くなることがあります。

1-3:残業代の時給を計算しよう

先ほどの図で解説したように、割増率は1.25~1.6倍と幅がありますが、 この記事では、だいたいの「残業代の時給」が分かるようになることが目的ですので、 計算がしやすいように割増率を1.25倍にすると以下のようになります。

例)基本給25万円の人が「営業手当5万円」「調整手当5万円」をもらっていた場合

先ほど計算したとおり、  

(「基本給25万円 」+ 「営業手当5万円」+ 「調整手当5万円」)÷ 170時間

基礎時給2,059円

基礎時給が2,059円、割増率が1.25倍なので、

「基礎時給2,059円」 × 「割増率1.25倍」

=残業代の時給 2,574円

つまり、残業代の時給は2,574円ということになります。

もし、上の例の人が月に100時間残業をしている場合、 本来支払われる残業代は、毎月257,400円ということになります。

これは、基本給とほぼ同額の残業代をもらえることになるので、 月収が約2倍になるということです。

2章:計算するのはまだ早い!残業時間は実はもっと多いかも

残業代の時給(「基礎時給」×「割増率」)が分かったら、 あとは残業時間をかけ算すれば、あなたが本来もらえる残業代が分かります。

ただし、ブラック企業は「本当は労働時間としてカウントできる時間」 「労働時間には含まれない時間」として社員をだましている場合があるので注意が必要です。

2-1:実際には労働時間としてカウントできる時間

ブラック企業が、社員をだます手口として使うのは主に以下の時間です。

実は労働時間に含まれる場合もあるので、あなたが思っているよりも残業時間は多いかもしれません

■本来は、残業代が発生する可能性が高い「労働時間」の代表例
掃除始業前や就業後の掃除時間
着替え制服、作業服、防護服などに着替える時間
休憩時間休憩中の電話番や来客対応などを依頼された場合
仕込み時間開店前の準備やランチとディナーの間の仕込み時間
準備時間店舗などで開店前の準備をする時間
待機時間トラックの荷待ちの時間
仮眠時間警報や緊急事態に備えた仮眠の時間(特に警備や医療従事者など)
研修会社からの指示で参加した研修
自宅の作業仕事が終わらず自宅に持ち帰って仕事した時間

2-2:「休憩時間」のトリックを見抜き、正しい残業代を請求しよう

労働時間を計算する時に必要となるのが どんな時間が「労働時間」もしくは「休憩時間」になるのかを知ることです。

「労働時間」とは、あくまでも「会社の指揮命令下に置かれた時間」、 つまり、会社に縛られている時間です。

「休憩時間」は、「会社の指揮命令下には置かれない時間」、 つまり、自由に利用できる時間のことです。

「休憩時間」の間は会社は一切、あなたの行動を制限することができません。 逆に言うと、会社の都合で行動を縛られている時間「休憩時間」ではなく「労働時間」なのです。

多くのブラック企業では、あなたが無知なのをいいことに 「休憩時間」にも関わらず「労働」をさせているのです。

特に要注意なのは、 雇用契約書に2時間を超える休憩時間が書かれている場合です。 このような場合、ブラック企業が残業代を減らすために、 休憩時間を多めに見せかけていることが多いのです。

例えば、飲食店で10~13時と17~22時の間の4時間が休憩時間とされている場合、 実際には休憩時間内でランチの後片付けやディナーの仕込みの対応をしていることが多いです。

このような場合、実際には「会社の指揮命令下に置かれた時間」となる可能性が高いので、 休憩時間とされている部分も労働時間となることがあります。

そうなると残業時間としてより多くの時間をカウントできる可能性があります。

例)4時間が休憩時間とされている飲食店で働いている、基本給25万円の人が「営業手当5万円」「調整手当5万円」をもらっていた場合

先ほど計算したとおり、 「基本給25万円 」+ 「営業手当5万円」+ 「調整手当5万円」÷ 170時間

基礎時給2,059円

月に22日勤務していて、休憩4時間のうち1時間は休んで3時間は仕込みをしていた場合、

3時間 × 22日 = 66時間

もし、あなたがブラック企業にだまされて 月100時間残業をしていると勘違いしていたら… 

「本当の残業時間」 = 100時間 + 66時間
= 166時間

基礎時給が2,059円なので、166時間分の残業代は341,794円となります。

基本給25万円と合わせると、本来の月収は約59万円なので、基本給の2.3倍となります。 

※実際には深夜残業や休日出勤などがある場合は更に残業代が増えます。

3章:残業代を請求しようと思ったら今すぐ行動を!

もし、あなたがブラック企業に残業代を請求したいと思った場合 今すぐに行動を起こすことが重要です。

なぜなら、残業代の請求に関する「時効は3年と決められているため、 3年前に残業した分は、それから3年後の給料支給日経過時に時効で消えてしまうからです。

月給35万円(基本給25万円+手当10万円)の人で、 毎月100時間の残業(割増率1.25倍)2年間続いている場合

基礎時給2,059円 × 割増率1.25 × 残業100時間 × 24か月
 未払いの残業代6,177,000円

上記例の場合は、割増率を一番低い1.25倍で計算したとしても「2年間で約617万円の残業代」となり、 さらに休日出勤や深夜残業があれば、より多くの残業代を請求できます。

この約617万円もの残業代は、本来、きちんと働いたあなたが受け取るべき正当な残業代です。

まとめ:残業代の時給について

いかがでしたでしょうか?

残業代は以下のとおり計算することができます。

「残業代」 = 「基礎時給」 × 「割増率」 × 「残業時間」

ブラック企業が残業代をごまかす手口は以下の3つです。

・基礎時給の計算に各種手当てを入れない
・割増率1.25~1.6倍を無視する  ※中小企業の場合の割増率です。
・残業時間を少なく見せている

ご自身で残業代を計算する場合は、これらの手口にだまされないように気をつけてください。

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弁護士法人QUEST法律事務所へのご相談は無料です。当事務所では、電話・メール・郵送のみで残業代請求できます。ですので、全国どちらにお住まいの方でも対応可能です。お1人で悩まずに、まずは以下よりお気軽にご相談ください。

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