【保存版】弁護士直伝!残業代で困った時に役立つ残業代マニュアル

監修者

弁護士法人QUEST法律事務所
代表弁護士 住川 佳祐

【保存版】弁護士直伝!残業代で困った時に役立つ残業代マニュアル
チェック
この記事を読んで理解できること
  • まずは残業代が支払われるルールについて知っておこう
  • 残業代を計算する方法
  • 未払い残業代の請求方法
  • よりスムーズに請求するために集めるべき証拠
  • 残業代請求には「3年の時効」がある
  • 残業代に関するよくある疑問
  • 役職・業種別の残業代ルール

あなたは、自分の状況での残業代のルールについてしっかり理解できていますか?

私は、労働問題に積極的に取り組む弁護士として日々たくさんの方からの相談を受ける中で、労働トラブルの中でも、残業代についてお悩みの方がとても多いと感じています。

その中で、多くの人は、そもそも残業代の基本的なルールを知らなかったり、基本的なルールだけでは分からない雇用形態・職種であることが多く、知識がないために残業代で損してしまっているケースがよく見受けられます。

さらに「今は特に悩んでいない」という人も、4月からの新生活で、

  • 転職や異動によって周囲の環境が変わる
  • 昇進して役職が付く、給与体系が変わる
  • 部下や後輩を管理・指導する立場になる

などの環境の変化によって、「どんな場合に残業代が出るのか・出ないのか」「残業代はどのように計算するのか」などを再確認したいと思うことが出てくるのではないでしょうか。

そこで大事なのが、残業代について「基本的なルール」を確認するだけでなく「あなたの状況でのルール」を把握することです。なぜなら、残業代のルールは給与体系や職種によって異なることが多く、基本的なルールだけでは間違った判断をしてしまう可能性があるからです。

そこでこの記事では、まずは、残業代の定義や発生するルール、自分の残業代を計算する方法などについて、基礎的な知識を詳しく解説しています。

さらに、残業代を請求する場合の請求手段や「証拠」「時効」、残業代に関するよくある疑問、職種別の残業代のルールについてもお伝えします。

ぜひこの記事から残業代に関する詳しい知識を得て、これからの生活や仕事に役立ててくださいね。

【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】

■残業代のルールとは

会社は、従業員に残業させた場合「1.25倍」の割増率をかけた残業代を、休日労働させた場合、通常の時給に「1.35倍」の割増率をかけた残業代を支払わなければならない。

