
あなたは、以下のような悩みや疑問はありませんか?
会社から「残業は禁止」と言われると、「ナゼ?」「どうしたらいいの?」と思う人が多いと思います。
残業禁止とは、会社から一方的に残業が禁止されることですが、会社から残業が完全に禁止されているのなら、残業代も出ません。
しかし、「残業の禁止」は以下のように、悪質な会社によって、残業代を支払わないための手口として使われることも多いです。
ただ、残業禁止と言われている場合の、「本当は残業代が出るのか・出ないのか」判断することは、法律の知識がなければ難しいです。
そこでこの記事では、残業禁止の「法律上の扱い」「残業せざるを得ない場合の対処方法」「残業禁止でも残業代が出るケース・出ないケース」「残業禁止が悪用される手口」などについて解説します。
最後までしっかり読んで、正しい知識を得てください。
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■会社が残業禁止を命令する意図
- 不要な残業を削減するため
- サービス残業を正当化するため
■残業代が発生するかどうかの判断基準
○:「使用者の指揮命令下に置かれている」時間かどうか
×:残業禁止と言われているかどうか
■残業が禁止された場合に、まず自分でできる対処法
- 自分で仕事を効率化する
- 周囲の協力を得る
- 平日の夜に予定を入れて自分にプレッシャーをかける
※自分で対処できない状況なら転職して会社に残業代を請求するのがおすすめです。
■残業禁止指示があっても残業代が出るケース
- とても終わらない量・納期の仕事が押しつけられていた
- 残業の禁止、許可が必要なことが社員に周知されていなかった
■残業禁止指示で残業代が出ないケース
- 残業禁止命令書などで明確に残業が禁止されている
- 残業が必要な場合の引き継ぎなどの仕組みがある
目次
1章:残業禁止とは?残業を禁止にする会社の意図と法律上の扱いについて
残業を禁止するかどうかは会社の自由ですが、それを理由に残業代が出ないことが違法になるかどうかは、法律の知識がないと判断できません。
そこでまずは、
- 会社が残業を禁止する2つの意図
- 残業禁止の法律上の扱いはどうなるのか
などの基本的な知識をお伝えします。
それより対処方法から知りたいという場合は、2章からお読みください。
1-1:会社が残業を禁止する2つの意図
なぜ会社は残業を禁止にするのでしょうか?
その意図は大きく2つが考えられます。
①不要な残業を削減するため
- 本来なら早く終わるはずの仕事を、時間をかけてやっている
- 仕事が終わった後も無駄に会社に残っている
会社は社員に残業代を支払わなければならないため、こんな社員がいたら無駄な人件費が膨らんでしまいます。
そこで、会社としては残業を禁止したり許可制にしたりすることで、社員の不要な残業を削減しようと考えるのです。これが多くの会社で残業が禁止される意図です。
ただし、ブラック企業では、これを逆手に取った手口が使われます。
②サービス残業を正当化するため
会社が残業を禁止する、悪質な場合の意図は、残業を禁止にすることで、社員が残業しても「残業は禁止していたから」「社員が勝手に残業したのだから」という理由で社員に残業代を支払わずに済ませようとすることです。
つまり、残業を社員の自己責任であるように主張して、サービス残業を正当化するのです。
しかし、残業を禁止していたからといって、必ずしも会社の残業代の支払い義務がなくなるわけではありません。
そこで、次に残業禁止の法律上での扱いを解説します。
1−2:残業禁止の法律上の扱い
社員の残業を禁止するかどうかは会社の自由ですので、残業禁止が指示された場合、社員は原則的に残業してはいけません。
しかし、残業を禁止するのであれば、会社は社員の仕事量を残業しなくても終わるように調整する必要があります。仕事量がそのままなら、社員は結局残業せざるを得ないからです。
そのため、残業禁止が指示されても、
- 仕事量が変わらず、残業しなければ終わらない
- 納期がひっぱくしているため残業せざるを得ない
などの場合は、残業代が出ないことは違法になる可能性が高いです。
法律上、
