【残業と代休】違法になるケースと残業代で損をしない対処法を解説

監修者

弁護士法人QUEST法律事務所
住川 佳祐

【残業と代休】違法になるケースと残業代で損をしない対処法を解説
チェック
この記事を読んで理解できること
  • 残業・休日労働に対して代休が与えられる条件
  • 代休と振替休日の違いとは?
  • 割増賃金が支払われていなければ会社に請求できる

あなたは、

  • 残業を代休で相殺されるのってどういう仕組?
  • 残業時間が代休でなかったことにされるのは問題ないの?

などとお考えではありませんか?

たとえば、その月の残業時間が8時間を超えたため、1日分の代休を取得させられ、残業時間が「なかったこと」にされる。

このようなことがあったら、それは違法である可能性があります。

残業が発生したために、代休を与えて対応すること自体は違法ではありません。

しかし、残業した日の割増分の賃金が支払われなければ、それは労働基準法に違反するからです。

つまり、代休が与えられたことで、その日の分の残業代がまったく出なければ、違法なのです。

これは残業ではなく「休日出勤」の場合も同様です。ただし、振替休日の場合は割増賃金が発生しません。

それぞれの区別が難しいと思いますので、この記事では、まずは残業時間を代休で相殺する仕組み・条件についてについて、詳しく解説します。

それから、代休・振替休日と残業の関係について、そして、残業代が未払いの場合に請求する方法についてお伝えします。

最後までしっかり読んで、正しい知識を得てください。

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1章:残業・休日労働に対して代休が与えられる条件

会社によっては、社員の残業時間や休日出勤を代休で相殺しようとすることがあるようです。

これは、

  1. 残業に対する代休
  2. 休日の労働に対する代休

の2つのケースが考えられます。

それぞれの仕組みや条件を解説します。

1-1:残業に対して代休取得で対応する条件

休日ではなく、普段の残業の累積時間に対して代休が与えられることがあります。

たとえば、1日2時間の残業が4日続いた場合に、2時間×4日=8時間の残業になるため、1日の代休を社員に与えるような対応のことです。

残業が代休で相殺できる条件

残業に対して代休取得で対応するには、次の2つの条件を満たす必要があります。

  • 就業規則で規定されている
  • 時間外労働として25%の割増賃金を支払う

どちらかでも条件を満たしていなければ、残業に対する代休取得は違法となる可能性があります。

以下、2つの条件について詳しく見ていきましょう。

1-1-1:就業規則で規定されている

代休の制度は、必ずしも就業規則に規定しなければならないものではありません。

しかし、就業規則の規定がない場合、残業に対して代休取得で対応するには、従業員との個別の合意が必要となります。

会社の意向で代休を取得させるには、代休を与えられる要件について就業規則で明記しておく必要があります。

1-1-2:時間外労働として25%の割増賃金を支払う

代休を取得させる場合でも、残業によって時間外労働をした事実は変わりません。

そのため、会社は、残業時間に対する25%の割増賃金を支払われればなりません。

(例)
  • 月給20万円
  • 残業が月に32時間あった
  • 代休を4日与えられた

他の休日出勤等がなかったとすると、

(20万円÷170時間)×1.25倍×32時間=4万7040円(残業32時間分の残業代)

(20万円÷170時間)×1.0倍×32時間=3万7632円(代休取得で相殺された賃金)

これを差し引くと、

4万7040円―3万7632円=9408円

となり、残業に対して代休が与えられていても、9408円の割増分の残業代が支払われる必要があることが分かります。

代休を与えたことを理由に、残業代がまったく出なかった場合は、違法になります。

1-1-3:残業を代休取得で対応できない場合

残業代を含む賃金は、月に1回以上の決められた期日に全額支払われればなりません(労働基準法24条)。

そのため、給与計算期間をまたぐ場合には、残業を代休取得で対応することはできません。

(例)
  • 給与の締め日 毎月末日
  • 残業した日 8月10日から20日

この場合、残業を代休取得で対応するには、8月中に代休を与えなければなりません。

8月中に代休を与えなかった場合、残業代は、8月分の給与として全て支払う必要があります。

そのため、給与計算の期間が切り替わる9月以降は、残業を代休取得で対応することはできません。

1-2:休日の労働に対して与えられる代休

次に、「休日の労働に対して代休を与える」ことについて解説します。

これは、例えば、土日休みの週休2日制の会社の場合で、ある週の日曜日(法定休日)に社員を出勤させたため、別の週に1日の代休を与えるようなケースです。

法定休日が代休で相殺できる条件

代休制度自体は労働基準法で禁止されているわけではないため、休日出勤の割増賃金が支払われれば休日労働に対して代休が与えられることは、問題ありません。

代休を与える場合でも、休日出勤した事実は変わりません。

そのため、出勤した日が法定休日の場合には、35%の割増賃金を支払わなければなりません。

出勤した日が所定休日の場合でも、所定休日に出勤した結果その週の労働時間が40時間を超えていれば、25%の割増賃金を支払う必要があります。

たとえば、週の休みが土日の2日間に設定されている会社で7日間全て出勤した場合、

土曜日の出勤分は、所定休日の出勤として25%の割増賃金

日曜日の出勤分は、法定休日の出勤として35%の割増賃金

をそれぞれ支払わなければなりません。

(例)
  • 月給20万円
  • 日曜日(法定休日)の出勤が月に4日あった
  • 代休を4日与えられた

他の残業や法定休日出勤がなかったとすると、

(20万円÷170時間)×1.35倍×8時間×4日=5万803円(日曜の出勤4回分の賃金)

(20万円÷170時間)×1.0倍×8時間×4日=3万7632円(代休取得で相殺された賃金)

これを差し引くと、

5万803円―3万7632円=1万3171円

となり、日曜日の出勤に対して代休が与えられていても、1万3171円は割増賃金が発生することがわかります。

そのため、割増分の賃金を支払ってもらえない場合は、違法です。

2章:代休と振替休日の違いとは?

