みなし残業は違法?【弁護士が解説】7つのチェックポイント
この記事を読んで理解できること
- みなし残業(固定残業)の仕組みとメリット・デメリット
- みなし残業が違法か判断する7つのポイント
- みなし残業が違法な場合にやるべきこと
- 未払い残業代の請求を弁護士に依頼する
あなたは、
「みなし残業は違法ではないの?」
「みなし残業の残業代が安いのは違法?」
「みなし残業が違法な場合はどうする?」
などとお考えではないですか?
結論から言うと、みなし残業は、会社によっては違法な運用をされている場合もあるため、実際の残業時間や残業代など注意する必要があります。
ブラック企業のなかには、みなし残業代制を利用して残業代が支払われていると錯覚させ、長時間労働を強いるケースが多くあります。
もし、あなたの実際の残業時間が、みなし残業として設定されている残業時間より明らかに多い場合は、残業代の未払いが発生している可能性が高いです。
そのため、みなし残業代制の仕組みをしっかりと理解し、未払い残業代がある場合は会社に対して請求することが重要です。
この記事では、1章でみなし残業(固定残業)の仕組みとメリット・デメリットを、2章ではみなし残業が違法か判断する7つのポイントを、3章ではみなし残業が違法とされた3つの判例を紹介します。
さらに、4章ではみなし残業が違法な場合にやるべきことを、5章では未払い残業代を請求する方法について解説します。
みなし残業の仕組みや違法となるケースをしっかり理解して、会社にいいようにこき使われないよう、正しい知識を身につけましょう。
目次
1章:みなし残業(固定残業)の仕組みとメリット・デメリット
みなし残業とは、あらかじめ一定時間の残業をしたとみなして残業代を支払う制度で、求人票では
「固定残業代 ○万円/○時間相当分 を含む」
「月○時間分のみなし残業手当 ○万円を含む」
などと記載されています。
法律的に正式な用語ではありませんが、一般的には「みなし残業代制(固定残業代制)」と呼ばれています。
この章では、みなし残業の仕組みとそのメリット・デメリットについて解説します。
1-1:みなし残業の仕組み
みなし残業の場合は、残業代があらかじめみなし残業代(固定残業代)として固定給の中に含まれています。
会社は社員に対して、みなし残業代(固定残業代)と残業時間を定めて就業規則等に記載し、社員に周知する義務があります。
例えば、
「月給25万円(45時間分の固定残業代として8万円を含む)」
のように記載します。
みなし残業では、実際の残業時間がみなし残業時間より少なかった場合も、固定残業代として決められた残業代が支払われます。
また、実際の残業時間がみなし残業時間を超えた場合は、超過分の残業代が追加で支払われます。
みなし残業時間に上限はありませんが、労働基準法の時間外労働の上限が原則として「⽉45時間・年360時間」となっているため、これを超えると無効になる場合もあります。
1-2:みなし残業のメリット・デメリット
みなし残業のメリット・デメリットは、次のようになります。
社員(従業員)のメリット
- 残業しなくても固定残業代が支払われる
- 繁忙期・閑散期に関係なく収入が安定する
- 業務効率を上げて残業時間を短縮することができる
社員(従業員)のデメリット
- みなし残業時間分の残業を強要される場合がある
- みなし残業時間を超えた残業代が未払いになる可能性がある
会社のメリット
- 残業代の計算が容易になる
- 人件費がある程度固定化でき把握しやすい
会社のデメリット
- みなし残業の運用を誤った場合トラブルになりやすい
2章:みなし残業が違法か判断する7つのポイント
あなたの会社のみなし残業代制(固定残業代制)が違法かどうかを判断するためには、就業規則などを確認する必要があります。
また、次のいずれかに該当する場合は、みなし残業が違法なケースが多いため、専門家に問い合わせてみる必要があります。
- 雇用契約書や就業規則がない
- 基本給と残業代の区別がつかず金額が不明
- 残業以外に対する手当を残業代と言っている
- みなし残業を超えた分の残業代が支払われていない
- みなし残業が想定する残業時間が異常に長い
- 基本給が最低賃金を下回っている
- 給与規程が改定されている
それぞれ解説していきます。
2-1:雇用契約書や就業規則がない
みなし残業代制(固定残業代制)が合法であるためには、雇用契約書や就業規則にみなし残業代制(固定残業代制)に関する内容が記載されている必要があります。
