
あなたは、以下のような疑問をお持ちではありませんか?
残業時間は労働基準法で定義されており、「上限を超えた残業」は違法です。
多くの会社では、平気で上限を超えて働かせたり、従業員が残業した時間をごまかしている現実があります。
まだ仕事が終わっていないのか!仕事が終わらないのはお前の責任なんだから帰って家で作業しろ。
タイムカードなんて使わなければ、どれだけ残業したかなんて分からないから、いくらでも残業させられるぜ。
しかし、定められた上限を超えて残業させることは違法ですし、残業した時間をごまかすのも、認められません。残業が違法になるケースは法律で定められていますし、過去の判例から、残業時間をごまかすことも違法になると考えられているからです。
そこでこの記事では、
- どこからが残業時間になるのか?
- 残業時間の上限は何時間からなのか?
- 違法な長時間残業をさせられている場合、どんな方法で改善したらいいのか?
などについて解説しています。
最後まで読んで、「残業時間」に関する基本知識をしっかり身につけてください。
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■残業時間とは
1日8時間、週40時間の一方でも超える労働のこと
■ごまかされることが多いが、実際には労働時間としてカウントできる時間
- 準備時間:制服、作業服、防護服などに着替える時間、始業前の朝礼・体操の時間など
- 後始末時間:着替え、掃除、清身
- 休憩時間:休憩中の電話番や来客対応などを依頼された場合
- 仕込み時間:開店前の準備やランチとディナーの間の仕込み時間
- 待機時間:トラックの荷待ちの時間
- 仮眠時間:警報や緊急事態に備えた仮眠の時間(特に警備や医療従事者など)
- 研修:会社からの指示で参加した研修
- 自宅の作業:仕事が終わらず自宅に持ち帰って仕事した時間
■違法な長時間残業を強いられている場合の対処法
- 自分で長時間の残業を改善する
- 労働基準監督署に相談して解決を図る
- 退職して残業代を請求する
目次
1章:残業時間とは?残業の定義と違法になるケース
労働基準法では、「1日8時間・週40時間」を超えた時間が「残業(時間外労働)」であると決められています。
しかし、これだけでは、
- 実際に自分の働いている時間のどこからが残業になるのか
- これを超えたらただちに違法になるのか
など、よく分からない人が多いのではないかと思います。
そこで、まずは、「残業の定義」と「残業が違法になるケース」について詳しく解説します。
さらに、会社は社員をできるだけ安い賃金で労働させたいと考えて「残業時間をごまかす」手口を使うことがありますので、その手口についても解説します。
1-1:残業とは1日8時間・週40時間を超える労働
労働基準法では、以下の時間を「法定労働時間」として定めています。
1日8時間・週40時間までの労働
そして、会社は基本的にこの時間を超えて社員を働かせることができません。
ええっ?この時間を超えて働いている人ってたくさんいるんじゃないですか?