「使用者の指揮命令下に置かれている」時間
は労働時間としてカウントされることになっています。
これは、明確に「残業しろ」という指示がない場合や、残業が禁止されている場合でも、残業せざるを得ない状況であれば、残業としてカウントされるということです。そのため、こんな場合で残業代が出なければ「違法」です。
2章:残業せざるを得ない場合に自分でできる対処法
会社から残業禁止が指示されていても、どうしても残業仕事が終わらない。こんな場合は、まずは自分でできる対処方法を試してみましょう。
ここでは、
- 自分で仕事を効率化する
- 周囲の協力を得る
- 平日の夜に予定を入れて自分にプレッシャーをかける
という方法を紹介します。
2-1:自分で仕事を効率化する
一番取りかかりやすいことからご紹介します。仕事を効率的にできるように工夫して、同じ仕事でも効率的に終わるようにするのは、今すぐにでもはじめられることではないでしょうか。
たとえば、
- ルーティン作業はストップウォッチなどで時間を測って少しでも短くしていく
- 仕事をすぐに取りかかれるように細分化する
- 細分化した仕事に優先順位を付けて、計画的に進めていく
などの方法が考えられます。
これらの方法を意識して行うだけで、毎日の残業を短くできる可能性があります。
2-2:仕事を自分だけで抱え込まない
あなたの残業が多いのは、あなたが自分で抱えきれないほどの量の仕事を抱えているからかもしれません。
あなたは「この仕事はすべて自分でやらなければいけない」と思っているかもしれませんが、会社とは社員の間で分担して仕事をするところです。
そのため、思い切って同僚などに、
「この仕事やってくれないかな?」
と提案してみるのも一つの選択肢です。
また、頼まれた仕事をすべてOKせず、よく考えてから受け入れる、もしくは断る勇気を持つようにすることも、あなたの仕事量を減らす工夫の一つです。
2-3:平日の夜に予定を入れる
仕事の後に何も予定がないと、定時を過ぎてもずるずると仕事を続けてしまい、残業時間が増えることになってしまいます。
平日の夜に友人や恋人と会う約束を入れたり、習い事の予定を入れたりしておくと、「仕事を早く終わらせなければ」という気持ちになり、仕事を早く終わらせることにつながります。
また、仕事以外の時間があればリフレッシュできて、仕事にもメリハリがつくでしょう。
もちろんこれは、自分の工夫で早く帰れるようにできる職場であることが前提です。
- 自分でできる工夫では到底終わらない量、納期の仕事が押し付けられている
- とても定時では帰れる雰囲気ではない
などの場合は、別の手段で解決する必要があります。
3章:残業禁止の指示があっても残業代が発生するケース・しないケース
1章で解説したように、単に会社が「残業を禁止していた」と主張したからといって、残業代の支払い義務がなくなるわけではありません。
残業代が発生するかどうかは、「使用者の指揮命令下に置かれている」時間であったかどうかで判断されます。
そこで、この判断基準に従って、残業禁止が指示されていても「残業代が発生するケース」と「残業代が発生しないケース」を解説します。
3-1:残業代が発生するケース
以下のようなケースでは、残業代が発生する可能性が高いです。
①とても終わらない量・納期の仕事が押しつけられていた
会社の上司などから、残業禁止が指示されていても、「定時では終わらない量や納期の仕事を押し付けられている場合」は、残業代が発生する可能性が高いです。
なぜなら、実際には残業が必要であることが明らかであるなら、上司などの使用者によって暗黙の業務命令(黙示的命令)があったと判断されるからです。暗黙の業務命令があった場合、それは「使用者の指揮命令下」にあると判断できるため、残業代が発生します。
②残業の禁止、許可が必要なことが社員に周知されていなかった
- 残業の禁止を口頭で注意していた
- 残業に許可が必要なことが社員に充分に周知されていなかった
このような場合は、残業代を出さないことは認められません。多くの会社では、残業の禁止や許可が必要であることが十分に社員に周知されず、黙認されている実態があるようです。残業禁止や許可制が徹底されていなければ、残業の暗黙の業務命令があったと考えられるため、残業代が発生する可能性が高いです。