そのため、そもそもそのような契約をしていなかったり、就業規則で定められていない場合は、みなし残業代制(固定残業代制)と会社が主張しても違法である可能性が高いです。
また、雇用途中でみなし残業代制(固定残業代制)を導入する場合は、就業規則を作成または合理的に変更して従業員に知らせるか、個別に同意を得なければなりません。
2-2:基本給部分と残業部分の区別がつかない
基本的には、残業時間と残業代の金額が両方明示されていることが望ましいです。
適法とされる可能性が高い就業規則は、次のようになります。
「固定残業手当として、時間外労働45時間分である8万円を支給する。」
しかし、現実にはここまでしっかりと就業規則や賃金規程に記載されていることはあまり多くありません。
次に、違法とされたケースについて紹介します。
最高裁は、「基本給部分と残業部分を明確に区別できないようなみなし残業代制(固定残業代制)は違法」と判断しています。
【違法な事例1~通常の労働時間の賃金に当たる部分と、割増賃金に当たる部分とが区別できない】
高知県観光事件(最高裁平成6年6月13日)
会社側は「(タクシー運転手の)歩合給に残業代が含まれている」と主張しましたが、通常の労働時間の賃金に当たる部分と、割増賃金に当たる部分とが区別できないとして、みなし残業代制(固定残業代制)が無効とされた事件。
次に、みなし残業代制(固定残業代制)について、就業規則や賃金規程に以下のような規定になっている場合は、違法である可能性が極めて高いです。
【違法な事例2~残業時間も金額もなし】
「第●条:基本給には、法定労働時間労働に対する手当を含む」
この場合、残業時間も金額も書いていないため、基本給のうち残業代の部分の金額がいくらなのか全く分かりません。
2-3:残業に対する対価でないものを残業代と言っている
たとえ就業規則に「各種手当を残業代として払う」と記載されていても、法的には残業代とは認められないことが多いです。
各種手当の中に、「残業に対する対価」と「その他の手当の対価(営業手当や深夜手当など)」が混在している場合、近時の裁判例においては、みなし残業代制(固定残業代制)は違法とされる場合が多いです。
そのため、各種手当てが、就業規則に残業代の趣旨で支払われるということが記載されていたとしても、諦める必要はありません。
みなし残業代制(固定残業代制)を違法とする裁判例としては、次のようになります。
【「営業手当」がみなし残業代として認められなかったケース】
営業手当について、会社は営業マンの残業が多いことから支給しているので、残業手当であると主張していました。
しかし、裁判所は、残業が多い他の部署には営業手当が払われていないことを疑問視し、営業手当は、残業手当ではなく、営業活動に伴う経費の補充やインセンティブの意味であると判断しました。
よって、みなし残業代制(固定残業代制)は違法とされました。
(※アクティリンク事件(東京地判平成24年6月29日))
【「成果給」がみなし残業代として認められなかったケース】
「成果給」について、会社は残業手当として支給していると主張しました。
しかし、「成果給」は、前年度の成績に応じて支給されるものであり、残業代とは、残業時間に比例して払われるものであるため、「成果給」とは性質の違うものであると判断しました。
よって、みなし残業代制(固定残業代制)は違法とされました。
(※トレーダー愛事件(京都地判平成24年10月6日))
【「精勤手当」がみなし残業代として認められなかったケース】
「精勤手当」について、労働者の年齢、勤続年数、会社の業績等により数回にわたり変動していることを理由に、残業代以外の意味のものが含まれているとして、みなし残業代制(固定残業代制)を否定しました。
(※イーライフ事件(東京地判平成25年2月28日))
以上のように、「〇〇手当が残業手当だ!」と会社が言い張ったとしても、裁判官は簡単には有効なものとは認めないのです。
なお、以下は、ある手当について、みなし残業代制(固定残業代制)を認めた裁判例で、あまりない例外的なケースと言えます。
【残業の実態をきちんと調査した上でみなし残業代制(固定残業代制)を設けて合法となったケース】
「セールス手当」について、セールスマンの残業時間を平均して1日1時間、1か月合計23時間という調査結果を基にセールス手当の割合を決めていた事案で、みなし残業代制(固定残業代制)を有効とした。