■残業代の計算方法

残業代の計算式

■残業代を自分で請求する場合と弁護士に依頼する場合のメリット・デメリット

残業代請求を自分でやる場合と弁護士に依頼する場合の違い

■残業代請求のためには証拠を集めることが大事

残業代請求のためには「労働条件を示す証拠」と「残業時間を示す証拠」が必要であり、できるだけ早めに集めることが大事。

■残業代請求は3年の時効に注意

残業代は、本来の支払日から3年が経過すると時効が成立するため、請求に失敗する可能性が高まる。

残業代に関する知識・ルールのポイント

目次

  1. 1章:まずは残業代が支払われるルールについて知っておこう
  2. 2章:残業代を計算する方法
    1. 2-1:残業代を計算するステップ
    2. 2-2:「みなし残業代」「歩合」など様々なケースの残業代の計算方法
  3. 3章:未払い残業代の請求方法
  4. 4章:よりスムーズに請求するために集めるべき証拠
  5. 5章:残業代請求には「3年の時効」がある
  6. 6章:残業代に関するよくある疑問
    1. Q1:残業する代わりに早出出勤を命令された場合、残業代は出ないの?
    2. Q2:「残業は禁止していた」と言われて残業代が出ないのはしょうがないこと?
    3. Q3:会社で残業が禁止されているため、自宅に持ち帰って残業しているが、残業代は発生しないのか
    4. Q4:残業代が支払われる代わりに代休が与えられる場合、残業代は出なくてもしょうがないの?
    5. Q5:残業代がカットされるのはしょうがないの?
    6. Q6:サービス残業があることを告発したい場合は、どうしたら良いの?
    7. Q7:残業代は年収に入れることができるのかな?
    8. Q8:会社が倒産してしまった!未払い給料や残業代はどうなる?
    9. Q9:残業代を請求すると、どのくらいの期間で回収することができるんだろう?
    10. Q10:残業代請求を弁護士に依頼したら、高額な費用がかかるのではと心配
  7. 7章:役職・業種別の残業代ルール
    1. 7-1:管理職
    2. 7-2:営業職
    3. 7-3:「SE」「飲食」など職種別の残業代ルール
      1. 7-3-1:SE(システムエンジニア)
      2. 7-3-2:トラック運転手
      3. 7-3-3:タクシー運転手
      4. 7-3-4:飲食店
      5. 7-3-5:看護師
      6. 7-3-6:医師
      7. 7-3-7:ベンチャー企業の社員
      8. 7-3-8:建築業
      9. 7-3-9:住み込みの管理人
      10. 7-3-10:ガソリンスタンド
      11. 7-3-11:警備員
  8. まとめ:残業代について
未払い残業代を取り返したいというあなたへ、まずはお気軽にご相談ください
未払い残業代を取り返したいというあなたへ、まずはお気軽にご相談ください

1章:まずは残業代が支払われるルールについて知っておこう

私の経験上、残業代が支払われるルールについて、しっかり理解している人は少ないようです。

そのため、

  • そもそも会社側が間違った知識を持っており、正しい金額の残業代が払われていない
  • 意図的に残業代を少なくされている

などの状況にあるのに、その現状をよく把握していないというケースが多く見受けられます。

  • 会社でサービス残業が常態化している
  • 様々な理由をつけて残業代が支払ってもらえない
  • 管理職を理由に残業代が出ない
  • 残業代が〇〇手当として支払われ、それ以上の残業代が一切出ない

このようなことに、思い当たることはありませんか?

残業した事実があれば残業代が支払われることが、労働基準法で以下のように規定されています。

(労働基準法37条1項)

会社は、従業員に残業させた場合、通常の時給に「1.25倍」の割増率をかけた残業代を支払わなければならない。
また、
会社は、従業員に休日労働させた場合、通常の時給に「1.35倍」の割増率をかけた残業代を支払わなければならない。
※以上の説明は、分かりやすく改変しています。

つまり、残業したのに残業代が出なければ、この労働基準法に違反することになるのです。そのため、会社に請求することで取り返せる可能性があります。

残業代の支払いルールについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。

あなたの残業代は適正?労働基準法での残業代の定義・支払いのルールとは

しかし、多くの会社では、正しい金額の残業代が支払われていないようですので、自分で自分の残業代を計算できるようになっておくことも大事です。

そこで、次に自分の正しい残業代の金額を計算する方法について解説します。

2章:残業代を計算する方法

「自分がもらっている残業代は適正な金額なんだろうか?

「自分の残業代の金額は普通の水準なのかな?」

このように思っている人は多いのではないでしょうか?

自分の残業代が一般的に見て多いのかどうか、以下の記事で解説しているように、厚生労働省の行なった調査の「残業代の平均額」と比較して比べてみることができます。

徹底解説!残業代の業界別平均と、あなたがもらうべき本当の残業代

ただし、重要なのは、あなたの残業代の金額が平均より多いかどうかではなく、あなたの残業代は、適正な金額が支払われているか、ということです。

そこで、これから紹介する計算方法を使って、自分の正しい残業代を把握しておくことをおすすめします。

2-1:残業代を計算するステップ

残業代は、以下の計算式で計算することができます。

残業代の計算式

基礎時給とは、あなたの1時間あたりの賃金のことで、時給制の場合はあなたの時給、月給制の場合は、以下の計算式で計算することができます。

基礎時給の計算式

基礎時給について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

残業代の時給をごまかす「3つの手口」と残業代の「正しい計算方法」

次に、基礎時給に割増率をかけます。割増率とは、

  • 残業
  • 深夜労働
  • 法定休日労働

を行なった場合に、かけられるものです。

残業代計算の割増率

割増率について、詳しくは以下の記事で解説しています。

【割増率について】

知って得する!【カンタン】残業代の割増率と計算式!