ほとんどの会社では、会社と社員の間で「36協定」を締結しています。36協定を締結することで、会社は社員を法定労働時間を超えて働かせることができるようになるのです。
36協定が締結されていた場合、以下の時間働いた場合、残業になります。
①1日8時間を超えて働いた時間
たとえば、朝の9時から18時まで働いた(休憩1時間)場合、18時までで労働時間が8時間になります。そのため、18時を超えて働いたすべての時間が残業時間です。
②週40時間を超えて働いた時間
たとえば、月曜日から働き始め、金曜日まで毎日8時間労働した場合、金曜日までの5日間で労働時間の合計が40時間になります。そのため、土曜日に出勤した場合、土曜日に働いたすべての時間が残業時間になります。
このように、1日8時間・週40時間のどちらか一方でも超えて働いた場合、残業時間としてカウントされ、基礎時給に1.25倍の割増率がかけられた残業代(割増賃金)をもらうことができます。
※基礎時給とは、1時間当たりの賃金のことです。
ただし、「労働時間」としてカウントされるには条件があります。
【労働時間としてカウントされる時間】
「労働時間」としてカウントされるのは、以下の条件に当てはまる時間です。
労働時間とは『使用者の指揮命令下に置かれていた』時間のこと
(三菱重工業長崎造船所事件・最判平成12年3月9日労判778号)
使用者とは、簡単には会社の経営者や上司のことです。
- 会社の業務命令に従って働いている時間
- 「ムリな納期がある」「1人では終わらないような仕事量がある」などの理由で残業せざるを得ない時間
などは、「使用者の指揮命令下におかれている」時間であり、労働時間としてカウントされます。
なるほど。ということは、会社に残って働いている時間はすべて残業になるっていうことですよね。
そうではない場合もあります。たとえば、
・自分の意思で会社に残って勉強していた時間
・すぐにやる必要のない仕事を会社に残ってやっていた時間
などは、「使用者の指揮命令下」にないため、労働時間としてカウントされません。
判断が難しい場合もありそうですね。
そうですね。社員であるあなたは指示のもとで残業しているつもりでも、会社が「残業は指示していなかった」と主張する場合もあります。もしそんなトラブルを抱えてしまったら、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
残業の定義について理解できたでしょうか。次に、残業が違法になるケースについて解説します。
1-2:残業の上限と違法性の判断基準
確か、36協定が締結されていたら、会社は社員を残業させることができるんでしたよね。それなら、36協定がある会社なら、いくらでも残業させてOKということでしょうか?
そうではありません。これから、残業が違法になるケースについて詳しく解説します。
残業は、
- 36協定が正しい手続きで締結されていない会社ではできない
- 36協定が締結されている会社でも、上限を超えて行うことはできない
- 36協定の上限時間を延長する協定(特別条項付き36協定)を締結していても、条件を満たしていない残業はしてはならない
と決められています。
これらについて、順番に解説していきます。
1-2-1:36協定が締結されていなければ残業はできない
36協定とは、会社が社員を労働基準法で定められた時間を超えて労働させるために、「使用者」と「労働組合(もしくは労働者の代表)の間で締結される協定です。
36協定は会社が勝手に作ってしまえば認められるものではありません。以下の条件を満たしていなければ、会社は労働者に残業させることができません。
- 締結する労働者の代表が「民主的な選挙」で選出されている
- 36協定が労働基準監督署に届け出されている
- 36協定の内容を契約書・就業規則に盛り込んでいる
- 就業規則を周知している(36協定が就業規則に規定されている場合)
これらのうち、一つでも満たしていなければ、会社は社員を残業させることができません。
1-2-2:36協定が締結されている場合の残業時間の上限
さて、36協定が正しく締結されていたとしても、以下の時間を超えて会社から働かせられていたら、違法です。
この時間を超えて働かせるためには、会社と社員の間で「特別条項付き36協定」を締結する必要があります。
1-2-3:特別条項付き36協定を締結している場合の違法性
特別条項付き36協定とは、通常の36協定で定められた限度時間を超えて「臨時的・突発的」に、残業しなければならない場合に備えて、あらかじめ延長時間を定めておく協定のことです。
特別条項付き36協定を締結することで、残業時間の限度時間を延長することができます。ただし、以下のような条件があります。
- 「特別の事情」がある場合のみ延長可能。
- 延長する期間は1年のうち、半年を超えてはならない。
- 労働者が著しい不利益を被るような残業はしてはならない。
これらの条件を満たしていない場合、特別条項付き36協定を締結していても、上限を超えた残業は認められません。
36協定について詳しくは、
36協定とは?5分で分かる定義・役割と、違法性が分かる判断基準
の記事をご覧ください。
あなた
・36協定が正しく締結されていない
・36協定の上限を超えて残業させられている(36協定が締結されている場合)
・特別な理由なく、36協定の上限を超えて残業させられている(特別条項付き36協定が締結されている場合)
などの場合に違法になるということですね。
その通りです。ですが、違法性を判断する上で、さらに知っておくべきことがあります。それは、そもそもあなたの労働時間は正しくカウントされているのか、ということです。
次に、会社がよく使う「労働時間をごまかす」8つの手口について解説します。
あなたも、自分も同じようなことを言われて労働時間をごまかされていないか確認してみてください。
1-3:ごまかされやすい8パターンの労働時間
以下の時間は、会社から「労働時間ではない」と言われ、労働時間としてカウントされないことが多いです。また、会社の人すらもこれらが労働時間としてカウントされるとは知らないケースもあります。
- 準備時間:制服、作業服、防護服などに着替える時間、始業前の朝礼・体操の時間など
- 後始末時間:着替え、掃除、清身
- 休憩時間:休憩中の電話番や来客対応などを依頼された場合
- 仕込み時間:開店前の準備やランチとディナーの間の仕込み時間
- 待機時間:トラックの荷待ちの時間
- 仮眠時間:警報や緊急事態に備えた仮眠の時間(特に警備や医療従事者など)
- 研修:会社からの指示で参加した研修
- 自宅の作業:仕事が終わらず自宅に持ち帰って仕事した時間
ええっ?うちの会社でも着替えの時間や後始末の時間など、労働時間としてカウントされていませんよ。本当にこれらの時間は労働時間になるんですか?