(※関西ソニー販売事件(大阪地判昭和63年10月26日))
上記の裁判例のように、ある手当が残業手当とする会社の主張が通るためには、会社が残業の調査をきちんと行い、調査に即して残業手当を設定した等の適切な運用が必要です。
しかし、このような適切な運用をしている会社はほとんど見当たりません。
2-4:みなし残業を超えた分の残業代が支払われない
固定残業時間を超えた残業に対して、その超過分を上乗せして払わない場合、裁判所はみなし残業代制(固定残業代制)を違法とする考え方が強いようです。
(テックジャパン事件判決最高裁平成24年3月8日櫻井龍子補足意見)
また、労働時間を適正に管理していなかったり、就業規則等を雑に定めていたりすることで、残業代をきちんと払う意思がないと判断できる場合は、みなし残業代制(固定残業代制)は違法である可能性が高いです。
【勤怠管理システムの不備でみなし残業代制(固定残業代制)が違法となったケース】
勤怠管理システムにおいて、出勤時刻だけを入力させて、退勤時刻を入力させていない場合は、労働時間管理をしておらず残業時間を計算できないので、残業代をきちんと払う意思がないとして、みなし残業代制(固定残業代制)を認めませんでした。
(※イーライフ事件判決(東京地判平成25年2月28日))
2-5:みなし残業が想定する残業時間が異常に長い
月45時間を超える残業を想定するみなし残業代制(固定残業代制)は、違法になる可能性があります。
なぜなら、36協定の範囲内で労働させた場合であっても、月45時間を超える残業を常に想定していることに違法性の高さが表れているからです。
特に、月80時間を超えるような長時間の残業を想定するみなし残業代制(固定残業代制)は、違法になる可能性が高いです。
なぜなら、月80時間を超える残業は過労死との関連性が強い※とされているため、このような危険性の高い残業をあらかじめ想定するみなし残業代制(固定残業代制)を認めるわけにはいかないからです。
裁判例も長期にわたる残業を認めない傾向にあります。
【長期にわたる残業が認められなかったケース】
■ザ・ウインザー・ホテルズ・インターナショナル事件(札幌高判平成24年10月19日)
95時間分のみなし残業代として支給された「職務手当」について45時間分を超える部分について、無効と判断しています。
■マーケティングインフォーメーションコミュニティ事件(東京高判平成26年11月26日)
残業100時間分の営業手当について、違法な長期労働を許してしまいかねず、みなし残業代制(固定残業代制)として認めないと判断しました。
2-6:基本給が最低賃金を下回っている
あなたの月給のうち、みなし残業を除いた部分(基本給部分)が非常に少ない場合は、みなし残業代制(固定残業代制)が違法となる可能性が非常に高いです。
例えば現在の月給が、
「基本給18万円+固定残業代5万円」
1日の所定労働時間が8時間、年間260日勤務(休日105日)の会社の場合、
年間所定労働時間
(365日−105日)×8時間=2,080時間
月平均所定労働時間
2,080時間÷12か月=約173時間
となります。
みなし残業を除いた部分を、月平均所定労働時間で割ってみて、あなたの職場の都道府県の最低賃金を下回っている場合は、みなし残業代制(固定残業代制)は違法の可能性が高いです。
基本給18万円÷173時間=1040.4円
例えば、東京の令和4年の最低賃金は1,072円のため、違法となる可能性が高いです。
さらに、みなし残業代が45時間の残業時間を想定されていた場合、
1,072円×(1+0.25)×45時間=6万300円
となるため、1か月のみなし残業代は最低でも6万300円となります。
なお、各都道府県の最低賃金については以下をご参照ください。
2-7:給与規程が改定されている
過去に、就業規則や給与規程が改定されている場合は、注意が必要です。
(改定日は、就業規則や給与規程の最初あるいは最後に記載されています。)
就業規則や賃金規程の変更によって、それまで「残業手当」として扱っていなかった手当を、「〇〇手当は残業手当として支給する」と書き換えられている場合があります。
また、あなたの知らないうちに、基本給の一部がみなし残業代に置き換えられている場合もあります。
このような場合、不合理な就業規則の変更として、労働契約法10条により認められない可能性が極めて高いです。
3章:みなし残業が違法な場合にやるべきこと
