
あなたは、
「残業代を会社に請求したいけれど、リスクはあるのかな?」
「リスクがあるなら、残業代を請求するかどうか悩む」
と思っていませんか?
未払い残業代を会社に請求することは、会社に楯突くことであるように感じますよね。そのため、請求することで、自分に何らかのリスクがあるのではないかと不安になることもあると思います。
結論から言えば、請求するリスクは、多少あります。しかし、リスクを恐れて行動しないよりも、請求して次の行動を起こすことが、お金の面だけでなく、あなたのこれからの人生において、新しい一歩になるはずです。
しかも、残業代請求のリスクは、正しい対処法を知っていれば抑えることができます。
そこでこの記事では、残業代請求における3つのリスクと、リスクを抑えて請求する方法について、現役の弁護士が詳しく解説します。
最後までしっかり読んで、あなたが損しない請求方法を学んでください。
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■残業代請求の3つのリスク
- 残業代請求したことを転職先の会社にバラされる
- 過去の社内での失敗を理由に損害賠償請求される
- 手続きに膨大な手間、時間をかけたのに失敗する
- 会社に在籍中に嫌がらせされる
■リスクを抑えて残業代を請求する方法
- 残業代請求に強い弁護士に依頼する
→失敗するリスクを最小限にできる - 有効な証拠を集めておく
→会社から残業代を支払ったと言われても反論できる - 退職まで会社にバレないように手続きを進める
→嫌がらせを避けることができる
■残業代請求の時効
- 3年で時効が来る
- できるだけ早く行動することが大事
目次
1章:残業代請求の4つのリスク
私がこれまで数多くの相談を受けてきた中で、残業代請求において、以下のようなリスクを心配される人が多いです。
これらのリスクは、対処法を知っておけば抑えられるものです。
リスクを抑える方法は2章で解説しますので、まずはそれぞれのリスクはどのようなものなのか、順番に確認しましょう。
1−1:残業代請求したことを転職先の会社にバラされる
私のこれまでの経験上、残業代請求の手続きを進める中で、転職先の会社に、残業代を請求したことがバラされたことはほとんどありませんでした。
なぜなら、転職先の会社にバラすことは、その会社にとってもデメリットがあるからです。
そのデメリットには2つがあります。
①会社は社員の個人情報を勝手に漏洩することはできない
あなたの同意なくあなたの情報を第三者に伝えることは、違法であるとされています。そのため、普通の会社は法を犯してまで、自社の利益にもならない嫌がらせをしようとはしません。
②会社のイメージダウンになる
残業代を請求されたことを他社に伝えるということは、自分たちが違法に残業代をごまかしていたことを、第三者に伝えることになります。つまり、会社は自分で自分のイメージをダウンさせることになるのです。
以上の2つの理由から、普通の会社なら、転職先にあなたが残業代請求したことをバラすことは、基本的にはないはずです。
1−2:退職する前に請求してしまって会社に在籍中に嫌がらせされる
確かに、会社に在籍中に、残業代を請求することが会社にバレてしまうと、会社から何らかの嫌がらせをされる可能性はあります。
しかし、バレないように在籍中は証拠集めをして、辞めてから請求手続きを開始することで、嫌がらせをさけることができます。この方法について、詳しくは2−2で解説します。
1−3:手続きに膨大な手間、時間をかけたのに失敗する
- 1円も取り返せなかった
- 本来回収できたはずの金額より、大幅に少ない金額しか回収できなかった
などということになれば、元も子もありません。
確かに、残業代請求を行う上では、
- 有効な証拠の収集
- 各書類の作成
- 残業代の請求金額の計算
- 会社との交渉
- 労働審判(※)の手続き
- 裁判(訴訟)の手続き
など、専門知識や経験がないと難しい手続きが多いです。
※労働審判とは、会社との間のトラブルを解決するための、裁判(訴訟)よりも簡単な、裁判所で行う手続きのことです。
そのため、全て自分で手続きを行おうとすると、失敗してしまうリスクがあります。
ただし、弁護士等の専門家に手続きを依頼すれば、失敗するリスクを最小限にすることができます。詳しくは2−1で解説します。
1−4:過去の社内での失敗を理由に損害賠償請求される
しかし、これはほとんどの場合リスクにはなりません。なぜなら、会社が社員に高額の損害賠償請求をすることは、たいていの場合認められないからです。
また、仮に請求できたとしても相当な減額がされます。
たとえば、以下のようなケースがよくあります。
【「忙しくなるから損害賠償請求する】と言われるケース】
「お前が辞めたら会社が忙しくなるから損害賠償請求する」「お前がやっていた仕事は誰がやることになるんだ」などと言われるケースがあります。
そもそも違約金や損害賠償を予定する雇用契約を締結することは、法律上禁止されています。
また、残業代請求をしたことの仕返しに、辞めたことについて損害賠償請求することは、逆に会社の方の不法行為となります。
【会社の備品を壊してしまったため損害賠償請求されるケース】
「会社の備品(運送業のトラックなどに多い)を壊したから、損害賠償請求する」と言われるケースもあります。
また、営業職等でも、「社用車を運転中に事故を起こした場合に、修理費の3割を本人負担として請求する」と、雇用契約書に盛り込まれているというようなケースもあります。
しかし、あなたが備品を壊してしまったとしても、通常は会社が保険に入っているため、あなた個人に請求されることはありません。
会社が保険に入っていない場合は請求されることがありますが、労働者の業務上のミスに基づく損害賠償請求は、以下のように、過去の判例では制限されています。
