年棒制とは?正しい意味と悪用例!残業代を取り戻す方法を弁護士が解説

監修者

弁護士法人QUEST法律事務所
代表弁護士 住川 佳祐

年棒制とは?正しい意味と悪用例!残業代を取り戻す方法を弁護士が解説
チェック
この記事を読んで理解できること
  • 年俸制の正しい意味とは
  • 年俸制でも残業代が発生する!年俸制の残業代を徹底解説

年俸制とは、「給与の額を1年単位で決めること」を言います

このような年俸制ですが、実は、給与を安く抑えるための給与体系として使われることも多いのです。

年俸制は残業代やボーナスの内訳がわかりづらいため、会社が正しく給与を支払っていない場合があるのです。


そこで、この記事では年俸制とは何か、その正しい意味をお伝えしていきます。

会社の中には年俸制を良いように使うブラック企業もあるので、年俸制の意味をしっかり理解しましょう!

【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】

■年俸制とは

年俸制とは、給与の額を1年単位で決める給与の決め方であり、実際の支払は月ごとに分割される。

年俸制では、給与を前年度の評価や、本人と会社との交渉によることが多い。

■年俸制は悪用されやすい

年俸制は、1年単位で支払う給料の額を決めるものだが、その決まった額以上の金額は一切支払わないものとするという意味で悪用されることがとても多い。

※年俸制でも残業代が発生するため、残業代が未払いになっているなら請求して取り返すことが大事。

未払い残業代を取り返したいというあなたへ、まずはお気軽にご相談ください
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1章:年俸制の正しい意味とは

この章では、年俸制の基礎知識として

・年俸制とはどのような制度なのか
・ここに注意!年俸制の落とし穴
・年俸制は固定残業代制(みなし残業代制)と組み合わされて使われることが多く、社員の残業代をごまかすために悪用される場合もある

という点をご説明していきます。

1-1 :年俸制とは「給与の額を1年単位で決めること」

そもそも、年俸制の正しい意味とは何なのでしょうか?ここで、年俸制とは、給与の決め方のうち、

給与の額を1年単位で決めること

を言います。あくまで決め方の問題であって、実際の支払は月ごとに分割されます例を見てみましょう。

(例)年俸制で年収600万円の場合
→毎月50万円が支払われる

年俸制の決め方としては、前年度の評価や、本人と会社との交渉によることが多いです。プロ野球選手の報酬をイメージすると分かりやすいでしょう。このように、給与が前年度の評価と結びつきやすいことから、「年俸制は成果主義制度である」と言われることもあります。

また、年俸制はボーナスの支払い方にも特徴があります。ボーナスは、年俸に含まれている場合がほとんどですので、ここで支給方法についても確認しておきましょう。

*スタンダードな支払い方
年俸額を14回で割った額を毎月払い、何回分かをボーナスとして支給する

(例)年俸1400万円を14回分にわけ、2回分をボーナスとして支給する
→まず、毎月の給与の計算方法は
1400万÷14=100万円
となり、会社は毎月100万円を支払う必要があります。
ボーナスはこのうち2回分なので、
100万×2=200万円
となります。

1-2 :会社にとって都合が良い?年俸制の罠

ここまで読むと、年俸制には特に悪い印象がないようにも思えます。

しかし、実は年俸制は、会社にとっては都合が良い制度なのです。なぜなら、特に採用の際に、実際の額面より給与を高く見せることができるからです。

「ボーナス込の年俸制で、700万円払います!」
「ボーナスの200万円分はカットしよう」
 
法律上、給与自体は簡単に下げることができません。

しかし、ボーナス部分についてはあくまで「おまけ」なので、払うかどうかは会社次第になります。

年俸としてボーナス込で高い金額を提示し、実際にはボーナスをカット、などということもありえるのです。

年俸制は、実は働く側にとってメリットがほとんどない制度と言えましょう。

1-3 :年俸制は固定残業代制と一緒に採用されることが多い!

年俸制は、1年単位で支払う給料の額を決めるものですが、その決まった額以上の金額は一切支払わないものとするという意味で悪用されることがとても多いです。

また、悪質な会社の場合、年俸制と同時に固定残業代制(みなし残業代制)を採っている場合があります。

このような制度は、あなたがもらえるべき残業代の金額と深くかかわってきますので、しっかり確認しておきましょう。

【固定残業代制(みなし残業代制)】

固定残業代制(みなし残業代制)とは、あらかじめ、毎月一定の時間を残業時間として決め、一定額の残業代を支払うことを言います。

みなし残業代の仕組み

この制度では、決められた残業時間内であれば、どれだけ残業しても残業代は出ません。

しかし、決められた時間を超えて残業をした場合には、その分の残業代が追加で支払われる必要があります。

(例)「残業手当として、月20時間の残業に対し、3万円を支給する」
→月2時間残業しても、月18時間残業しても、3万円支給される。しかし、月25時間残業すると、会社は5時間分の残業代を支払わないといけない。

みなし残業代制の例

実は、固定残業代制(みなし残業代制)を悪用するブラック企業が多いのが現状です。

「定額の残業代で働かせ放題だ!」
 

しかし、実際には、定額部分の残業時間を超えれば、さらに残業代を支払う必要があります。

「年俸制だから、決められた額以上の残業代は出ないんだ…」
 

ブラック企業はこのような心理をついて、あなたをこき使うのです。

固定残業代制(みなし残業代制)制について詳しくは下記の記事をご参照ください。

みなし残業(固定残業)の違法性を判断する7つのポイントを徹底解説

【コラム】高給取りに残業代は不要?