【深夜労働について】

深夜残業手当をちゃんともらうために!正しい定義・計算方法を徹底解説

こうして基礎時給に割増率をかけることで、「残業1時間あたりの賃金」を計算することができます。

この「1時間あたりの賃金」を、残業時間にかけることで、正しい残業代の金額を計算することができます。

ここで、一点注意しておくべきポイントがあります。それは、以下のような時間も労働時間としてカウントできる可能性が高いということです。

【労働時間にカウントできることがある時間】

  • 準備時間:制服、作業服、防護服などに着替える時間、始業前の朝礼・体操の時間など
  • 後始末時間:着替え、掃除、清身
  • 休憩時間:休憩中の電話番や来客対応などを依頼された場合
  • 仕込み時間:開店前の準備やランチとディナーの間の仕込み時間
  • 待機時間:トラックの荷待ちの時間
  • 仮眠時間:警報や緊急事態に備えた仮眠の時間(特に警備や医療従事者など)
  • 研修:会社からの指示で参加した研修
  • 自宅の作業:仕事が終わらず自宅に持ち帰って仕事した時間

「労働時間にカウントできることがある時間」について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

残業時間の定義とは?違法性の判断基準と現状を変える2つの方法

実際に計算してみると、以下のようになります。

(例)

  • 月給20万円
  • 1ヶ月の残業100時間
  • 一月平均所定労働時間170時間
    ※一月平均所定労働時間とは、会社に定められた1ヶ月あたりの労働時間のことで、170時間前後であることが一般的です。

以上の例で計算してみます。

 

(20万円÷170時間)×割増率1.25倍×100時間=14万7000円(1ヶ月の残業代)

 

残業代を2年前の分までさかのぼって請求すると考えると、

 

14万7000円×24ヶ月=352万8000円

 

と、請求できる金額は、最大で300万円を超えることが分かります。

これほどの金額になるのですから、自分で自分の残業代を把握できるようになっておくことが、とても大事なことなのです。

※ただし、これから残業代請求を検討している場合は、弁護士が代わりに正しい残業代を計算してくれます。

2-2:「みなし残業代」「歩合」など様々なケースの残業代の計算方法

ここまで残業代の計算方法について解説しましたが、実際には「みなし残業代」「歩合」「変形労働時間制」など、計算方法が異なる場合があります。

そのため、それぞれの計算方法について詳しく知りたい場合は、これから紹介する記事を参考にしてください。

【残業代の基本的な計算方法】

5分で分かる!正しい残業代の計算方法と実は残業になる8つの時間

【固定残業代制(みなし残業代制)】

あなたも違法?正しい固定残業代の計算方法と残業代を取り返す2つの手段

【裁量労働制】

裁量労働制にも残業がある!制度の考え方と残業代が貰える条件を解説

【年俸制】

誰でも5分でわかる「年俸制とは?」と不当な低賃金への対処法

【変形労働時間制】

変形労働時間制とは?誤解されがちな意味と企業が悪用している時の対処法

【フレックスタイム制】

フレックスタイム制とは?誰でもたったの5分で理解できる正しい意味

【歩合給制】

「歩合給制だから残業代が出ない」は間違い!正しいルール・計算方法

【アルバイト】

アルバイトでも残業手当は出る!残業手当の支払いのルールと計算方法

残業代の計算方法について、理解できたでしょうか?