そのような会社は多いようですね。これらの時間は「使用者の指揮命令下に置かれている」時間なので、労働時間としてカウントされるんですよ。
ごまかされがちな8つの時間について、詳しく解説します。
①準備時間:制服、作業服、防護服などに着替える時間、始業前の朝礼・体操の時間など
始業前に制服や作業服、保護具に着替えることがある職場は多いと思います。それが「業務上の指示によって行われているもの」「業務の性質上義務づけられているもの」である場合は、着替えている時間は労働時間としてカウントされます。
また、始業前の朝礼や体操への参加が事実上強制されている場合は、それも労働時間としてカウントされます。その場合、不参加へのペナルティ(人事への影響等)があるかどうかが判断基準になります。
【事例】京都銀行事件・大阪高判平13年6月28日労判811号
銀行の始業前に慣習的に行われていた金庫の開扉業務の時間が、「銀行の黙示の指示」によるものと判断されて、労働時間としてカウントされました。
②後始末時間:着替え、掃除、清身
業務後の機械の整備、点検や身の回りの後始末、作業服・保護具の着替え、業務で付いたひどい汚れを落とすための入浴時間などは、労働時間としてカウントされます。
【事例】三菱重工業長崎造船所事件・最判平成12年3月9日労判778号
洗身・入浴について、社会通念上汚れたままでは通勤が困難である場合には、洗身・入浴も労働時間になると判断されました。
③休憩時間:休憩中の電話番や来客対応などを依頼された場合
昼休みなどに来客や電話対応のために、ローテーションを組んで居残ることにしている会社があります。そのような場合は、休憩時間とは言えず労働時間としてカウントされます。
④仕込み時間:開店前の準備やランチとディナーの間の仕込み時間
飲食店では、開店前やランチタイムとディナータイムの間などで、仕込みを行うと思います。この仕込みは業務上必ず行わなければならないものです。もし、あなたの職場で「仕込みの間は店を閉めているから労働時間には入らないよ」などと言われていたら、確実に違法です。
⑤待機時間:トラックの荷待ちの時間
トラック運転手の荷待ち時間や、タクシードライバーの客待ち時間などは、運転時間と同じく労働時間としてカウントされます。
⑥仮眠時間:警報や緊急事態に備えた仮眠の時間(特に警備や医療従事者など)
仮眠時間中も必要に応じて作業に従事しなければならない場合、警報などがなったらすぐに業務を始めなければならない場合などは、「使用者の指揮命令下」に置かれていると判断できるため、労働時間としてカウントされます。
仮眠時間は、労働から解放されていることが保証されていてはじめて、休憩時間とみなされます。
⑦研修:会社からの指示で参加した研修
使用者が実施する研修や訓練についても、労働時間とカウントされるケースがあります。労働時間とみなされるのは、出席しなければ昇進や人事考課に影響が出るなどの、不利益が科せられる場合で、完全に自由参加なら労働時間にはあたりません。
⑧自宅の作業:仕事が終わらず自宅に持ち帰って仕事した時間
上司の指示の元で仕事を持ち帰って自宅で作業した場合は、労働時間としてみなされます。ただし、自宅で作業したことが業務命令であったことを示す証拠が必要です。
以上の8つの時間が、労働時間としてカウントされることが分かったでしょうか。
これらの時間を労働時間としてカウントすると、これまで思っていたよりも、実際の残業時間が長くなる可能性があります。労働時間にごまかされている部分がないか、あらためて確認し、自分の残業時間を正しく把握するようにしましょう。
あなたは、自分が違法な残業をさせられていたり、労働時間をごまかされていたりしていないか判断できましたか?