3-2:残業代が発生しないケース
以下のようなケースでは、残業代が発生しない可能性が高いです。
①残業禁止命令書などで明確に残業が禁止されている
- 上司から「残業禁止命令書」で残業禁止が指示された
- 就業規則で残業禁止が明示されている
このような場合は、会社から明らかに残業禁止が命令されているため、あなたが残業しても残業代が発生しない可能性が高いでしょう。
ただし、このような形で明らかに残業が禁止されていても、あなたが「どうしても残業せざるを得ない状況」である場合はこの限りではありません。
自分で状況を判断することは難しいため、不満があれば弁護士などの専門家に相談しましょう。
②残業が必要な場合の引き継ぎなどの仕組みがある
どうしても残業が必要な場合に、
「他の社員が仕事を引き継いでし、残業を防ぐ」
というような仕組みがあり、それがしっかり運用されている場合、それを無視して残業しても残業代は発生しない可能性が高いです。
なぜなら、このような仕組みがあり、しっかり活用されているならば、あなたがどうしても残業せざるを得ない状況にあるとは言えないからです。ただし、このような仕組みがあっても、「実際には活用できないようになっている」などの場合は残業代が出なければ違法になることもあります。
これも判断が難しいため、詳しくは直接弁護士に聞いてみることをおすすめします。
4章:「残業禁止」を理由に従業員を残業代ゼロで働かせようとする会社の手口
ブラック企業では「残業禁止」という建前で、
- タイムカード打刻後に働かせる
- 自宅に仕事を持ち帰らせる
- サービス残業が当たり前の空気が作られる
などの手口を使い、社員にサービス残業させることがあります。
あなたもこのような手口で騙されていないか、確認してみてください。
4-1:タイムカード打刻後に働かせる
これは、社員から残業代を請求されても、タイムカード上は残業が記録されていないことから、「残業の実態はなかった」と主張するための手口です。
4-2:自宅に仕事を持ち帰らせる
「タイムカード打刻後に働かせる」手口より残業の証拠が残りにくいため、会社としては使い勝手の良い手口なのです。
4-3:サービス残業が当たり前の空気を作る
「残業するのは仕事のできないやつ」
「自分の仕事を時間内に終わらせられないのは自分の責任」
という考えを浸透させ、サービス残業を当たり前にする手口も、ブラック企業によって使われることがあります。
こうした考え方を浸透させることで、会社は社員を残業代ゼロでいくらでもこき使えるようになるため、ブラック企業にとっては非常に使いやすい手口なのです。
もしあなたの職場にこのような空気があるとしたら、一刻も早く転職することをおすすめします。
【退職後でも可!】残業代請求の2つの方法と在職中から集めることができる証拠
まとめ:残業禁止と残業代
いかがでしたか?
最後に、この記事のポイントを押さえましょう。
まず、会社が残業禁止を命令する意図には、以下の2つがあります。
- 不要な残業を削減するため
- サービス残業を正当化するため
残業代が発生するかどうかの判断基準は、
○:「使用者の指揮命令下に置かれている」時間かどうか
×:残業禁止と言われているかどうか
です。
残業が禁止された場合に、まず自分でできる対処法は、
- 自分で仕事を効率化する
- 周囲の協力を得る
- 平日の夜に予定を入れて自分にプレッシャーをかける
がありますが、自分で対処できない状況なら転職して会社に残業代を請求するのがおすすめです。
【残業禁止指示があっても残業代が出るケース】
- とても終わらない量・納期の仕事が押しつけられていた
- 残業の禁止、許可が必要なことが社員に周知されていなかった
【残業禁止指示で残業代が出ないケース】
- 残業禁止命令書などで明確に残業が禁止されている
- 残業が必要な場合の引き継ぎなどの仕組みがある
ブラック企業は、「残業禁止」を建前に、あなたも気づかないような巧妙な手口で、残業代をごまかしているかもしれません。
一度自分の状況を振り返り、適切な対処法を取ることをおすすめします。