もし、あなたがもらっている残業代が計算結果よりも少ないようなら、これから紹介する「未払い残業代の請求方法」で、会社から取り返せることがあります。

3章:未払い残業代の請求方法

それでは、未払い残業代の請求方法について解説しますので、今後請求することを検討している場合は、ぜひ参考にしてください。

残業代を請求する方法には、以下の2つの方法があります。

  • 自分で直接請求する方法
  • 弁護士に依頼して請求する方法

どちらの方法でも同じ、というわけではありません。

この2つの方法には、以下のようなメリット・デメリットがあります。

残業代請求を自分でやる場合と弁護士に依頼する場合の違い

それぞれの方法の詳しいメリット・デメリットや手続きの流れ、かかる費用などについて、詳しくは以下の記事で解説していますので、ぜひ参考にしてください。

【残業代請求を自分で行う場合】

自分で残業代を請求する3つの方法と専門弁護士が教える請求額を増やすコツ

【残業代請求を弁護士に依頼する場合】

失敗したら残業代ゼロ?弁護士選びの8つのポイントと請求にかかる費用

さらに、残業代請求をより円滑に行うためには、これから紹介する2つのポイントを押さえておくことが大事です。

4章:よりスムーズに請求するために集めるべき証拠

残業代請求のポイントの1つめは、残業代請求を有利に進めるために「証拠」を集めるということです。

証拠がなければ、残業代が未払いであることを証明することができず、交渉時に「残業代は支払ったはずだ」「残業なんてなかった」と言われてしまい、残業代請求に失敗する可能性があります。

集めるべき証拠には、以下の2つのものがあります。

  1. 残業代が未払いであることを示す証拠
  2. 残業した事実を示す証拠

具体的には、以下のようなものです。

【残業代が未払いであることを示す証拠】

  • 雇用契約書
  • 就業規則
  • 賃金規定
  • 給与明細

【残業した事実を示す証拠】

  • タイムカード
  • シフト表
  • 業務日報、運転日報
  • タコグラフ(ドライバーなどの場合)
  • 手書きの勤務時間・業務内容の記録(最もおすすめ)
  • 残業時間の計測アプリ
  • 家族に帰宅を知らせるメール(証拠能力は低い)
  • 会社のパソコンの利用履歴
  • メール・FAXの送信記録

集めるべき証拠の例や、集める上でのポイントについて、詳しくは以下の記事で解説していますので、ぜひご覧ください。

【保存版】知らないと損する?残業代請求する為に揃えておくべき証拠

5章:残業代請求には「3年の時効」がある

残業代請求のポイントの2つめは、「3年の時効」が成立する前に、手続きをはじめる必要があるということです。

残業代が請求できるのは、残業代が支払われていた給料日を基準として「3年間」です。つまり、3年前の1ヶ月分の残業代が、毎月の給料日に消滅して行くのです。

残業代請求の3年の時効

ただし、会社に「配達証明付内容証明郵便」を送付することで、時効を半年間止めることができます。そのため、残業代請求の手続きは、できるだけ早くはじめる必要があるのです。

残業代請求の時効について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。

残業代請求の時効は3年!時効を止める3つの手段と具体的な手続きの流れ

残業代請求の2つのポイントについて、理解できたでしょうか?

それでは次に、残業代に関するよくある疑問についてお答えします。

6章:残業代に関するよくある疑問

残業代について、ありがちな疑問とその回答をご紹介します。

Q1:残業する代わりに早出出勤を命令された場合、残業代は出ないの?

残業は「1日8時間」を超えて働いた場合に発生するものです。早出出勤が命令されていたら、早出の時間から8時間を超えた時間がすべて残業になり、残業代が発生すると考えられます。

早出出勤について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

早出で残業代が132万円も増える?すぐに分かる残業代をもらう方法

Q2:「残業は禁止していた」と言われて残業代が出ないのはしょうがないこと?

  • 「残業は禁止」と言いつつ残業を黙認している
  • 残業禁止と言いつつ、残業しなければ終わらない量・納期の仕事を押し付ける

このような場合は、たとえ会社から「残業禁止」と言われていても、残業代が発生する可能性が高いです。

残業が禁止されている場合の、残業代が出るケースなどについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。

残業禁止なら残業代は出ない?弁護士が教える法律上の扱いと対処方法

Q3:会社で残業が禁止されているため、自宅に持ち帰って残業しているが、残業代は発生しないのか

会社での残業が禁止されているため、自宅に持ち帰って仕事をしているという人もいると思います。持ち帰り残業も、

  • それが会社からの命令だった
  • 持ち帰らなければ終わらない仕事だった

などのことを証明できる証拠があれば、残業代を請求できることがあります。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

持ち帰り残業で残業代が出る?判断基準と3つの対処方法を徹底解説

Q4:残業代が支払われる代わりに代休が与えられる場合、残業代は出なくてもしょうがないの?