①労働者に故意または重過失がなければならないこと
②故意または重過失があったとしても、すべての損害を賠償する必要はないこと
以上のように、会社から損害賠償請求されても、多額の賠償が必要になることは、ほとんどないのです。
2章:リスクを抑えて残業代を請求する3つのポイント
リスクを抑えて残業代を請求するポイントは、以下の3つです。
- 残業代請求に強い弁護士に依頼する
- 有効な証拠を集めておく
- 退職まで会社にバレないように手続きを進める
順番に解説します。
2−1:残業代請求に強い弁護士に依頼する
1章でお伝えした通り、自分で残業代を請求すると失敗してしまうリスクがあります。そのため、おすすめなのは、残業代請求に強い弁護士に依頼することです。
残業代請求に強い弁護士に依頼することで、
- 失敗し、残業代を回収できなくなるリスクを抑えられる
- 手間、時間、心理的負担を最小限にできる
- 完全成功報酬制の弁護士なら、費用の心配もない
というメリットがあります。
ポイントは、「残業代請求に強い弁護士」に依頼するということです。
実は、弁護士にも「不倫」「交通事故」「労働問題」のように専門分野があり、自分の専門以外には無知である弁護士も多いです。
そのため、もし残業代請求を苦手とする弁護士に依頼すると、失敗して本来回収できるはずの金額より少ない金額しか回収できないこともあります。
残業代請求に強い弁護士なら、そのようなリスクは最小限にできます。
他にも弁護士選びにはポイントがありますので、詳しくは以下の記事をご覧ください。
失敗したら残業代ゼロ?弁護士選びの8つのポイントと請求にかかる費用
2−2:有効な証拠を集めておく
残業代請求に失敗するリスクを抑えるためには、有効な証拠を押さえておくことも必要です。
あなたは、「会社は残業代をごまかしているのだから、請求したら支払うのが当然だ」と思っているかも知れません。しかし、証拠がなければ、
- 会社から「残業代は支払った」と言われても反論できない
- 弁護士等の第三者に、未払い残業代があることを客観的に証明できない
という問題があります。
証拠がなくても、弁護士に依頼すれば、弁護士から会社に証拠の開示を要求することもできます。しかし、中には証拠を提出しない悪質な会社も存在します。
そのため、請求に失敗するリスクを抑えるためには、証拠を集めておくことが大事なのです。
集めるべき証拠や在籍中からできる証拠集めのポイントについて、詳しくは以下の記事で解説しています。
【弁護士が解説】残業代をアップさせる証拠一覧と集め方マニュアル
2−3:退職まで会社にバレないように手続きを進める
残業代請求のリスクを抑えるためには、「会社にバレないように手続きを進める」ということも大事なポイントです。
1章でお伝えしたように、会社にバレると、残業代を請求することを知った上司や同僚から、何らかの嫌がらせを受ける可能性があるからです。
会社にバレないように手続きを進めるためには、弁護士に依頼することをおすすめします。
残業代請求を弁護士に依頼すると、あなたが退職するまでは、会社にバレないように手続きを進め、会社を退職した後に、すぐに請求手続きを開始できるようにすることも可能です。
その場合、在籍中のあなたは、
- 弁護士に現状を相談、報告する
- 有効な証拠をこっそり集めておく
という作業を行うだけで、退職後すぐに手続きを開始できます。
3章:残業代請求の時効は3年!できるだけ早く行動を開始しよう
あまり知られていませんが、残業代請求には「3年の時効」があり、時効が過ぎると、その分の残業代が請求できなくなるリスクがあります。
時効の基準となるのは、毎月の給料日(もしくは給料日だった日)です。
つまり、毎月の給料日が来るたびに、3年前の1ヶ月分の残業代が消滅していくのです。
【給料の支払日が「15日締め・翌月末払い」の場合】
たとえば、給料の支払日が「15日締め・翌月末払い」の場合、2020年2月16日から3月15日までの給料は、2020年4月30日に支払われます。そのため、2020年3月15日締めの給料は、2023年の4月30日経過時に時効を迎えます。
そこで、2020年3月15日締めの給料の時効を止めるためには、2023年の4月末までに「時効を止める」手続きを行う必要があります。
そのため、退職から3年が経過すれば、未払い残業代の全額が消滅してしまいます。
このようなリスクを避けるために、残業代を請求する場合は、できるだけ早めに行動することをおすすめします。
時刻について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
残業代請求の時効は3年!時効を止める3つの手段と具体的な手続きの流れ
まとめ
いかがでしたか?最後に今回の内容をまとめます。
【残業代請求の3つのリスク】
- 残業代請求したことを転職先の会社にバラされる
- 過去の社内での失敗を理由に損害賠償請求される
- 手続きに膨大な手間、時間をかけたのに失敗する
- 会社に在籍中に嫌がらせされる
【リスクを抑えて残業代を請求する方法】
- 残業代請求に強い弁護士に依頼する
→失敗するリスクを最小限にできる - 有効な証拠を集めておく
→会社から残業代を支払ったと言われても反論できる - 退職まで会社にバレないように手続きを進める
→嫌がらせを避けることができる
【残業代請求の時効】
- 3年で時効が来る
- できるだけ早く行動することが大事
リスクを抑えて請求する正しい知識を覚えて、損しないように行動していきましょう。
【参考記事一覧】
残業代請求をするときに集めるべき証拠やその集め方について、詳しくは以下の記事で解説しています。
【弁護士が解説】残業代をアップさせる証拠一覧と集め方マニュアル
残業代請求を成功させるための弁護士の集め方について、詳しくは以下の記事をご覧ください。