【残業代カットされた】会社の手口とあなたが損をしないための対処法

著者情報

住川 佳祐
(弁護士法人QUEST法律事務所 代表弁護士)

著者情報 弁護士法人QUEST法律事務所 代表弁護士 住川佳祐

東京弁護士会所属。東京大学法学部卒。『NHK あさイチ』のTV出演の他、『プレジデント』『ダイヤモンド・セレクト』などメディア掲載多数。弁護士法人QUEST法律事務所のHPはこちら。

残業代カットのイメージ

あなたは以下のような悩みはありませんか?

残業代をカットされた人にありがちな悩み

せっかく遅くまで働いて稼いだ残業代が会社からカットされると、会社に対して不信感を持ってしまいますよね。

残業代カットには「残業代が減額されること」「残業代がそもそも支払われない」という2つのパターンがあります。

実は、どちらの場合であっても、残業代が適正な金額出ていなければ違法です。「残業代の減額」は過去の裁判例で認められないとされていますし、「残業代がそもそも支払われない」のは、労働基準法違反になるからです。

では、なぜ会社は残業代カットするのでしょうか?勝手に残業代がカットされたらどのように対処したら良いのでしょうか?

この記事では、こんな悩みに応えるために、まずは残業代カットが違法な理由と会社の意図について、次にカットされた場合の3つの対処方法について、そしてあなたも騙されているかもしれない「残業代カットの手口」について詳しく解説します。

最後までしっかり読んで、残業代カットに対抗する知識を身につけましょう。

【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】

■残業代カットが違法な理由

①残業代がカット(減額)されること

「実際の残業時間が少なく、残業代が固定残業代の金額に満たなかったことを理由に、固定残業代をカットする」のは認められないと、過去の判例で判断されているため

②残業代がそもそも支払われない(未払い)こと

(労働基準法37条1項)

会社は、従業員に残業させた場合、通常の時給にに「1.25倍」の割増率をかけた残業代を支払わなければならない。

この法律に違反しているため

■会社が残業代をカットする意図

  • 利益増大のため
  • 残業代カットに気づかない、法律に無知な社員が多いため

■残業代カットされた場合の3つの対処方法

  • 会社に相談する
  • 労働基準監督署に相談する
  • 退職して会社にカットされた残業代を請求する

    残業代カットに関するポイント

    目次

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    1:残業代カットは違法!その理由と残業代をカットする会社の意図

    残業代カットの手口や対処方法を理解するために、まずは、正しい知識を得ることが必要です。

    そこで、まずは残業代カットの法的な扱い、会社が残業代カットする意図について解説します。

    そもそも、残業代カットには以下の2つの意味があります。

    1. 残業代をカット(減額)すること
    2. そもそも残業代を支払わない(未払い)こと

    です。

    それぞれに分けて、

    • 残業代カットの違法性
    • 残業代をカットする会社の意図

    について見ていきましょう。

    11:残業代カットの法的な扱い

    1. 残業代をカット(減額)すること
    2. そもそも残業代を支払わない(未払い)こと

    のそれぞれの違法性を解説します。

    ①残業代をカット(減額)することの違法性

    「毎月支払われるはずの○万円の固定残業代が、今月は出ていない!なんで?」

    残業代をカット(減額)されるケースとして多いのが、このように「固定残業代」がカットされることです。

    例えば、固定残業代が月5万円支払われることが雇用契約で決められていた人が、残業が少なかった(固定残業代分の残業時間に満たなかった)月は、固定残業代が支払われない、もしくは減額される、ということがあります。

    しかし、過去の裁判例では、固定残業代の合意をした以上、実際に行われた残業に基づいて計算した残業代の額が、あらかじめ定められた固定残業代の額に満たない場合であっても、固定残業代は減額されないとすべきと判断されました。

    そのため、固定残業代がカット(減額)されることは認められないのです。

    固定残業代のカットは認められない

    ②そもそも残業代を支払わない(未払い)ことは違法

    「うちの会社では残業代は出ない」

    「〇〇手当が残業代のかわりだから、それ以上の残業代は出ない」

    このようなことが言われて、適正な金額の残業代が支払われない会社は多いですが、このような行為は違法です。

    残業代が支払われる基準になるのは、労働基準法です。会社の就業規則や賃金規則ではありません。そのため、あなたの残業代がそもそも出ていなかったり、適正な金額の残業代が出ていなければ、労働基準法に違反していることになるのです。