会社によっては、残業代を支払う代わりに代休を与えて、残業を相殺することがあるようです。たとえば、1日2時間の残業を4日続けた場合に代休を取得させ、8時間分の残業を「なかったこと」にするようなやり方です。

代休を与えること自体は違法ではありません。しかし、代休を与えたからといって、残業代がまったく支払われなければ違法です。

残業代と代休について、詳しくは以下の記事で解説しています。

残業の代休での相殺は違法?NGになるケースと損しないための対処方法

Q5:残業代がカットされるのはしょうがないの?

  • これまで支払われていた残業代がカットされた
  • 残業代が、本来支払われるはずの額から減額(カット)される
  • 30分単位で残業が計算され、端数は切り捨てられてしまう。

このような場合は違法ですので、会社に残業代を請求できます。

残業代のカットについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。

残業代カットは違法!その理由とすぐにできる3つの対処方法とは

Q6:サービス残業があることを告発したい場合は、どうしたら良いの?

会社のサービス残業について、「告発して会社の行為を改善させたい」と考えている人もいるのではないでしょうか。

サービス残業は労働基準法違反のため、労働基準監督署に告発することで、なんらかの対応を求めることができます。

※労働基準監督署とは、労働基準法にのっとって会社を監視・監督する行政機関です。

ただし、労働基準監督署に動いてもらうためには、知っておくべきポイントがありますので、詳しくは以下の記事をご覧ください。

サービス残業を告発するべき?告発するメリットと集めるべき証拠

Q7:残業代は年収に入れることができるのかな?

「転職」「転居」などのタイミングで、自分の正確な年収を書かなければならず、「残業代って年収に入るんだっけ?」と悩んだことはありませんか?

結論から言うと、残業代は年収に含めることができます。

年収の考え方について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。

残業代は年収に含まれる!年収の考え方と転職時の2つの注意点

Q8:会社が倒産してしまった!未払い給料や残業代はどうなる?

ある日、給料が未払いのまま突然会社が倒産し、途方に暮れてしまう」このようなことは人ごとではありません。

特に、あなたが残業代を未払いにするようなブラック企業に勤めている場合、いつか本当に突然倒産してしまうかもしれません。

しかし、会社が倒産しても、倒産した会社に資産が残っていれば、社員には優先的に未払い給料が支払われますし、もしまったく資産がなくても、国の制度を利用すれば最大「8割」は回収することができます。

会社が倒産した場合の、未払い給料や残業代を取り返す方法について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

会社が倒産!未払い給料を取り返すためにやるべき事を弁護士が徹底解説

Q9:残業代を請求すると、どのくらいの期間で回収することができるんだろう?

残業代請求は、自分で行う場合は、あなたの行動のスピード次第ですが、専門知識がなければかなりの期間がかかってしまう可能性があります。一方で、弁護士に依頼した場合は、私の経験上、契約から解決まで数ヶ月程度で解決することが多いです。

具体的な期間はケースバイケースですので、詳しく知りたい場合は、経験者や弁護士に聞いてみることをおすすめします。

Q10:残業代請求を弁護士に依頼したら、高額な費用がかかるのではと心配

「弁護士に依頼」というと、高額な費用がかかると思い躊躇してしまいますよね。

しかし、「完全成功報酬制」を導入している弁護士なら、会社から回収したお金から、一部を報酬金として受け取るだけですので、あなたの経済的な負担は、「コピー代」「郵便代」などの実費のみです。

そのため、

  • 依頼時に高額な初期費用がかかることはない
  • 万が一請求に失敗しても、あなたに実費以外の費用が請求されることはない

のです。

詳しい弁護士費用については、以下の記事をご覧ください。

残業代請求の弁護士費用はいくら?費用相場と残業代をより高額取り返す方法

社員
社員
私の仕事でも残業代って出るのかなあ?
 