残業が代休によって相殺される仕組みや注意点について正確に理解するためは、代休の定義や、それと似た言葉である「振替休日」との違いについて知っておく必要があります。

そこでまずは、

  • 代休と振替休日の違い
  • 残業について代休で対応する仕組みや会社の意図

について解説します。

【代休と振替休日】
代休」というのは、社員を休日労働させた場合に、後から代わりの休日を与えることを言います。

代休として与えた日は、賃金が発生しません。

しかし、休日出勤した事実は変わらないため、休日割増分のみの賃金が発生します。

休日出勤が法定休日だった場合は、「35%」の割増賃金が発生するのです。

※法定休日とは、週7日出勤した場合の7日目の出勤日のことです。

これに対して振替休日とは、休日出勤の前日までに振替日を指定し、社員に伝え、休日と労働日を入れ替えることを言います。

振替休日の場合は、代わりの休日が同じ週内であれば、法定休日の割増賃金が発生しません。

 

休日の指定

割増賃金

代休

事後

発生する

振替休日

事前

発生しない

【法定休日と法定外休日】
休日には「法定休日」と「法定外休日」があり、割増賃金が発生するのは「法定休日」のみです。

法定休日とは、週に1日、必ず会社が社員に与えなければならない休日のことで、「1.35倍」の割増賃金が発生します。

例えば、7日連続で勤務している場合、7日目の労働は法定休日の労働になり、割増賃金が発生するのです。

法定休日

これに対して、法律には規定されていませんが、多くの会社が社員に与えているのが法定外休日です。

例えば、土日が休日とされている会社で、月曜日から土曜日まで毎日8時間労働した場合、土曜日は「休日出勤」ではありますが、法定外休日であって法定休日ではないため、割増賃金が発生しません。

そのため、土曜日の出勤分の代休を別のどころでもらったとしても、割増賃金は発生しないのです。

3章:割増賃金が支払われていなければ会社に請求できる

休日出勤・残業と代休について理解できたでしょうか?

もしあなたが休日出勤や残業をした事実があるのに、割増賃金を一切もらっていなかったとしたら、あなたは会社に対して未払い賃金を請求することができます。

なぜなら、割増賃金について労働基準法で以下のように規定されているからです。

(労働基準法37条1項)

会社は、従業員に残業させた場合、通常の時給にに「1.25倍」の割増率をかけた残業代を支払わなければならない。

また、

会社は、従業員に休日労働させた場合、通常の時給に「1.35倍」の割増率をかけた残業代を支払わなければならない。

※以上の文章は分かりやすく改変しています。

そのため、もし適正な金額の休日手当や残業代をもらっていなければ、会社に請求することができるのです。

実は、先ほどの例のように、未払い賃金が1ヶ月あたり「9408円」程度でも、請求できる金額の合計はもっと高額になることがほとんどです。

なぜなら、未払い賃金は3年分までさかのぼって請求できるからです。

ただし、毎月の給料日ごとに3年前の1ヶ月分の賃金の時効が成立しますので、早く行動しなければ、1ヶ月ごとに請求できる金額が減っていきます。

請求方法には、

  • 自分で直接請求する方法
  • 弁護士に依頼して請求する方法

がありますので、詳しくは以下の記事を参考にしてください。

残業代請求に失敗しないために!自分で請求するための4つのステップ

【残業代請求】弁護士選びの8つのポイントと解決までの流れや費用を解説

まとめ:残業と代休

いかがでしたか?

最後に今回の内容をまとめます。

【休日労働に対して代休が与えられるケース】
  1. 就業規則等で休日労働を行なった場合に、代休が与えられることが規定されている
  2. 休日労働の割増賃金(法定休日の場合は35%)が支払われる
【残業に対して代休が与えられるケース】
  1. 就業規則等で残業を行なった場合に、代休が与えられることが規定されている
  2. 残業の割増賃金(25%)が支払われる

【代休と振替休日の違い】

 

休日の指定

割増賃金

代休

事後

発生する

振替休日

事前

発生しない

【未払い賃金を請求する方法】
  1. 自分で直接請求する
  2. 弁護士に依頼して請求する

休日出勤や残業の代休での対応は、専門的な知識が必要な難しいものですので、正しい知識を持って損しないように行動しましょう。

【参考記事一覧】
自分で残業代を請求する方法について、詳しくは以下の記事で解説しています。

残業代請求に失敗しないために!自分で請求するための4つのステップ

弁護士に依頼して残業代を請求する方法や、弁護士の選び方について、詳しくは以下の記事で解説しています。

【残業代請求】弁護士選びの8つのポイントと解決までの流れや費用を解説

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会社がおかしい・不当ではないかと感じたら1人で悩まずに、残業代請求に強い弁護士に相談することをおすすめします。残業代の時効は2年なので、時効になる前に早めに行動することが大切です。

弁護士法人QUEST法律事務所へのご相談は無料です。当事務所では、電話・メール・郵送のみで残業代請求できます。ですので、全国どちらにお住まいの方でも対応可能です。お1人で悩まずに、まずは以下よりお気軽にご相談ください。

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