    労働基準法では、残業代について以下のように規定されています。

    (労働基準法371項)

    会社は、従業員に残業させた場合、通常の時給にに「1.25倍」の割増率をかけた残業代を支払わなければならない。

    また、

    会社は、従業員に休日労働させた場合、通常の時給に「1.35倍」の割増率をかけた残業代を支払わなければならない。

    ※以上の文章は分かりやすいように改変しています。

    社員には残業代をもらう権利があるのであり、本来出るべき残業代が出ないことは、この「37条」に違反することになるのです。

    そのため、適正な金額の残業代が支払われないことは、違法なのです。

    残業代の労働基準法上の規定について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

    あなたの残業代は適正?労働基準法での残業代の定義・支払いのルールとは

    では、なぜ会社は「残業代カット」という違法行為をするのでしょうか?

    1-2:会社が残業代をカットする意図は人件費圧縮のため

    「残業代をカット(減額)すること」

    「そもそも残業代を支払わない(未払い)こと」

    のどちらの残業代カットも、会社の意図は同じです。

    それは「人件費を圧縮して会社の利益を増やす」ことです。

    法律を守る普通の会社は、利益を増やすためには売り上げを増やしたり、経営を効率化したりします。しかし、一部のブラック企業では、人件費をカットすることで経費を抑え、その分利益を増大しようとするのです。残業代カットはその手段として使われることが多いのです。

    なぜ利益増大のために残業代カットを使うのかというと、多くの社員が労働基準法に関する正しい知識を持っていないためです。そのため、ブラック企業の経営者は、以下のように考えて、残業代カットを利益増大の手段として使うのです。 

    経営者
    社員たちは法律を知らないから、残業代をカットしても気づかないだろう。
    さらに、ブラック企業の経営者は、社員が残業代をカットされていることに不信感を持たないように、様々な巧妙な手口を使っています。

    具体的な手口の内容について、3で詳しく解説しています。

    社員
    社員
    私も残業代をカットされているようなのですが、これからどうしたら良いのでしょうか?
     
    弁護士
    弁護士
    残業代カットは違法なため、会社に請求すれば取り返せる可能性が高いです。これから、4つの対処方法について解説します。
     

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    2章:残業代カットに対する損しないための3つの対処法

    残業代カットへの対処法は、以下の3つです。

    • 会社に相談する
    • 労働基準監督署に相談する
    • 会社を辞めてカットされた残業代を請求する

    これらの方法には、以下のようなメリット・デメリットがあります。

    残業代カットの対処法のメリット・デメリット

    なんとしてでも残業代を取り返したいという場合におすすめなのは、「会社を辞めて残業代を請求する」方法です。

    社員
    社員
    会社を辞めてしまう勇気はまだないです・・・
     
    弁護士
    弁護士
    そうですよね。それでは、まずはやりやすい方法から紹介しますので、自分ができそうな手段で行動してみましょう。
     

    2-1:会社に相談する

    残業代がカットされていることについて、会社の上司などに相談することが可能なら、まずは直接相談してみましょう。

    もし、

    • 上司に言ってもはぐらかされる
    • 上司から丸め込まれる
    • そもそも上司に相談するのは怖い

    などの場合は、自分が勤務していた支社や店舗ではなく、本社に直接連絡して相談することをおすすめします。

    なぜなら、あなたの会社の上司が残業代をカットしていることを、本社は知らない可能性がある上、本社は問題になることを恐れて、あなたの上司よりも誠実な対応をしてくれる可能性があるからです。

    しかし、

    • そんなことできない!
    • もう試した!