弁護士
弁護士
職種によっては異なるルールがある場合もありますので、職種別のルールも紹介しますね。
 

7章:役職・業種別の残業代ルール

肩書きや職種によっては、残業代のルールや残業代の計算方法が一部異なることがあります。そこで、特に特徴的な以下のケースを取り上げて、それぞれのポイントをお伝えします。

  • 管理職
  • 営業職
  • SE
  • トラック運転手
  • タクシー運転手
  • 看護師
  • 飲食店
  • 医師
  • ベンチャー企業
  • 建築業
  • 住み込みの管理人
  • ガソリンスタンド
  • 警備員

7-1:管理職

会社の中には「課長」「所長」「店長」などの「管理職」には、残業代が出ないと考えられ、どれだけ働いても残業代がゼロ、ということもあるようです。

しかし、実は残業代がゼロになるのは法律上の「管理監督者」になる場合です。法律上の管理監督者としてみなされるためには、以下の要素を満たしている必要があります。

  1. 経営者に近い権限・責任を持っている
  2. 勤務時間を自分で決める権限を持っている
  3. 残業代を出す必要がないほどの高い待遇を受けている

この要素を満たしていなければ、名前だけの管理職(名ばかり管理職)です。

これらの要素を満たしていないのに残業代がゼロなら、あなたの会社の経営者や担当者が間違った知識を持っているか、もしくは人件費削減のために、意図的にあなたを管理職扱いしている可能性があります。

管理職でも残業代が出るケースや、管理監督者に関する詳しいことについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。

「管理職の残業代ゼロ」はほぼ違法!判断基準から解決策まで徹底解説

7-2:営業職

同じく残業代が出ないことが当たり前にされがちなのが、営業職です。あなたの会社でも「営業には残業代が出ないのが普通」というような考え方が浸透していませんか?

具体的には、

  • 営業手当を残業代の代わりに支払っているため、どれだけ残業しても残業代が変わらない
  • 歩合給制のため、残業代は発生しない
  • 残業代は基本給に含まれている
  • 事業場外みなし労働時間制のため、どれだけ残業しても残業代は○万円のみ

などと言われて、残業代が出ない、もしくは少ないという営業職の人が多いようです。

しかし、営業職であっても残業代が出ない場合や、不当に少なくされるのは違法です。そのため、請求することで取り返せる可能性があります。

営業職の場合の残業代が出るケースや、会社が残業代をごまかす手口などについて、詳しくは以下の記事で解説しています。

【証拠集めが重要!】営業職にも出る残業代と請求のポイント

7-3:「SE」「飲食」など職種別の残業代ルール

それでは、これから特に特徴的な職種を取り上げ、職種別の残業代のルールのポイントを解説します。

7-3-1:SE(システムエンジニア)

SE(システムエンジニア)として働いており、裁量労働制が適用されている場合、残業代が未払いになっている可能性があります。

裁量労働制とは、実際の労働時間の長さにかかわらず、毎日一定の時間(例えば8時間)働いたと「みなす」という仕組みです。

ただし、適用できる職種には条件があり、プログラミングするだけのプログラマーには適用できません。

もし、あなたの業務の実態が「プログラマー」なのに、SE扱いで裁量労働制が適用され、残業代が支払われていない場合、それは違法である可能性が高いです。

SEの裁量労働制について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

SE・PG必見!【IT業界における裁量労働制】法律から見る違法性の高いケースとは

7-3-2:トラック運転手

トラック運転手は、道路状況や荷待ち時間の発生などによって残業時間が長時間になりやすく、また残業代が適正な金額支払われにくい労働形態が特徴です。

あなたがトラック運転手の場合、以下のようなことに当てはまることはありませんか?

  • 荷待ち時間や運転以外の作業の時間が、労働時間としてカウントされない
  • ほとんど社員と変わらないのに、請負で契約されているため残業代が出ない
  • 道路状況などの原因で残業が発生した場合、残業が自己責任にされて残業代が出ない

実は、このような場合でも残業代が発生することがほとんどです。トラック運転手は未払い残業代が高額になりがちですので、詳しくはぜひ以下の記事で確認してみてください。

この記事だけ読めばOK!トラック運転手の正しい残業代と取り返す方法

7-3-3:タクシー運転手

タクシー運転手も、未払い残業代が発生し、会社との間でトラブルになるケースが多く見受けられます。

タクシー運転手の場合、多くの人が「歩合給制」で給料をもらっていると思います。しかし、歩合給制は間違って導入・運用されて、残業代が未払いになっているケースもあります。

例えば、

  • 歩合給が残業代のかわり
  • 歩合給が勝手に、残業代とそれ以外に分けられている

などのことはありませんか?