もし、
- 違法な長時間労働をさせられている
- 労働時間をごまかされ、残業代の一部(もしくは全部)が支払われていない
などの可能性があるとしたら、なんらかの方法で現状を変える必要があります。
それでは、これから現状を改善する方法について解説します。
2章:長時間残業を改善するための方法
現状を改善する方法として、自分でできることは、
- 自分で長時間の残業を改善する工夫をする
- 労働基準監督署に相談する
という方法があります。
それぞれについて簡単に解説します。
できれば、会社に在籍したまま、長時間の残業を改善したいです。
会社に残って残業の改善を図る方法はあります。ただし、違法な残業をさせるような会社で、これから紹介するような方法が通じる可能性は低いかもしれません。。
長時間残業を改善する方法としては、
- 自分で工夫する方法
- 行政機関に相談する方法
の2つがあります。
2-1:自分で長時間の残業を改善する方法
会社での残業時間が長い場合は、まずは自分で残業時間を短くできないか工夫してみてはいかがでしょうか?
自分でできる手段としては、以下のような方法が考えられます。
①仕事を効率化できないか工夫する
- 一つ一つの作業にどれだけの時間がかかっているか時間を計測し、時間を短縮できないか工夫する
- 毎朝1日の仕事の計画を立て、計画的に仕事をする
②仕事を一人で抱え込まない
- 一人では終わらせることができない仕事があれば、同僚に頼んで協力してもらう
- 人から仕事をお願いされたときに、断る勇気を持つ
③平日の夜に予定を入れる
- 平日の夜の予定を入れることで「絶対に仕事を終わらせる」気持ちを作り、集中力を上げる
- 仕事以外の予定を入れることでメリハリをつける
これらの「自分で改善する」方法について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
残業が多いあなたに!違法性の3つの基準とすぐにできる改善方法
しかし、
「そもそも自分で改善できるような環境じゃない!」
という人も多いかもしれません。
その場合は、労働基準監督署に相談するという方法が考えられます。
2-2:労働基準監督署に相談して解決を図る方法
- 36協定が正しく締結されていないのに、残業させられている
- 36協定で定められている残業時間の上限を超えて残業させられている
などの場合は、「労働基準法に違反」しているため、「労働基準監督署」に相談することで、解決を図るという選択肢があります。
「労働基準監督署」とは、労働基準法に基づいて会社を監督する行政機関です。
労働基準監督署は、労働基準法に違反した会社を取り締まることができます。そのため、「長時間労働を是正してほしい」という問題も、労働基準監督署に相談できます。
このような流れで労働基準監督署に申告することができるのですが、この方法は「残業時間を改善したい場合」は、あまりおすすめではありません。
なぜなら、労働基準監督署は、労働基準法に違反している会社の行為を「正す」機関であり、残業時間を改善してくれる機関ではないからです。
また、労働基準監督署は、慢性的な人員不足のため、過労死や危険作業など「人命に関わる問題」を優先するため、「残業時間の改善」では、動いてもらえない可能性が高いです。
実際、平成28年11月からの1年間で、残業時間の違法性に関する案件で書類送検された件数は、東京都内でわずか4件しかありませんでした。
自分でできる方法には限界があるようですね。
自分で改善することが難しいという人に一番いい方法は、その会社を辞めて、もっと良い会社に転職することです。その場合、退職後に残業代を請求して取り返すといいでしょう。
3章:会社を退職し残業代を取り戻す方法
現状を変えるもっとも良い方法が、現在の会社を辞めて新しい会社に転職することです。
会社を辞めることを決断するのはなかなか勇気がいるな・・・
会社を辞めるという選択肢は、なかなか勇気がいるかもしれません。しかし、ブラック企業に居続けても、あなたは会社から良いように使われ続けるだけではないでしょうか。