    という場合は、これから紹介する他の方法を試してみてください。

    2-2:労働基準監督署に相談する

    残業代がカットされていることを、労働基準監督署に相談するという方法もあります。 

    弁護士
    「労働基準監督署」とは、厚生労働省の出先機関で、労働基準法に基づいて会社を監督するところです。残業代の未払いは労働基準法違反のため、労働基準法に相談することで解決にいたる可能性もあります。
     労働基準監督署に相談すれば、具体的なアドバイスがもらえる可能性もあります。ただし、相談するだけでは労働基準監督署は動いてくれず、アドバイスをもらえるのみです。

    さらに、相談ではなく「申告」すれば、場合によっては解決することもあります。

    ※労働基準監督署への申告とは、単なる労働問題の相談ではなく、会社の違法行為が明らかである場合に、労働基準監督署に対応を求めることです。

    労働基準監督署への申告は、以下のような流れで可能です。

    労働基準監督署に相談したときの流れ

    このような流れで労働基準監督署に申告することができるのですが、この方法は「残業代を請求したい場合」は、あまりおすすめではありません。 

    弁護士
    労働基準監督署は、労働基準法に違反している会社の行為を「正す」機関であり、あなたの残業代を取り返してくれる機関ではありません。そのため、残業代を請求したいというあなたのために積極的に動いてくれる可能性は低いのです。
     また、労働基準監督署は、労働者からのすべての申告で動くわけではありません。それは、全国には400万を超える法人があるにもかかわらず、日本の労働基準監督署の人員は、非常勤の職員を含めても約2400人しかおらず、明らかに人員不足だからです。そのため、危険作業や労働災害などの「人命に関わる問題」などが優先して処理されるため、「残業代の未払い」では、動いてもらえない可能性が高いのです。

    それより、何としても残業代を取り返したいという人は、会社を辞めて残業代を請求することをおすすめします。

    2-3:退職を機に残業代を請求する2つの方法

    残業代をカットされている場合、対処方法として最も効果的なのが、会社を辞めて、残業代が法律通りに出る会社を探して転職することです。

    会社を辞めるという選択肢は、なかなか勇気がいるかもしれません。

    しかし、残業代を勝手にカットするようなブラック企業に居続けても、あなたは会社から良いように使われ続けるだけではないでしょうか。

    会社に残業代カットを相談したり、労働基準監督署に相談して是正勧告してもらうことができても、その場限りの対応で終わってしまう可能性もあります。

    なぜなら、当たり前のように残業代をカットする「会社の空気」や、「上司の考え方」などは、簡単には変わらないからです。

    そのため、残業代がきちんと出る“ホワイト企業”に転職するのがもっとも効果的な方法です。

    会社を辞める場合、退職を機に、会社に未払い残業代を請求することができます。

    残業代は、以下のように、あなたが思っているより高額になる可能性が高いため、請求しなければ大きな損になります。そのため、退職するのであれば、必ず会社に請求することをおすすめします。

    (請求できる残業代の例)

    • 月給20万円
    • 毎月80時間残業
    • 月の残業代:117600

    の場合

    残業代は3年分までさかのぼって請求できるため、

    3年分の残業代の合計:423万3600円

    ※詳しい残業代の計算方法は、以下の記事をご覧ください。

    5分で分かる!正しい残業代の計算方法と実は残業になる8つの時間

    それでは、残業代を請求する場合の2つの請求方法について解説します。

    231:自分で会社に直接「配達証明付き内容証明郵便」を送って請求する

    未払い残業代について、自分で会社に「配達証明付き内容証明郵便」を送って請求するという方法があります。

    内容証明とは、差し出した日付、差出人の住所・氏名、宛先の住所・氏名、文書に書かれた内容を、日本郵便が証明してくれる手紙の一種です。そして、配達証明とは、配達した日付や宛名を証明してくれる郵便の制度です。

    書面は以下のようなものです。

    <内容証明ひな形>――――――――――

    私は○○年○○月○○日,貴社に入社し,○○年○○月○○日に退社した者です

    私は,平成○○年○○月○○日から平成○○年○○月○○日(以下「請求期間」とします。)まで,貴社に対し,合計■時間の時間外労働を提供いたしましたが,貴社からは,一切,割増賃金のお支払いただいておりません。