みなし残業が違法な場合にやるべきことは、次の3つです。
- 雇用契約書や就業規則の確認
- 残業時間の確認
- 証拠の収集
それぞれ解説していきます。
3-1:雇用契約書や就業規則の確認
ここまで解説したように、会社のみなし残業が違法な場合は、まず雇用契約書や就業規則を確認することが重要です。
2章で解説したみなし残業が違法と判断される7つのポイントに当てはまる点はないか、十分注意しながら確認する必要があります。
特に、基本給とみなし残業代の区別が曖昧で金額も最低賃金を下回っている場合や、みなし残業を超えた部分の残業代が未払いになっている場合は、会社に適正な賃金・残業代を請求することができます。
もし、みなし残業の違法性の判断や賃金・残業代の計算が難しい場合は、労働基準監督署や弁護士に相談することをおすすめします。
3-2:残業時間の確認
みなし残業で未払い残業代を請求できる可能性がある場合は、残業時間の確認をする必要があります。
実際の残業時間を正確に確認し明らかにすることで、みなし残業が違法とされた場合は、適正な残業代を請求することができます。
また、実際の残業時間がみなし残業時間を超えている場合は、未払い残業代を請求できる可能性があります。
3-3:証拠の収集
残業代を請求する場合は、残業していた証拠が必要です。
例えば、証拠としては次のようなものが有効です。
- タイムカード
- 会社のパソコンの利用履歴
- 業務日報
- 運転日報
- FAX送信記録
- シフト表
会社が後で消してしまう可能性があるので、コピーや写真で保存しておくことをおすすめします。
しかし、本当にひどいブラック企業は、勤怠管理をせず、上記のような証拠が会社に残っていないケースもあります。
そこで、会社が勤怠管理をしていない対抗策として、次のようなもので記録しておくことが有効です。
- 手書きの勤務時間・業務内容の記録(最もおすすめ)
- 残業時間の計測アプリ
- 家族に帰宅を知らせるメール(証拠能力は低い)
自分で勤務時間を記録する場合、毎日手書きで、1分単位で時間を書きましょう。
具体的な業務についても書くのがベストです。
家族に帰宅を知らせるメールは、裁判になると証拠としては弱いので、できるだけ手書きでメモを取りましょう。
証拠は、できれば3年分あることが望ましいですが、なければ一部でもかまいません。
できるだけ毎日の記録を集めておきましょう。
ただし、手書きの場合絶対に「ウソ」の内容のことを書いてはいけません。
証拠の中にウソの内容があると、その証拠の信用性が疑われ、証拠として利用できなくなり、残業していた事実を証明できなくなる可能性があります。
そのため、証拠は「19時30分」ではなく、「19時27分」のように、1分単位で記録するようにし、曖昧さが指摘されないようにしておきましょう。
未払い残業代の請求が成否を分ける「証拠集め」については次の記事もご確認ください。
【弁護士が解説】残業代をアップさせる証拠一覧と集め方マニュアル
4章:未払い残業代の請求を弁護士に依頼する
みなし残業代制(固定残業代制)で未払い残業代を請求する場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。
自分で請求する場合と、弁護士に依頼する場合のメリット・デメリットは次のようになります。
このように、自分で請求する方法では、手間・時間・精神的負担が大きいだけでなく、弁護士に頼む方法に比べて回収できる金額が少なくなる可能性が高いです。
そのため、みなし残業代制(固定残業代制)について、するどく違法性を主張し、本来の残業代を回収するためには、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士に相談するというと
「裁判みたいな大事になるのはちょっと・・・」
「費用だけで100万円くらいかかるのでは?」
と考えてしまう人もいるかもしれません。
しかし、残業代請求というものは、いきなり裁判することは少なく、交渉や労働審判という形で回収していくことがほとんどです。
また、残業代請求に強い「完全成功報酬制」の弁護士に依頼すれば、「相談料」や「着手金」ゼロで依頼することができます。
弁護士に依頼した場合の流れは、次のようになります。
順番に解説していきます。
4-1:会社との交渉
会社との交渉では、弁護士が会社に請求書面を送付したり、電話で回収の督促をします。
あなたが、会社に出向いたり、会社の人間と連絡をとる必要はありません。