もし、あなたの会社がブラック企業で、あなたの残業代が未払いになっている場合、退職後に残業代を請求して取り返せる可能性が高いです。
そのため、会社を辞めて残業代を請求するという選択肢がおすすめなのです。
請求できる金額は、あなたが思っているよりもずっと大きい金額になるかもしれません。
(計算例:月給20万円で毎月80時間残業していた場合)
1ヶ月の残業代は、
月給20万円÷一月平均所定労働時間170時間×割増率1.25倍×残業80時間=約11万7647円(1ヶ月の残業代)
※一月平均所定労働時間とは、あなたが会社から決められている1ヶ月の労働時間の平均のことで、170時間前後であるのが一般的です。
残業代を2年分までさかのぼって請求するとすれば、
11万7647円×24ヶ月=282万3528円
と計算でき、
約280万円も請求できることが分かります。
残業代の計算方法について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
5分で分かる!正しい残業代の計算方法と実は残業になる8つの時間
それでは、これから、
- 自分で会社に直接請求する
- 弁護士に依頼して請求する
という2つの方法について解説します。
3-1:自分で会社に直接請求する方法
自分で直接請求する方法は、以下のような流れで行うことができます。
①残業があった事実を証明するための証拠を収集する
残業代を請求するためには、あなたが自分で残業していた事実を証明する必要があります。そのためには、証明するための「証拠」を集める必要があります。
必要な証拠について、詳しくは「3-2-3」で解説しています。
②未払いになっている残業代を計算する
さらに、自分が請求できる残業代はいくらあるのか、自分で計算する必要があります。残業代を正しく計算するためには、専門知識が必要ですので、計算する前に正しい知識を学んでおく必要があります。
③「配達証明付き内容証明」を会社に送って時効を止める
残業代請求には「3年」の時効があり、時効を過ぎると残業代が消滅してしまうため、まずは時効を止める手続きを行う必要があります。
時効は、会社に「配達証明付き内容証明」で残業代を請求する旨を通知することで、半年の間止めることができます。
※内容証明とは、送った郵便物の宛名や内容について、日本郵便が証明してくれる制度のことで、配達証明とは、郵便物を配達した日付について証明してくれる制度のことです。
④自分で会社と交渉する
ここまでの作業を終えたら、会社と自分で直接交渉する必要があります。会社には顧問弁護士等がいる可能性がありますので、この場面でも専門的知識や交渉力が必要です。
自分で請求するのは難しそうですね。
そうなんです。そのため、多くの人は残業代請求に強い弁護士に依頼して残業代を回収しています。。
3-2:弁護士に依頼する方法
弁護士に依頼すると、以下のような流れで残業代を回収していきます。
弁護士に依頼した場合、
- 交渉
- 労働審判
- 訴訟(裁判)
という手段によって、残業代請求の手続きが進められます。
実は、弁護士に依頼すると言っても「訴訟」になることは少ないです。おそらくあなたが心配しているであろう「費用」の面でも、「完全成功報酬制」の弁護士に依頼すれば、「相談料」や「着手金」ゼロで依頼することができます。
弁護士に依頼すると、あなたの「会社と戦う」という精神的負担を、弁護士が肩代わりしてくれるだけでなく、時間・手間を節約することもできるのです。さらに、「完全成功報酬制」の弁護士に依頼することで、初期費用もほぼゼロにできるのです。
ただし、弁護士に依頼する場合は「弁護士なら誰でもいいだろう」とは考えないでください。実は、法律の知識は広い範囲に及ぶため、自分の専門分野以外の件については、あまり知識がない弁護士が多いです。そのため、残業代請求に強い弁護士に依頼することをお勧めします。
【退職後でも可!】残業代請求の2つの方法と在職中から集めることができる証拠