    よって,私は,貴社に対し,請求期間内の未払割増賃金の合計額である★円の支払を請求いたしますので,本書面到達後1週間以内に,以下の口座に振り込む方法によるお支払をお願いいたします。

    ○○銀行○○支店 

    ○○預金(普通・定期などの別) 

    口座番号○○ 

    口座名義人○○

    なお,本書面到達後を1週間を過ぎても貴社から何らご連絡いただけない場合は,やむを得ず労働基準監督署への申告,訴訟の手段をとらせていただくことをあらかじめ申し添えます。

    ―――――――――――――――――――

    「配達証明付き内容証明郵便」で会社に請求書を送ることで、会社は「そんなもの届いていない」としらばっくれることができなくなります。

    「配達証明付き内容証明郵便」を送って残業代を請求する流れは、以下の4つのステップからなります。

    1. 証拠を集める
    2. 残業代を計算する
    3. 会社に配達証明付き内容証明郵便を送る
    4. 自分で会社と交渉する

    会社に「配達証明付き内容証明郵便」を送って請求する方法は、必要な手続きの量が多いですので、詳しくは以下の記事を参照してください。

    残業代を内容証明で請求!自分で出す方法と適切なタイミングを徹底解説

    内容証明を送くると会社との交渉がスタートします。運が良ければ、内容証明が届いた時点で支払いに応じる会社もあるかもしれません。

    しかし、多くのブラック企業は、あなたになるべく残業代を払いたくないため、顧問弁護士等を介して減額の交渉をしてくるでしょう。

    どの金額で折り合いがつくかは、あなた次第ですが、相手は、法律のプロである弁護士なので本来もらえる額より少ない金額で妥協しなくてはならない可能性が高いです。

    また、一人で交渉してもブラック企業に対してはあまり圧力とならないため、相手にしてもらえず、内容証明を送っても無視されるという可能性もあります。

    そんな場合は、次に紹介する「弁護士に依頼する」方法をおすすめします。

    232:弁護士に依頼して請求(手間・時間がかからず回収金額が高くなる可能性アリ)

    • より確実に残業代を取り返したい
    • すでに会社を退職しているが、少しでも多くの残業代を取り返したい
    • これから退職して残業代を取り返したいので、準備を始めたい

    こんな場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。なぜなら、残業代の計算や交渉は、専門的な知識が必要になりますし、「すでに退職している」「これから準備を始める」という場合は、自分の知識だけでは円滑に手続きを進めることが、より難しいからです。

    残業代請求を弁護士に依頼する流れ

    社員
    社員
    弁護士に依頼して裁判みたいな大事にするのはちょっと・・・
     
    弁護士
    弁護士
    実は、弁護士に依頼すると言っても「訴訟(裁判)」になることは少ないです。ほとんどが交渉や労働審判という、訴訟(裁判)よりも簡単な手続きで解決します。
     
    社員
    社員
    でも、弁護士に依頼すると高いお金を払わないといけないイメージがあるんだけど・・・
     
    弁護士
    弁護士
    実はそうとも限りません。残業代請求を専門にしている「完全成功報酬制」の弁護士に依頼すれば、「相談料」や「着手金」ゼロで依頼することができます。
     残業代請求を弁護士に依頼した場合の、詳しい手続きの流れや注意点について、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご覧になってください。

    失敗したら残業代ゼロ?弁護士選びの8つのポイントと請求にかかる費用

    残業代カットされた場合の対処方法について、理解することができましたか? 

    弁護士
    弁護士
    まだ知っておいて欲しいことがあります。それが、会社が使う残業代カットの手口です。中にはあまりにも一般的になっているため、多くの人が「残業代カットの手口」だと認識していないものもあります。
     
    社員
    社員
    そうなんですか?知らずに騙されていることもあるっていうことですね・・・
    弁護士
    弁護士
    そうなんです。そこで、最後によく使われる残業代カットの手口についてご紹介します。
     

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    3章:会社の使う残業代カットの手口

    あなたの会社では、以下のようなことが言われたり、されたりして残業代がカットされていませんか?