こうした行為は違法とみなされ、未払い残業代を取り返せる可能性があります。

詳しくは、以下の記事をご覧ください。

歩合給制とは?誰でも5分でわかる正しい意味と不当な低賃金への対処法

7-3-4:飲食店

飲食店の場合、以下のような理由で残業代がごまかされるケースを見聞きしてきました。

  • 営業時間外の業務量が多い
  • 客の入り具合によって業務量が変わる
  • 人手不足になりやすい

これらの理由で、準備、片付け時間、仕込み時間などが労働時間としてカウントされないことがあります。

しかし、飲食店であっても、これまで解説したような残業代の支払いルールが適用されますので、残業代が出ないのは違法です。

具体的な飲食店での残業代がごまかされる手口や、残業代の請求方法について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

もう損しない!飲食店でも残業代が出る理由と残業代をもらう2つの方法

7-3-5:看護師

看護師として働いている人も、残業代が適正な金額出ない、ということをよく耳にします。

看護師は激務で、長時間残業が発生しやすい業種です。しかし、勤務する病院がブラックな病院の場合、どんなに残業しても残業代がほとんど出ないケースも見受けられます。

激務なのに薄給では、どんなにやりがいがあっても不満が溜まりますよね。

看護師の場合の残業代が出るケースや残業代請求のポイントについて、詳しくは以下の記事で解説しています。

【弁護士が解説】看護師でも過去3年間の残業代が取り返せる方法とは?

7-3-6:医師

看護師と同じく、医師も緊急の対応に迫られることも多く、長時間残業が発生しやすいです。しかも医師は人の命を預かる仕事であることから、サービス残業もいとわない、という姿勢になりがちかもしれません。

しかし、勤務医や研修医の場合は労働基準法が適用されるため、残業した事実があれば、残業代が出なければ違法です。そのため、請求することで取り返せる可能性があります。

医師の場合の残業代の支払いルールや、残業代を請求するポイントについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。

残業多すぎ?医師の残業のルールと医師特有の実は残業になる5つの時間

7-3-7:ベンチャー企業の社員

あなたベンチャー企業の社員の場合、以下のようなことに思い当たりませんか?

  • 会社でサービス残業は当たり前という空気があり、サービス残業が常態化している
  • やりがいや経験が得られることが強調され、残業代が請求できない雰囲気がある

ベンチャー企業の中には、「資金不足」「経営者が知識不足」などの原因で、社員が十分な残業代をもらえていないことがあります。

しかし、ベンチャー企業であっても、残業代が出なければ違法ですので、退職等のタイミングで未払い残業代を請求することができます。

7-3-8:建築業

私の経験上、建設業の人も未払い残業代が発生しやすいです。なぜなら、

  • 事務所から現場までの移動時間
  • 現場までの移動前の資材の積み込み
  • 現場から事務所に戻った後の片付け時間
  • 親方からの指示待ちで待機している時間

などを労働時間としてカウントせず、現場で作業した時間のみを「労働時間」としている会社が多く見受けられるからです。

定時は現場集合時刻とされているため、事前に会社の事務所に立ち寄って作業する時間は労働時間と扱われないことが多いのです。

こうした状況が常態化している場合は、会社に残業代を請求して取り返せる可能性が高いです。

建設会社ではタイムカードを導入していないことも多いですが、定時より前に、事務所に立ち寄り作業した時間等を請求できる可能性はあります。

実際、過去には元配管工の労働者が、現場に行く前後の、事務所での作業時間等が労働時間に認められ、残業代が回収できた判例があります。

(総設事件 東京地半平成20年2月22日)

7-3-9:住み込みの管理人

私の経験上、マンションなどに住み込みで管理人をしている人も、未払い残業代が発生しやすいです。

なぜかというと、マンションの住み込みの管理人は、定時を過ぎても対応が必要な場合があるからです。

例えば、定時の時間外に以下のような仕事をしていませんか?