みなし残業代制を導入するためには、厳しい条件をクリアする必要があります。

定額の残業代部分が、それ以外の給与と明確に区別され、何時間分の残業代にあたるのか決められていること

(OKな例)「年俸600万円には40時間分の残業代に相当する対価として90万円を含めるものとする」
(NGな例)「年俸として400万円支払う」

この条件については、破っている会社が良く見受けられます。

これについて、最近新しい判例が出ました。この判例によれば、いくら多くの給与を払っていても、定額の残業代と他の給与が区別されていなければ、固定残業代制を主張することはできないのです。

【高給取りの医師でも残業代は出るとした判例(平成29年7月7日)】
病院に勤務していた医師が、病院との間で年俸を1700万円とする契約をしていた。しかし、年俸のうちどの部分が残業代にあたるかが決められていなかった。
→年俸を払うだけでは残業代が支払われたとは言えない。そのため、病院は未払いの残業代を払わないといけない。

2章:年俸制でも残業代が発生する!年俸制の残業代を徹底解説

「年俸制の場合には残業代は出ないよ」


あなたはこのように会社にだまされたり、勘違いをしていませんか?

実は、年俸制の場合にも、残業代は発生するのです

この章では、残業代が発生していた場合に役に立つ、残業代請求について解説します。

ただし、固定残業代制(みなし残業代制)を採用している場合には、以下の計算方法が使えないので注意しましょう。

【弁護士が解説】「固定残業代制だから残業代は無し」は違法?

2-1 :自分でできる!残業代の計算方法


年俸制の場合、残業代は以下のように計算できます。

残業代=基礎時給×割増率×残業時間

基礎時給とは、あなたの時給のことを言います。

年俸制の場合には「年俸額÷12ヶ月÷170時間」と言う式で計算することができます。

*170時間とは「契約で決められた平均労働時間」を指します。多くの人は「契約で決められた平均時間」が160~174時間となっています。

今回は計算がしやすいように、170時間としています。

「割増率」については、以下の4種類があります。

通常の残業時間:1.25倍
法定休日(週1日は必ず休まなければならない日):1.35倍
通常の深夜残業(22:00〜翌朝5:00):1.5倍
法定休日の深夜残業1.6倍

それでは具体的に計算してみましょう。

あなたの年俸が300万円で、1日8時間働き、1か月の残業時間が50時間、深夜や法定休日の残業がなかったとします。

基礎時給=300万÷12ヶ月÷30日÷8時間=1041円
残業代=1041×1.25×50=65,062円

このように、あなたは年俸に加え、残業代として毎月65,062円を貰えるのです。

これは年に換算すると約78万円にもなります。

もし、あなたが残業代を貰えていない場合は、2-2で解説する残業代の請求についてしっかりお読みください。

残業代の時給をごまかす「3つの手口」と残業代の「正しい計算方法」

2-2 :実際に残業代を取り戻す!方法と証拠まとめ


残業代を取り返すには、方法を考えることも大切です。そこで、ここでは、

・残業代を取り戻す2つの方法
・残業代を取り戻すには証拠が必要

という点について説明していきます。


2-2-1 :残業代を取り戻す2つの方法

残業代を取り戻す方法としては、大きく分けて2つあります。

・自分で請求する
自分で請求する場合には、①内容証明郵便を送る➁労働基準監督署に相談する、という2つの方法をとることができます。

・弁護士に依頼する
弁護士に依頼したからといって、いきなり裁判になるわけではありません

以下のように、はじめは交渉からはじめ、だんだんとレベルを上げていきます。

また、ほとんどのケースでは交渉で済むため、実は弁護士に相談するハードルは高くありません。

弁護士に依頼した場合の流れ
詳しくは「残業代 請求」「残業代 請求 弁護士」をご参照ください。

2-2-2 :残業代を取り戻すには証拠が重要

残業代を取り戻すためには、何より証拠が重要です。証拠としては、次のようなものを集めておくとよいでしょう。

タイムカード
会社のパソコンの利用履歴
業務日報
運転日報
メール・FAXの送信記録
シフト表

残業代の証拠について詳しく知りたい方は、

【保存版】知らないと損する?残業代請求する為に揃えておくべき証拠

をお読みください。

まとめ:年俸制の注意点


この記事では、年俸制の給与や残業代の計算方法について説明してきました。

年俸制は、固定残業代制をとることで悪用されることもあり、自分がもらえる給与には注意を払う必要があります。

最後に、簡単に振り返ってみましょう。

・年俸制は「給与の額を1年単位で決めること」
・年俸制と一緒に使われる制度として、固定残業代制(みなし残業代制)がある
・固定残業代制(みなし残業代制)は、一定の残業代を払うだけで社員をいくらでも残業させるために悪用されることがある
・残業代は、「残業代=基礎時給×割増率×残業時間」という計算式で求められる
・残業代を請求方法は①自分でする➁弁護士に依頼する、の2つ
固定残業代制(みなし残業代制)制を導入するには、定額の残業代とそれ以外の給与が明確に区別できないといけない
・固定残業代制(みなし残業代制)制の計算方法

年俸制を採っている場合、残業代がごまかされていることがよくあります。

この記事をよく読み、自分の給与が正しいか、早速計算してみましょう。

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