    【残業代がカット(減額)された場合】

    • 残業が少なかったことを理由に、固定残業代をカットする

    【残業代がそもそも支払われていない、もしくは不当に少ない金額しか出ていない場合】

    • 残業時間の端数を切り捨てる
    • 早出出勤、待ち時間、片付け時間などが残業にカウントされない
    • さぼってばかりで真面目に働いていない
    • 残業は禁止していた
    • 基本給・固定残業代・各種手当に残業代を含んでいる
    • 「管理職(管理監督者)だから」支払い義務はない
    • 年俸制なので残業代の支払い義務はない
    • 残業代は歩合に含まれているので支払い済みである
    • 変形労働時間制なので支払い義務はない
    • フレックスタイム制なので支払い義務はない

    これらを理由に残業代がカットされていたら違法です。

    それぞれの手口について、詳しく解説します。

    31:残業が少なかったことを理由に固定残業代をカットする

    残業代をカット(減額)する手口には、このようなものがあります。 

    経営者
    今月は残業が少なかったようだから、固定残業代は支払わないぞ。
    あなたも、実際の残業時間が少なく、実際の残業代が、固定残業代の金額に満たなかったことを理由に、固定残業代がカットされることがありませんか?

    このような行為は、1章で解説したように、過去の裁判例で認められないとされています。そのため、あなたの会社がこのような行為をしていたら、あなたは後から残業代を請求することができます。

    32:適正な金額の残業代を支払わない手口

    そもそも、適正な金額の残業代を最初から支払わないでおこうとする会社の手口には、以下のものがあります。

    321:残業時間の端数を切り捨てる

     

    経営者
    出退勤の記録は、30分未満は切り捨てることになっているんだよ。
    あなたの職場では、以下のような方法で勤怠管理がされていませんか?

    残業の記録が、5分、15分、30分単位などになっていて、1分単位ではない

    こんな行為は認められません。

    なぜなら、日々の残業時間は1分単位で記録しなければならないからです。そのため、あなたの会社で日々の残業の記録が1分単位になっていなかったら、それはその分の残業時間をごまかし、残業代をカットする手口である可能性があります。

    残業時間の端数切り捨ての例外が認められるのは、1ヶ月の残業の合計時間についてのみで、以下のように決められています。

    1ヶ月の残業、休日労働、深夜労働の端数】

    • 合計時間のうち30分未満の端数は切り捨て
    • 合計時間のうち30分以上は1時間に切り上げ

    あなたの日々の残業時間の端数が切り捨てられていたら、その分の残業代を請求することができます。

    3-2-2:早出出勤、待ち時間、片付け時間などが残業にカウントされない

     

    経営者(建前)
    朝も早く来て働く方が集中して仕事できるぞ!
     
    経営者(本音)
    経営者(本音)
    社員たちは早出が労働時間にカウントされるとは思っていないだろうから、その分タダ働きさせられるぜ。
    本来、以下の時間も労働時間としてカウントされます。そのため、これらの時間が労働時間としてカウントされていなければ、あなたはその分の残業代を請求できる可能性があります。

    • 準備時間:制服、作業服、防護服などに着替える時間、始業前の朝礼・体操の時間など
    • 後始末時間:着替え、掃除、清身
    • 休憩時間:休憩中の電話番や来客対応などを依頼された場合
    • 仕込み時間:開店前の準備やランチとディナーの間の仕込み時間
    • 待機時間:トラックの荷待ちの時間
    • 仮眠時間:警報や緊急事態に備えた仮眠の時間(特に警備や医療従事者など)
    • 研修:会社からの指示で参加した研修
    • 自宅の作業:仕事が終わらず自宅に持ち帰って仕事した時間

    あなたの会社でも、これらの時間が労働時間としてカウントされていなければ、それは残業代カットの手口かもしれません。

    3-2-3:さぼってばかりで真面目に働いていない

     

    経営者
    真面目に働いていないから払う必要無し
     
    経営者
    勤務中に休憩が多いから残業代なんて払わん
    会社の経営者や上司から「さぼってばかりで、真面目に働いていない」などと言われていたとしても、具体的な証拠が無い場合、まったく効力を持ちません。そのため、残業代支払い拒否の理由にはなりません。