  • ゴミ置場の扉の開閉
  • 管理人室の点灯・消灯
  • テナント部分の冷暖房の開始・停止業務
  • 住民や依頼者からの宅配便の受け渡し

これらの業務が、日常的に行われており、対応すべきことがマニュアルに記載されている場合は、それらの時間も労働時間としてカウントできる可能性が高いです。

実際の労働時間かどうかの判断はケースバイケースですので、詳しくは弁護士等の専門家に相談して聞いてみてはいかがでしょうか。

7-3-10:ガソリンスタンド

あなたがガソリンスタンドに勤務している場合、「休憩時間」として扱われていた時間が、労働時間として考えることができ、その分の残業代を請求できる可能性があります。

ガソリンスタンドでは、

  • 休憩中でも、客が来たらすぐに対応しなければならない
  • 休憩時間もガソリンスタンドの敷地内から出てはならない
  • 他に従業員がいても、それぞれ別の業務を行う必要があるため、休憩中も顧客対応が必要になることがある

などのことが多いです。

休憩時間は、労務から完全に開放されている状態になければなりません。

そのため、上記のようなケースでは、休憩時間も労働時間としてカウントし、残業代請求ができる可能性があるのです。実際、ガソリンスタンドの従業員が休憩時間も業務が必要だったことを訴え、残業代を取り返した判例があります。

(クアトロ事件東京地裁 平成17年11月11日)

ガソリンスタンド勤務の人の残業代のルールについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。

【ガソリンスタンドの残業代の正しいルール】違法な5つのケースと対処法

7-3-11:警備員

あなたの仕事が警備員の場合、「仮眠時間」が労働時間にカウントされ、残業代が取り返せる可能性があります。

例えば、一人で夜勤しており、

「仮眠中もトラブルが発生したら対応しなければならない」

ということはありませんか?

仮眠中の対応について、マニュアルや規定に定められている場合、それは労働時間にカウントできる可能性が高いです。

実際、過去にも仮眠時間が労働時間とみなされた判例があります。

(イオンディライトセキュリティ事件 平成29年5月17日)

警備員の残業代は、職種によってルールが異なることがあります。詳しくは以下の記事をご覧ください。

職種で異なる!警備員の残業代ルールと待機・仮眠時間が労働になるケース

これらの役職や業種であっても、残業代が出る可能性が高いということが理解できたでしょうか?それぞれの記事から、あなたの状況での詳しいルールや判断基準を覚えてくださいね。

まとめ:残業代について

いかがでしたか?

それでは最後に、今回の内容を振り返ってみましょう。

残業代は、以下のように労働基準法で規定されています。

(労働基準法37条1項)

会社は、従業員に残業させた場合、通常の時給にに「1.25倍」の割増率をかけた残業代を支払わなければならない。

また、

会社は、従業員に休日労働させた場合、通常の時給に「1.35倍」の割増率をかけた残業代を支払わなければならない。

※以上の説明は、分かりやすく改変しています。

正しい残業代は、以下の式で計算することができます。

残業代の計算式

残業代請求には、

  • 自分で直接請求する方法
  • 弁護士に依頼する方法

があり、それぞれ以下のメリット・デメリットがあります。

残業代請求を自分でやる場合と弁護士に依頼する場合の違い

残業代を請求する上では、

  • 証拠を集めておくこと
  • 3年の時効に注意すること

の2つが大事です。

以下の役職や職種でも、残業代が発生します。

  • 管理職
  • 営業職
  • SE
  • トラック運転手
  • タクシー運転手
  • 看護師
  • 飲食店
  • 医師
  • ベンチャー企業
  • 建築業
  • 住み込みの管理人
  • ガソリンスタンド
  • 警備員

残業代請求は、労働者の正しい権利です。いつか請求することがあるかもしれませんので、この記事の内容を覚えておいて、ぜひ活用してください。

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