弁護士が会社との間に入って、和解に持ち込みます。
交渉であれば、時間やお金の面での負担が少なくて済みます。
あなたからすると、普段通り生活しながら、ときおり弁護士と連絡をとり、時間が数か月後に、残業代が自分の口座に振り込まれているというイメージです。
半分くらいは交渉で解決でき、手軽に解決することができます。
4-2:労働審判のイメージ
労働審判は、交渉で解決できなかったときに用いられることが多いです。
イメージとしては、裁判所を利用して、労働者側、会社側、裁判官の三者がそろって話し合うというものです。
労働審判の場合は、解決するまで以下のような流れで進みます。
第1回労働審判で解決されれば、申立てから1~2ヶ月程度で終了し、第2回、第3回まで延びれば1ヶ月〜2ヶ月程度期間も延びることになります。
労働審判の回数は、最大3回までと決められているため、裁判のように何回も裁判所に行ったり、長期化することがないのが特徴です。
あなたも初回の労働審判のみは参加する必要がありますが、弁護士に依頼すれば2回目以降は参加する必要がないことが多いです。
裁判になると費用や手間がかかるため、ブラック企業の経営者もできれば裁判はやりたくないと考えています。
そのため、多くの場合、「交渉」か「労働審判」で決着が付くので、労働審判の解決率は80%にもなります。
出典:厚生労働省 透明かつ国政名労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会 資料「労働審判制度について」
労働審判において決定されたことに不服がある場合は、訴訟(裁判)へ移行します。
4-3:訴訟のイメージ
労働審判は短い期間で裁判官が判断するため、ざっくりとした判断しかされません。
そこで、もっと厳格な判断を仰ぎたい場合は訴訟を利用します。
訴訟の場合のメリットとしては、残業代についての、年3%または14.6%の遅延損害金も含めて請求できるため、受け取る金額も大きくなります。
また、残業代とは別に付加金という、残業代を支払わなかったことについての罰金を請求できる可能性もあります。
しかし、訴訟は時間が1年以上かかることも多く、その間、弁護士に日当を払い続けるもので、金銭的にも時間的にも負担が多いです。
さらに、必ず勝てるという保証はなく、途中で結局和解が結ばれる可能性が高いです。
この場合、付加金は請求できません。
4-4:時効は3年なので早く行動する
未払いの残業代は、いつまでも請求できるわけではありません。
「3年」の時効が成立すると、二度と請求できなくなります。
時効の基準となるのは、「毎月の給料日」です。
【給料の支払日が「15日締め・翌月末払い」の場合】
例えば、給料の支払日が「15日締め・翌月末払い」の場合、2020年2月16日から3月15日までの給料は、2020年4月30日に支払われます。
そのため、2020年3月15日締めの給料は、2023年の4月30日経過時に時効を迎えます。
そこで、2020年3月15日締めの給料の時効を止めるためには、2023年の4月末までに「時効を止める」手続きを行う必要があります。
毎月の給料日がくるたびに時効が成立し、1ヶ月分の残業代が消滅してしまいます。
少しでも多くの残業代を取り返すために、できるだけ早く行動を開始しましょう。
まとめ:みなし残業(固定残業)の違法性
最後にもう一度、今回の内容を振り返ります。
■みなし残業代制(固定残業代制)
みなし残業の場合は、残業代があらかじめみなし残業代(固定残業代)として固定給の中に含まれています。
会社は社員に対して、みなし残業代(固定残業代)と残業時間を定めて就業規則等に記載し、社員に周知する義務があります。
■みなし残業が違法かチェックする7つのポイント
- 雇用契約書や就業規則がない
- 基本給と残業代の区別がつかず金額が不明
- 残業以外に対する手当を残業代と言っている
- みなし残業を超えた分の残業代が支払われていない
- みなし残業が想定する残業時間が異常に長い
- 基本給が最低賃金を下回っている
- 給与規程が改定されている
■みなし残業が違法な場合にやるべきこと
- 雇用契約書や就業規則の確認
- 残業時間の確認
- 証拠の収集
■未払い残業代の請求は弁護士に依頼する
みなし残業で未払い残業代を請求する場合は、
- まずは証拠を集める
- 時効は3年なので早く行動する
- 弁護士に相談する
ということを明日から実行されることをおすすめします。