    したがって、こんなことを言われていたら、それは残業代カットの手口である可能性が高いです。

    3-2-4:残業は禁止していた

     

    経営者
    残業は禁止しているのに、社員が勝手に残業をしていただけだから、残業代の支払い義務はない
    残業禁止令を出しながら、

    • 残業を行っているのを黙認する
    • 残業しなければ終わらない大量の仕事を指示する

    など明らかに残業を強要するような行動があった場合、いくら「残業は禁止」と口だけで言っていたとしても、残業代を支払う義務があります。

    あなたがこれらのようなことを言われていたら、それは会社による残業代カットの手口である可能性があります。

    3-2-5:基本給・固定残業代・各種手当に残業代を含んでいる

     

    経営者
    固定給に残業代をすでに含んでいるので、追加で支払う必要はない
     
    経営者
    残業代は○○手当で支払っている

    • 残業代は基本給に組み込まれている
    • ○○手当(営業手当、役職手当など)の形で残業代を支払っている

    このように、残業代がみなし残業代や固定手当として支払われていても、残業代は発生します。そのため、これらを理由に残業代が支払われていなければ違法です。詳しくは、以下の記事を参照してください。

    みなし残業(固定残業)の違法性を判断する7つのポイントを徹底解説

    3-2-6:「管理職(管理監督者)だから」支払い義務はない

     

    経営者
    管理職だから残業代は出ないって言ったよね?
    「管理職」や「店長」であることは、残業代が発生しない理由にはなりません。

    確かに、労働基準法上、会社のサービスや採用などに大きな裁量を持っている人を労働基準法上「管理監督者」と呼び、深夜手当を除き、残業代を支払う必要がないとされています。

    しかし、労働基準法上の管理監督者とみなされるには、非常に厳しい要素を満たす必要があり、ほとんどの「管理職」や「店長」の人は、労働基準法上の管理監督者ではありません。

    このように、たいした裁量もないのに、「管理職」「店長」といった名前だけ与えられ、残業代の支払いをされていない人のことを「名ばかり管理職」と言います。「名ばかり管理職」は、残業代カットの手口として使われることが多いですので、注意してください。

    詳しくはこちらの記事をご覧ください。

    弁護士が「名ばかり管理職」を解説「管理職だから残業代無し」は違法

    3-2-7:年俸制なので残業代の支払い義務はない

     

    経営者
    うちの会社は年俸制だから残業代は出ないんだよ
    年俸制であっても、基本給部分と残業代部分が明確に区分されていない場合は,残業代の支払い義務があります。そのため、年俸制を理由に残業代が出ていなかったら、それは残業代カットの手口です。

    年俸制について、詳しくは以下の記事を参照してください。

    誰でも5分でわかる「年俸制とは?」と不当な低賃金への対処法

    3-2-8:残業代は歩合に含まれているので支払い済みである

     

    経営者
    うちは歩合に残業代がすでに組み込まれるんだよね
    歩合給制であっても、歩合の内いくらが残業代として支払われているのか、明確に分けられていない場合は、残業代を別途支払う義務があります。

    そのため、歩合給制であることを理由に残業代が支払われていなければ、それは残業代カットの手口であり、違法です。

    歩合給制について詳しくは、以下の記事をご覧ください。

    歩合給制とは?誰でも5分でわかる正しい意味と不当な低賃金への対処法

    3-2-9:変形労働時間制なので支払い義務はない

     

    経営者
    変形労働時間制の場合は、残業代は出ないんだよ
    変形労働時間制とは、一定の期間を設定し、その期間内の特定の日や週について、法定労働時間を超える所定労働時間を設定することができる制度です。たとえば、「4月の1週目の1週間所定労働時間を、45時間にする」のようなことができます。

    正しく運用すれば、これ自体は違法ではありません。

    しかし、多くのブラック企業は、変形労働制を違法に利用し、残業代カットの手口として使っていることが多いのが実情です。

    変形労働時間制について、詳しくは以下の記事を参照してください。

    変形労働時間制とは?誤解されがちな意味と企業が悪用している時の対処法

    3-2-10:フレックスタイム制なので支払い義務はない

     