3-3:残業代請求を行う上で重要な2つのポイント
最後に、残業代を請求する上で必ず知っておかなくてはならない2つのポイントについて解説します。
3-3-1:まずは自分で証拠を集める
残業代を請求するためには、残業していた事実を証明できる「証拠」が必要です。
証拠集めは、まずは自分で行うことをおすすめします。証拠集めも弁護士に依頼することは可能です。しかし、弁護士が証拠を要求しても提出しない悪質な会社もあるため、会社に在籍しているうちに、自分で証拠を集めておくことがより確実なのです。
残業代請求の証拠として有効なのは、以下のようなものです。
勤怠管理している会社で有効な証拠
- タイムカード
- 会社のパソコンの利用履歴
- 業務日報
- 運転日報
- メール・FAXの送信記録
- シフト表
勤怠管理していない会社で有効な証拠
- 手書きの勤務時間・業務内容の記録(最もおすすめ)
- 残業時間の計測アプリ
- 家族に帰宅を知らせるメール(証拠能力は低い)
証拠として一番良いのは①です。毎日手書きで、1分単位で時間を書きましょう。具体的な業務についても書くのがベストです。③のメールは、裁判になると証拠としては弱いので、できるだけ手書きでメモを取りましょう。
証拠は、できれば3年分があることが望ましいですが、なければ半月分でもかまいません。できるだけ毎日の記録を集めておきましょう。
ただし、手書きの場合絶対に「ウソ」の内容のことを書いてはいけません。証拠の中にウソの内容があると、その証拠の信用性が疑われ、証拠として利用できなくなり、残業していた事実を証明できなくなる可能性があります。
そのため、証拠は「19時30分」ではなく、「19時27分」のように、1分単位で記録するようにし、正確に記録していることをアピールできるようにしておきましょう。
残業代請求に必要な証拠について詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
【保存版】知らないと損する?残業代請求する為に揃えておくべき証拠
3-3-2:残業代が請求できるのは3年の時効が成立するまで
残業代請求には「3年」という時効があります。そのため、3年の時効が成立してしまうと、それ以前の残業代が二度と請求できなくなってしまいます。
そのため、残業代の請求手続きは、なるべく早めにはじめることを強くおすすめします。
残業代請求の時効について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
毎月残業代が消滅!未払い残業代の時効と時効を止める3つの方法
まとめ:残業時間と残業代
いかがだったでしょうか?
最後に今回の内容をまとめます。
まず、残業時間とは「1日8時間・週40時間を超える労働」のことです。
そして、労働時間としてカウントされるのは、「使用者の指揮命令下に置かれている」時間のことで、以下の時間も労働時間としてカウントされます。
- 準備時間:制服、作業服、防護服などに着替える時間、始業前の朝礼・体操の時間など
- 後始末時間:着替え、掃除、清身
- 休憩時間:休憩中の電話番や来客対応などを依頼された場合
- 仕込み時間:開店前の準備やランチとディナーの間の仕込み時間
- 待機時間:トラックの荷待ちの時間
- 仮眠時間:警報や緊急事態に備えた仮眠の時間(特に警備や医療従事者など)
- 研修:会社からの指示で参加した研修
- 自宅の作業:仕事が終わらず自宅に持ち帰って仕事した時間
現在、違法な長時間の残業を強いられている場合、
- 自分で長時間の残業を改善する
- 労働基準監督署に相談して解決を図る
という方法で、改善できる可能性もあります。
会社を退職して残業代を取り戻す場合、
- 自分で会社に直接請求する
- 弁護士に依頼する
という選択肢があり、おすすめは時間・手間・精神的負担をかけずに、より多く回収できる可能性が高い弁護士に依頼する方法です。
現状に少しでも不満があるならば、これらの方法を検討してみてはいかがでしょうか。