    経営者
    フレックスタイム制なのになんで残業代が出ると思うの?出るわけないでしょ
    フレックスタイム制とは、従業員が契約時間の範囲内で始業時刻と終業時刻を自由に設定できる制度のことです。この場合も、契約時間を超えて働いた場合には残業代をもらう権利があります。

    フレックスタイム制について、詳しくは以下の記事を参照してください。

    フレックスタイム制とは?誰でもたったの5分で理解できる正しい意味

    社員
    社員
    こんなにいろんな手口があるんですね・・・
     
    弁護士
    弁護士
    そうなんです。あなたも、自分の会社で当たり前のように行われていることが残業代カットに利用されていないか、よくチェックしてくださいね。
     

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    まとめ:残業代カットの手口や対処方法

    いかがでしたか?

    最後にもう一度、今回の内容を振り返りましょう。

    【残業代カットが違法な理由】

    ①残業代がカット(減額)されること

    「実際の残業時間が少なく、残業代が固定残業代の金額に満たなかったことを理由に、固定残業代をカットする」のは認められないと、過去の判例で判断されているため

    ②残業代がそもそも支払われない(未払い)こと

    (労働基準法371項)

    会社は、従業員に残業させた場合、通常の時給にに「1.25倍」の割増率をかけた残業代を支払わなければならない。

    この法律に違反しているため

    【会社が残業代をカットする意図】

    • 利益増大のため
    • 残業代カットに気づかない、法律に無知な社員が多いため

    【残業代カットされた場合の3つの対処方法】

    • 会社に相談する
    • 労働基準監督署に相談する
    • 退職して会社にカットされた残業代を請求する

    【残業代カットの手口】 

    ①残業代をカット(減額)する手口

    • 固定残業代を、残業時間がみなし残業時間に満たなかったことを理由にカット(減額)する

    ②残業代を支払わない(未払い)手口

    • 残業時間の端数を切り捨てる
    • 早出出勤、待ち時間、片付け時間などが残業にカウントされない
    • さぼってばかりで真面目に働いていない
    • 残業は禁止していた
    • 基本給・固定残業代・各種手当に残業代を含んでいる
    • 「管理職(管理監督者)だから」支払い義務はない
    • 年俸制なので残業代の支払い義務はない
    • 残業代は歩合に含まれているので支払い済みである
    • 変形労働時間制なので支払い義務はない
    • フレックスタイム制なので支払い義務はない

    カットされた残業代は、トータルでは数百万円という高額になる可能性があります。今すぐ行動するつもりはなくても、この記事を何度も読んで、取り返すための方法を覚えておいてください。

    【参考記事一覧】

    残業代の労働基準法上での扱いについて、詳しくは以下の記事で解説しています。

    あなたの残業代は適正?労働基準法での残業代の定義・支払いのルールとは

    以下の記事では残業代計算の詳しい方法について解説しています。

    5分で分かる!正しい残業代の計算方法と実は残業になる8つの時間

    内容証明について詳しくは以下の記事で解説しています。

    残業代を内容証明で請求!自分で出す方法と適切なタイミングを徹底解説

    残業代請求を弁護士に依頼する方法と弁護士の選び方について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。

    失敗したら残業代ゼロ?弁護士選びの8つのポイントと請求にかかる費用

    みなし残業代(固定残業代)について詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。

    みなし残業(固定残業)の違法性を判断する7つのポイントを徹底解説

    名ばかり管理職について詳しく知りたい場合は、以下の記事を参考にしてください。

    弁護士が「名ばかり管理職」を解説「管理職だから残業代無し」は違法

    年俸制、歩合給制、変形労働時間制、フレックスタイム制について詳しくは以下の記事をご覧ください。

    誰でも5分でわかる「年俸制とは?」と不当な低賃金への対処法

    歩合給制とは?誰でも5分でわかる正しい意味と不当な低賃金への対処法

    変形労働時間制とは?誤解されがちな意味と企業が悪用している時の対処法

    フレックスタイム制とは?誰でもたったの5分で理解できる正しい意味

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